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第17章 魔王軍との戦い

第568話 エレフセリア学園 ~武闘会~ 終幕

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 舞台裏でケビンとヴァレンティアたちの一幕があった頃、表舞台ではテオに対してアレックスが果敢に攻め込んでいた。

 しかし、アレックスの果敢な攻撃に対して、テオは流れるようにして受け流しており、アレックスの心境はテオとの実力差に焦りを感じ始める。

「アレックス、1つアドバイスをしようか?」

「兄上からのアドバイスかい? 敵に塩でも送るつもりなのかな?」

「そうだね。アレックスが何故1度もクラウスに勝てないのか、気にならないかい?」

 テオからの言葉で思うところがあるのか、アレックスは沈黙してしまう。アレックスとしては、クラウスについては龍族の血を引いているため、潜在的な能力差はどうしようもないと割り切っているところがあった。

「アレックスが勝てない理由……それは……」

「それは?」

 お互いに交差する剣を弾き間合いを開けると、テオが続きの言葉を口にする。

「それは、アレックスの剣筋が綺麗すぎるんだよ」

「剣筋……?」

 思いもよらぬことを指摘されたアレックスが訝しむ。その様子を目にしながらテオがアレックスの心根を暴く。

「“皇族たらん”と目指し、自身を厳しく律するのはアレックスのいいところでもある。だけどそれだと、剣術も自然と模範的となる綺麗な剣技になってしまいがちだ。たとえ皇族だろうと、時には手を汚さないといけない。綺麗なままっていうのはありえないんだよ」

 テオから言われたことは自分のことでもあるので、アレックスとしても理解しているところはある。何故ならば、皇族として恥ずかしくない振る舞いを心がけているのは、今に始まったことではないからだ。

 だが、あえて手を汚す必要はあるのかと問われれば、アレックスとしては否だ。その心の内が読まれているのか、アレックスの視線の先にいるテオは苦笑いを浮かべている。

「別に悪い意味での手を汚すってことじゃない。戦いにおいて少しでもいいから、相手の虚をつく方法を覚えていくといい。理想的なのはシアとティだよ」

「シアとティが……?」

 アレックスの中でのフェリシアたちの評価は、悪く言えば“卑怯”である。相手の嫌がるような戦術を取り、それを無意識ではなく意識的にやっているところが、正々堂々を旨とするアレックスの納得のいかないところでもある。

「知ってるかい? 無敗を誇っていたクラウスでも、シアとティにだけは勝てないんだよ」

「それは2対1だからなのでは?」

「ティアとティナには勝てるよ」

 2対1という状況を問題提起したアレックスの言葉を、テオは同じ状況となる2対1で論破した。それにより、アレックスは苦虫を噛み潰したような表情となる。

「つまり、そこがアレックスのクラウスに勝てない理由でもある。教科書通りの戦い方をしてくれる相手なんて、対処方法は教科書通りにすればいいだけだよ。だから、アレックスの強さが通じるのは格下相手だけだ。同格や格上には通用しない」

 自分が今まで培ってきたものを「通用しない」と切って捨てられたアレックスは、あからさまにムッとした表情を浮かべていた。

「まぁ、そう怒らないでくれ。アレックスのやっていることだって、1つだけの例外はあるさ。それはたとえ教科書通りでも、それを極めた場合だ。武の極み……その頂きに到達できるのなら、教科書通りの剣術でも格上相手に通用する」

「武の極み……」

 未だ発展途上のアレックスは武の極みというものを想像してみるが、一向にその極みという到達点が思い浮かばない。

「もし極めることができるのなら、それはアレックスが年老いた頃になると思う。そのくらい武術を極めるってことは難しい。だから、一般的には搦手を利用するんだ」

「搦手……」

「アレックスにとっては、正々堂々じゃないと忌避感を覚えるかもしれないけど、だからこそ、それを少しは剣術に取り入れて欲しいとも思う。そうすればクラウスに勝つことも不可能ではなくなるし、シアやティのイタズラにも対応できるようになると思うよ」

 テオから諭されるアレックスは、心の内でどうするのが自分にとっていいのかと葛藤を始めてしまうが、次のテオの言葉で現実に引き戻される。

「アドバイスは以上だ。どうするかはアレックス自身で答えを見つけ出すといい。今は試合中だから、まずはこれを終わらせようか」

 テオの言葉により気持ちを切り替えたアレックスが正中に剣を構えると、テオはアレックスに搦手を使う戦い方がどういうものなのか教えるために、実戦形式においてアレックスを追い込んでいく。

 対するアレックスは王道を征く剣技で応戦するも、教科書通りと言われたアレックスの剣技はテオに対して全く歯が立たない。

 アレックスが何とかして踏み留まろうにも、虚をつかれた攻撃に対してヒヤッとしながら、幾度となくテオの搦手に追い詰められていく。

 そして、アレックスの息が上がり始めたところで、テオが終わりとばかりにアレックスに対しての最後の攻撃を繰り出した。

 それは、剣を振り上げる攻撃と見せかけて、そのまま剣を放り投げたかと思いきや、虚をつかれたアレックスの思考が追いつかないうちに鳩尾に拳をめり込ませて、そのままアレックスの意識を刈りとったのだった。

「勝者、テオ選手!」

 こうしてアレックス戦を終えたテオは、クラウスの時と同様にアレックスを抱えると、そのまま舞台を後にするのであった。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 全ての試合が終わり表彰式が済んでしまうと、解散後にケビンの帝城では立食形式のお疲れ様会が開かれていた。

 結局のところ無差別級の個人戦優勝者はテオで、ペア戦の優勝者はフェリシアとフェリシティになる。

「これでテオが1番だって証明されたわね」

「お母さんに1番を贈ることができて良かったです」

「テオがいい子に育ってくれて嬉しいわ」

 そう会話するのはソフィーリアとテオであり、ソフィーリアは「ケビンの子供たちの中で1番強い子供は誰か?」という始まりから、見事優勝を成し遂げたテオの頑張りで終始ご機嫌である。

「ママぁ~お小遣いストップはやめてよぉ」
「私たちには死活問題だよぉ」

 泣きそうな顔でそう懇願するのは、フェリシアとフェリシティである。対するスカーレットは、お説教モードのようだ。

「何で“死活問題”なんて難しい言葉を知っているのに、いつも真面目にできないんですか!」

「私たちが真面目なったら……ねえ?」
「何て言うんだっけ? テディの崩壊?」

「そうそれ! シアっちたちのテディがジェンガする感じっしょ!」

百鬼なきりさん! うちの娘たちに変な言葉を教えないで下さい!」

 離れたところにいた百鬼なきりがフェリシアたちの会話に相槌を打っていたら、スカーレットは変な言葉(通称:百鬼なきり語録)の影響を受けさせまいと百鬼なきりに対して注意をする。そして、その百鬼なきりもお説教モードのスカーレットに捕まり、とばっちりを受けてしまうのだった。

「……解せぬ……だし……」

百鬼なきりさん! 聞いているのですか?!」

「はい! 聞いてます!」

 その光景を遠くから見つめる者が2人。

夜行やえったら、やぶ蛇よね……」

「やぶ蛇ぃぃぃぃ!」

 その者たちは千手と千喜良で、ケーキを口にしながら百鬼なきりの行く末を他人事のように眺めていた。

 別のところではクララがクラウスに寄り添い、たとえ試合に負けたとあっても後に引かないよう元気づけるために、食事をよそいながら提供している姿がある。

「クラウスよ、まだまだ先は長いからの」

「ああ。いつか兄貴にも勝てるような立派な男になる。それで、龍人族を纏めあげる族長になるんだ」

「志が高くて偉いの。クラウスなら立派な族長になれるであろう」

 これから先の意気込みを語るクラウスに対し、クララは息子の成長を喜んでおり、将来は安心だと感じてご機嫌である。

「アレックス」

 1人黄昏ているアレックスの傍に近づくのは、母親であるアリスだ。

「母上……」

 アリスの呼び声にアレックスは顔を上げるが、その顔はどこか元気がないように見える。

「貴方は貴方の信じる道を進みなさい。だけど、少しだけ融通のきくゆとりも持ちなさい。正義一辺倒だけでは、統治というものはままならないものなのです」

 アレックスは、アリスからもテオと似たようなことを言われてしまったため、少し考えを変えるために神妙な面持ちで身近な存在であるケビンのことを尋ねた。

「……父上の場合はどうなんですか?」

「ケビン様は正義と遊び心の2つで統治していますよ。悪しきことには正義を、そうでない場合には遊び心を。ケビン様が1番望まれていることは、帝国に住む民たちの幸せですから。民たちのためなら自身の考えなど、二の次にしてしまいます」

「そう……ですか……」

「ケビン様は『俺は好きに生きているだけ』だと仰られていますが、1番根っこのところでは、周りにいる人たちの幸せを考えているのです。それがわかっているからこそ、私たちもケビン様が面倒くさいと仕事を放り投げても、代わりに行い支援しているのですよ」

「……わかりました。今までの考え方を見つめ直してみたいと思います」

「焦る必要はありません。貴方はまだまだ子供なんですからね」

 そう締めくくるアリスはアレックスの頭を撫でながら、にこやかな表情を浮かべている。その行為にアレックスは恥ずかしそうにしていたが、されるがまま受け入れていたのだった。

「母さん、氷に閉じ込める作戦がダメだったぜ?」

「うーん……シーヴァはまだ《氷河時代の顕現アイスエイジ》が使えないものね。威力はないけど一般的に知られている《アイスフィールド》を覚えてみたら?」

 シーラと会話をしているシーヴァは試合の反省会を行っていた。シーラは何やら不穏当な魔法を、最終的にはシーヴァに覚えさせようとしているようだ。

「どんな魔法なんだ?」

「範囲は狭いけど、氷の世界が作れるわよ。地面を凍らせて相手の動きを封じるの」

「それだ! 相手が動かなければこっちのもんだぜ!」

 シーヴァの魔法に関してはシーラが程々に担っているためか、シーラ寄りと言うよりかは、シーラ2号みたいな氷属性大好きの魔術師になりつつある。

 そして、単純なシーヴァは『凍らせる=相手は動けない』という図式が頭の中に定着しているのか、他の属性を使って幅広く応用の効く方法をとるという考えは思い浮かばないようだ。

「「お母さん……お父さんを嫌いって言ってごめんなさい」」

 別のところでは、ヴァレンティアとヴァレンティナが母親の愛する夫に対して、その場の勢いで「嫌い」と言ってしまったことを謝っていた。

 沈痛な面持ちで謝ってくる娘たちにヴァリスが笑みを向けると、それぞれの頭を撫でていく。

「お父さんには謝ったのでしょう? ちゃんと謝ることができたんだから、もう気にしなくていいのよ。悲しそうな顔よりも笑っている顔をお母さんに見せて」

「「…………うん!」」

 ヴァリスがもう怒ってないと感じ取ったヴァレンティアたちは、笑顔を見せると今まで頑張った試合のことを楽しそうに語り、それを聞くヴァリスは終始笑顔を絶やさなかった。

「これ美味いねー」

「そうだねー」

 試合の反省会など全くもってするつもりがないのか、クリスと娘であるオルネラは料理をパクパクと食べながら笑顔を浮かべている。

 そのような和気あいあいとしている母娘に物申すのは、クリスの妹となるアイリスと、その娘でオルネラの妹となるアルマだ。

「お姉様、少しはオルネラにも教養というものを、身につけさせてくださいですの」

「そうですの。オルネラも少しは頭を使うということを覚えて欲しいですの」

「それよりもこれを食べなよ。アイリスもきっと気に入るって」

「アルマにはこれをお裾分けしてあげる」

「「はぁぁ……ですの……」」

 聞く耳はあるのだが気にしない2人にとって、アイリスやアルマの言葉は右から左へ抜けていっているようで、そのことがわかってしまうアイリスやアルマは溜息が後を絶たないのだった。

「アドラ、学年別の個人戦優勝おめでとう。よくやりましたね」

「うん。龍人娘の筆頭だから」

 アドラの功績を称えるのは母親であるアブリルだ。だが、アブリルをライバル視しているドロシーは、どこから取り出したのかハンカチを噛み締めている。

「キーッ! ドゥルセ、次こそはアドラに勝つのですわ!」

「お任せになってですわ、お母様!」

 ドロシーとドゥルセのやり取りをどこか面白がって見ているのは、同じく白種のドラゴンであるファティだ。

「ドロシーってめげないよね。アブリルに勝てるわけないのにさ。ファリカもそう思うよね?」

「ドロシー母さんのことは何も言えないけど、ドゥルセは負けず嫌いだから、何度でも挑戦すると思うよ」

 ファティとファリカ母娘がそう会話をしていると、バジリナとバジル母娘も相槌を打つ。

「ドロシーは相変わらずだねー」

「ドゥルセも相変わらずだねー」

 四者四様の会話を繰り広げている中で、黙々とご飯を食べているのは口数の少ないカルメラとカリナ母娘だ。

「……これ食べる?」

「……これ美味しいよ?」

 お互いに気に入った食べ物を薦め合う2人は、同じ龍族や龍人族のやり取りなど気にしてなく、我が道を突き進んでいた。

「ヴァンス、次こそはカイルに勝てよ」

「あれは悔しかったから、次は勝ちたい」

 ヴァレリアがヴァンスを激励すると、ヴァンスはフェイントに引っかかり過ぎたのが悔しかったのか、珍しく再戦への意気込みを見せている。

「ハハッ! 何度来てもケビンの息子なんて返り討ちにするのよ、カイル!」

「母さん、少しは落ち着きなよ」

 ルージュが勝ち誇っている中で、カイルはそのような母親の姿が恥ずかしいのか、何とかして宥めようとしていたら父親のカインがルージュを窘める。

「ルージュ、ケビンに勝てないからってカイルを使うなよ」

「うっ……」

 カインに言われてしまったためか、ルージュはバツの悪そうな顔つきとなって、口を閉ざしてしまうのだった。

「ママ、私の魔王の闘気サタニックオーラどうだった?」

 そう母親に尋ねるのは、試合で《ダーク》をアレンジして使ったオフェリアだ。それに対してオリビアはにこやかに笑うと娘の頑張りを称える。

「パパも凄いって驚いていたわよ。オフェリアは頑張り屋さんね」

「パパみたいに強くなるの!」

 そう言ってガッツポーズを見せるオフェリアに、オリビアは戦闘向きでないサキュバス族の特性など気にせず、娘の頑張りを応援するのだった。

「マレナ、マノラ。よく頑張ったな! お父さんは嬉しいぞ!」

「近すぎ」
「離れて」

「グハッ!」

 ミナーヴァ魔導王国の国王と言えど、娘の前ではただの父親。だが、そのような父親をしているエムリスでも、娘から邪険にされると精神ダメージが半端ないようだ。

「な、何故だ……ケビンは近づいても娘から邪険にされていないのに……」

 エムリスが項垂れて途方に暮れていると、ミラとモニカがケビンとの違いを淡々と告げていく。

「ケビン君はエムリスと違って、ベタベタしないからよ」

「適度な距離感を保ちつつ甘やかすのがケビン君です。比べるのも烏滸がましい程の圧倒的な父力の差ですね」

「そうそう。ケビンお義兄様はベタベタしてこないよね」
「だから、私たちから抱きついたりするよね」

「……なん……だと……」

 まさか自分の娘たちがケビンに抱きついてるとは知らずにいたエムリスは、『何故俺には抱きついてくれないのだ』と、血の涙を流している。そして、適度な距離感というものを今度ケビンに聞いてみようかなと、恥も外聞もかなぐり捨てて、娘たちに抱きついてもらえるように画策するのであった。

「クズノ、これも美味しいですから食べてみなさい」

「ありがとう、パティ」

 賑やかな雰囲気とは違い、穏やかな雰囲気で時を過ごしているのは、甲斐甲斐しくクズノの世話を焼いているパトリシアだ。

「パティと一緒だから美味しいね」

「そ、それは良かったです」
(くはぁぁぁぁ! クズノたんのキラキラとした瞳で見つめらると、もう昇天しそう! デュフっ、デュフフ……)

 相変わらずクズノに対する庇護欲がとてつもないパトリシアは、心の中でひたすら悶え始める。しかし、それはパトリシアの心の中だけでの出来事であるので、傍目に見れば甲斐甲斐しく世話を焼く妹想いのいい姉となる。

「パトリシアはほんにええ子やねぇ。プリシラはんの教育がええんやろか」

「恐縮でございます」

 そして、パトリシアの心の内など露ほども気づいていないクズミがそう褒め称えると、プリシラは粛々とお辞儀を返して我が子を見つめていたのだった。

「ラーク、お疲れ様でした」
「ルーク、お疲れ様でした」

「「うっ……か、母さん……?」」

 別のところではララとルルが満面の笑みを浮かべて、ラークとルークを労っていた。だが、ラークとルークは母親の笑みがとても不穏に感じたのか、徐々に後ずさりを始めていく。

「どこへ行くのですか?」
「今はお疲れ様会の最中ですよ」

 後ずさるラークとルークを追いかけるようにして、じりじりとにじり寄ってくるララとルル。そこでは一進一退の攻防が繰り広げられている。

「とてもいい試合でしたね。危うく鉄球を投げ入れるところでしたよ?」
「そうですね。雷撃を食らいダウンするなんて、危うく斬り刻んでしまうところでした」

 とてもいい笑顔でにじみ寄るララたちによって、ラークたちは背中に汗が伝うのを感じ取る。2人は身の危険が迫っているのを感じ取っているのか、頭の中では警鐘が鳴り続いていた。

 そのようなラークたちとは違い、トーマスとトーレスはフォリチーヌから正真正銘の満面の笑みで褒められていたが、チラチラとラークたちの様子を盗み見ては顔を引き攣らせている。

「ラーク先輩とルーク先輩……大丈夫かな……?」
「ブートキャンプって何だろ……夜営かな……?」

 トーマスとトーレスはとても止められるような状況ではないことと、第6感的なもので近づいてはならないことを感じており、視線を向けてくるラークとルークに対して、申し訳なさそうな顔で力になれないことを訴えかけているのだった。

 そして、会場の至る所で武闘会の話が上がっている中で、ケビンはお疲れ様会の主催者として会場内を歩き回り、自身の子供たちや知人の子供たちに声をかけると、試合での健闘を1人1人褒めていく。

 その行動が終わるとようやく食事にありついて、賑やかな立食パーティーを眺めつつのんびりと過ごし始めたら、そこへやって来るのはケビンと縁の深い者である。

「なぁ、後輩よ」

「何ですか、先輩」

「マサノブたちとの橋渡し役、感謝するぞ」

 実はケビン、ターナボッタの魔導具開発の一助になればと、あずまたちを紹介していたのだった。

「何かヒントは得られましたか?」

「ああ、俺には思いもよらない発想をもらうことができた」

「それは良かったです」

「お礼に謝礼金でもと思ったんだが、断られてしまってな。代わりに完成した魔導具を試用させて欲しいって言われた」

「マサノブたちらしい返答ですね」

 容易にそのことが想像できてしまうケビンは笑みを浮かべると、視線の先で賑やかに騒いでいるあずまたちを眺めていた。

 こうしてケビンが開いたお疲れ様会は、賑やかな雰囲気のまま時間が過ぎていき、皆が思い思いの楽しみ方をして過ごしていくのであった。
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