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第11章 新規・新装・戴冠・結婚

第296話 嬉しいサプライズ?

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 夕食前、会議と報告の終わったケビンが憩いの広場の玉座でボーッと過ごしていると、目の前にいきなりソフィーリアが転移してきた。

「ただいま、あなた」

「おかえり、ソフィ」

 ケビンが立ち上がりソフィを抱きしめると、おかえりのキスをプレゼントする。

「ふふっ、やっぱりあなたの腕の中が1番落ち着くわ」

「それは良かった。仕事は片付いたのか?」

「ある程度は終わらせたわ」

 そこへ玉座の隣に座っていたパメラが、トコトコとソフィーリアへ近づいて服を掴むと、ソフィーリアを見上げているパメラに視線を向ける。

「……おかえり……」

「ただいま、パメラ。良い子にしていたかしら?」

「…………ちょっと……だけ……」

「あら、悩んでたわね? 何か悪いことしたの?」

「……ちょっと……だけ……」

「あなた、パメラは何をしたの?」

 正直に答えてしまうパメラを2人が微笑ましく思いながら、ケビンの思いつくパメラの悪いことをソフィーリアに伝えるのである。

「少しワガママを言っただけさ」

「そう……ワガママが言えるようになったのね」

「ああ、可愛いワガママだ」

 パメラは怒られる前の子供のように不安そうな表情でソフィーリアを見上げているが、ソフィーリアはそんなパメラを抱き上げた。

「ぁ……」

「パメラ、子供はワガママを言うものよ。気にしなくていいわ」

「おいおい、ソフィ……パメラがワガママしか言わなくなったらどうするんだ」

「子供のワガママなんて可愛いものじゃない。それにあなただってさっき『可愛いワガママだ』って言ったでしょう?」

「はぁぁ……ソフィには敵わないな」

「ふふっ、良かったわね、パメラ。ワガママ言ってもいいって認めたわよ」

「……ソフィ……ママ……」

 パメラがソフィーリアにギュッと抱きつくと、ソフィーリアはその様子を見て微笑んでしまう。

「少し見ない間に甘えん坊になったのかしら?」

「昨日からだな。アビーが来てから甘えることを覚えたみたいだ」

「アビー?」

「ああ、紹介しないとな。あっちでソワソワとしている嫁たちがいるし」

「あら、お姉さんを迎え入れたのね。ということはダークエルフがアビーかしら?」

「当たりだ」

 ケビンとソフィーリアが嫁たちのたむろしているテーブルへ向かうと、ケビンがシーラとアビゲイル、ソフィーリアのことをお互いに紹介する。

 そしてソフィーリアのことを聞いてしまった2人は、あまりの事実に呆けてしまってその場で立ち尽くすのである。

「いつ見てもこの反応は面白いわね」

「まぁ、普通に考えて教会の崇める神が目の前にいるなんてありえないことだしな」

 現実から飛び立った2人が戻ってくるまで他の者たちだけで話をしていると、先に戻ってきたシーラがケビンへ詰め寄った。

「ケビン! 女神様がお嫁さんの1人だなんて聞いてないわよ!」

「本人がいなかったしね、それに仕事で出かけてるって伝えただろ?」

「それについても出かけてて居ないのだから、普通は商人か何かだと思うわよ!」

「世界一忙しいってヒントを出しただろ?」

「規模が違うじゃない! 人の考える世界一を優に超えているわよ!」

 シーラがケビンに物申している中で、もう1人の旅立っていたアビゲイルが現実へ戻ってくると、何を思ったのかいきなり跪いてソフィーリアに対して祈りを捧げるのであった。

 その姿を見てしまった周りの者たちは呆然としてしまい、祈りを捧げられているソフィーリアは苦笑いしてしまう。

「ええっと、何をしてるんだ……?」

「私に祈りを捧げているのよ」

「それは見ればわかるんだが……」

「喜びなさい、あなたのことよ?」

「え……何を祈ってるのかわかるのか?」

「私はこの世界の神よ? 祈りを捧げられたら私に届くのは当然でしょう?」

「それなら世界中の祈りがわかるのか?」

「そんなものは届かないようにシャットアウトしてるわ」

「何気に酷いな」

「あなたは世界中の人から一斉に喋りかけられて、それをうるさく感じないの?」

「あ、ごめん。無理だわ」

 世界中の人から一斉に喋りかけられることでも想像したのか、ケビンはすぐさまやってられないと判断して手のひらを返すのであった。

「そういうことよ。仕事場なら緊急性の高い祈りはモニターに届くようにしているけど、それ以外の祈りは暇な時にしか見ないわ。それに今は仕事中じゃないのだから当然届かないようにしているわよ」

「それで? アビーは何をお祈りしているんだ?」

「あなたと再び巡り合わせてくれた運命を感謝していますって」

 それからアビゲイルの祈りが終わるまで、ソフィーリアはその場から動かずにケビンたちもそれが終わるのを待つのであった。

 そしてアビゲイルの祈りが終わって、皆が席に再びついて落ち着いたかと思いきや、またもやこの場を騒然とさせる出来事がソフィの手によって齎されるのである。

「あなた、子供ができたわよ」

「は……?」

 突拍子もなく告げてきたソフィーリアに、ケビンは唖然とするしか対応ができなかった。それはケビンだけでなく周りにいた女性たちも同様である。

「先月からきてないの」

「え……」

「……喜んでくれないの?」

 ソフィーリアが悲しそうな顔をすると、ケビンが全力で弁明するのである。

「いやいやいやいや、驚きすぎてそれどころじゃない! え? 何!? 子供!?」

「そう。あなたと私の子供」

「子供って子供だよな? 赤ちゃんの子供だよな?」

 ケビンがあからさまにテンパりだして、わけのわからないことを口走り始めるが、ソフィーリアが微笑みながらそれを訂正する。

「ふふっ、赤ちゃんに子供はできないわよ。私たちの子供が赤ちゃんなの」

『マスター、おめでとうございます』

「え……え……?」

 ソフィーリアから赤ちゃんを身篭ったと告げられ、サナからはお祝いを告げられ、混乱を極めているケビンは状況に追いつけない。

「あなたでも処理しきれないことがあるのね。珍しいものを見れたわ」

 ケビンが現状を理解しようと頭をフル回転させている中で、嫁たちの方がケビンよりも順応するのが早くソフィーリアへお祝いの言葉をかけていくと、嫁たちがソフィーリアへお祝いの言葉をかけたのを真似したのか、パメラでさえケビンよりも早くソフィーリアをお祝いするのだった。

「……ソフィママ……おめで……と……」

「パメラは良い子ね。パパとは大違いだわ」

 ソフィーリアが腕の中に収まっているパメラの頭を撫でると、パメラは嬉しそうに目を細めるのであった。

「ソフィさん、パメラが懐く方法って何かわかる? ソフィさんは女神だから不思議でもないんだけど、初めて会ったアビーに懐くのが意味わからないのよね」

 ソフィーリアの腕の中にいるパメラを見ながら、ティナは何とか「ママ」と呼ばれたくて、ソフィーリアに助言を求めるのだった。

「以前に言ったでしょう? この子は相手を見ているのよ。目で普通に見ることじゃないわよ?」

「あれだよね? 雰囲気的な曖昧なやつ。魂の持つ優しさとか」

「そうよ」

「私って優しくないってことなの?」

「違うわよ。例えて言うならティナは眩しすぎるのよ」

「眩しい……?」

 ソフィーリアの言っている意味が理解できなくて、ティナは首を傾げてしまう。

 そのような時に、処理が終わったのかケビンが再起動を果たす。

「ソフィ、ありがとう。嬉しいよ」

「あら、あなた。処理が終わったの?」

「ああ、サナにこっ酷く叱られた。『かけるべき言葉があるでしょ!』ってな」

「ふふっ、あの子も随分と人間らしさが出てきたわね」

「いや、元からあんなだったぞ?」

「そうなの? 私と話す時は硬っ苦しいだけの存在だったのに」

「そりゃあ、ソフィが女神だからだろ。あと、『ご懐妊おめでとうございます』ってさ」

「サナ、ありがとう」

『いえ、おめでたいことですから』

 ケビンとソフィーリアのやり取りに周りの者はついていけず、何のことだかサッパリであったが、新しいことを知りたがる王女たちがケビンに疑問をぶつけるのである。

「ケビン様、サナさんとはどなたですか?」

「見えないから幽霊なのですか?」

 2人からの質問にケビンが苦笑いするとサナのことを話し始めるが、とんでもない事実を知らされてまたもや騒然となる。

「え? それって1人の人が自分の中にいるってこと?」

「不思議」

「ケビン君って人間離れしてるわよね」

「さすが私のケビンね!」

「私も欲しいなぁ」

「旦那様がどうであろうと素敵なことには変わりありません」

 自分の中にもう1人別の人がいるという不思議現象に、嫁たちが思い思いのことを口にするが、ケビンは気になっていたことをソフィーリアへ尋ねるのだった。

「ソフィ、いつ生まれるんだ?」

「そうねぇ、神力で即出産なんてしたくないから冬辺りになりそうね」

「待ち遠しいな」

「せっかく帰ってきたのに、あなたとのエッチがお預けになってしまったわ」

「仕方ないだろ。無理するわけにもいかないし、安全第一だ」

「でも、しようと思えばできるのよ?」

「大丈夫なのか?」

「大丈夫よ。だって私は女神よ? 力を使えばどうにでもなるもの」

「神の力を性欲に使うとは……」

「でも我慢するわ。初めての体験だから色々と経験したいのよ」

「赤ちゃんのためにもそうしてくれ」

「でも、安定期に入ったらしてもらうわよ?」

「マジか……」

「悪阻さえ治まれば問題ないわ。赤ちゃんはちゃんと保護しておくから」

 ソフィーリアの要望を聞いているケビンを他所に、話を聞いていたアリスが王族らしいことを口にする。

「もし男の子なら世継ぎとなりますね」

 だがソフィーリアから返ってきた言葉は思いもよらぬ、ある意味当たり前のことでもある内容であったのだ。

「私の子供はこの世界に残せないわよ」

「え? 何故ですか?」

「神の血が半分入るのよ? 種族は人間ではなくて半神になるの。この世界で言ったらハーフエルフとかいるでしょう? あんな感じよ。だけどハーフエルフと違って半神だから将来は天界に住まわせるわ」

「そうなんですか……」

「だから貴女たちが私の代わりにどんどん子供を作りなさい。これだけ女性がいるのだから、そのうち確実に男の子を身篭るわ。生まれてくる子供が全員女の子ってことはないだろうから」

 ソフィーリアから告げられた子供をどんどん作れという言葉に対して、女性たちは顔を赤らめるのであるが、ケビンはまだ来てもいないその時期のことを想像してしまい複雑な心境を語り出すのである。

「俺……娘ができたら結婚させたくないかも……」

「「「あぁぁ……」」」

 ケビンの呟きを聞いた女性たちは、その時のケビンの状況をありありと想像するのである。

 奴隷の子供たちでさえ、あれほど可愛がっているのだ。それが実の娘になったら可愛がり方が天元突破するに違いないことは、誰の目にも明らかで疑いようのない未来だった。

「パパにとって避けては通れない道ね」

「……パパ……」

 ソフィーリアの言葉に話を理解していないパメラが続くと、ケビンがソフィーリアの懐妊祝いのために憩いの広場でささやかなパーティーを開くことに決めた。

 パーティーは滞りなく終わりお風呂も済ませると、久しぶりに戻ってきたソフィーリアへの気遣いか、ケビンの寝室には誰も来ずにソフィーリアとの時間を過ごせる配慮が為されていた。

「なぁ、ソフィ」

「なぁに、あなた」

「悪阻って酷いのか?」

「その時々によるわね。酷い時は力を使って抑えているわ」

「無理はするなよ?」

「わかってるわよ。でもそのお陰で妊娠がわかったのよ? 悪いことばかりじゃないわ」

「力を使えば妊娠したかどうかなんてわかるだろ?」

「あなたは当たりがわかっているくじを引いて楽しいと思うの?」

「……思わないな」

「そういうことよ。自然に身を任せて身篭るから、わかった時に嬉しさが増すのよ?」

「確かにな」

「私はしばらく相手をしてあげられないから、その間は他の女性たちと寝てね」

「傍から聞くと碌でもない亭主だな」

「それなら妻を私だけにして他の女性たちは捨てて、2人であの空間で暮らす?」

「無理だ」

「周りに何を言われて思われようとも、あなたはあなたの生きたいように生きて幸せを掴んで。私の望みはあなたが幸せになることよ」

「俺の望みはみんなが幸せを感じることだ」

「私はとっても幸せよ。あなたとの子供もできて幸せすぎるわ。他の女性たちにもこの幸せを与えてあげてね」

「まずは嫁たちからだな」

「そういう変に義理堅いところも好きよ。普通なら何も考えずに手当たり次第に抱くのだから」

「いびりなんてしない嫁たちとはわかっているけど、余計な嫉妬でみんなの仲が悪くなるのが嫌なんだ」

「それなら早く孕ませてあげてね」

「言い方が卑猥だな」

「それじゃあ、子供を授からせてあげて」

「善処する」

 こうしてケビンとソフィーリアは、子供のことを話し合いながら深い眠りにつくのであった。
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