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第11章 新規・新装・戴冠・結婚
第271話 パメラを連れて行くケビンを追え!
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謁見の間に戻ってきたケビンは時間も頃合となったところで、既にテーブルと椅子がいくつかあったので、夕食は食堂を使わずこの場で行うことにして追加分をどんどん作り出しては全員で食事を摂るための準備をする。
ケビンは準備が終わるとケイトに声を飛ばして、女性たちを全員謁見の間へ集合させるように伝えた。
その間にアルフレッド隊へ食事の提供と飲み物を差し入れして、今までの勤務を労うのであった。
ケビンが帰還したのを元々謁見の間にいた女性たちが広めたのか、待機していた女性たちはあっという間に集合して、ケビンへおめかしした服を披露していく。
ケビンも自分で言ったことは忘れておらず、そのことを踏まえて帰還の挨拶を始めるのであった。
「とりあえず、みんな元気に過ごしていたようで嬉しいよ。それに着飾った服でとても可愛いしね、本当に戻ってこれて良かったと思う。今日はここで夕食にしよう。好きなだけ食べていいからね、乾杯!」
ケビンの挨拶が終わると、女性たちは楽しく談笑しながら食事を進めていく。
ケビンは自分のテーブルに手を繋いで連れてきたパメラに声をかけた。
「パメラ、ここにいる人たちは酷いことしないから怖がらなくていいよ。ここで一緒にご飯を食べよう」
「……たべ……る……」
ケビンは椅子を引っつけてから横へパメラを座らせて自分も席に着くと、ティナが驚いた様子でケビンに問いかける。
「ケビン君、一体どんな魔法を使ったの? パメラちゃん、私たちがいると怯えだすのに」
「ん? 別に魔法は使ってないよ。普通に接してるだけ」
「もしかして……年下キラー?」
「それはない。少し前にソフィとステータスを見たけど、ガルフさんの言ったやつは何1つ付いてなかったから安心したよ」
「不思議……」
「ケビン様の優しさが伝わっているのです」
「ソフィ様は何かわかりますか?」
「クリス、様付けと敬語は禁止って話し合ったはずよ」
「す、すみません……つい……」
クリスはいつもの雰囲気はなりを潜めて、未だに目の前の神様に慣れていないようである。
「恐らくケビンの元々持ってる、この場合は魂の纏う雰囲気っていうのかな? それを感じ取っていると思うわよ。本質は優しい人だから、そういうのを見抜いているのじゃない?」
ソフィーリアはあえて“健”とは呼ばずに“ケビン”と呼ぶことにして、“健”と呼べるのは自分だけの特権にするつもりのようだ。
「私たちが避けられるのって本質的に優しくないってこと?」
「それはどうとも言えないわ……多分、身近な人で1番落ち着くのがケビンなのよ。子供が親に寄り添うような感じね」
「子供かぁ……確かに子供よね」
ティナの視線の先では、左手でしっかりとケビンの服を掴んだまま食事を摂っているパメラの姿があった。
ケビン自身もその行動に対して行儀が悪いと注意することもなく、パメラの好きにやらせていて特に気にしている風でもない。
そして和やかな雰囲気の中で食事は進んでいき、やがてお開きが近づいてくるとパメラがケビンに向かって声をかける。
「……お……ふろ……」
「ん? 風呂に入るのか?」
「……いっしょ……」
「じゃあ、風呂に行くか」
ケビンがパメラを連れてお風呂へ行く姿を、談笑していた周りの女性たちが目ざとく観察していた。
「ニーナ!」
「わかってる」
「クリス!」
「……私も……?」
「レティ!」
「は……恥ずかしいです……」
ティナは3人にそれぞれ呼びかけて意気込むが、未だケビンと一緒にお風呂へ入ったことのないクリスとスカーレットだけは恥ずかしがるのである。
「そんなに意気込まなくてもケビンなら怒らないわよ?」
「でも、パメラちゃんと一緒だから“もしかしたら”があるかもしれないし」
「それはないわよ。それに他の人たちはもう行ったわよ?」
ティナたちが意気込んでいる中、既に奴隷たちはそそくさとこの場を立ち去っており、ケビンの後を追いかけていたのだった。
「出遅れたっ!」
「不覚……」
「奴隷の人たちは躊躇いがないね……」
「凄いです……」
「さぁ、私たちも行きましょう」
出遅れてしまったティナたちを引き連れて、ソフィーリアはケビンの元へと向かうのであった。
一方その頃、パメラの体を洗ってあげているケビンの所へ次々と女性たちが押し寄せてきた。
「相変わらずだな」
「役得でしょ? あの頃とは違って貴方が照れている顔を見れただけでも満足よ」
「そりゃあ、感情も表情も戻ったしな」
「私たちは貴方のものなんだから気兼ねなく隅々まで見ていいのよ」
「臆面もなく言うなよ」
「それで、待っていればいいのかしら?」
「何をだ?」
「洗ってくれるのでしょ?」
「何故そうなった?」
「貴方がいない間はかなり頑張ったと思うのよ。そう思わない?」
「はぁぁ……奴隷らしさは何処へ行った?」
「貴方がそれを望まないじゃない」
「……わかった。そこで腰かけて待ってて」
ケビンは諦めと共に、ケイトへ押し付けていた仕事の頑張りへ報いるために指示を出したが、思いがけない方向へと流れていく。
「みんなぁ、ご主人様が体を洗ってくれるわよー。大人たちは小さい子から連れてきてー」
ケビンが驚いている中、ケイトの言葉を聞いた大人たちが小さい子を連れてきては並ばせ始める。
「ケイトだけじゃないのかよ……」
「パメラにしてあげてるんだから他の子にもしてあげないと可哀想よ。私たちの中での確執なんて望まないでしょ?」
「そりゃあな。みんな仲良くが基本だ」
「それならいいじゃない。貴方の甲斐性を見せるところよ」
「大人たちは一旦湯船に入って待ってるように。そのままでいたら風邪をひくぞ。ケイト、パメラを連れて行ってくれ。もう終わりだ」
ケイトがパメラの手を引いて湯船に向かっている中、ケビンは次の子供を洗ってあげるためにイスに腰掛けさせる。
「頭から洗うから目をちゃんと瞑ってるんだぞ。泡が目に入ったら痛いからな」
力強く目を瞑る子供をケビンは微笑ましく思いながら髪を洗っていき、頭が終われば体を洗ってあげて、どんどん流れ作業で子供たちを洗っていくのだった。
そこへ更なる乱入者たちが姿を見せる。
「あ、ケビン君が子供を洗ってあげてる」
「羨ましい……」
「ああ……緊張する……」
「うぅ……恥ずかしいです……」
「ふふっ、将来子供ができるとこんな感じなのね」
ケビンは声が聞こえて視線だけ向けると、そこには予想通りの面々が姿を現していた。
「ソフィたちも来たのか……」
「だってあなたと一緒にお風呂へ入りたいんだもの」
「それは別に構わないけどクリスさんやレティは大丈夫なのか? 無理やり連れてきてないだろうな?」
「本人の意思よ」
「それならいい。湯船に浸かって順番待ちしといてくれ」
「あら、私たちも洗ってくれるの?」
「ソフィたちだけ仲間外れにするわけにもいかないだろ」
「ふふっ、あなたのそういうところが好きよ」
「俺はソフィの全てが好きだけどな」
「私もあなたの全てを愛しているわ」
ケビンとソフィが2人の世界に入りつつある中、ティナが横槍を入れてソフィーリアを湯船へと引っ張っていく。
「もう、ソフィさんはラブラブしすぎよ」
「仕方ないじゃない。妻なんだから」
「うぅ……悔しい……」
「貴女たちだってもうすぐよ」
ソフィーリアは正妻の貫禄と余裕からか、ティナたちの嫉妬の行動に目くじらを立てることもなく澄まし顔で対応するのであった。
やがて子供たちを洗い終えたケビンは、順番待ちしている次の女性たちを呼び寄せていく。
「ケイト、順番だ」
ケビンに呼ばれたケイトは湯船から上がり近づくと、ふとした疑問をケビンに投げかける。
「ご主人様、奥様方を先にしなくてよろしいのですか?」
「何だその喋り方?」
「奥様方がいらっしゃいますし……」
ケイトの懸念を払うために、ケビンはすかさずソフィへと尋ねる。
「あぁ、なるほどな。ソフィ、ケイトが俺に奴隷っぽく接しなかったら怒るか?」
「怒るわけないでしょ? あなたが怒らない限り私が怒ることはないわ」
「だそうだ」
「貴方ってつくづく変わってるわね」
「それよりも洗うぞ。まだまだ順番待ちしている人がいるからな」
ケビンに促されたケイトが腰かけるとケビンは髪の毛から洗い出した。ケイトはされるがままであったが、唐突にケビンへ声をかける。
「ねぇ……」
「何だ?」
「いつかでいいから、私たちを抱いてね」
「いきなりどうした?」
「貴方との繋がりが欲しいの」
「首輪があるだろ?」
「これは外れてしまったらそこまでだわ。だから私たちの体に刻み込んで欲しいのよ」
「嫁さんたちの前でよくそんなことが言えるな。さすが女帝、肝が据わってる」
「もう……茶化さないで。貴方が子供たちを洗っている間に、ソフィーリア様たちには打ち明けたわ」
「はぁぁ……で、何て?」
「ソフィーリア様が貴方次第だって。貴方が嫌がるなら何をしてでも止めてみせるって言われたわ」
「そうか……それで繋がりが欲しい理由は?」
「貴方が去ってから本当はみんな不安だったの。1年以上も姿を見せないから本当は生活資金じゃなくて手切れ金で帰ってこないんじゃないかって。私たちは捨てられたんじゃないかって」
「それは去る前にちゃんと伝えただろ?」
「長く一緒にいたなら貴方の言葉も信じられたけど、一緒に過ごしたのって実質1日くらいでしょ? この首輪だけが唯一貴方との繋がりでこれが外れてしまえばなくなってしまうのよ」
そんなケイトの言葉を聞いて自然と手を止めてしまうケビンに、ケイトは続きを話していく。
「パメラ……あの子、毎日あなたの玉座を触りに行ってたのよ。貴方が座ってた場所だから。誰にも懐かずただ貴方との挨拶をするためにずっと待ち続けていたの」
「俺が帰ってきた時は1番に声をかけてきたからな」
「そうよ、頑張ってたでしょ? あの子が自分から近づくのは貴方だけなんだから」
「で、他の誰かではなくお前の気持ちは?」
ケビンにそう言われたケイトは黙ると、次第に嗚咽を漏らしながら自分の気持ちをケビンに打ち明けるのだった。
「……私は……貴方に抱いて欲しい……身分が違うのはわかってる……奴隷のくせにって自分でも思ってる……だけど、貴方のものだって確かな証が欲しいの……この体に俺のものだって刻み込んで欲しいのよ……ちゃんと貴方のものにして欲しいの……」
「はぁぁ……」
ケビンは溜め息をつきつつケイトの頭にお湯をかけると泡を洗い流し、溜め息が聞こえてしまったケイトは体をビクッとさせて、ケビンに拒絶されたと思い萎縮してしまう。
「……ごめんなさい……今のは忘れて。やっぱり奴隷は奴隷らしくあるべきだったわ。これからは全員に奴隷らしくするように伝えるから」
「ケイト、こっち向け」
ケビンの言葉は聞こえているものの、ケイトは肩を小刻みに震えさせているだけで振り向こうとはしなかった。
そんなケイトの体を掴んでケビンは強引に振り向かせると、ケイトの瞳からはお湯ではない雫が流れ落ちている。
「俺には妻がいるし婚約者もいる。妻は抱いたが婚約者たちはまだだ。その人たちを蔑ろにしてお前たちを抱くわけにはいかないだろ? わかるな?」
ケイトはケビンに言われたことを理解して僅かにコクリと頷くと、ケビンがケイトの顎に手を添えて上へ向かせる。
「だから今はこれで我慢しろ」
「んっ! ……」
ケビンが強引に口づけをするとケイトの瞳は見開かれて驚いていたが、次第に瞳を閉じてその身を委ねた。
やがて口づけが終わると、ケイトは最後の雫を瞳から流してケビンに尋ねる。
「……そのうち抱いてくれる……?」
「……そのうちな」
「きっとよ? でないとみんなで夜這いに行くから」
「それはよしてくれ。体が持たない」
それから笑顔を見せたケイトの体をケビンは洗い始めると、調子を取り戻したケイトが悪戯っぽくケビンに伝える。
「もっと念入りに洗ってもいいのよ?」
「あとがつかえてるんだ」
「ふふっ」
それから次の順番になるとケイトとのやり取りを見ていたのか、キスのオネダリをされてしまい、ケビンは体を洗い終えたあとに口づけを交わすことになる。
オネダリの成功者が出てしまうとあとに控えている女性たちも同じようにオネダリしてきて、結局ケビンは女性たちの要求に応えていくのだった。
ようやく半分以上は洗い終えたケビンに、疲れを吹き飛ばす癒しの人物がその姿を現した。
「よ……よろしくお願いします」
「ジェシカ……洗う前に触っていい?」
ジェシカは何を言われずともそれが何を指しているのかを理解して、久しぶりのご主人様の手を感じるためにコクリと頷き返す。
「ん……ふぁ……」
ケビンは久しぶりに触るジェシカの耳をこれでもかと言うほどに堪能していると、湯船からティナたちがその光景を眺めていた。
「本当に体じゃなくて耳へ興味がいってるわね」
「幸せそう」
「そんなに触り心地がいいのかな?」
「私も触ってみたいです」
「そういえば、私と暮らしていた時も最初は近くにいるだけだったけど、そのうち小動物たちと戯れるようになっていたわね」
「つまり、ジェシカは愛玩動物の立ち位置ってこと?」
「わからないわ。あの子は小動物ではないのだし」
そのようなティナたちを他所にケビンは堪能できたのか、ジェシカを洗い始めていた。
そして、ヘロヘロになっているジェシカへ終わりのキスをすると、ジェシカは顔を赤らめて湯船へと戻っていくのであった。
ケビンは準備が終わるとケイトに声を飛ばして、女性たちを全員謁見の間へ集合させるように伝えた。
その間にアルフレッド隊へ食事の提供と飲み物を差し入れして、今までの勤務を労うのであった。
ケビンが帰還したのを元々謁見の間にいた女性たちが広めたのか、待機していた女性たちはあっという間に集合して、ケビンへおめかしした服を披露していく。
ケビンも自分で言ったことは忘れておらず、そのことを踏まえて帰還の挨拶を始めるのであった。
「とりあえず、みんな元気に過ごしていたようで嬉しいよ。それに着飾った服でとても可愛いしね、本当に戻ってこれて良かったと思う。今日はここで夕食にしよう。好きなだけ食べていいからね、乾杯!」
ケビンの挨拶が終わると、女性たちは楽しく談笑しながら食事を進めていく。
ケビンは自分のテーブルに手を繋いで連れてきたパメラに声をかけた。
「パメラ、ここにいる人たちは酷いことしないから怖がらなくていいよ。ここで一緒にご飯を食べよう」
「……たべ……る……」
ケビンは椅子を引っつけてから横へパメラを座らせて自分も席に着くと、ティナが驚いた様子でケビンに問いかける。
「ケビン君、一体どんな魔法を使ったの? パメラちゃん、私たちがいると怯えだすのに」
「ん? 別に魔法は使ってないよ。普通に接してるだけ」
「もしかして……年下キラー?」
「それはない。少し前にソフィとステータスを見たけど、ガルフさんの言ったやつは何1つ付いてなかったから安心したよ」
「不思議……」
「ケビン様の優しさが伝わっているのです」
「ソフィ様は何かわかりますか?」
「クリス、様付けと敬語は禁止って話し合ったはずよ」
「す、すみません……つい……」
クリスはいつもの雰囲気はなりを潜めて、未だに目の前の神様に慣れていないようである。
「恐らくケビンの元々持ってる、この場合は魂の纏う雰囲気っていうのかな? それを感じ取っていると思うわよ。本質は優しい人だから、そういうのを見抜いているのじゃない?」
ソフィーリアはあえて“健”とは呼ばずに“ケビン”と呼ぶことにして、“健”と呼べるのは自分だけの特権にするつもりのようだ。
「私たちが避けられるのって本質的に優しくないってこと?」
「それはどうとも言えないわ……多分、身近な人で1番落ち着くのがケビンなのよ。子供が親に寄り添うような感じね」
「子供かぁ……確かに子供よね」
ティナの視線の先では、左手でしっかりとケビンの服を掴んだまま食事を摂っているパメラの姿があった。
ケビン自身もその行動に対して行儀が悪いと注意することもなく、パメラの好きにやらせていて特に気にしている風でもない。
そして和やかな雰囲気の中で食事は進んでいき、やがてお開きが近づいてくるとパメラがケビンに向かって声をかける。
「……お……ふろ……」
「ん? 風呂に入るのか?」
「……いっしょ……」
「じゃあ、風呂に行くか」
ケビンがパメラを連れてお風呂へ行く姿を、談笑していた周りの女性たちが目ざとく観察していた。
「ニーナ!」
「わかってる」
「クリス!」
「……私も……?」
「レティ!」
「は……恥ずかしいです……」
ティナは3人にそれぞれ呼びかけて意気込むが、未だケビンと一緒にお風呂へ入ったことのないクリスとスカーレットだけは恥ずかしがるのである。
「そんなに意気込まなくてもケビンなら怒らないわよ?」
「でも、パメラちゃんと一緒だから“もしかしたら”があるかもしれないし」
「それはないわよ。それに他の人たちはもう行ったわよ?」
ティナたちが意気込んでいる中、既に奴隷たちはそそくさとこの場を立ち去っており、ケビンの後を追いかけていたのだった。
「出遅れたっ!」
「不覚……」
「奴隷の人たちは躊躇いがないね……」
「凄いです……」
「さぁ、私たちも行きましょう」
出遅れてしまったティナたちを引き連れて、ソフィーリアはケビンの元へと向かうのであった。
一方その頃、パメラの体を洗ってあげているケビンの所へ次々と女性たちが押し寄せてきた。
「相変わらずだな」
「役得でしょ? あの頃とは違って貴方が照れている顔を見れただけでも満足よ」
「そりゃあ、感情も表情も戻ったしな」
「私たちは貴方のものなんだから気兼ねなく隅々まで見ていいのよ」
「臆面もなく言うなよ」
「それで、待っていればいいのかしら?」
「何をだ?」
「洗ってくれるのでしょ?」
「何故そうなった?」
「貴方がいない間はかなり頑張ったと思うのよ。そう思わない?」
「はぁぁ……奴隷らしさは何処へ行った?」
「貴方がそれを望まないじゃない」
「……わかった。そこで腰かけて待ってて」
ケビンは諦めと共に、ケイトへ押し付けていた仕事の頑張りへ報いるために指示を出したが、思いがけない方向へと流れていく。
「みんなぁ、ご主人様が体を洗ってくれるわよー。大人たちは小さい子から連れてきてー」
ケビンが驚いている中、ケイトの言葉を聞いた大人たちが小さい子を連れてきては並ばせ始める。
「ケイトだけじゃないのかよ……」
「パメラにしてあげてるんだから他の子にもしてあげないと可哀想よ。私たちの中での確執なんて望まないでしょ?」
「そりゃあな。みんな仲良くが基本だ」
「それならいいじゃない。貴方の甲斐性を見せるところよ」
「大人たちは一旦湯船に入って待ってるように。そのままでいたら風邪をひくぞ。ケイト、パメラを連れて行ってくれ。もう終わりだ」
ケイトがパメラの手を引いて湯船に向かっている中、ケビンは次の子供を洗ってあげるためにイスに腰掛けさせる。
「頭から洗うから目をちゃんと瞑ってるんだぞ。泡が目に入ったら痛いからな」
力強く目を瞑る子供をケビンは微笑ましく思いながら髪を洗っていき、頭が終われば体を洗ってあげて、どんどん流れ作業で子供たちを洗っていくのだった。
そこへ更なる乱入者たちが姿を見せる。
「あ、ケビン君が子供を洗ってあげてる」
「羨ましい……」
「ああ……緊張する……」
「うぅ……恥ずかしいです……」
「ふふっ、将来子供ができるとこんな感じなのね」
ケビンは声が聞こえて視線だけ向けると、そこには予想通りの面々が姿を現していた。
「ソフィたちも来たのか……」
「だってあなたと一緒にお風呂へ入りたいんだもの」
「それは別に構わないけどクリスさんやレティは大丈夫なのか? 無理やり連れてきてないだろうな?」
「本人の意思よ」
「それならいい。湯船に浸かって順番待ちしといてくれ」
「あら、私たちも洗ってくれるの?」
「ソフィたちだけ仲間外れにするわけにもいかないだろ」
「ふふっ、あなたのそういうところが好きよ」
「俺はソフィの全てが好きだけどな」
「私もあなたの全てを愛しているわ」
ケビンとソフィが2人の世界に入りつつある中、ティナが横槍を入れてソフィーリアを湯船へと引っ張っていく。
「もう、ソフィさんはラブラブしすぎよ」
「仕方ないじゃない。妻なんだから」
「うぅ……悔しい……」
「貴女たちだってもうすぐよ」
ソフィーリアは正妻の貫禄と余裕からか、ティナたちの嫉妬の行動に目くじらを立てることもなく澄まし顔で対応するのであった。
やがて子供たちを洗い終えたケビンは、順番待ちしている次の女性たちを呼び寄せていく。
「ケイト、順番だ」
ケビンに呼ばれたケイトは湯船から上がり近づくと、ふとした疑問をケビンに投げかける。
「ご主人様、奥様方を先にしなくてよろしいのですか?」
「何だその喋り方?」
「奥様方がいらっしゃいますし……」
ケイトの懸念を払うために、ケビンはすかさずソフィへと尋ねる。
「あぁ、なるほどな。ソフィ、ケイトが俺に奴隷っぽく接しなかったら怒るか?」
「怒るわけないでしょ? あなたが怒らない限り私が怒ることはないわ」
「だそうだ」
「貴方ってつくづく変わってるわね」
「それよりも洗うぞ。まだまだ順番待ちしている人がいるからな」
ケビンに促されたケイトが腰かけるとケビンは髪の毛から洗い出した。ケイトはされるがままであったが、唐突にケビンへ声をかける。
「ねぇ……」
「何だ?」
「いつかでいいから、私たちを抱いてね」
「いきなりどうした?」
「貴方との繋がりが欲しいの」
「首輪があるだろ?」
「これは外れてしまったらそこまでだわ。だから私たちの体に刻み込んで欲しいのよ」
「嫁さんたちの前でよくそんなことが言えるな。さすが女帝、肝が据わってる」
「もう……茶化さないで。貴方が子供たちを洗っている間に、ソフィーリア様たちには打ち明けたわ」
「はぁぁ……で、何て?」
「ソフィーリア様が貴方次第だって。貴方が嫌がるなら何をしてでも止めてみせるって言われたわ」
「そうか……それで繋がりが欲しい理由は?」
「貴方が去ってから本当はみんな不安だったの。1年以上も姿を見せないから本当は生活資金じゃなくて手切れ金で帰ってこないんじゃないかって。私たちは捨てられたんじゃないかって」
「それは去る前にちゃんと伝えただろ?」
「長く一緒にいたなら貴方の言葉も信じられたけど、一緒に過ごしたのって実質1日くらいでしょ? この首輪だけが唯一貴方との繋がりでこれが外れてしまえばなくなってしまうのよ」
そんなケイトの言葉を聞いて自然と手を止めてしまうケビンに、ケイトは続きを話していく。
「パメラ……あの子、毎日あなたの玉座を触りに行ってたのよ。貴方が座ってた場所だから。誰にも懐かずただ貴方との挨拶をするためにずっと待ち続けていたの」
「俺が帰ってきた時は1番に声をかけてきたからな」
「そうよ、頑張ってたでしょ? あの子が自分から近づくのは貴方だけなんだから」
「で、他の誰かではなくお前の気持ちは?」
ケビンにそう言われたケイトは黙ると、次第に嗚咽を漏らしながら自分の気持ちをケビンに打ち明けるのだった。
「……私は……貴方に抱いて欲しい……身分が違うのはわかってる……奴隷のくせにって自分でも思ってる……だけど、貴方のものだって確かな証が欲しいの……この体に俺のものだって刻み込んで欲しいのよ……ちゃんと貴方のものにして欲しいの……」
「はぁぁ……」
ケビンは溜め息をつきつつケイトの頭にお湯をかけると泡を洗い流し、溜め息が聞こえてしまったケイトは体をビクッとさせて、ケビンに拒絶されたと思い萎縮してしまう。
「……ごめんなさい……今のは忘れて。やっぱり奴隷は奴隷らしくあるべきだったわ。これからは全員に奴隷らしくするように伝えるから」
「ケイト、こっち向け」
ケビンの言葉は聞こえているものの、ケイトは肩を小刻みに震えさせているだけで振り向こうとはしなかった。
そんなケイトの体を掴んでケビンは強引に振り向かせると、ケイトの瞳からはお湯ではない雫が流れ落ちている。
「俺には妻がいるし婚約者もいる。妻は抱いたが婚約者たちはまだだ。その人たちを蔑ろにしてお前たちを抱くわけにはいかないだろ? わかるな?」
ケイトはケビンに言われたことを理解して僅かにコクリと頷くと、ケビンがケイトの顎に手を添えて上へ向かせる。
「だから今はこれで我慢しろ」
「んっ! ……」
ケビンが強引に口づけをするとケイトの瞳は見開かれて驚いていたが、次第に瞳を閉じてその身を委ねた。
やがて口づけが終わると、ケイトは最後の雫を瞳から流してケビンに尋ねる。
「……そのうち抱いてくれる……?」
「……そのうちな」
「きっとよ? でないとみんなで夜這いに行くから」
「それはよしてくれ。体が持たない」
それから笑顔を見せたケイトの体をケビンは洗い始めると、調子を取り戻したケイトが悪戯っぽくケビンに伝える。
「もっと念入りに洗ってもいいのよ?」
「あとがつかえてるんだ」
「ふふっ」
それから次の順番になるとケイトとのやり取りを見ていたのか、キスのオネダリをされてしまい、ケビンは体を洗い終えたあとに口づけを交わすことになる。
オネダリの成功者が出てしまうとあとに控えている女性たちも同じようにオネダリしてきて、結局ケビンは女性たちの要求に応えていくのだった。
ようやく半分以上は洗い終えたケビンに、疲れを吹き飛ばす癒しの人物がその姿を現した。
「よ……よろしくお願いします」
「ジェシカ……洗う前に触っていい?」
ジェシカは何を言われずともそれが何を指しているのかを理解して、久しぶりのご主人様の手を感じるためにコクリと頷き返す。
「ん……ふぁ……」
ケビンは久しぶりに触るジェシカの耳をこれでもかと言うほどに堪能していると、湯船からティナたちがその光景を眺めていた。
「本当に体じゃなくて耳へ興味がいってるわね」
「幸せそう」
「そんなに触り心地がいいのかな?」
「私も触ってみたいです」
「そういえば、私と暮らしていた時も最初は近くにいるだけだったけど、そのうち小動物たちと戯れるようになっていたわね」
「つまり、ジェシカは愛玩動物の立ち位置ってこと?」
「わからないわ。あの子は小動物ではないのだし」
そのようなティナたちを他所にケビンは堪能できたのか、ジェシカを洗い始めていた。
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