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第4章 新たなる旅立ち
第109話 大人の余裕?
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ふと目が覚めると、腕が柔らかい感触で包まれていることに気づく。視線をやると隣にはティナさんが寝ていた。
あれから翌日には、ティナさんが“養う”と言った言葉を実行するかのように、知らない間に俺がとっていた部屋を、キャンセルさせられてティナさんと相部屋になっていた。
さすがにその行動は予想外だったようで、ガルフさんたちは苦笑いを浮かべていたが、「ま、頑張れ」と言ってティナさんの行動を止めてくれはしなかった……
その日からはこんな感じで、一緒に寝ている。床に寝ようとしたら、凄い勢いで止められてしまったのだ。
そんな事を思い返しつつも、このままでは起きられないので、抱きつかれている腕を抜くことにした。
「ん……ぁ……」
もぞもぞと腕を動かしながら抜いていたら、艶めかしい声が漏れだした。
抜くためとはいえ、胸を触ったことは仕方がないと思う。そう、仕方がないのだ。
ベッドから脱出した俺は、着替えたあとに洗面を終えて、朝食のため食堂へ下りていくと、ガルフさんたち男メンバーと出くわした。
「おはようございます」
「おう」
「おはよう」
「ニーナさんはまだのようですね」
「うちの女共は寝起きが悪いからな。中々起きて来ないんだ」
「あぁ、確かに」
「まぁ、ケンはティナと一緒にいるから、そこら辺はわかってるか。ティナは1番の寝坊助だからな」
そんな会話をしていると、ニーナが食堂へとやってきた。
「おはようございます、ニーナさん」
「ん、おはよう」
そう言って半分目が開いてない状態のニーナが席につく。朝食のメニューは、パンとサラダとスープで簡単なものだった。ケンがそれを食べていると、ガルフから話しかけられた。
「俺たちは、ぼちぼちクエストに行こうと思っているんだが、ケンはどうするんだ?」
「まだお金はあるので大丈夫ですが、俺が行かないとティナさんは行かないですよね? 多分……」
「そうだな。あの様子を見ると、ケンから離れてクエストに行きそうにないが、仮にも養うと言った以上、どう行動するかはわからん」
「なんかすみません」
「ケンの責任じゃないさ。ティナのは押しかけ女房みたいなのがあるし。僕たちも止めなかった責任はあるしね」
「そう言って頂けると助かります」
「クエスト」
「そうだなぁ、ケンには悪いが一緒に来てもらえるか? もちろん身の安全は俺が保障する。と言っても、ティナが勝手に守りそうだけどな」
「クエストランクはどうするんですか?」
「Bランクを受ける予定だ。ケンに合わせてCランクでもいいんだが、そうなると、数をこなさないといけないからな。実入りのいいBランクにしようと思う」
「BとCじゃ報酬に差が出るんですね」
「そうだね。Cランクは、一般的に普通に強い冒険者っていう扱いかな。Bランクは、強い上級冒険者っていう扱いになるよ。Aランクはさらに強い上級冒険者で、Sランクは雲の上の人って感じだね。まぁ、各ランクでも、ピンキリだからその限りではないけどね」
「そうなんですか」
「ケンは知識不足」
うぐっ……ニーナさんに痛いところをつかれてしまった……
「ニーナさんって毒舌ですよね。子供相手でも容赦がない」
「うっ……ケンはCランクだから、子供であって子供でない。立派な大人」
ニーナのぶっ飛んだ論理に、ケンもこれ以上言っても仕方がないと、早々に諦めるのであった。
「それじゃあ飯も食ったことだし、ギルドにでも行ってみるか」
「ティナさんはいいんですか?」
「放っておけ。起きてこないあいつが悪い」
「ティナは寝坊助。改善すべき」
こうしてティナを除く4人で食堂を後にし、ギルドへと向かった。
「しっかし、何のクエストを受けるかねぇ」
「ワイバーン。お金たんまり」
「いやいや、Aランククエストな上に、このメンツじゃ厳しいだろ。他のパーティーも誘わないといけなくなる」
「この毒マジロはどうですか?」
「毒マジロねぇ。外殻が硬いから素材としてはいい値がつくんだが、防衛反応で、毒を噴出するのが厄介なんだよなぁ。そうなったら近接組は近づけなくて、後方担当の遠距離で勝負するしかなくなる」
「確かに厄介ですねぇ」
「これなんてどうかな? グレートブルの討伐」
「これはどんな魔物なんですか?」
「闘争本能に駆られている牛って感じかな? とにかく気性が荒く、目についたものは、たとえ格上相手でも見境なく襲いかかる。通称“バカ牛”とも言われているね」
「バカ牛。見境ない」
「でもパワーがあるのはもちろんのこと、俊敏性も高いから、たまに格上相手にでも勝ってしまうこともあるんだよ」
「大丈夫なんですか?」
「僕がタンクだから攻撃を防いだあとに、みんなで攻撃すれば討伐できると思うよ。それに、グレートブルの肉は美味いから、食べたいんだよね」
「美味」
「へぇ、それは食べてみたいですね」
ケンはどんな味がするのか想像していると、他のクエストも見ていたガルフが戻ってきた。
「ん? グレートブルの討伐か? あまりこれといっていいのもないし、ケンの実力がわからない以上、無難なやつにするか……」
受注するクエストが決まったことろで、準備をするために一旦宿屋へと戻った。
宿屋に戻ると、それぞれ準備のため部屋に戻ったのだが、未だ目を覚まさないティナさんがベッドにいた。
「ティナさん、クエストに行きますよ。いい加減起きてくださいよ」
「うーん……あと少し……」
「はぁ……」
ティナが朝起きないことは、ここ数日でわかってはいたが、これからクエストに行くのにどうしたもんかと、ケンは悩んでしまう。
とりあえずケンは、自分の準備をまず済ませることにした。
ケンは【無限収納】から王都で買った、動きやすいレザーアーマーを取り出して、身につけていく。
片手剣は、ゴブリンの上位種が持っていたものだと、今の身長に合わないので全て売り払って、その金で自分に合うものを新しく買ったので、それを取り出す。他にも道具屋ではポーション等を買い揃えたりもした。
一通り準備が終わって、再度ベッドに視線を移すが未だ起きてこない。ケンはベッドサイドに腰掛け、体を揺すりながら声をかけた。
「ティナさん、起きましょうよ。ガルフさんに怒られますよ」
「んー……」
「今日はクエストに行くから、起きないなら置いていきますよ」
「やー……起こしてー」
なんだこのダメダメっぷりは……この前までの、キリッとした感じがまるで嘘のようだ。
それほどまでに、気を許してくれているのなら嬉しくもあるが、早く行かないと本当に怒られそうだ。
「身体を起こしますから、起きてくださいよ」
両脇に手を差し込んで背中に回すと、そのまま手前に引き上げた。普通なら体格的に無理なんだが、ステータスにものを言わせた力技だ。すんなりと上半身を起こしたあとに、ティナへと声をかける。
「起きましたか?」
「ふぅ……仕方ない、起きよう……」
「これから出かけるんですから、早く準備してくださいね」
「どこに行くの?」
「クエストですよ。グレートブル討伐です」
「あぁ、あのバカ牛ね」
バカ牛の知名度が半端ない……
「それなら今日は、バカ牛のステーキが食べられるわね」
そう言って、いきなり服を脱ぎ出すティナに、ケンは慌てふためく。
「ちょっ……! いきなり何脱ぎ出してるんですか!? しかも下着つけてないし!」
「ん? 下は履いてるわよ? 上は寝てる時だと苦しくなるのよ。締め付けられるから」
急いで後ろを振り向きつつも、女の子事情を耳にしたケンであったが、そんなケンにティナが追い討ちをかける。
「それにそんなことを言いつつも、ケン君だってバッチリ見たじゃない。男の子ね」
「そりゃ見ますよ! ティナさん綺麗だし!」
半ばやけっぱちに開き直るケンにティナが答える。
「ふふっ、ありがと」
ケンがドアを見つめていると、不意に後ろから抱きつかれた。
「ちょっ! 何してるんですか!」
「キュンってしたから抱きついてるのよ。ケン君成分が足りないし」
「いや、柔らかいものが頭に当たってますから! 服着てください! 服!」
「ぁん……そんなに動いちゃダメよ。変な気分になっちゃう」
「ちょっと! いつもと違う声が聞こえたんですけどっ!」
「ケン君が動くからよ」
「無理言わないでくださいよ!」
しばらくの間そんなやり取りをしていたら、満足したのか普通にティナが準備をし始めた。
(はぁ……疲れた……何でこんなに疲れなきゃいけないんだ。久々のクエストを楽しむ予定だったのに……)
「さ、行きましょうか?」
先程の事がなかったかのように、普通にしているティナに、ケンはジト目を向けながらも、片手剣を腰に携え部屋を後にした。
「疲れた……」
ケンのその呟きは、誰の耳にも届くことはなかった……
あれから翌日には、ティナさんが“養う”と言った言葉を実行するかのように、知らない間に俺がとっていた部屋を、キャンセルさせられてティナさんと相部屋になっていた。
さすがにその行動は予想外だったようで、ガルフさんたちは苦笑いを浮かべていたが、「ま、頑張れ」と言ってティナさんの行動を止めてくれはしなかった……
その日からはこんな感じで、一緒に寝ている。床に寝ようとしたら、凄い勢いで止められてしまったのだ。
そんな事を思い返しつつも、このままでは起きられないので、抱きつかれている腕を抜くことにした。
「ん……ぁ……」
もぞもぞと腕を動かしながら抜いていたら、艶めかしい声が漏れだした。
抜くためとはいえ、胸を触ったことは仕方がないと思う。そう、仕方がないのだ。
ベッドから脱出した俺は、着替えたあとに洗面を終えて、朝食のため食堂へ下りていくと、ガルフさんたち男メンバーと出くわした。
「おはようございます」
「おう」
「おはよう」
「ニーナさんはまだのようですね」
「うちの女共は寝起きが悪いからな。中々起きて来ないんだ」
「あぁ、確かに」
「まぁ、ケンはティナと一緒にいるから、そこら辺はわかってるか。ティナは1番の寝坊助だからな」
そんな会話をしていると、ニーナが食堂へとやってきた。
「おはようございます、ニーナさん」
「ん、おはよう」
そう言って半分目が開いてない状態のニーナが席につく。朝食のメニューは、パンとサラダとスープで簡単なものだった。ケンがそれを食べていると、ガルフから話しかけられた。
「俺たちは、ぼちぼちクエストに行こうと思っているんだが、ケンはどうするんだ?」
「まだお金はあるので大丈夫ですが、俺が行かないとティナさんは行かないですよね? 多分……」
「そうだな。あの様子を見ると、ケンから離れてクエストに行きそうにないが、仮にも養うと言った以上、どう行動するかはわからん」
「なんかすみません」
「ケンの責任じゃないさ。ティナのは押しかけ女房みたいなのがあるし。僕たちも止めなかった責任はあるしね」
「そう言って頂けると助かります」
「クエスト」
「そうだなぁ、ケンには悪いが一緒に来てもらえるか? もちろん身の安全は俺が保障する。と言っても、ティナが勝手に守りそうだけどな」
「クエストランクはどうするんですか?」
「Bランクを受ける予定だ。ケンに合わせてCランクでもいいんだが、そうなると、数をこなさないといけないからな。実入りのいいBランクにしようと思う」
「BとCじゃ報酬に差が出るんですね」
「そうだね。Cランクは、一般的に普通に強い冒険者っていう扱いかな。Bランクは、強い上級冒険者っていう扱いになるよ。Aランクはさらに強い上級冒険者で、Sランクは雲の上の人って感じだね。まぁ、各ランクでも、ピンキリだからその限りではないけどね」
「そうなんですか」
「ケンは知識不足」
うぐっ……ニーナさんに痛いところをつかれてしまった……
「ニーナさんって毒舌ですよね。子供相手でも容赦がない」
「うっ……ケンはCランクだから、子供であって子供でない。立派な大人」
ニーナのぶっ飛んだ論理に、ケンもこれ以上言っても仕方がないと、早々に諦めるのであった。
「それじゃあ飯も食ったことだし、ギルドにでも行ってみるか」
「ティナさんはいいんですか?」
「放っておけ。起きてこないあいつが悪い」
「ティナは寝坊助。改善すべき」
こうしてティナを除く4人で食堂を後にし、ギルドへと向かった。
「しっかし、何のクエストを受けるかねぇ」
「ワイバーン。お金たんまり」
「いやいや、Aランククエストな上に、このメンツじゃ厳しいだろ。他のパーティーも誘わないといけなくなる」
「この毒マジロはどうですか?」
「毒マジロねぇ。外殻が硬いから素材としてはいい値がつくんだが、防衛反応で、毒を噴出するのが厄介なんだよなぁ。そうなったら近接組は近づけなくて、後方担当の遠距離で勝負するしかなくなる」
「確かに厄介ですねぇ」
「これなんてどうかな? グレートブルの討伐」
「これはどんな魔物なんですか?」
「闘争本能に駆られている牛って感じかな? とにかく気性が荒く、目についたものは、たとえ格上相手でも見境なく襲いかかる。通称“バカ牛”とも言われているね」
「バカ牛。見境ない」
「でもパワーがあるのはもちろんのこと、俊敏性も高いから、たまに格上相手にでも勝ってしまうこともあるんだよ」
「大丈夫なんですか?」
「僕がタンクだから攻撃を防いだあとに、みんなで攻撃すれば討伐できると思うよ。それに、グレートブルの肉は美味いから、食べたいんだよね」
「美味」
「へぇ、それは食べてみたいですね」
ケンはどんな味がするのか想像していると、他のクエストも見ていたガルフが戻ってきた。
「ん? グレートブルの討伐か? あまりこれといっていいのもないし、ケンの実力がわからない以上、無難なやつにするか……」
受注するクエストが決まったことろで、準備をするために一旦宿屋へと戻った。
宿屋に戻ると、それぞれ準備のため部屋に戻ったのだが、未だ目を覚まさないティナさんがベッドにいた。
「ティナさん、クエストに行きますよ。いい加減起きてくださいよ」
「うーん……あと少し……」
「はぁ……」
ティナが朝起きないことは、ここ数日でわかってはいたが、これからクエストに行くのにどうしたもんかと、ケンは悩んでしまう。
とりあえずケンは、自分の準備をまず済ませることにした。
ケンは【無限収納】から王都で買った、動きやすいレザーアーマーを取り出して、身につけていく。
片手剣は、ゴブリンの上位種が持っていたものだと、今の身長に合わないので全て売り払って、その金で自分に合うものを新しく買ったので、それを取り出す。他にも道具屋ではポーション等を買い揃えたりもした。
一通り準備が終わって、再度ベッドに視線を移すが未だ起きてこない。ケンはベッドサイドに腰掛け、体を揺すりながら声をかけた。
「ティナさん、起きましょうよ。ガルフさんに怒られますよ」
「んー……」
「今日はクエストに行くから、起きないなら置いていきますよ」
「やー……起こしてー」
なんだこのダメダメっぷりは……この前までの、キリッとした感じがまるで嘘のようだ。
それほどまでに、気を許してくれているのなら嬉しくもあるが、早く行かないと本当に怒られそうだ。
「身体を起こしますから、起きてくださいよ」
両脇に手を差し込んで背中に回すと、そのまま手前に引き上げた。普通なら体格的に無理なんだが、ステータスにものを言わせた力技だ。すんなりと上半身を起こしたあとに、ティナへと声をかける。
「起きましたか?」
「ふぅ……仕方ない、起きよう……」
「これから出かけるんですから、早く準備してくださいね」
「どこに行くの?」
「クエストですよ。グレートブル討伐です」
「あぁ、あのバカ牛ね」
バカ牛の知名度が半端ない……
「それなら今日は、バカ牛のステーキが食べられるわね」
そう言って、いきなり服を脱ぎ出すティナに、ケンは慌てふためく。
「ちょっ……! いきなり何脱ぎ出してるんですか!? しかも下着つけてないし!」
「ん? 下は履いてるわよ? 上は寝てる時だと苦しくなるのよ。締め付けられるから」
急いで後ろを振り向きつつも、女の子事情を耳にしたケンであったが、そんなケンにティナが追い討ちをかける。
「それにそんなことを言いつつも、ケン君だってバッチリ見たじゃない。男の子ね」
「そりゃ見ますよ! ティナさん綺麗だし!」
半ばやけっぱちに開き直るケンにティナが答える。
「ふふっ、ありがと」
ケンがドアを見つめていると、不意に後ろから抱きつかれた。
「ちょっ! 何してるんですか!」
「キュンってしたから抱きついてるのよ。ケン君成分が足りないし」
「いや、柔らかいものが頭に当たってますから! 服着てください! 服!」
「ぁん……そんなに動いちゃダメよ。変な気分になっちゃう」
「ちょっと! いつもと違う声が聞こえたんですけどっ!」
「ケン君が動くからよ」
「無理言わないでくださいよ!」
しばらくの間そんなやり取りをしていたら、満足したのか普通にティナが準備をし始めた。
(はぁ……疲れた……何でこんなに疲れなきゃいけないんだ。久々のクエストを楽しむ予定だったのに……)
「さ、行きましょうか?」
先程の事がなかったかのように、普通にしているティナに、ケンはジト目を向けながらも、片手剣を腰に携え部屋を後にした。
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