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第4章 新たなる旅立ち
第91話 家族会議①
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――カロトバウン家・別宅
未だ目が覚めぬケビンがベッドで寝ている中、リビングでは当事者たちが話し合っていた。
「それで、説明してくれるかしら?」
サラが子供たちに問うと、当事者のシーラが答えた。
「今日、ケビンのクラスでは、闘技大会の代表者を決めていたの。それで、カトレアって子がケビンの隣の席にいるんだけど、その子がケビンを出場させるために、何かいい方法がないか聞かれたの」
「そもそも、何故授業中にシーラはあそこにいたんだい?」
アインがそう尋ねると、バツが悪そうにシーラが答える。
「以前、カトレアに何か困ったことがあったら、相談に乗るって言ってて、呼ばれた気がしたからケビンのクラスに行ったのよ」
「授業中なのにかい?」
「うん……ケビンに会えると思ったから……」
「相変わらずケビンが絡むと見境が無くなるようだね。今回はそれが最悪な状態で裏目に出たようだけど」
アインの言葉は責めているようでトゲトゲしい。シーラもその事を理解しているので、何も言い返せずただ俯くしかできなかった。
「アイン、そんなに責めないの」
「でも母さん、シーラのやつがケビンに会いに行かなければ、今回の事は起こらなかったはずだぜ」
カインがすかさず追い打ちをかける。
「そうね、確かにそれはあるわ。でも今は、説明を聞いている最中なのよ? 責めるのは後にしなさい」
「わかったよ。シーラ、続きを話せ」
2人の兄から責め立てられる上に、サラからも肯定され針のむしろだったのだが、シーラは続きを話し始めた。
「それで……カトレアがケビンに、大会に出場するメリットを提示しろって言われたみたいで、何かないか聞かれたのだけれど、『ない』と答えたのよ。そうしたら、私を連れ戻すように言われた、ターニャが教室に入ってきたの」
「あぁ、あのシーラの知り合いで泣いていた子か」
「そこで話が逸れて、ケビンが魔法学以外の授業をサボってるってなって……」
「ケビンにしたら他の授業なんてつまらないんだろ。アイン兄さんでさえ、入試満点とか取れてないしな」
「そうだね。しかも聞いた話だと試験で1時間もしない内に、全部解いたらしいからね。まさに神童だよ」
2人が弟を絶賛していると、シーラが続きを話し始めた。
「ターニャがそれを聞いて、ケビンのことをSクラスに行ける実力だから仕方ないって言ったんだけど、ケビンはSクラスに行く気はないって答えて、そこからSクラスの悪いところをどんどん言っていったの」
「Sクラスの悪いところ? そんなのあったか?」
「ケビンが言ったのは、貴族のしがらみよ。例え話で、結局のところ素行の悪い侯爵家の者がいて、家格を盾にされたら歯向かえるやつは何人いるんだ? って、Sクラスであるプライドがそうさせているのか、元々そういうやつなのかはわからないけどって結論づけたの。Fクラスでそんな事をしても自分が惨めになるだけで、Sクラスだとそれが顕著に現れるから嫌なんだって」
「あぁ……確かにそれはあるな。思いもよらないところに目がいくな。俺は当たり前だと思ってしまっている部分があるから、そんなこと気にもしたことがないが」
「確かにそうだね。意識して周りを見ることは少ないけれど、言われてみれば確かにそうだよね。Sクラスはプライドの高い貴族が多いよ」
「そして、ターニャがそれでも食い下がって、Sクラスに行くべきだって言ったのよ。その食い下がった時に、誘拐事件でケビンが路地裏で誘拐犯を返り討ちにしたことを喋っちゃって」
「あぁ、あの全員死んでたやつか。あれはケビンが殺ったのか……誘拐犯も馬鹿だよな、相手の実力もわからないで襲っといて、返り討ちにあうとか救いようがないな」
「それでそのことをケビンが窘めたの。人のプライベートを無闇矢鱈に言うもんじゃないって。そんなことをしていたら嫌われるよって。それで、ターニャが泣き出したの。ケビンに嫌われたと思って」
「それがあの時の惨状だったのか」
「そう……ターニャが泣き出したから、私が女の子を泣かしちゃダメって言って、クラスの女子たちも段々とケビンを責めるような口調になっていって、それでケビンの様子が段々おかしくなって、いつもと違うと思って声を掛けようとしたら、『ふざけるなっ!』って怒らせてしまったの」
「改めて聞いても、反吐が出るな。やっぱり悪いのはシーラと女どもで、ケビンは全然悪くねぇじゃねーか」
「確かにね……ケビンを責め立てるのはお門違いだ。ターニャさんが泣いたのだって、自分勝手だし。ケビンに『ふざけるなっ!』って怒鳴らせるだけのことをシーラたちはしでかしたんだよ。僕は1度だってケビンが生まれてからこの方、怒鳴ったのは見たことがない。そんな優しいケビンを怒らせたんだ、シーラは深く反省すべきだね」
2人の兄にバッシングを受けていると、今まで黙って聞いていたサラが口を開いた。
「大体の事情はわかったわ。シーラ、貴女は反省しなさい。ケビンのことが大好きなのはわかるけど、大好きならそこは守ってやるべきだったわね。あの子が優しいからって何しても許されるわけじゃないのよ。ケビンだって1人の人間なんだから、許せることと許せないことがあるわ。今回は許せないことで怒った……つまり逆鱗に触れたのよ。そこは理解できてるかしら?」
「はい……責めたから……」
「そうね、理不尽よね? プライベートを晒された上に、勝手に泣き出した子のことで責められたのよ? 多分、謝れって空気になったのでしょ? 女である私から見ても反吐が出るわ」
「すみません……」
「謝るべき相手が違うわよ。あなたが謝らなければならないのはケビンよ。私に謝っても意味が無いわ」
シーラは自分以外から責められ、怒られて意気消沈した。今回のことで、もしかしたらケビンから嫌われるかもしれない……そう思うと自分がしでかした過ちが、とても大きなものだったと後悔するのであった。
「目覚めてるかわからないけど、ケビンの様子を見に行ってきます……」
「そうしなさい」
シーラはソファから立ち上がると、ケビンが休んでいる2階へと向かっていくのだった。
未だ目が覚めぬケビンがベッドで寝ている中、リビングでは当事者たちが話し合っていた。
「それで、説明してくれるかしら?」
サラが子供たちに問うと、当事者のシーラが答えた。
「今日、ケビンのクラスでは、闘技大会の代表者を決めていたの。それで、カトレアって子がケビンの隣の席にいるんだけど、その子がケビンを出場させるために、何かいい方法がないか聞かれたの」
「そもそも、何故授業中にシーラはあそこにいたんだい?」
アインがそう尋ねると、バツが悪そうにシーラが答える。
「以前、カトレアに何か困ったことがあったら、相談に乗るって言ってて、呼ばれた気がしたからケビンのクラスに行ったのよ」
「授業中なのにかい?」
「うん……ケビンに会えると思ったから……」
「相変わらずケビンが絡むと見境が無くなるようだね。今回はそれが最悪な状態で裏目に出たようだけど」
アインの言葉は責めているようでトゲトゲしい。シーラもその事を理解しているので、何も言い返せずただ俯くしかできなかった。
「アイン、そんなに責めないの」
「でも母さん、シーラのやつがケビンに会いに行かなければ、今回の事は起こらなかったはずだぜ」
カインがすかさず追い打ちをかける。
「そうね、確かにそれはあるわ。でも今は、説明を聞いている最中なのよ? 責めるのは後にしなさい」
「わかったよ。シーラ、続きを話せ」
2人の兄から責め立てられる上に、サラからも肯定され針のむしろだったのだが、シーラは続きを話し始めた。
「それで……カトレアがケビンに、大会に出場するメリットを提示しろって言われたみたいで、何かないか聞かれたのだけれど、『ない』と答えたのよ。そうしたら、私を連れ戻すように言われた、ターニャが教室に入ってきたの」
「あぁ、あのシーラの知り合いで泣いていた子か」
「そこで話が逸れて、ケビンが魔法学以外の授業をサボってるってなって……」
「ケビンにしたら他の授業なんてつまらないんだろ。アイン兄さんでさえ、入試満点とか取れてないしな」
「そうだね。しかも聞いた話だと試験で1時間もしない内に、全部解いたらしいからね。まさに神童だよ」
2人が弟を絶賛していると、シーラが続きを話し始めた。
「ターニャがそれを聞いて、ケビンのことをSクラスに行ける実力だから仕方ないって言ったんだけど、ケビンはSクラスに行く気はないって答えて、そこからSクラスの悪いところをどんどん言っていったの」
「Sクラスの悪いところ? そんなのあったか?」
「ケビンが言ったのは、貴族のしがらみよ。例え話で、結局のところ素行の悪い侯爵家の者がいて、家格を盾にされたら歯向かえるやつは何人いるんだ? って、Sクラスであるプライドがそうさせているのか、元々そういうやつなのかはわからないけどって結論づけたの。Fクラスでそんな事をしても自分が惨めになるだけで、Sクラスだとそれが顕著に現れるから嫌なんだって」
「あぁ……確かにそれはあるな。思いもよらないところに目がいくな。俺は当たり前だと思ってしまっている部分があるから、そんなこと気にもしたことがないが」
「確かにそうだね。意識して周りを見ることは少ないけれど、言われてみれば確かにそうだよね。Sクラスはプライドの高い貴族が多いよ」
「そして、ターニャがそれでも食い下がって、Sクラスに行くべきだって言ったのよ。その食い下がった時に、誘拐事件でケビンが路地裏で誘拐犯を返り討ちにしたことを喋っちゃって」
「あぁ、あの全員死んでたやつか。あれはケビンが殺ったのか……誘拐犯も馬鹿だよな、相手の実力もわからないで襲っといて、返り討ちにあうとか救いようがないな」
「それでそのことをケビンが窘めたの。人のプライベートを無闇矢鱈に言うもんじゃないって。そんなことをしていたら嫌われるよって。それで、ターニャが泣き出したの。ケビンに嫌われたと思って」
「それがあの時の惨状だったのか」
「そう……ターニャが泣き出したから、私が女の子を泣かしちゃダメって言って、クラスの女子たちも段々とケビンを責めるような口調になっていって、それでケビンの様子が段々おかしくなって、いつもと違うと思って声を掛けようとしたら、『ふざけるなっ!』って怒らせてしまったの」
「改めて聞いても、反吐が出るな。やっぱり悪いのはシーラと女どもで、ケビンは全然悪くねぇじゃねーか」
「確かにね……ケビンを責め立てるのはお門違いだ。ターニャさんが泣いたのだって、自分勝手だし。ケビンに『ふざけるなっ!』って怒鳴らせるだけのことをシーラたちはしでかしたんだよ。僕は1度だってケビンが生まれてからこの方、怒鳴ったのは見たことがない。そんな優しいケビンを怒らせたんだ、シーラは深く反省すべきだね」
2人の兄にバッシングを受けていると、今まで黙って聞いていたサラが口を開いた。
「大体の事情はわかったわ。シーラ、貴女は反省しなさい。ケビンのことが大好きなのはわかるけど、大好きならそこは守ってやるべきだったわね。あの子が優しいからって何しても許されるわけじゃないのよ。ケビンだって1人の人間なんだから、許せることと許せないことがあるわ。今回は許せないことで怒った……つまり逆鱗に触れたのよ。そこは理解できてるかしら?」
「はい……責めたから……」
「そうね、理不尽よね? プライベートを晒された上に、勝手に泣き出した子のことで責められたのよ? 多分、謝れって空気になったのでしょ? 女である私から見ても反吐が出るわ」
「すみません……」
「謝るべき相手が違うわよ。あなたが謝らなければならないのはケビンよ。私に謝っても意味が無いわ」
シーラは自分以外から責められ、怒られて意気消沈した。今回のことで、もしかしたらケビンから嫌われるかもしれない……そう思うと自分がしでかした過ちが、とても大きなものだったと後悔するのであった。
「目覚めてるかわからないけど、ケビンの様子を見に行ってきます……」
「そうしなさい」
シーラはソファから立ち上がると、ケビンが休んでいる2階へと向かっていくのだった。
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