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第2章 王立フェブリア学院 ~ 1年生編 ~
第66話 日常
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闘技大会も無事に終わり、学院もいつもと変わらぬ日常へと戻っていった。ケビンも相変わらずダラダラと過ごし変わらぬ日常を満喫しようとしていたのだが、変わったことが1つだけあった。
「それでは、午前の授業はここまでです」
チャイムがなるとジュディさんから終了の言葉が出る。この言葉と同時にケビンは隠蔽系スキルをフル稼働させた。
その瞬間、クラスの誰からも認識されず安全を確保したかに思えたが、いつもの如く徒労に終わるのだった。
(ガラッ)
教室のドアを開け放ち現れたのは、何を隠そうケビンの姉であるシーラだった。その後方には付き添いのターニャもいた。
「ケビン、お昼ご飯を食べるわよ」
そう言い放ち教室内に入って来るが、当の本人は逃げるためにコソコソと背を低くして見つからないように移動を開始していた。
「シーラ、ケビン君はいないようですわよ」
「いや、いるわ! お姉ちゃんセンサーがビンビンに感じているもの」
「何ですのそれは? ケビン君が絡むとなると貴女の威厳も無きに等しいですわね」
「そんなものそこら辺の魔物にでも食わせておけばいいのよ」
そう言って教室を見渡すシーラに対して、是が非でも見つかりたくないケビンは息を潜ませつつ移動を開始するのだった。
あと少しでドアに差し掛かろうとした瞬間、謎のお姉ちゃんセンサーにキャッチされてしまう。
「いたわっ! ケビン、お昼に行くわよ」
何故だ!? 何故いつも発見されてしまう? 隠蔽系スキルは確かに機能しているはずだ。現にターニャさんには効いていた。
「や、やあ、姉さん。今日も来たの?」
見つかってしまえば大して意味のないスキルは解除して、ケビンはシーラに受け答えする。いきなりドア近くに現れたケビンに周りは吃驚するのだが今構っている暇はケビンにはない。
「あら、ケビン君はそんな所にいましたの? 気づきませんでしたわ」
「その反応が正常なんですよ、ターニャさん。隠蔽系スキル全開なのに見つけられる方がおかしいんです」
「貴方も大変ですのね」
「お互い苦労しますね」
1人の人間に振り回されるという境遇を共感し、仲間意識が自然と芽生える2人なのであった。
「なに2人でわかりあってるのよ。ほら、行くわよ」
「ちなみに拒否権は?」
「え? ケビンはお姉ちゃんと一緒にいたくないの?」
ケビンから言われた言葉でシーラは今にも泣きだしそうな顔である。だが心を鬼にして言うしかないとケビンは決意する。
「偶には1人になりたいことだってあるし、ゆっくり過ごしたいから」
「う……」
「う?」
「うわーん。ケビンに嫌われたぁ」
ターニャに抱きつき泣き始めるシーラにその光景を見てたじろぐケビン。周りからはヒソヒソと話し声まで聞こえてくる。
(おい、あの氷帝が泣いているぞ)
(完全無敗の女帝が負けた……だと!?)
(氷帝を泣かすなんて、ケビン君は何者なの?)
「はぁ、仕方ないですわね。とりあえずケビン君、お昼に行きますわよ」
「あ、はい。ターニャさん」
(何者なんだ!? あの氷帝を負かしたケビン君を従えているぞ)
(彼女が真の支配者なのか!?)
(お姉さま……ぽっ)
若干1名変なのが混じっていたが、その場に留まっていては何を言われ続けるかわかったものではないので、ケビンはターニャの提案に素直に従ったのだが裏目に出たようだ。
1人ぐずるシーラを引き連れて、ケビンたちは教室を後にする。
「ぐすっ……」
「いい加減泣きやみなさいな。ケビン君が困っているでしょう」
「だって、ケビンが拒否するって……」
「仕方ないですわね。ケビン君、手を繋いで下さるかしら」
そう言われたので、俺はターニャさんの手を握る。
「いや、私じゃないですわ」
ん? 違ったのか? ターニャさんの顔を見上げてみるが違うらしい。
(なんていう破壊力なのかしら。首を傾げてそんな無垢な目で見られてはたまりませんわ。シーラが没頭するのも頷けますわね)
「ま、まぁ、この手はそのままでいいですわ。反対の手でシーラの手を握って下さる?」
そういうことか……反対の手で今度は姉さんの手を握る。すると、ピクっと反応したので声をかけてみる。
「姉さん、もう泣き止んだ?」
ケビンの問いに、満面の笑みでシーラが答える。
「ケビンの愛で私復活!!」
(いや、愛はないけど……)
「本当に手のかかる人ですわね。それじゃあお昼に行きますわよ」
「ねぇ……ターニャはどうしてケビンと手を繋いでいるの?」
「た、たまたまですわ」
「俺から繋いだんだよ。姉さんだって繋いでいるだろ。仲間外れは良くない」
「ケビンが言うなら仕方ないわね」
(ふぅ、何とか誤魔化せましたわ。まさか、ケビン君の上目遣いにキュンとしたなんて口が裂けても言えませんわね)
それから3人はカフェテリアへと向かうのだった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
3人が立ち去ったあとの通路では……
(今日もケビン君とお話ができなかった……)
柱の陰から1人の女性が様子を窺いながら、3人のやり取りを見ていた。何を隠そうクリス本人である。
傍から見たらただの変質者と疑われる勢いだが、学院の制服を着ているおかげで変な人がいるなぁぐらいにしか思われていなかった。
氷帝がいつも会いに来ているので、クリスは中々ケビンに声が掛けられないでいた。ケビン自体は既にクリスが来ているのは気配察知で理解していたが、面倒なので気づかないふりを続けていた。
そんなことも露知らずここのところは毎日通っているが、柱の陰から見守る程度で終わっていた。
本人にとっては至って真面目なのだが、周りにいるのは初等部の1年である。
後に《柱女》と不名誉な渾名が、クリスに対してついたとかつかなかったとか。この時のクリスはまだ知らない……
「それでは、午前の授業はここまでです」
チャイムがなるとジュディさんから終了の言葉が出る。この言葉と同時にケビンは隠蔽系スキルをフル稼働させた。
その瞬間、クラスの誰からも認識されず安全を確保したかに思えたが、いつもの如く徒労に終わるのだった。
(ガラッ)
教室のドアを開け放ち現れたのは、何を隠そうケビンの姉であるシーラだった。その後方には付き添いのターニャもいた。
「ケビン、お昼ご飯を食べるわよ」
そう言い放ち教室内に入って来るが、当の本人は逃げるためにコソコソと背を低くして見つからないように移動を開始していた。
「シーラ、ケビン君はいないようですわよ」
「いや、いるわ! お姉ちゃんセンサーがビンビンに感じているもの」
「何ですのそれは? ケビン君が絡むとなると貴女の威厳も無きに等しいですわね」
「そんなものそこら辺の魔物にでも食わせておけばいいのよ」
そう言って教室を見渡すシーラに対して、是が非でも見つかりたくないケビンは息を潜ませつつ移動を開始するのだった。
あと少しでドアに差し掛かろうとした瞬間、謎のお姉ちゃんセンサーにキャッチされてしまう。
「いたわっ! ケビン、お昼に行くわよ」
何故だ!? 何故いつも発見されてしまう? 隠蔽系スキルは確かに機能しているはずだ。現にターニャさんには効いていた。
「や、やあ、姉さん。今日も来たの?」
見つかってしまえば大して意味のないスキルは解除して、ケビンはシーラに受け答えする。いきなりドア近くに現れたケビンに周りは吃驚するのだが今構っている暇はケビンにはない。
「あら、ケビン君はそんな所にいましたの? 気づきませんでしたわ」
「その反応が正常なんですよ、ターニャさん。隠蔽系スキル全開なのに見つけられる方がおかしいんです」
「貴方も大変ですのね」
「お互い苦労しますね」
1人の人間に振り回されるという境遇を共感し、仲間意識が自然と芽生える2人なのであった。
「なに2人でわかりあってるのよ。ほら、行くわよ」
「ちなみに拒否権は?」
「え? ケビンはお姉ちゃんと一緒にいたくないの?」
ケビンから言われた言葉でシーラは今にも泣きだしそうな顔である。だが心を鬼にして言うしかないとケビンは決意する。
「偶には1人になりたいことだってあるし、ゆっくり過ごしたいから」
「う……」
「う?」
「うわーん。ケビンに嫌われたぁ」
ターニャに抱きつき泣き始めるシーラにその光景を見てたじろぐケビン。周りからはヒソヒソと話し声まで聞こえてくる。
(おい、あの氷帝が泣いているぞ)
(完全無敗の女帝が負けた……だと!?)
(氷帝を泣かすなんて、ケビン君は何者なの?)
「はぁ、仕方ないですわね。とりあえずケビン君、お昼に行きますわよ」
「あ、はい。ターニャさん」
(何者なんだ!? あの氷帝を負かしたケビン君を従えているぞ)
(彼女が真の支配者なのか!?)
(お姉さま……ぽっ)
若干1名変なのが混じっていたが、その場に留まっていては何を言われ続けるかわかったものではないので、ケビンはターニャの提案に素直に従ったのだが裏目に出たようだ。
1人ぐずるシーラを引き連れて、ケビンたちは教室を後にする。
「ぐすっ……」
「いい加減泣きやみなさいな。ケビン君が困っているでしょう」
「だって、ケビンが拒否するって……」
「仕方ないですわね。ケビン君、手を繋いで下さるかしら」
そう言われたので、俺はターニャさんの手を握る。
「いや、私じゃないですわ」
ん? 違ったのか? ターニャさんの顔を見上げてみるが違うらしい。
(なんていう破壊力なのかしら。首を傾げてそんな無垢な目で見られてはたまりませんわ。シーラが没頭するのも頷けますわね)
「ま、まぁ、この手はそのままでいいですわ。反対の手でシーラの手を握って下さる?」
そういうことか……反対の手で今度は姉さんの手を握る。すると、ピクっと反応したので声をかけてみる。
「姉さん、もう泣き止んだ?」
ケビンの問いに、満面の笑みでシーラが答える。
「ケビンの愛で私復活!!」
(いや、愛はないけど……)
「本当に手のかかる人ですわね。それじゃあお昼に行きますわよ」
「ねぇ……ターニャはどうしてケビンと手を繋いでいるの?」
「た、たまたまですわ」
「俺から繋いだんだよ。姉さんだって繋いでいるだろ。仲間外れは良くない」
「ケビンが言うなら仕方ないわね」
(ふぅ、何とか誤魔化せましたわ。まさか、ケビン君の上目遣いにキュンとしたなんて口が裂けても言えませんわね)
それから3人はカフェテリアへと向かうのだった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
3人が立ち去ったあとの通路では……
(今日もケビン君とお話ができなかった……)
柱の陰から1人の女性が様子を窺いながら、3人のやり取りを見ていた。何を隠そうクリス本人である。
傍から見たらただの変質者と疑われる勢いだが、学院の制服を着ているおかげで変な人がいるなぁぐらいにしか思われていなかった。
氷帝がいつも会いに来ているので、クリスは中々ケビンに声が掛けられないでいた。ケビン自体は既にクリスが来ているのは気配察知で理解していたが、面倒なので気づかないふりを続けていた。
そんなことも露知らずここのところは毎日通っているが、柱の陰から見守る程度で終わっていた。
本人にとっては至って真面目なのだが、周りにいるのは初等部の1年である。
後に《柱女》と不名誉な渾名が、クリスに対してついたとかつかなかったとか。この時のクリスはまだ知らない……
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