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第2章 王立フェブリア学院 ~ 1年生編 ~

第65話 闘技大会 ~代表戦~ おまけ②

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 映像が切り替わると、そこには代表戦が映し出されていた。1回戦は相手の不意をついてギリギリで勝利し、2回戦は引き分け。3回戦に至っては負けていた。

 ここまででも善戦はしているが、“それも”の理由には当てはまらない。

 そう思っていたら4回戦目にはあの少女が出てきた。試合が始まったら相手選手と親しげに会話をしていて知り合いなのかなと思っていたが、審判が試合が進まないことで注意を促すと何やら少女と言い合いになっていた。

 その後、我が目を疑った。少女の姿が消えたかと思ったら相手選手が倒れていたのだ。

 審判も何が起こったかわからず、少女に何か言われたようで苦虫を噛み潰したような顔で判定を下していた。

「この子滅茶苦茶強いでしょ? Fクラスにこんな子がいるなんてビックリしたわ。これを見た後じゃ総員戦の時は明らかに手加減していたのがわかるわね」

「何よ、この強さ……Aにいても不思議じゃないわよ」

 そんな驚きの中でも、モニターでは5回戦へと進むのだが会場が慌ただしくなっていた。

「どうしたの、これ? 騒がしくなってるけど」

「選手が出てこないのよ」

「ビビったんじゃないの? Fクラスなら仕方のないことね」

 モニターでは結局Fクラスの選手は出てこず、Eクラスの不戦勝になっていた。当然次の展開はサドンデス戦である。

 これであの少女が出てきてFクラスが勝つのだろう。だが、未だに“それも”と言った理由が分からない。

「これでサドンデス戦にあの少女が出てきてFクラスが勝利したのでしょ? それにしても“それも”の理由が分からないわ」

「あぁ……やっぱりその考えになっちゃうかぁ。みんなそう思ってるんだよね」

「何? 違うわけ?」

「まぁ、見てなって」

 試合はサドンデスとなり審判がFクラスの代表を決めるように促しているが、代表が中々決まらないみたいだ。てっきりあの少女が出ると思っていたがそうではないようだ。

 それから不戦敗が言い渡されようとした時に、乱入者が現れた。

「なっ!? 【氷帝】じゃない! 何でこんな所にいるの!?」

 未だ公式・非公式を問わず負け知らずの氷帝が、Fクラスの代表戦を観戦しているなんてありえない出来事だった。

「見てればわかるよぉ、絶っ対に驚くから」

 まさか氷帝が暇つぶしに1年の代表戦に出るとでも言うの? 代表選手が総掛かりでも勝てないのに。

 すると、氷帝がFクラスの方へと向かって行った。そして代表選手に謝っている内容が耳を疑うものだった。

「えっ? 家族!? Fクラスに氷帝の家族がいるの!?」

「そうだよぉ、それも弟君」

 氷帝が1人の生徒の所へ歩いて行く姿が映った。その瞬間、私の体に衝撃が走ったのだった。

「ケビン君!!」

「あれ? 知り合いだったの?」

「私が受付してた時に担当した受験生だよ。ケビン君が入学してたなんて……てっきり落ちてるだろうと思ってたのに。それよりも氷帝の弟だなんて……」

「この子面白いのよ。ずっと寝てて5回戦は不戦敗になったんだから。この時もまだ寝てるみたいだし、クラスメイトが呼びかけても起きないのよ」

 ケビン君が5回戦の代表選手だったなんて。でも、総員戦では姿を見てない気がする。

 代表戦の映像では氷帝がケビン君の耳元で何か囁いている姿が映し出されていた。その瞬間、目にも追えない速度でケビン君が飛び起きた。

「さすが家族よね。一発で起こしちゃうんだから」

 それから2人で何やら話していると、氷帝が少女の方を向き闘技場が大騒ぎになっていた。

「一体何が起こってるの?」

「聞いた話だと弟君の考えでは、サドンデス戦にはあの少女が出て勝利して終わってたっていう筋書きだったんだけど、出場を拒否したらしいのよ、あの少女が。それを聞いた氷帝がキレて威圧を辺り一面に振り撒いたらしいよ。それで闘技場内は阿鼻叫喚ってわけ」

 あの有名な【氷帝】の二つ名の元ともなった威圧をあそこでばら蒔いたの? あれはヤバいなんてもんじゃない。まともに動けた人は未だにいない絶対領域とも言える鉄板技だ。

「観戦に行った人たちは災難だったわね。巻き添えじゃないの」

 未だ阿鼻叫喚の地獄絵図が映し出されているモニターに、普通に何事もないように動いている生徒が映し出されていた。

「えっ? ケビン君、効いてないの?」

「そうみたいよ。弟君だけがあの時動いてたんですって」

 信じられない!? 氷帝の威圧を浴びて平然としているなんて……

「で、弟君が周りに迷惑かけちゃダメって言って、この場は収まったみたいよ」

「それ、ケビン君が言う?」

「あぁ……知り合いも心の中でツッコんだって言ってたわ。『お前が言うなよ!』って。氷帝が怖くて口に出せなかったみたいだけど。ずっと寝てて散々周りに迷惑かけてたからね」

「さすがはケビン君ね。マイペースすぎるわ」

「まぁ、見所はここからよ。まだ前座に過ぎないんだから」

「氷帝の登場が前座扱いってどんだけなのよ」

 映像ではサドンデスの代表選手はケビン君が務めるようだった。

「ケビン君が出るのね。勝てるのかしら?」

「それは見てからのお楽しみってやつだね」

「それにしてもケビン君、武器を持っていないように見えるんだけど」

「持ってないよ。素手で戦ったから。一応、審判も心配して武器を持つように言ったんだけど、本人がこのままでいいって言ったそうよ。その言い回しに相手選手は怒ってたそうだけど」

 映像では試合が始まった、と思ったら速攻で相手選手がコケていた。ケビン君は悠長に感想を述べてるし。

「開幕速攻でコケたわね」

「そうね。弟君がやったんだけど」

 それからも避けては転がして煽っての繰り返しで、対戦相手が可哀想に思えてきた。

「ケビン君凄いわね。未だに手を出していないわ」

「足と口は出してるけどねぇ」

 映像では確かに煽っているケビン君の姿が映し出されていた。それにしても煽り方が半端ない。相手に同情してしまう。

 そのような中で氷帝がケビン君に試合を終わらせるように伝えていた。ケビン君が考える仕草をしてるのが映し出されるが、相手の攻撃を見もせずに避けていた。

「物凄く相手を馬鹿にした戦い方ね。ここまで来ると鬼畜ね」

 とうとうケビン君が試合を終わらせるようだった。相手に右腕1本で勝負をつけると言い、右腕に注目させていた。

 かくいう私も、何が起こるのか気になって右腕に集中していた。

 次の瞬間にはケビン君を見失った。そして倒れる相手選手……4回戦と一緒で視界に捉えることが出来なかったのだ。

「何が起こったのか、わからないのだけど」

「そりゃそうだよ。誰にも見えなかったんだから」

「ケビン君って滅茶苦茶強かったのね。圧倒的じゃない」

「あの氷帝の弟君だよ? 弱いわけがない。結局、実力を隠して入学したって所だろうね。独自に得た情報によると本人はダラダラ過ごすのが好きらしいよ」

「ダラダラねぇ……そういえば、総員戦でケビン君を見てない気がするんだけど。参加してなかったの?」

「当たらずとも遠からずってところかな。参加はしたけど参加はしてないって感じだよ」

「訳がわかんないんだけど?」

「総員戦にはちゃんと参加してたよ。でも、戦闘には参加してない。もう1回見てみる?」

「見せて!」

 そして、再び総員戦の映像が再び流れ始めた。

「何処にいるのよ?」

「ここだよ」

 友人の指さした所には、旗にもたれかかって休んでる生徒が1人いた。

「もしかして、この生徒?」

「そうだよ。総員戦の最中はずっとこの状態で寝てるか話してるかだね」

 映像には確かに終始寝てるか話してるかの姿しか映っていなかった。これは見落とすはずだ。

「これで意味が分かったでしょ? 参加はしてるけど、(戦闘に)参加はしていないって」

「凄いわね。ダラダラ過ごすのがいくら好きでも、ここまでいくと呆れるしかないわね」

「それが許される実力者なんだよ」

「いい物を見せてもらったわ。ありがとう。あなたの闘技大会好きも偶には役に立つわね」

「偶には役に立つってなんなのさ。そこは普通に褒めようよ」

「ケビン君が入学してたこともわかったし、会いに行くわ!」

「会いに行くわけ? 受付しただけでしょ? 覚えてるわけないよ」

「お昼も一緒に食べたこともあるし大丈夫よ。それに入学したら会いに来てもいいって許可もらってるし、問題ないわ」

「ショタコン炸裂ね」

「ショタコンはその時に卒業したわよ。今はただの年下好きに路線変更したから」

「迷惑かけないようにね、氷帝が出てくるから。巻き添えはゴメンだよ」

「わかってるわよ」

 こうしてケビンの懸念材料だったもう1人の知られたくない人物に入学したことを知られてしまい、周りが慌ただしくなっていくのだった。
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