15 / 661
第1章 異世界転生
第11話 母は強し
しおりを挟む
あと気になることと言えばやはり高すぎるステータスだよな。何気にレベルは高いし、戦闘系スキルも高いな。絶対に一般的数値じゃない。それはAランク冒険者というワードが物語っている。
母さんってほんわかしているけど、実は武闘派か? 絶対零度の威圧は持ってるし。というか【威圧】スキルを持っていないのにどうやってやったんだ? 生身で出来るもんなのか?
日頃の様子から見ると全然武闘派には見えないんだが……まぁ、【猫かぶり】を使ってたなら日頃の様子も当てにならないか。
「ねぇ母さん、ステータスはこの数値が一般的なの?」
「それはねここを見てもわかる通り、昔は冒険者をやっていたのよ。冒険者っていうのはね、自由に冒険を楽しむ人たちのことよ。ギルドで冒険者登録をして悪いことするモンスターとかをやっつけちゃうの」
「へぇーカッコイイね」
「でしょ? それでね、Aランク冒険者にまでなったんだけど、お父さんと出会って寿退職しちゃった♡ 普通は冒険者と貴族なんて滅多に繋がりができないんだけどね。ある日暇つぶしで出かけていたらモンスターに襲われてる馬車を見かけてね、護衛の人もやられていたみたいだし、ちょっとした気まぐれで手助けしたの」
「もしかして、母さんがモンスターやっつけたの?」
「そうよ。当時は【瞬光のサラ】って二つ名がついていたの。素早さ重視の戦い方でね、盾も途中までは装備していたんだけど、敏捷が上がりだしてからは邪魔だったから装備しなくなったのよ」
「何で素早さ重視にしたの? 盾も外したら危なくない?」
「簡単なことよ。“殺られる前に殺ってしまえ!”よ。剣もね、普通のよりも細めの剣で素早く立ち回りができるようにしたの。威力は普通の剣に比べると落ちてしまうけど、そこは“塵も積もれば山となる”作戦ね」
そう楽しそうに語る母さんの微笑みは、戦慄を覚えざるを得ないものだった。この人には逆らっちゃダメだ。直感でそう感じるのだった。
考え方としては作戦も何もないのだが愚直に繰り返した結果、昇華されて類を見ない強さに至ったのだろう。二つ名がついたぐらいだし……天然なのか計算なのか判断に悩むところだ。
「で、そのあとにお父さんからお礼とか貰ってね、色々と食事とか付き合わされていたらプロポーズされたの。誠実で真面目な人だから私も嫌な気はしなかったし、玉の輿なんて滅多にできないからOKしちゃった。それからはお父さんの働いてるところを見ていたら段々とのめり込んじゃったの♡」
「でも、冒険者から貴族って大変じゃないの?」
「そうね。最初は大変だったわ。冒険者をやっていたから礼儀作法なんて知らないし、あの人が悪口を言われないように愛想を振り撒かなきゃいけないしで、物凄く大変だったの」
あぁ……それで【猫かぶり】のスキルを覚えたのか。【礼儀作法】よりもレベルが高いって……どんだけ地を出さずに頑張っていたのかがよくわかるな。
そんな時、ふとドアをノックする音がした。
「奥様、馬車の準備が整いました。出発は如何なされますか?」
話が途切れた時に来るなんてタイミングが良すぎるな。もしかして見計らってたのか?
「すぐ行くわ。待っててちょうだい」
「タイミングがバッチリだね」
「違うわ。話しのキリが良くなるのをドアの前でずっと待っていたのよ。気配がしたから来た時にはわかったわ」
そういえば【気配探知】のスキルも持ってたな。
「来たのはいつなの? 全然気がつかなかったよ」
「冒険者だった頃の話を始めた時だったかしら。私が冒険者をやっていたのは有名だから聞かれて困ることもないわ。それじゃあケビン、行きましょうか?」
「うん、母さん」
玄関を出ると1台の馬車が止まっていた。その傍らには執事と呼びに来てくれたメイド長もいる。メイド長はカレンといい、30代という若さでメイド長の座に君臨している。俺の評価は完璧超人だ。
「奥様、今日の御者は執事のアレスが就きます」
「そう、お願いするわね、アレス」
「はっ、かしこまりました」
そう答えるのは若者であるアレスだ。年齢は確か20代だった気がする。若いのによくできていると父さんが褒めていたのを聞いたことがある。
母さんが馬車へ向かうと、アレスが近づく。
「足元にお気をつけお乗り下さい」
そう言うとアレスは見事にエスコートをしてみせる。やはり父さんの言った通りのできる男だな。
母さんが乗ったあと次に俺が乗るのを確認すると、アレスは御者台へ向かった。
「では、奥様。行ってらっしゃいませ」
「行ってくるわ。その間、留守は任せたわよ」
馬車は静かに住宅街を駆けて行き、教会へ向かって出発するのであった。
母さんってほんわかしているけど、実は武闘派か? 絶対零度の威圧は持ってるし。というか【威圧】スキルを持っていないのにどうやってやったんだ? 生身で出来るもんなのか?
日頃の様子から見ると全然武闘派には見えないんだが……まぁ、【猫かぶり】を使ってたなら日頃の様子も当てにならないか。
「ねぇ母さん、ステータスはこの数値が一般的なの?」
「それはねここを見てもわかる通り、昔は冒険者をやっていたのよ。冒険者っていうのはね、自由に冒険を楽しむ人たちのことよ。ギルドで冒険者登録をして悪いことするモンスターとかをやっつけちゃうの」
「へぇーカッコイイね」
「でしょ? それでね、Aランク冒険者にまでなったんだけど、お父さんと出会って寿退職しちゃった♡ 普通は冒険者と貴族なんて滅多に繋がりができないんだけどね。ある日暇つぶしで出かけていたらモンスターに襲われてる馬車を見かけてね、護衛の人もやられていたみたいだし、ちょっとした気まぐれで手助けしたの」
「もしかして、母さんがモンスターやっつけたの?」
「そうよ。当時は【瞬光のサラ】って二つ名がついていたの。素早さ重視の戦い方でね、盾も途中までは装備していたんだけど、敏捷が上がりだしてからは邪魔だったから装備しなくなったのよ」
「何で素早さ重視にしたの? 盾も外したら危なくない?」
「簡単なことよ。“殺られる前に殺ってしまえ!”よ。剣もね、普通のよりも細めの剣で素早く立ち回りができるようにしたの。威力は普通の剣に比べると落ちてしまうけど、そこは“塵も積もれば山となる”作戦ね」
そう楽しそうに語る母さんの微笑みは、戦慄を覚えざるを得ないものだった。この人には逆らっちゃダメだ。直感でそう感じるのだった。
考え方としては作戦も何もないのだが愚直に繰り返した結果、昇華されて類を見ない強さに至ったのだろう。二つ名がついたぐらいだし……天然なのか計算なのか判断に悩むところだ。
「で、そのあとにお父さんからお礼とか貰ってね、色々と食事とか付き合わされていたらプロポーズされたの。誠実で真面目な人だから私も嫌な気はしなかったし、玉の輿なんて滅多にできないからOKしちゃった。それからはお父さんの働いてるところを見ていたら段々とのめり込んじゃったの♡」
「でも、冒険者から貴族って大変じゃないの?」
「そうね。最初は大変だったわ。冒険者をやっていたから礼儀作法なんて知らないし、あの人が悪口を言われないように愛想を振り撒かなきゃいけないしで、物凄く大変だったの」
あぁ……それで【猫かぶり】のスキルを覚えたのか。【礼儀作法】よりもレベルが高いって……どんだけ地を出さずに頑張っていたのかがよくわかるな。
そんな時、ふとドアをノックする音がした。
「奥様、馬車の準備が整いました。出発は如何なされますか?」
話が途切れた時に来るなんてタイミングが良すぎるな。もしかして見計らってたのか?
「すぐ行くわ。待っててちょうだい」
「タイミングがバッチリだね」
「違うわ。話しのキリが良くなるのをドアの前でずっと待っていたのよ。気配がしたから来た時にはわかったわ」
そういえば【気配探知】のスキルも持ってたな。
「来たのはいつなの? 全然気がつかなかったよ」
「冒険者だった頃の話を始めた時だったかしら。私が冒険者をやっていたのは有名だから聞かれて困ることもないわ。それじゃあケビン、行きましょうか?」
「うん、母さん」
玄関を出ると1台の馬車が止まっていた。その傍らには執事と呼びに来てくれたメイド長もいる。メイド長はカレンといい、30代という若さでメイド長の座に君臨している。俺の評価は完璧超人だ。
「奥様、今日の御者は執事のアレスが就きます」
「そう、お願いするわね、アレス」
「はっ、かしこまりました」
そう答えるのは若者であるアレスだ。年齢は確か20代だった気がする。若いのによくできていると父さんが褒めていたのを聞いたことがある。
母さんが馬車へ向かうと、アレスが近づく。
「足元にお気をつけお乗り下さい」
そう言うとアレスは見事にエスコートをしてみせる。やはり父さんの言った通りのできる男だな。
母さんが乗ったあと次に俺が乗るのを確認すると、アレスは御者台へ向かった。
「では、奥様。行ってらっしゃいませ」
「行ってくるわ。その間、留守は任せたわよ」
馬車は静かに住宅街を駆けて行き、教会へ向かって出発するのであった。
18
お気に入りに追加
5,277
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる