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第54話  騎士団に受かるには

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 その顔に冗談とは書かれておらず、自ら選択して決心したことだと、言葉の強調からしてわかった。

 王国騎士団に入りたいというのは、私もなんとなく察していた。
 剣が強いユリクがこれだけ剣の練習をしていれば予想がつく。

 けれどユリクは一度試験の際に団長に断られたはずだ。

 断られたあと猫の姿に変えられて、私のところに来たわけだけど……。

 私がそのことを話すと、ユリクは顎に手をあてて耳を垂らし、うーんと唸った。

「もっと強くなって、団長より強くなれればいいんだよね……。誰かに教わることができればいいんだけど……」

 確かにユリクを罵倒した団長より強くなれれば、入団試験に合格して騎士として国を守ることができるだろう。

 でも……。

「王国騎士団に入れたら、この店はどうするの?」

 騎士団に入ったら『カナメ喫茶』を二人で営業するのは難しくなるだろう。
 まだ入れるとは限らないけど、もし騎士団に入ったら王宮に泊まりこみだってあるだろうし、そうなったらいちいちこっちに戻るのは面倒くさい気がする。

 いや、王国騎士団なら王都に住んでいないといざというときに陛下を守れない。

 なら、ユリクが王国騎士団に入ればこの店は、私一人でやっていかなければならない。

 一人で経営していくのは難しい。
 そしたら、『カナメ喫茶』は……。

「……」

 不安に思って下唇を噛んでいると、ユリクがふっと笑った。

「大丈夫、もし受かってもカフェは継続できるようになんとかするよ」

 視線を下げている私の頭にぽん、と掌を乗せて優しく撫でた。

 ユリクの手が心地よくて、振り払わずしばらく撫でられる体勢になる。
 ユリクの手は安心するなぁと思いながら、王国騎士団について考えていた。

 獣人はこの村では認められ始めている。私が獣人のユリクと一緒に店を開き、獣人と人間の交流を大事にしているからだ。

 でも王都はどうだろう。きっとさっきの考え通り、差別は色濃く残っているはずだ。

 なら逆に考えると、ユリクが王国騎士団に受かり、入団を認められれば……。
 獣人を差別する人は王都でも少なくなるかもしれない。

 ユリクが王国騎士団の入団を認められるには、現団長に受け入れられる必要がある。

 ——もっと強くなって、団長より強くなれればいいんだよね……。誰かに教わることができればいいんだけど……

「あ……!」

 頭の中にある人がぽっと思い浮かんだ。

 あの人なら、ユリクを教えられるはず。
 いつの間にか私の頭から離れていたユリクの手を、ぎゅっと握った。

「ユリク、行くよ!」
「え……行くってどこに?」
「王都!」

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