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※第三十三話「好きな人と」

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 そのまま貪るようなキスが繰り返されて、甘い匂いがたくさん俺の中に入りこんでくる。
 キスだけで俺の後ろはぐずぐずで、早く欲しいと愛液を垂らして強請っていた。

「……ん……はぁ……っ、ん……っ」

 息ができなくて苦しい。キスをするのだって高築が初めてで、こんな激しいキスもしたことがない。
 舌を絡めとってきつく吸われたり、上顎をそっとなぞられたりして、びくびく震えてしまう。

 高築ってばこんなのどこで覚えたんだって反抗したくなったけど……今はそんなのどうでも良かった。
 『運命の番』のアルファは、それだけでこんなにオメガを気持ちよくさせてしまうのだろう。

「ん……」

 シャツを脱がされて、ズボンも下着と一緒に下ろされる。
 下着は俺の愛液でべっとり濡れていて、オメガってこんなに濡らすんだ、と羞恥で高築から下着を奪いとろうとした。
 でもひょいっと交わされて、そのままラグの上に置かれてしまう。

「俺のキスでこんなに濡らしてくれたの? ……嬉しい」
「あ……っ!」

 高築からちゅ、ちゅと全身にキスされる。
 首にも鎖骨にも、胸にも、足にも。
 高築が唇を押しつけているだけなのに、全部敏感に拾ってしまって、その快楽が後孔と中心に集中する。
 俺の陰茎ははちきれそうなくらいに勃っていて、腹が先走りで汚れていた。

「こんなに濡れてるなら……大丈夫かな」
「……んぁっ」

 秘所に指を一本入れられて、唐突な異物感に変な声が出る。
 俺の中で指が動いているのがわかって、怖くなってぎゅっと目を瞑りシーツを掴んだ。

 今までの発情期中は前しか弄っていなかった。
 自分を慰めるためだけに後ろを弄るのが、淫乱みたいで怖かったからだ。

 高築だって俺の前しか弄らなかった。
 でも今は躊躇うことなく窄まりに指を入れて、ぐにぐにと触ってくる。
 ……今日は今までのペッティングのようなものじゃない。
 するんだ。セックスを。

「臼庭。ごめんね、怖い?」

 高築の不安そうな声が聞こえて、恐る恐る目を開けた。
 高築が俺の中を弄りながら、眉尻を下げて心配そうにこちらを見ている。
 見られているのが恥ずかしくて、たまらず腕で顔を隠した。

「は、初めてだから……優しくしてくれないと、やだ」

 遠くで高築の唾を飲む音が聞こえた。
 腕の隙間から覗くと、高築が髪をかき上げて何かに堪えるような表情で俺に近づいてくる。

「そんな煽るようなこと言わないで。めちゃくちゃにしたくなっちゃうから」

 そのとき見た高築の顔は、今から俺をぐちゃぐちゃに犯すという雄の顔で、ぞくっと背筋が痺れた。
 ……そんな表情も良いと思うなんて、俺はどうかしてる。

 しかもさっきは優しくしてくれないと怖かったのに、そんな風に見られたらめちゃくちゃにされてもいいかなんて思ってる自分がいる。

 ……アルファにすぐに絆される、オメガの自分が浅ましい。
 でも、不思議とこの自分を嫌いになることはなかった。

「んっ……あぁ……っ!?」
「ここ?」

 指が増やされる中で、ある一点を一本の指が掠めた。
 そこは全身がびりびり痺れるところで、わけがわからないくらい気持ちがいい。

「あっ、あ……! だめ、そこばっか……っ!」
「そうだね、気持ちいいね。可愛いよ、臼庭」

 性感帯ばかり虐められて、身体がびくびく跳ねる。
 蠢く指がそこをしっかり捕えて、押し潰されたり擦られたりすると嬌声が漏れ出る。
 男の喘ぎ声なんて良いものじゃないのに、高築は可愛い可愛いと足や内ももに口づけていた。

「はあっ、ぁ、高築、前も、触って……っ!」
「イきたいの?」
「うん……っ」

 いつまでもイけない快感がもどかしくてこくこく頷くと、ゆっくり指を引き抜かれる。
 中に入っていたものが抜けて、なんで、と責めるように睨むと、高築は前を寛げ始めた。

「じゃあ……俺のでイってくれる?」
「高築の……?」
「そう。臼庭の前も弄るけど、これで中たくさん突いてあげるから、それでイって?」

 高築が下半身に身に着けていたものを全部剥がした。そこから、中心が現れる。
 俺のものより大きくて太い立派なそれは、腹につきそうなくらい勃起し、血管が脈打っていた。
 そこから甘い匂いがしてきて、自然と息が浅くなる。

 挿れてほしい、高築のそれでめちゃくちゃにされたい、高築にたくさん突かれて達したい。
 そんな思いで頭の中がいっぱいになって、まともな思考ができなくなる。

「ほしい……っ、早く、俺の中に挿れて……!」

 高築の特別甘い匂いに酔って、自分じゃ一生言わなそうな台詞まで言ってしまった。
 高築がそっと俺の蕾に逸物を宛がって、ぬぷ、とゆっくり入ってくる。

「臼庭、ちょっと入ったよ。痛い?」
「は……ぁ……っ、く、くるし……っ」
「ごめんね。俺、普通の人より大きいんだ。息をゆっくり吸って、吐いて。……大丈夫だからね、臼庭」

 髪を優しく撫でられて、擽ったい。
 指なんかじゃ比べものにならないくらいの質量が入ってきて、ゆっくり息をしろって言われても無理な話だ。
 苦しくて内臓が押し上げられる感覚に呻きそうなのに、どうしてか嬉しい。
 高築ともう少しで繋がれる喜びと幸福感が、この辛さを消し去ってくれる。

「は……っ、ま、まだ……?」
「あともう少し」

 媚肉を押し広げられて、ゆっくり高築の欲望が入りこんでくる。
 ぐいっと足を開かされて、さらに奥へと進んできた。
 俺の中に全部入ってほしいと、僅かに腰を揺らしたらずぷっと入り、茂みが太ももにあたった。

「あ……っ」
「全部入ったよ。えらいね、臼庭。よくできたね」

 頭を撫でられて甘やかされ、思わずその手に頬を擦りつける。
 熱くて、高築も興奮しているというのがわかった。

 ……ああ、高築と繋がれたんだ。
 充足感と幸福感でいっぱいで、頭の中がふわふわする。
 さっきまで欲しくて堪らなかったもので、中が満たされている。

「たか、つき……っ」
「……臼庭。ずっとずっと、こうしたかった……っ」

 唇にキスされる。
 高築と視線が絡むと、彼は水面みたいに目尻に涙を溜めて、でも精一杯笑っていた。

「好きだよ。臼庭」
「……うん。俺も……」

 自然と高築の背中に腕を回してしまう。

 発情期なんて大嫌いで、オメガなんてくそくらえって思っていたのに。
 今は全然そんなこと思っていなくて、高築を受け入れられて、高築の匂いを感じ取れるオメガで良かったなんて感じてる。
 なんで俺、こんなに単純なんだろう。

「臼庭、動いてもいい? 正直、限界……」
「うん、動いて……っ。あっ、あ、あぁ……っ!」

 腰を掴まれて浮かされ、ずんずん抽挿が開始される。
 ときどき奥まで穿たれて、そのたびに全身に痺れが走り、愛液がとろとろと滑り落ちていく。
 前も弄られて、絶え間ない刺激に口から唾液が零れた。
 俺の媚肉も愛液も高築の欲に絡みついて、離さない。

「あっ、ん……っ、ん、はぁっ、んぁ……っ!」
「臼庭、臼庭……」

 生理的に出てくる涙で滲んだ視界で、高築が余裕なさそうに腰を振っているのが見える。
 いつも笑ってばかりで、俺の悪態も軽く流すくらい余裕があるのに。
 このときだけは余裕のない表情をして、その顔は俺だけしか見ることのできない特権だと思うと、きゅうっと高築を締め付けてしまった。

「……っ! 臼庭、締めすぎ……」
「だ、だって、高築が、そんな顔するから……っ! あ……っ!」

 奥をがつんと突かれて、その快感に自然と舌が出てしまう。
 気持ちいい、気持ちいい。それしか考えられない。
 次第に律動が激しくなっていって、身体が大きく揺さぶられる。

「はぁっ、あ、ああ……! そ、んな、激しくされたら、イっちゃう……!」
「イって。俺も、イきそうだから……」
「あっ、ん、あ、あ! き、きもちい……っ、イくっ! イっちゃ……っ」

 高築の背中に回していた手に、ぎゅっと力がこもる。
 爪を立ててしまっているけれど、でもそのくらいしがみつかないと辛い。
 中をこれでもかってくらい抉られて、前立腺を何回も何回も押し潰される。

「イ……くっ! ぁっ、あぁ―――!」

 快楽の波が全部中心に集中して、そのまま精が放たれた。
 精液は俺の腹を白く汚して、びく、と身体が動けば残りのものがぴゅっと飛び散る。
 それと同時に中に温かいものが溢れ出して、ああ、これは高築のものだ、と感じると嬉しくなって腹をさすった。

「あったかい……」

 その温かさに埋もれたまま、ふっと目の前が真っ暗になって、俺は意識を手放した。
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