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型破りな王子はお年頃

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レイ、こと、シルバレイ・ファラメルンは、小さい頃から魔力が桁違いに人より多かった。

ファラメルン王家の一族は男系で、生まれてくる子は全て魔法の才能に長けている。

その上、漏れなく大地の加護に恵まれるのだ。王家には、いにしえの頃から代々誓わせられる、緑の教典と呼ばれる呪文がある。この土地を護り、争いを起こさず、力に溺れず弱き者を助け、国を豊かに平和に維持しろ、要はそんな内容の経典は王家の者が誓いから外れた行動をとると、その者から加護の力が無くなる。生まれた時から加護はあるが、この誓いを唱え、経典の教えを守って生きてゆくと、加護がどんどん強くなるのだ。

ファラメルン王家の血筋の者は一人でも、その才と優れた運動能力で騎士小隊一部隊ほどの戦闘能力がある、と周りの諸国からは恐れられている程だ。
 
その中でもレイは格別だった。

幼い時から力があったレイは、その力を制御することを学び、好奇心の塊で熱心に何にでも興味を示した。
ある時、レイはおやつを食べ終わると城の裏庭に飛び出し、小さいながらも身体能力強化を使って湖まで元気に走って行った。

今日は先生に習った、空中に氷を作る練習をする。

就学年齢にはまだ達しておらず、弟たちも幼すぎて一緒に遊ぶ事は出来ない。退屈だったレイは、家庭教師が作って見せた、氷を作る魔法に魅せられ、空中に氷を固定することに成功して、椅子がわりに座って見せ、先生に褒められた。

今度は階段みたいに、上に氷を登っていこう。

思いついて実行したはいいが、直ぐに部屋の天井に届いてしまい、今度は外で試して見た。

ところが、高いところは広い場所で登っていくと、下を見た途端思ったより怖くて竦んでしまい、うっかり、つるん、と足を滑らした。
どこからか伸びてきた蔓草つるくさが足首に巻きつき、ブラン、と空中にぶら下がった幼いレイ。
大地の加護が無ければ、危うく大事故になるところだったのだ。

父上と母上にこってり怒られたレイは、念の為と靴に特別な滑り止めを付けてもらい、あまり無理に高い所に登らなくなった。が、今度は、上がダメなら、氷の上を橋のように渡るなら、怖くないんじゃないか、と思いついたのだ。
こうして何度か試して見て、飛び石のように、ぴょんぴょん、と氷のブロックを飛び回ることを覚えると、ただ庭で飛び回るのがつまらなくなり、今度は湖の上を氷で渡って見よう、と思いついて、おやつを食べた後、実行する事にした。

氷のブロックで水の上を渡るのは、小さいレイには勇気が要る出来事だった。
泳ぐ事はできるが、それでもやっぱり揺れ動く青い水の上は、チョッピリ怖い。最初の数日は湖のほとり付近で遊んでいたが、だんだん慣れてくると、湖の中まで氷のブロックを使って飛んで行けるようになった。

ある時、こうして遊んでいるうちに、城の城壁の外に出てしまった事にもレイは気付かず、そのまま、いつの間にか王家の所有である公園まで湖を渡って歩いてゆき、流石に疲れたので湖のほとりに戻ろうとした。

あっ、しまった!

後、もう一歩、という最後の最後でバランスを崩し、レイは湖に、どっボンと物の見事に頭から落ちてしまった。

加護のおかげで水草のクッションの助けを借り泳いで縁に辿り着いたはいいが、服はびしょ濡れ、だ。
冷たく重い上衣を、失敗した、くっしゅん・・・レイはゴソゴソ脱ぎ出した。

髪から雫をぽとぽと垂らしてびしょ濡れの幼いレイを、王家所有の敷地内にある孤児院から遊びに出ていた子供達が偶然見つけた。
迷子と間違えられたレイは、親切な子供達に孤児院に連れて帰られ、そこで服を貸して貰った。

この時、レイの面倒を見てくれた年長の男の子達とレイは仲良くなり、遊び相手を見つけたレイはこの日から毎日、湖を使って城壁の外に出て、その子たちと遊ぶようになったのだ。

金糸の髪にエメラルドの瞳、天使のような可愛らしい容姿で湖から遊びにくる不思議な小さなレイを、子供達は面白がって仲良く遊び、レイは自分が知っている魔法を教えたりして、どんどん孤児院の子供たちと仲良くなっていった。その中でも、レイはわりかし魔法の才能が他の子よりあった、イゼルとジュノやその仲間達と仲良くなり、皆で公園の中を元気に駆け回って遊んだ。

孤児院の院長や大人達はレイが王子であることを知っていたが、王家からも、遊び相手が出来てレイが楽しそうなので、宜しく、との言葉を賜り、身分に関係なく接するレイは可愛がられた。子供達の間ではもちろん、レイは、ただのレイで、なんでも知っている、魔法の使える、楽しい遊び相手だった。

就学する年になってレイは、孤児院の子達が通う一般の学校に一緒に通いたい、と言いだした。
貴族の子弟が通う学園の入学を嫌がったので、レイの学習が既にかなり進んでいた事も有り、主に貴族の子弟が通う学園に通学すると特別扱いされた挙句、周りから浮いてしまうことを懸念した王様と王妃様は、レイの願いを叶えてやった。

こうしてレイは、授業が簡単すぎた時にはこの問題集をする事、と渡された特別問題や本を読みながら、普通に孤児院の子達と一緒に街の学校に登校したのだ。

学年が上がり大きくなって、レイの身分を知ると態度が変わる子達も出て来たが、仲の良い子達は相変わらずだった。

しかし、高等教育課程においてそのままみんな一緒にという訳にはやはりいかず、進路がそこで皆と別れた。
レイの勉強が進みすぎていた為、研究者達が通う学園に入学する事になっても、しかし相変わらず仲良く、それぞれの勉強や斡旋してもらったバイトの合間にも、遊び、と言いながらもレイと魔法や剣の訓練に加わり、いつの間にかスキルを磨いた成長した子供達。
将来はレイの為に、国の機関の一般採用試験合格を目指す、と言う子達がその中から結構出て来た。

この頃、既にある程度国政や軍事に関わっていたレイは、彼らの申し出を嬉しく思った。

貴族の子弟の様に余計な繋がりや義理立がなく、能力が有ってレイと国への忠誠心だけで動いてくれる人材を、貴重だ、と認識して、父上や母上にも理解して貰い、合格と同時にそれぞれの能力に合わせて色々な国の機関に取り込んだ。
取り分け、市政の情報を重視したレイは、戦闘能力がある程度あって諜報活動が出来る仲間達に騎士と同じ身分を与え、王太子の部隊、として任務に当たらせた。

こうして、国や市政の動向をいち早く掴み治安や軍事に役立て、元来のやり方に加えて、より、国を安定させていくレイを人々は親しみを込めて、型破りな王子、と呼んだ。

この頃にはレイの加護は王族の誰よりも強く、幸運の女神に微笑まれるような強運にも恵まれていた。
有事には采配を取るだけではなく、自ら動いて、大ごとになる前に未然に防いで物事を片付けてしまう。
そんなレイを王は好きにさせている。

兄弟の中でも理知的なラトこと、シュラト王子は、その賢い頭脳で兄のやり方を支持し、自分は貴族達の調停役となって兄を支えた。そして、何時迄いつまでも身を固めないレイを王や王妃よりも心配していた。

容姿に優れて堂々とした態度のレイは、舞踏会でも男女問わず圧倒的に人気があったが、めったに最後まで出席する事はせず、ある程度、義理責任を果たすとサッサと仕事が忙しい、と退席してしまう。
国外から近隣諸国の年頃の姫を招いても、どんな美人や綺麗な令嬢に迫られても、一向に興味がない様子だった。

「そんな事より、今度のアズロン連邦の問題は厄介だ。十中八九、イリスかマリスの仕業だろうが、証拠がない事にはどうにもできん。」

突然原因不明の病気で倒れた、母である王妃の容態。万病に効くと言われる伝説のルナデドロップであれば、或いは、即治る可能性がある、医者や研究者達の見解が一致した。
王妃の体の心配をしたレイはそれを聞いて、王国一の魔法騎士である自ら自身で、魔の森に伝説の魔草を取りに行く事を即決した。

「大丈夫だ。陸路を取らず、イファラからは海路でハテまで一気に海軍の船で進む。まあ、天候によるが、この季節だ、運が良ければ二週間も掛からずハテに着ける。帰ってくるまでの一月ほど、後は任せたぞ、父上、ラトにノア。」
「アズロンに悟られない様に、秘密裏に事を運ぶ必要があるにしても、幾ら何でも、お前一人では無茶だ。」
「そうですよ長兄、せめていつもの護衛の二人を連れて行ってください。我らは大地の加護があるとはいえ、不死身ではないのですよ。」
「そうだよ兄さん、いくら兄さんでも、魔の森に一人は危険だ! ましてや、何処に生えているかもわからない魔草なんて、どうやって探すの?」

親兄弟の心配を他所に、レイはあまり心配はしていなかった。何故か、これが最良の方法だ、と確信出来たのだ。

「心配するな。イゼルやジュノによると、ハテでは、普通に魔の森で狩をして暮らしているらしい。魔物の生息地で暮らすなど、ここでは考えられない話だが、きっと魔草の自生地に詳しい者もいるはずだ。」
「・・・まあ、あそこはちょっと特殊な村ですからね。その情報が確かなら、思ったよりスムースに事が運ぶかもしれません。」
「そうじゃな、お前には強運の女神がついていることだしなぁ。よし分かった。留守の間、アズロン連邦への対応は保留としよう。最悪、妃の具合を口実にすれば、返事を延ばし延ばしに出来るじゃろう。」

こうして、側近のイゼルとジュノを伴って、レイは初めて訪れるハテの村、そして魔の森に、幻の万能魔草ルナデドロップを採集する旅に出発したのだ。





その娘は、今まで見たどんな女性よりも、生き生き溌剌はつらつとしていた。

秘密裏にことを運ぶ為、村人がまだ寝ているであろう夜明け前の早朝に、ハテの村に続く海岸に海軍の偵察船で乗りつけた三人は、早速、村の娘に見つかってしまった。

「離して!」

そう叫んだ娘の、煌めく朝日に照らされたスラリとした姿。
その姿をあらためてよく見たレイは、生まれて初めて女性を見て、ドクン、と胸の鼓動が高まるのを感じた。

なんて、魅力的な娘だ・・・

健康そうでしなやかな肢体、海風に踊る豊かで艶やかな髪に、神秘的で、見ていると吸い込まれそうな青紫の瞳、キスをされるのを待っているような可愛らしいピンクの唇。

思わず被ったマント越しに一瞬見とれたレイだが、イゼルに村長への面識確認した途端、その娘が魔法をくり出すのを素早く察知した。

無詠唱、それもなんて魔力の量だ! こんな娘、見たことない!

驚きと好奇心で、何度もその娘をジロジロと見てしまう。

漆黒の髪にこの瞳の色、これは今、問題になっているアズロン連邦からの移民か? それにしても、こんなハテの村で? 

まさか、アズロンからの密偵では? 

こんな世間から取り残されたようなハテの村にいるような村娘には、どう見てもその優美な姿は見えない。だいたい、アズロンからの移民は、港町イファラの周辺に住み着くことが多い。

そして、決定的な瞬間がやってきた。ティア、と名乗ったその娘は、宮廷式のお辞儀を、なんとも自然に優美な動作で披露したのだ。

面白い。この娘、アズロンのいずれかの国の貴族の出身に違いない。

そう確信したが、こちらも秘密裏で動いている最中、迂闊な事は言えない。
そうして、ハテの村長に紹介してもらったその娘の親代わりだというスウとジンを見て、敵ではないかも知れない、と思い始めた。目にしっかりとした忠誠心と親切心が現れたその二人は、訓練されたキビキビした動作をしており、その見慣れた動きに、元騎士の出身であろう事は容易に伺われた。
その二人が魔の森で狩をして生活を立てており、今朝会った娘も、魔の森を案内出来るという。

魔の森で、狩をして生活が出来る程の腕がありながらハテの村で暮らすというこの現状、これはどこかの貴族のお家騒動での亡命かも知れん。密偵の線は薄くなったな。

レイの予想を裏付けるように、ティアは、魔の森で早速出逢った凶暴な魔物を恐れもせず、現状を打開するために自ら囮となった。
歳若い娘にとって、これはいくら腕に覚えがあるとて、並大抵のことではない。
知り合って間もないレイを助ける為に、レイが止める間も無くあっという間に状況判断して走り出したティア。経験豊富なハンターなら魔物の恐ろしさは身にしみて分かっているはず、余程の度胸があってもなかなか取れる行動ではない。

そして、会話から窺われる、しっかりした知識と教養の豊かさ、金品に囚われない寛大な態度。
国と国民の役割にも通じており、しっかりした政治倫理が備わっている。

初めて見た時からティアの生き生きした様子に心惹かれていたレイは、益々強くティアに惹かれていく、が、自分は一国の王太子、迂闊な行動は起こせない。

それでも、この娘をもっと知りたい。

幸い知り合ったばかりの二人きりの旅では、話題はごく自然にお互いのことになる。
ティアの人柄を少しづつ知っていったレイは、夜も更けて眠る頃にはティアに対する警戒心は一欠片も残っていなかった。

なんと、ティアは水の精霊の加護持ちだったのだ。

精霊の加護持ちは滅多にいない。
気難しい気性の精霊に気に入られる事はファラメルンでは名誉な事だ。
ティアの活き活きとした、苦境にも負けない精神、それでも何処か純粋さを感じさせる性格は、水の精霊に気に入られるのも納得だった。

そして翌朝、早朝の湖で偶然朝早くに目が覚め、ティアの本当の姿が目に入った時、レイは、はっきり自分が恋に落ちた、と自覚した。

なんという、美しさ、まるで女神のようだ・・・

湖から戻ってきたティアに気づかれないよう寝たフリをしながら、先ほど目に入ったティアの美しい姿に心の底から、ティアが欲しいという欲望が湧き上がってくる。
我慢出来ず、衝動に駆られてティアに触れてみれば、ティアは、何も知らない無垢な乙女、無邪気な女神だった。

なんて、愛しくて可愛いんだ! 

レイの心に、歓喜と、強い独占欲が湧き上がる。

ティアは自分の為に用意された娘だ。

決めた! ティアが何者でも、絶対俺の花嫁にする。

スヤスヤと無防備に自分のそばで眠るティアを見て、レイは固く決心をした。

ティアを自分の城に連れてゆき、花嫁として父上や家族に紹介するのだ。
母上の容態も気になる事だし、こうなったら一刻も早く城に帰ろう。

こうして、ルナデドロップを手に入れた晩、レイは、やっと、長い間待ち続けた自分の花嫁に巡り会えた幸せな気分で、ティアを抱いて眠りについた。

次の日から、将来の花嫁に自分が触れる事に慣れて貰おうと思い立ち、加護の弊害を用心して、嫌がられた時の為魔法を封じてティアに触れたが、ティアは全く嫌がらず、むしろティアの身体は敏感にレイの愛撫に反応した。

よし、これなら・・・恥ずかしそうにレイに触れるティアに愛の兆しを感じ、レイは喜んでティアに愛の喜びを教えてゆく・・・・・

それからも、旅を続けるうちに、ティアには驚かされてばかりだ。
無邪気に披露した誘惑の踊り。あんな迫り方をされたら、どんな男でも、否とはいえないだろう。

だがティアの、この無邪気な可愛い姿を他の男に見せる訳にはいかない。ティアは俺だけのものだ。

いきなり強く湧いた独占欲さえ楽しんで、腕の中のティアが、どんどんレイのキスに慣れていくのが愛しくてしょうがない。思ったよりずっと早く、加護の弊害というハードルも軽く超えてティアは可愛くレイの腕の中で鳴いてくれる。

・・・ティアの出生は気になるが、その滲み出る気品から高貴な生まれなのは確かだし、身分も釣り合うのだから、貴族達の賛成も得られるだろう、と思えた。

だが、ティアがあっさりミドルの街でレイと別れようとした時、レイの心に、一抹の不安がよぎった。

今までは、国の大事な任務を担っている為、レイは身分を隠していた。

しかし、ティアの身分が確かなものなら、生まれがファラメルン王国でないティアは、もしかして、自分がこの国の王太子だと打ち明けたら、その荷の重さや国同士の繋がり、そして自国の責務を理由に自分の求愛を断るかもしれない。

ティアも俺を好いてくれている。心が傾いているのは加護の弊害がなくなったことからも明らかだ。

だが、もし、そこに政治的な要素や将来この国を担う責任が加わったら、ティアは俺に付いてきてくれるだろうか?

レイが愛して止まないティアの青紫の瞳を見つめ、レイは生まれて初めて、愛あるが故の不安感にとらわれた。

・・・大丈夫だ、ティアの愛情は確かだ。俺はそれを大事に育てる。こうなったらなるだけ一緒に過ごして、自分やファラメルンの良さをもっと知ってもらおう。

かなり強引なのは自分でも分かっていた。

だけど、ティアは本当に嫌がってはいない。
ティアの実力を正確に把握しているレイは、それだけは確信しながら、ティアは照れているのだ、と教えられてから、成る程、女心とは難しいものだなぁ、とも思うが、自分は自分のやり方でティアを愛するまでだ。

そんな時、偶然にも、歳で体力がないせいか、痺れを切らした術者がもっと強力な呪いをかけたのか、王妃の容態が急変した。

苦しんでいる母上には悪いが、これは城に帰ってティアを迎える準備をする絶好のチャンスだ。

大急ぎで王城に先に飛んで帰り、採集したルナデドロップを首を長くして待っていた主治医に渡すと、花嫁にしたい娘がいることを家族に打ち明けた。

「! シルバレイ、お前、それは本気なのか?」
「長兄、その娘はアズロンの出身なのですよね? 本当に間者ではないのですか?」
「絶対に間者などでは無い。確かに魔法も戦闘能力も高いが、俺の大地の加護も警戒していないし、ティアは水の加護持ちだ。単なる偶然だ。」
「・・・まあ、恋は盲目と言いますし、長兄は本能で行動する人ですしね、きっとそれなりに魅力的な娘なのでしょう。しかしながら、やはりこの目で確かめるまでは全てを信じるわけには参りませんね。」
「そうだよ、兄さん。幾ら何でも、不自然すぎない? こんなタイミングでアズロン出身の貴族の娘だなんて。その上、ハテの村で暮らしていて、腕っ節もいい、魔の森で狩をして生活している娘って、一体どんなだよ・・・」
「まあ、皆が不安に思うのも分かる。俺も最初は疑ったからなぁ。だが、ティアに会ってみれば分かる。彼女は陰謀からは程遠いところにいる。正義感が強く、倫理観もしっかりしている。とりあえず、父上とラトは会ってみてくれ。話してみれば絶対納得する。それに、俺がちょっとしたテストで、ティアが間者などでは無い、と証明して見せよう。」
「兄さん! なんで僕だけ、仲間はずれ?」
「ノアは駄目だ。お前はまだ結婚していないし、婚約者は国外だ。年齢も近いし、ティアに会って、変な気になられたら困る。」
「ちょっと兄さん、それは酷くない? 幾ら何でも、人の恋人を取ったりしないよ、僕。」
「お前にその気が無くても、ティアを一目見たら、気が変わるかもしれん。現に俺を見ろ、その気なんか、全然無かったのに任務中にこのザマだ。」
「・・・・・」

こうして、自分は身分を隠して求愛中なので、皆もレイの身分をバラさないように、頼み込んだ。

「何故身分を隠すんです? 王太子だと打ち明ければ簡単に手に入るのでは?」
「反対だ。ティアは絶対かなり高貴な生まれだ。ティアの責務を優先して、逃げられる、というか断られる可能性がある。それに俺たちの間に政治的要素を入れたくない。政略結婚だと思われるのは不本意だ。そうならないよう、打ち明ける前に結婚を承諾させる。」
「・・・それって、かなり詐欺なのでは?」
「大丈夫だ。彼女は賢い。そう思われないよう、体裁を整えて、愛を育てる。知り合って間もないしな。」
「・・・まあ、なんだ、お前の好きなようにするがよい。型破りなお前が、珍しく体裁を気にしているのだ。本気なのだな。」

ティアが王都に到着した、とイゼルから連絡が来て、待ちに待った花嫁の到着にレイの心は踊る。
思った通り、ティアと会見した王とラトは、すぐにレイに賛成してくれた。

「成る程な、お前が気に入った訳がわかった。ティアならば素晴らしい王妃になるじゃろう。」
「そうですねえ、あの気品に加えて堂々とした態度、美しさ。咄嗟の状況判断も見事でした。目先の欲にも囚われないようですし、物事の本質を見る目もしっかりしている。何よりあの強さ! 女性なのにうちの警護の騎士よりよっぽど腕が立ちますね。素晴らしい。」
「・・・僕も、会って見たいんだけど・・・」
「ああ、長兄の言う通りだ、お前は、もうちょっと会わない方が良いかもな。なにせ、ものすごい美人だ。お前にその気が無くても、長兄の心配する気持ちはわかる。心の平和のためにも今はやめておけ。」
「・・・・・結局僕はお預けなんですね・・・」

ノアの不満以外は、ティアへの ’ファラメルンのお城にようこそ’ 作戦は順調に運んだ。
レイはティアの為に、湖のほとりの湖畔の館を二人の住居と決め、できるだけティアと一緒に過ごし、二人の愛情を深めていった。

ところが、目を覚まして調子を取り戻した母上に、レイは耳に痛いお説教を食らうことになる。

「レイ、お前の強引さには、ほとほと呆れます。それにあなた達もです。ティアさんが身分の確かな方であれば、ご家族の了承を得るのが筋というもの。ファラメルン王家の名誉にかけて、駆け落ちの真似事まねごとなどさせてはなりません。求愛するなら、その方のご家族の了承をちゃんと得るのです。いいですね!」
「・・・・・」

そしてすぐに、ティアの身元がイゼルとジュノの働きによって判明した。

「マリス公国、マリス大公の一人娘だと! 確かか?」
「ああ、この耳でしっかり聞いた。名前までは流石に漏らさなかったが、自分たちの姫がこの国に亡命していると。」

なんと、ティアはマリス公国の王女だったのだ!

高貴な生まれだとは思っていたが、自分と立場が同じ位の姫! 身分はもちろん釣り合うが、ティアはそうなると、王位継承権第一位の立場にいる。

まずい、非常にマズイ、これはやはり彼女のご両親に会って了解を得なければ、ティアは俺との結婚を承知してくれないだろう。

その上、現時点でのアズロン戦況は、マリス大公がイリスをもうすぐ全面降伏させる、というところまできていて、イリスを追い詰めてはいる。だが、あと一歩、というところで神殿の力が強いイリスに粘り強く色々妨害されて、なかなかイリスの王室を降伏をさせる事に難儀しているようだ。

よし、イリスの神官の言葉も気になるし、ここは膠着状態の戦況を変える為にも、俺が参戦して、サッサと内戦を収めよう。さすればマリス公国、しいてはマリス大公とのティアの結婚についての話し合いを有利に進めることが出来る。

ものすごく私情が入った理由で、レイは参戦を決めた。

勿論、レイが参戦してマリスを勝利に導けば、アズロン連邦の平和にも繋がるし、国益にもなる事は承知の上だ。レイの考えに、王も、宰相であるラトも、財務担当であるノアも賛成してくれた。

「マリスに恩を売っておけば、商業ギルドから引き出した、倉庫に眠っている昨年の小麦などを格安でマリスに譲って今年の豊作に備える、というコチラの思惑交渉がしやすくなります。品質には問題がないのですから、マリスにとっても悪い話ではないはずですが、手持ちのカードは多いに越した事はありません。兄上、ちょっとイリスまで行って、内戦収めて来てください。」

財務のことになると、人が変わるノアに軽く激励されて、レイは魔道具の卵に乗ってイリスへ出発した。
勿論出発前ティアには、帰ったら婚約発表に結婚だ、としっかりずっしり釘をさし、意思確認もしておいた。

期限は二週間、帰ったら、即、婚約発表だ。

卵の運転の為に側近のイゼル、ジュノの凸凹コンビ二人を従えて、前から下調べしておいた通りに、一気にイリスまで転移を実行した。卵の説明によると、ここ何千年かスリープ状態でいた上、この間の嵐の落雷でたっぷり充電したので、あと何百年かはフル稼働で動けるらしい。

『この攻撃ボタンを押すとどうなる?』
『目標物をミクロ単位の塵にすることが可能です。緑龍の聖剣と同じ機能です。攻撃デモを見ますか?』

ああ、前に、大口クロコを塵にしたやつだな、アレの大型版だと思えばいいか。さて、どうやって、攻めるのが一番手っ取り早いか?

卵のデモで、スイッチを押した後の照準の合わせ方などの手順を、ここでターゲット、ロックオンです、という小竜の説明ごと頭に入れながら、レイは暫し熟考する。

イリスの強みは神殿の神官が味方している事、ならばその神殿を無くしてしまえば、心の拠り所を無くしたイリスに、降伏を迫れるかもしれない、そう考えたレイは転移してみて驚いた。

敵地への殴りこみにすぐ飛べるよう翼を広げたまま転移したのだが、イリスの神殿の転移門は神殿近くの広場に設置してあった。
その広場に沢山の神官と思われる前にも見た事がある白いローブを被った者達が、大きな輪を作って何やら呪文を唱えているど真ん中に、卵が、デン、と大きく翼を広げて出現したのだ。
何やら大きな魔法陣が地面に書いてあり、どうやら大魔術を実行しようとしていたらしいが、レイ達の乱入で魔法陣は壊れ、魔法の暴発反動で殆どの神官がすでに事切れていた。
レイは卵から出て、一段高い所にいた神官らしき、まだ息のあった酷く痩せた年寄りに事情聴取をした。

自分は大神官だ、と名乗ったその男によると、イリスは戦力がもう底をついたので、神殿の最大の守り手と言われる神獣、竜を召喚しようとしたらしい。

「しかし、術は成功しませんでしたが、代わりに伝説であった竜の卵の飛行船と、その乗り手である竜王様であられる貴方様を呼び出すことは出来た。これで、イリスは安泰です。」
「? 悪いが俺は、その’竜王’とやらではないぞ。俺はファラメルン王国の王子シルバレイ・ファラメルンだ。」

交渉をしやすくする為にも、本名で戦勝した方が有利だ。レイは、剣を抜くと、逃げる事は許さんとばかりに大神官とやらの前で構えたが、男はその剣を見るなり平伏した。

「何を仰ります。その、竜王である証の、聖剣をお持ちである事が何よりの証拠。竜王家の家紋が入ったその剣を私が見違える訳がありません。」
「・・・だから、お前の勘違いだ。俺はイリス王を降伏させる為に参戦した。決してイリスに助太刀するつもりはない。我が名はシルバレイ・ファラメルン、ファラメルン王国の第一王子だ。」
「・・・竜王様は、我がイリス王を竜王家の一門とは認めない、と仰るのですか? 何故に?」

これはダメだな、思い込みが強すぎて、まともな会話が出来ない、と感じたレイはとりあえず分かり易く説明した。

「この戦争に正義はない。イリスの所業は目に余る者がある、現に我が王国の王妃を手に掛けようとしたしな。」
「!なんと、我がイリス王が、帝国の王妃様を暗殺しようとしたのですか? それは万死に値します。竜王様がお怒りなのも最もです。・・・分かりました。そのような事情であればイリス王家は破門で済まされるなら・・・。どうぞこちらへ、王の下へご案内致します。」
「その前に、お前たちの神殿も破壊して行く。これ以上の抵抗は許さん。」
「・・・・・それも致し方ございません。帝国の王妃様を暗殺しようなどと、ここまでイリス王を増長させてしまった責任は私共にもございます。神殿は元々あなた様を祀る為に建てられた物、臣下である私たちが君主に牙を向けたも同然なのですから罰せられるのは当然です。どうぞ御自由にお裁き下さい。」

思い込みが激しくても、どうやら抵抗をする気がないらしい言葉に、ちょっとそこで待ってろ、とイゼルとジュノを見張りに残して卵に入ったレイ。攻撃ボタンを押して目標を目の前のキンキラキンの神殿らしき建物に定め、『ロックオン完了。実行しますか?』との卵の問いに、ポチっと四角いボタンを押した。


「・・・ですから王、もうお終いです。竜王様自らが裁きの為に御越しになられた以上、イリスに未来はありません。」
「何を血迷っている、そこにいる者が竜王な訳なかろうが! この戯け! 竜はどうした? いいからさっさとワシを守るのじゃ。」
「・・・・・」

はあ、と重たいため息をつくと、大神官はレイに平服した。

「申し訳御座いません。この上は御自由にご采配を、抵抗は致しません。」
「そうか、あいわかった。」

レイはさっさとそこにいた王家の者全員を縛って転がし、王と呼ばれた男を峰打ちで気絶させてから厳重に縛って、よいしょと背中に背負った。

「イゼル、ジュノ、行くぞ。この男をマリス大公の手土産にする。」

レイは防御バリヤでイゼルとジュノを一緒に守りながら、向かって来る敵を全員一掃した後、卵に乗って、そのままマリスとイリスの前線に赴いた。

イリスの兵を魔法で蹴散らし、魔法を仕掛けて来る魔法騎士は全部魔法を打ち消して無効化し、人々が道を開ける中、レイはマリス大公の前に進み出ると、正式の礼をした。

「お初にお目にかかります。我が名はシルバレイ・ファラメルン。ファラメルン王国第一王子であります。御息女で居られるティア姫を花嫁に迎えたく、こうして遥々はるばる参った次第です。これは、ほんの手土産のイリス王の身柄、どうぞ宜しく収め下さい。」
「!!! 」

こうしてレイは、無事マリス大公から結婚の許可を得て、帰りにティアの保護者であるスウとジンを拾って、大急ぎで舞踏会に舞い戻ってきた。

はあ、早くティアの顔が見たい。だが、その前に善処しなければいけない会議が山程ある。
・・・仕方ない。舞踏会まで再会はお預けだ。

こうして早まる鼓動を抑えて舞踏広間に入ってみれば、いやに貴族達、それも年頃の男性貴族は揃って皆ソワソワして落ち着かず、控え室にいた、月の女神にように美しい姫の話題で持ちきりだ。
今夜はぜひあの方とお近づきになりたい、と意気込んでダンスの申し込みの順番争いを始めた貴族達を見て、レイは複雑な心境になった。

そうか、もう追ってがいないから本来の姿に戻ったのか。しかし、この、貴族達の浮かれよう・・・

自分の意中の姫が人気があるのは嬉しいが、貴族達の熱のこもるティアと踊りたい一心のバトルを見ていると、だんだんと心に不安が広がってゆく。何せ二週間も留守にしたのだ。ティアと最初に出会った頃の、如何にも興味なさそうどころか、さっさとオサラバしたい、と顔に書いてあった様子が目に浮かぶ。

ティア、心変わりなどしていないだろうな。大丈夫だ、ティアは俺の物だ。

会場でティアの名前が呼び上げられ、ティアがゆっくり大広間に入って来る。

!!! なんて! 美しいんだ・・・・・これでは貴族達が大騒ぎなのも当然だ。

キラキラしたプラチナブロンドの髪、優美なアーチ型の眉に可愛らしいピンクの唇、神秘的な青紫の瞳。そのスラリとした姿にピッタリの碧と銀のふわりとしたドレスを纏い、レイが贈った髪飾りと同じ色の見事な宝石装飾品を身につけた、まるで月の女神が舞い降りたような、ソフィラティア・シアン姫。

西大陸一の大国、ファラメルン王国王太子シルバレイ・ファラメルンの身体に衝撃が走る。

ソフィラティア姫、ティア、俺の花嫁!

見慣れた姿であるはずのティアの艶やかなドレス姿に、レイは一目で心を奪われた。

心身共に深い感銘を受けたレイ。ティアの姿を愛しみ心の底からティアをほっし求めて、思わず身体が歓喜で震える。
そうなのだ、ティアの本来の姿を見て、レイはモノの見事にもう一度、二度目の深い、深い恋に落ちてしまった。

ところが、高鳴る胸を諌めながら、ティアの前にダンスの誘いの手を差し伸べたレイに、ティアはぼんやりして気付かず、注意されて気がついたはいいが、レイの手を取るのを躊躇する。
その上、いつものようにレイの目を見つめ返さない。

動揺したレイは、そのまま、強引にティアをダンスに引っ張って行く。

「ティア、今更逃しはしないぞ。」

音楽に合わせて優雅なワルツを二人で踊り始めると、やっと、レイの目をいつものように見つめて、生き生きとダンスを楽しみ始めたティア。
ホッとしたレイは、もう絶対逃がしはしない、これ以上待てるか、と体裁を気にして、最後に発表をする事に決めていた段取りをアッサリ放棄し、婚約宣言をサッサと実行することにした。

びっくりした顔のティアを見て、やはり母上の言うように、先にご家族の許可を知らせた方がよかったか、とティアの青紫の瞳が戸惑う様子に反省したレイ。

だが、今更、嫌とは言わせん!

伏せていた事実へのお互いの反応が気にかかる二人。
ティアの承諾が待ちきれなくなったレイは、多少?強引に結婚の合意に持っていった。

しかし、ティアの煮え切らない今夜の態度に、とうとう我慢の限度がきたレイは、そのままティアをさらってバルコニーへ連れ去ってきた。

そこで夜風に吹かれ、ようやく少し頭の冷えたレイ。

やはり、少し強引過ぎたか? 結婚は双方にとって大事な一大事。

ティアの事になると、レイは自分でも信じられないほど感情が大きく揺さぶられる。

ため息をついて冷静に考えてみれば、レイは一度も自分の気持ちをティアに正直に伝えたことがない。

旅の途中で、愛してる、と伝えたくなった時が何度もあったが、自分は国の大事な極秘任務の途中、当時は本名や身分を名乗れなかったので、結局思いとどまった。
ティアが立場に拘らず自分の求愛を受け入れてくれるように、自分とティアの間に強い純粋な愛情を育てたかったレイは、しかし、結局王太子の身分を隠し求愛しようとしたが、そうこうするうちに、ティアがマリス公国の出身だと判明し、援助要求の内容を知ってしまった。

アズロン連邦のいずれかの国の出身だとは思っていたが、よりによって当事国。ティアの身分は不明だったがファラメルンが援助を施す立場の国である以上、ここで名前と身分を明かして求愛すれば、レイが一番避けたい政略結婚路線一直線だ。

・・・まあ、なんだ、俺がティアが何者でも花嫁に迎えたいように、ティアにも同じ気持ちになってもらえばいいだけの事。

結局レイの気持ちは固まっているのに、何も伝えないままだった。
行動派のレイは、態度でティアを大事に慈しんだし、二人の立場を重くみて結婚前の節度もで考慮した。言葉にせずとも二人の間の愛は順調に育っていったが、流石にここにきて、想いを言葉にしなければ、とレイは痛烈に感じていた。


そうだ、やはり、これプロポーズばかりは、自分の想いをはっきり伝えてティアの思い描く求愛をちゃんとしなければ!


思い直したレイは、本来のファラメルン王太子とマリス公女としての出会いからやり直し、正式に作法に則った求愛をする事にした。

「ソフィラティア姫、俺のティア、愛している。このシルバレイ・ファラメルン、君を一生愛するとここに誓う。生涯大事にするからティア姫、俺と結婚して頂けますか?」

レイの、心からの求愛に、ティアはちゃんと答えてくれた。

ああ、良かった。やっぱり女性の扱いは難しいな。でも、ティアを手に入れる為なら、多少の激務やこれくらい何でもない。

深い安堵とともに、今まで、ティアに本当の自分を知って貰うまでは、と抑え込んでいた枷がなくなり、愛しい想いが溢れ出してくる。

ティア、ティア、俺の大事な花嫁。一生大事にするから俺の側にいてくれ。

はやる心を抑え、ティアの身体を気遣って、出来るだけ優しく抱くつもりが、ティアに煽られ乞われるまま、二人の心の赴くままに激しく何度もティアを抱いてしまう。

愛している、ティア、君の中はなんて熱いんだ。最高だ。このまま、ずっとこうしていたい・・・

身も心も蕩けた花嫁、ティアの身体は柔らかくて熱くて、その上レイを求めてきつく締め付けて離さない。

腕の中のティアが可愛くて愛しくて、自分で決めた事とはいえ、やっと、大事な花嫁のティアを今夜心から愛していると求めるまま抱き、求められるまま何度も愛し合う。

レイは、今迄、欠けている事さえ、気付きもしなかった心の欠片カケラがピタリと埋まるのを感じた。

何か深い穏やかな幸せで身体中満たされ、腕の中でスヤスヤ幸せそうに眠るティアの髪をレイは優しく撫でる。

俺のティア、愛している。いつまでも二人は一緒だ。

レイも生まれて初めて感じる、自分の身体が溶けてしまいそうな他人との一体感に、至福顔でティアの身体を大事に抱いて幸せな眠りについた。


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