15 / 16
約束の舞踏会 2
しおりを挟む
とっさにシールドで防御っ! けれどコンマ1秒遅れた。
まとわりつく赤黒い風から漂う血のような匂い。
「あっ熱ーーっ」
羽が焼けるように熱いっ。 ーーその瞬間、風の正体を悟った。
投げつけられたのは砂鉄だ!
(”アイアン”には触れるなって、こういう事ーー……⁉︎)
チリチリと炙られる感覚に気を取られ、身体が急降下しはじめる。
あ、と思った時にはだが、暖かな風が吹き荒れ砂鉄を海の彼方まで吹き飛ばした。
羽を失ったリリアの身体が、ふわりと持ち上げられる。
「大丈夫か! リリアっ」
青ざめた顔のジェイドがそこにいた。
「ジェイド……ありがとう」
「無事かっ? 怪我はないかっ?」
落ち着きを失い必死にこちらを覗き込む瞳に、リリアは手を伸ばした。
「大丈夫よ。もう痛くはないわ」
「ーーひやっとしたぞ、奴にやられたのかと」
「とっさにシールドを張ったから。……タイミングが遅れて、砂鉄を浴びてしまったけど」
何ともないと微笑んだリリアを見て、ジェイドは大袈裟なほど大きな安堵のため息をついた。横抱きした腰を軽々と持ち直し、ゆっくりギンの背中にまたがせる。紫の可憐なドレスがふんわり風に舞った。
「リリアの実力はわかっている。だが、ーーこういう事は、理屈ではないのだな……」
「心配してくれたのね。もう大丈夫よ。ジェイドこそ怪我はない?」
「俺は戦いに慣れている、大丈夫だ。それよりリリア、本当に無理していないか?」
「治癒はおえているわ。信じて。私も、ジェイドを信じているわ」
「ああ、俺も信じている」
けれども、ぎゅうと堅く抱きしめられて、初めて気づいた。ジェイドの身体が微かに震えていることに。
途端に感じた驚きとジェイドへの愛おしさで、リリアの心も震える。
ーーいつも余裕たっぷりなこの人が、こんな動揺を見せるなんて。
「ごめんなさい……随分と心配をかけてしまったのね。でも、この程度では私は、えっと、”やられて”なんてあげないわよ」
安心させようとリリアがジェイドの口調を真似ると、紫の瞳がようやく和んだ。
「参ったな……俺よりよっぽど、図太いじゃないか」
「な、何を言うのっ、人がせっかく……」
はは、と笑った顔はだが、ギンがロザンナに反撃しているのを認めるなり眉を潜める。
「……奴め、しぶとい。ギンの炎は効いているが、俺の剣では斬っても奴の本体はすぐ再生する。悪霊とは言い得て妙だ。ナジールでは、どのような対処を?」
「あの時はーー、憑依体から離脱したところを、魔獣が追い払ってくれたから」
それに……このロザンナからは、人間らしさがまったく感じられない。
憎しみや怒り、執拗なまでの悲しみへの固執。そんな負の感情がドロドロ渦巻き凝り固まったおぞましい存在だ。ポータルという不可思議な魔力を吸ったことで、ますます得体の知れない不気味な魔物に変容した。
「そうか。やはり魔獣か。ーー何か有効な決定打があれば、奴の息の根を止めてみせるのだがな」
「有効な決定打……」
ギンは魔獣だ。グリフォンに扮したその攻撃は、一定のダメージを与えている。対してジェイドの剣は魔導具である。違いは一体、何なのだろう……?
二人が考えている間にも、ギンはロザンナの雷をよけ、口から炎を吐き出している。火炎放射のようなその攻撃は熾烈極まりない。
「あ、そうだわ! この剣を使ってみてっ」
リリアが、「ちょっと失礼」とドレスをめくって取り出した短剣に、ジェイドは少し面食らったようだ。
「そんなところに懐剣を。まったく……」
「俺の妖精は、ほんと勇ましいな」と小さく呟きながら剣を受け取った。途端、短剣はジェイドが背中に仕舞った剣と寸分違わぬ大きさにグングン形を変える。
「っなんだ? この剣ーー手にぴったり吸い付く」
「砂狐さんの鉤爪から生まれた剣よ。ギンの攻撃が効いているのなら、同じ妖狐である砂狐さんの剣もきっと効くはず」
「なるほどな。では試してみるか」
「ジェイド、二人でシールドを張りましょう。私が攻撃魔法で注意を引くわ。その間に近づいて、一気に仕止めて!」
「任せろ。よし、いくぞ」
二人は堅く手を繋いだ。
『『シールド』』
リリアとジェイドの声が重なると不思議な韻が生まれる。暗い空が一瞬ぱあ、と明るくなった。現れたのは、二人を包み込む眩い虹色のシールドだ。
瞬時にリリアの羽がグンと復活した。ヒラリ飛び上がり羽を広げ、リリアは空を舞う。
『千のスライス!』
繰り出した強力な魔法に赤黒い塊は散り散りに飛び散る。ロザンナの雷攻撃は消えた。だが、みるみる暗黒の核が復活すると、音もなくスーと元の形に戻っていく。
空気を切り裂くような手応えに、リリアはもう一度と攻撃の体勢を取った。
「わざわざ出向いてくるとは。愚の骨頂よのっ」
待ち構えるロザンナの動きが一瞬止まる。
今だ!
「ぎゃあぁぁぁーー」
その瞬間、闇をつんざくような不快な悲鳴があたりいっぱいに響いた。
ロザンナの黒々とした中心に、剣が深々と刺さっている。虹色のシールドを纏ったジェイドは、逃さぬと剣をグッと柄まで貫いた。あたかも生きているような妖狐の剣は、蝕んだ塊をみるみる食らい尽くす。ロザンナの悪霊は徐々にその形を失っていきーージェイドは耳を塞ぎたくなる断末魔にもびくともせず、あくまで冷静に剣を突き刺したまま手首を返しさらに深く食い込ませた。
……最後までしぶとく残った赤黒い核までもついに剣が飲み込み、突如それはふっと消えた。
同時に、暗闇に染まった空から、黒々した雲も消えていく。陽が沈む前の雄大な夕焼けが大空に広がった。
「やったわーー! ジェイドっ」
「リリアっ、ーーよくぞ頑張った」
ギンに乗ったジェイドへと飛んでいったリリアは、興奮のあまりその胸に飛び込んだ。その身体をしっかり受け止め、ジェイドは頭の後ろに手を回してくる。
王城の上空で求められたその口づけを、今度はリリアも避けはしなかった。
「んっ……」
安心できる腕に支えられ、リリアの胸が熱くなる。
何があっても、この人から離れはしない。
甘く重ねられる唇から、ジェイドの確かな愛を感じる。
(他国の姫に取られるなんて、絶対嫌ーー……)
胸中の強い想いのあまり、解いた唇がわなないた。
リリアは持てる勇気のすべてを振り絞り、願いを口にした。
「ジェイド、お願いーー。他の姫なんて選ばないで。私を……選んで」
唐突なその言葉にジェイドは驚いたようだった。紫の瞳が大きく見開かれる。
「ーー他国の姫に比べれば、国益にはならないのでしょうけど……でもその分働いて、この国を守るわ。だから、お願いーー……っ」
堅い決心を映しだす翠の瞳と、懸命なあまりわずかに震える唇をーー銀の騎士は束の間、甘く蕩けるような目で見つめた。だがその内、笑いを堪えきれないとばかり「クッ、ははっ。堪らないな」と青銀の髪が揺れだす。リリアの好きな野性味のある笑みがその顔に浮かんだ。
「さて、どうするかな。リリアは俺と一緒にいたいか?」
「もちろんだわ」
「ずっとだからな、一生離れないと誓え」
「一生離れないわ」
「そうか、ならばよい」
優しいキスがちゅっと唇に落ちてきた。
ジェイドがリリアの身体に回した腕に力を込め「ご苦労だった。戻ろう」とギンに声をかけると、グリフォンの翼が力強く羽ばたき城を目指し降下していく。
「え? ま、まってジェイドっ! 返事はくれないのーーっ?」
「ははーーっ」
満面笑みの顔はリリアの必死の問いにも笑うばかりで、陽気な笑いが空に響き渡った。
そしてーー半刻後。人々のざわめきと笑い声をバックに、待ちに待った華やかな舞踏会場の扉が開かれた。
「ーージェイドったらひどいわっ! エスコートの約束はどうなったのっ……」
「まあまあ、落ち着いてリリア。エスコート役が突然変わったのは、ショックだろうけど。ほら、もう入場じゃないかな」
「ザビア、……ありがとう。それと、突然無理を言ってごめんなさいね」
「いいんだよ。それにしても、ギルはついてないねえ。リリアのエスコート役だって、喜んでたのに」
エスコートしてくれるはずだったジェイドに、リリアは突然置いていかれてしまった。呆然としていたところに「よかったら僕が」とスマートに申し出てくれたギルまで、先ほど呼び出しがかかった。
ーー実際、おっとりしたザビアがエスコートを引き受けてくれて、本当に助かったのだ。
同時に、テラスに舞い戻るなり置いてけぼりにしたジェイドには、いくら文句を言っても言い足りない!
せっかく乙女が、一世一代の勇気を振り絞ったというのにーー……
返事も聞かされず、至急の用事ができたとかで大切な約束を反故にされて、立て続けのガッカリにさすがのリリアもどっと気落ちした。
ジェイドが去った後すぐ、女王から盛大にお褒め与ったことで、気丈に気を取り直したものの。
その女王も元老院のメンバーと共に、どこかへと去ってしまった。きっと先ほどの騒ぎの収拾をつけるためなのだろうが……
後に残ったローラはオズワイルドと舞踏会場を整えるのに忙しく、リリアもギルやザビアと共に警備や被害確認、怪我人の世話などに追われ、気がついたらあっという間に舞踏会がはじまりかけていた。
ともかくも、これ以上取り乱してはダメだ。そう自分に言い聞かせたリリアは、ニッコリ笑う。シャノワ家の家名を汚すようなみっともない真似はできない。
ーー何しろ舞踏会は無事つつがなく、催される運びとなったのだから。
城の上空で展開された戦闘は、大広間の窓からその行方を固唾を呑んで見守っていた客人たちには、最上の余興になったらしい。歓声こそ上がれ、パニックからは程遠いその興奮した雰囲気に、テラスに舞い戻ったリリアたちの方が引き気味だった。……どうやら、ジェイドと交わした甘い口づけは、ギンの大きな胴体で見えていなかったらしい。
「それにしても僕たちって……どうしてこんな違うエントランスで、それも最後まで待機なんだろうねえ。やっぱり、リリアが宮廷魔導士だからかな? 社交界に初めてデビューする令嬢じゃあ、あるまいし。こんなもったいぶった控室で待たされるなんてねぇ」
不思議そうにザビアは首を傾げる。リリアは今ザビアと二人控えの間で、おとなしく自分たちの名が呼ばれるのを待っているところだった。
「あ、そうだわ。あの、ザビア……言ってなかったけれど、私実は……」
リリアが説明しようと口を開きかけた時、コンコンと扉から合図がして目の前がさっと開けた。
「続きまして、ソルテア子爵家ザビア様~。並びに、今季デビュタントの最後の紹介となります、ナデール王国宮廷魔導士リリア様こと、シャノア侯爵家リリアンヌ様ーー」
「……は? あ、え? 侯爵家ーーデビュタントって~?」
魔導士に続いて読み上げられたリリアの称号に、ザビアは呆気に取られた。そのザビアの腕を、リリアはクイと引っ張る。
「行きましょう、ザビア」
胸を張って、おしとやかに歩き出した。
名前を呼ばれたリリアは、先ほどと打って変わって落ち着きを取り戻していた。
ジェイドに告げたことを撤回する気はない。
他国の姫君ほどの身分はなくとも、リリアには魔導士だという強みがある。だからジェイドにふさわしい相手だと認めてもらえるように、精一杯頑張ってみる。
ーー与えられた身分よりも、自分の実力で候補者と同じ土俵に上がれたら……
なんと言っても、ナデールは実力主義の国なのだから可能性はある、と信じたい。
……ずっと、ずっと、舞踏会に憧れていた。
王城の舞踏会には華やかなイメージがあり、結婚相手を見つけるのにはもってこいだと、ぜひ参加したいと長い間思ってきた。だけど、魔導士という天職を見つけ、生活に困らない収入の道を切り開いて好きになった人は、偶然にもこの王国の王子だ。
そして今日、王家主催のお茶会に参加してみて感じた。ナデールの社交界は華やかなだけではない。
いたるところで、商談やら今後の政策やらとあらゆる話し合いが持たれ、たとえ意見が食い違っても折り合いをと対話が続いていた。
ナデールの穏やかな日々は、こうした人々の努力で守られている。
そしてリリアも、幼い時から生活向上のためコツコツと努力を重ねてきた。その成果の魔法を磨いて、もっと人々の役に立ちたい。
「ねえリリア、ふと思ったんだけど……さっき言ってたジェイドって、まさか、ジェイディーン殿下のことだってことは……」
リリアが’侯爵令嬢だという事実をようやく呑み込んだザビアが、よもやといった感じで聞いてくる。
「そのとおりよ……だって、ジェイドと呼ばないと、機嫌が悪くなるのよあの人……」
ため息をついたリリアがザビアを見ると、「……だからなのか、わざわざ長官が……」と呟くその顔が引きつっている。ーー仮にも、王子を呼び捨て、その上さっきは、はしたなくも堂々と悪態をついてしまった。良識派なザビアに驚かれるのも無理はない。
それはともかく……とにこやかにザビアと腕を組んで、ざわめく人々の渦中へと紛れ込んだ。そんなリリアたちのところへ、やっと解放されたと言った感じのギルがすぐさま加わる。
「まいったよ。さっきの戦いを見ていた方々に捕まっちゃって。まあ、その娘さんとかは可愛かったけど」
「……ギル、目尻がだらしなく下がっているわよ」
「本当ギルって、わかりやすいよね」
数々の邸に招待されたというギルは、どう見ても浮かれている。見た目はスマートな青年のギルは、魔導士として実力もあるので婿候補の標的になっているようだ。
「それより、そっちはどうだい?」
ギルが問いかけると、なぜだかザビアはさり気なく後ろに目をやった。
「まあ、ギルが魔導士マントを羽織っているから。ーー余計に効果あるみたいだね」
なんのことだろうとリリアも後ろを振り向きかけた時、ミルバの声がした。
「リリア。ここにいたのですね、さあ、私と来て下さい」
今日は華麗な正装ドレスを着こなすミルバは、公爵家の次女だ。リリアの後見人でもある彼女はドレス姿でも威厳がある。
「助かった~。一斉に引いたよ」
「こっちもだ」
そっと耳打ちしあう友人二人を、ミルバは労った。
「二人とも、ご苦労様でした」
その時になって、やっと気づいた。リリアはザビアとギルにさり気なくガードされていたのだ。ちらりと振り返った後ろでは、沢山の人々が周りを取り囲んでいた。
だが、二人の青年貴族にガッチリ守られたリリアに、なかなか声がかけられなかったらしい。
「ありがとう、ザビア。それにギルも。また後で会いましょう」
流麗な仕草でドレスの裾を持ち上げ、輝くばかりの笑顔を友人に向けたその姿は、どこから見ても可憐な侯爵令嬢だった。
そんなリリアに息を呑んだザビアとギルはおのずと背を伸ばし、最上の敬礼を大切な友人に返していたのだった。
まとわりつく赤黒い風から漂う血のような匂い。
「あっ熱ーーっ」
羽が焼けるように熱いっ。 ーーその瞬間、風の正体を悟った。
投げつけられたのは砂鉄だ!
(”アイアン”には触れるなって、こういう事ーー……⁉︎)
チリチリと炙られる感覚に気を取られ、身体が急降下しはじめる。
あ、と思った時にはだが、暖かな風が吹き荒れ砂鉄を海の彼方まで吹き飛ばした。
羽を失ったリリアの身体が、ふわりと持ち上げられる。
「大丈夫か! リリアっ」
青ざめた顔のジェイドがそこにいた。
「ジェイド……ありがとう」
「無事かっ? 怪我はないかっ?」
落ち着きを失い必死にこちらを覗き込む瞳に、リリアは手を伸ばした。
「大丈夫よ。もう痛くはないわ」
「ーーひやっとしたぞ、奴にやられたのかと」
「とっさにシールドを張ったから。……タイミングが遅れて、砂鉄を浴びてしまったけど」
何ともないと微笑んだリリアを見て、ジェイドは大袈裟なほど大きな安堵のため息をついた。横抱きした腰を軽々と持ち直し、ゆっくりギンの背中にまたがせる。紫の可憐なドレスがふんわり風に舞った。
「リリアの実力はわかっている。だが、ーーこういう事は、理屈ではないのだな……」
「心配してくれたのね。もう大丈夫よ。ジェイドこそ怪我はない?」
「俺は戦いに慣れている、大丈夫だ。それよりリリア、本当に無理していないか?」
「治癒はおえているわ。信じて。私も、ジェイドを信じているわ」
「ああ、俺も信じている」
けれども、ぎゅうと堅く抱きしめられて、初めて気づいた。ジェイドの身体が微かに震えていることに。
途端に感じた驚きとジェイドへの愛おしさで、リリアの心も震える。
ーーいつも余裕たっぷりなこの人が、こんな動揺を見せるなんて。
「ごめんなさい……随分と心配をかけてしまったのね。でも、この程度では私は、えっと、”やられて”なんてあげないわよ」
安心させようとリリアがジェイドの口調を真似ると、紫の瞳がようやく和んだ。
「参ったな……俺よりよっぽど、図太いじゃないか」
「な、何を言うのっ、人がせっかく……」
はは、と笑った顔はだが、ギンがロザンナに反撃しているのを認めるなり眉を潜める。
「……奴め、しぶとい。ギンの炎は効いているが、俺の剣では斬っても奴の本体はすぐ再生する。悪霊とは言い得て妙だ。ナジールでは、どのような対処を?」
「あの時はーー、憑依体から離脱したところを、魔獣が追い払ってくれたから」
それに……このロザンナからは、人間らしさがまったく感じられない。
憎しみや怒り、執拗なまでの悲しみへの固執。そんな負の感情がドロドロ渦巻き凝り固まったおぞましい存在だ。ポータルという不可思議な魔力を吸ったことで、ますます得体の知れない不気味な魔物に変容した。
「そうか。やはり魔獣か。ーー何か有効な決定打があれば、奴の息の根を止めてみせるのだがな」
「有効な決定打……」
ギンは魔獣だ。グリフォンに扮したその攻撃は、一定のダメージを与えている。対してジェイドの剣は魔導具である。違いは一体、何なのだろう……?
二人が考えている間にも、ギンはロザンナの雷をよけ、口から炎を吐き出している。火炎放射のようなその攻撃は熾烈極まりない。
「あ、そうだわ! この剣を使ってみてっ」
リリアが、「ちょっと失礼」とドレスをめくって取り出した短剣に、ジェイドは少し面食らったようだ。
「そんなところに懐剣を。まったく……」
「俺の妖精は、ほんと勇ましいな」と小さく呟きながら剣を受け取った。途端、短剣はジェイドが背中に仕舞った剣と寸分違わぬ大きさにグングン形を変える。
「っなんだ? この剣ーー手にぴったり吸い付く」
「砂狐さんの鉤爪から生まれた剣よ。ギンの攻撃が効いているのなら、同じ妖狐である砂狐さんの剣もきっと効くはず」
「なるほどな。では試してみるか」
「ジェイド、二人でシールドを張りましょう。私が攻撃魔法で注意を引くわ。その間に近づいて、一気に仕止めて!」
「任せろ。よし、いくぞ」
二人は堅く手を繋いだ。
『『シールド』』
リリアとジェイドの声が重なると不思議な韻が生まれる。暗い空が一瞬ぱあ、と明るくなった。現れたのは、二人を包み込む眩い虹色のシールドだ。
瞬時にリリアの羽がグンと復活した。ヒラリ飛び上がり羽を広げ、リリアは空を舞う。
『千のスライス!』
繰り出した強力な魔法に赤黒い塊は散り散りに飛び散る。ロザンナの雷攻撃は消えた。だが、みるみる暗黒の核が復活すると、音もなくスーと元の形に戻っていく。
空気を切り裂くような手応えに、リリアはもう一度と攻撃の体勢を取った。
「わざわざ出向いてくるとは。愚の骨頂よのっ」
待ち構えるロザンナの動きが一瞬止まる。
今だ!
「ぎゃあぁぁぁーー」
その瞬間、闇をつんざくような不快な悲鳴があたりいっぱいに響いた。
ロザンナの黒々とした中心に、剣が深々と刺さっている。虹色のシールドを纏ったジェイドは、逃さぬと剣をグッと柄まで貫いた。あたかも生きているような妖狐の剣は、蝕んだ塊をみるみる食らい尽くす。ロザンナの悪霊は徐々にその形を失っていきーージェイドは耳を塞ぎたくなる断末魔にもびくともせず、あくまで冷静に剣を突き刺したまま手首を返しさらに深く食い込ませた。
……最後までしぶとく残った赤黒い核までもついに剣が飲み込み、突如それはふっと消えた。
同時に、暗闇に染まった空から、黒々した雲も消えていく。陽が沈む前の雄大な夕焼けが大空に広がった。
「やったわーー! ジェイドっ」
「リリアっ、ーーよくぞ頑張った」
ギンに乗ったジェイドへと飛んでいったリリアは、興奮のあまりその胸に飛び込んだ。その身体をしっかり受け止め、ジェイドは頭の後ろに手を回してくる。
王城の上空で求められたその口づけを、今度はリリアも避けはしなかった。
「んっ……」
安心できる腕に支えられ、リリアの胸が熱くなる。
何があっても、この人から離れはしない。
甘く重ねられる唇から、ジェイドの確かな愛を感じる。
(他国の姫に取られるなんて、絶対嫌ーー……)
胸中の強い想いのあまり、解いた唇がわなないた。
リリアは持てる勇気のすべてを振り絞り、願いを口にした。
「ジェイド、お願いーー。他の姫なんて選ばないで。私を……選んで」
唐突なその言葉にジェイドは驚いたようだった。紫の瞳が大きく見開かれる。
「ーー他国の姫に比べれば、国益にはならないのでしょうけど……でもその分働いて、この国を守るわ。だから、お願いーー……っ」
堅い決心を映しだす翠の瞳と、懸命なあまりわずかに震える唇をーー銀の騎士は束の間、甘く蕩けるような目で見つめた。だがその内、笑いを堪えきれないとばかり「クッ、ははっ。堪らないな」と青銀の髪が揺れだす。リリアの好きな野性味のある笑みがその顔に浮かんだ。
「さて、どうするかな。リリアは俺と一緒にいたいか?」
「もちろんだわ」
「ずっとだからな、一生離れないと誓え」
「一生離れないわ」
「そうか、ならばよい」
優しいキスがちゅっと唇に落ちてきた。
ジェイドがリリアの身体に回した腕に力を込め「ご苦労だった。戻ろう」とギンに声をかけると、グリフォンの翼が力強く羽ばたき城を目指し降下していく。
「え? ま、まってジェイドっ! 返事はくれないのーーっ?」
「ははーーっ」
満面笑みの顔はリリアの必死の問いにも笑うばかりで、陽気な笑いが空に響き渡った。
そしてーー半刻後。人々のざわめきと笑い声をバックに、待ちに待った華やかな舞踏会場の扉が開かれた。
「ーージェイドったらひどいわっ! エスコートの約束はどうなったのっ……」
「まあまあ、落ち着いてリリア。エスコート役が突然変わったのは、ショックだろうけど。ほら、もう入場じゃないかな」
「ザビア、……ありがとう。それと、突然無理を言ってごめんなさいね」
「いいんだよ。それにしても、ギルはついてないねえ。リリアのエスコート役だって、喜んでたのに」
エスコートしてくれるはずだったジェイドに、リリアは突然置いていかれてしまった。呆然としていたところに「よかったら僕が」とスマートに申し出てくれたギルまで、先ほど呼び出しがかかった。
ーー実際、おっとりしたザビアがエスコートを引き受けてくれて、本当に助かったのだ。
同時に、テラスに舞い戻るなり置いてけぼりにしたジェイドには、いくら文句を言っても言い足りない!
せっかく乙女が、一世一代の勇気を振り絞ったというのにーー……
返事も聞かされず、至急の用事ができたとかで大切な約束を反故にされて、立て続けのガッカリにさすがのリリアもどっと気落ちした。
ジェイドが去った後すぐ、女王から盛大にお褒め与ったことで、気丈に気を取り直したものの。
その女王も元老院のメンバーと共に、どこかへと去ってしまった。きっと先ほどの騒ぎの収拾をつけるためなのだろうが……
後に残ったローラはオズワイルドと舞踏会場を整えるのに忙しく、リリアもギルやザビアと共に警備や被害確認、怪我人の世話などに追われ、気がついたらあっという間に舞踏会がはじまりかけていた。
ともかくも、これ以上取り乱してはダメだ。そう自分に言い聞かせたリリアは、ニッコリ笑う。シャノワ家の家名を汚すようなみっともない真似はできない。
ーー何しろ舞踏会は無事つつがなく、催される運びとなったのだから。
城の上空で展開された戦闘は、大広間の窓からその行方を固唾を呑んで見守っていた客人たちには、最上の余興になったらしい。歓声こそ上がれ、パニックからは程遠いその興奮した雰囲気に、テラスに舞い戻ったリリアたちの方が引き気味だった。……どうやら、ジェイドと交わした甘い口づけは、ギンの大きな胴体で見えていなかったらしい。
「それにしても僕たちって……どうしてこんな違うエントランスで、それも最後まで待機なんだろうねえ。やっぱり、リリアが宮廷魔導士だからかな? 社交界に初めてデビューする令嬢じゃあ、あるまいし。こんなもったいぶった控室で待たされるなんてねぇ」
不思議そうにザビアは首を傾げる。リリアは今ザビアと二人控えの間で、おとなしく自分たちの名が呼ばれるのを待っているところだった。
「あ、そうだわ。あの、ザビア……言ってなかったけれど、私実は……」
リリアが説明しようと口を開きかけた時、コンコンと扉から合図がして目の前がさっと開けた。
「続きまして、ソルテア子爵家ザビア様~。並びに、今季デビュタントの最後の紹介となります、ナデール王国宮廷魔導士リリア様こと、シャノア侯爵家リリアンヌ様ーー」
「……は? あ、え? 侯爵家ーーデビュタントって~?」
魔導士に続いて読み上げられたリリアの称号に、ザビアは呆気に取られた。そのザビアの腕を、リリアはクイと引っ張る。
「行きましょう、ザビア」
胸を張って、おしとやかに歩き出した。
名前を呼ばれたリリアは、先ほどと打って変わって落ち着きを取り戻していた。
ジェイドに告げたことを撤回する気はない。
他国の姫君ほどの身分はなくとも、リリアには魔導士だという強みがある。だからジェイドにふさわしい相手だと認めてもらえるように、精一杯頑張ってみる。
ーー与えられた身分よりも、自分の実力で候補者と同じ土俵に上がれたら……
なんと言っても、ナデールは実力主義の国なのだから可能性はある、と信じたい。
……ずっと、ずっと、舞踏会に憧れていた。
王城の舞踏会には華やかなイメージがあり、結婚相手を見つけるのにはもってこいだと、ぜひ参加したいと長い間思ってきた。だけど、魔導士という天職を見つけ、生活に困らない収入の道を切り開いて好きになった人は、偶然にもこの王国の王子だ。
そして今日、王家主催のお茶会に参加してみて感じた。ナデールの社交界は華やかなだけではない。
いたるところで、商談やら今後の政策やらとあらゆる話し合いが持たれ、たとえ意見が食い違っても折り合いをと対話が続いていた。
ナデールの穏やかな日々は、こうした人々の努力で守られている。
そしてリリアも、幼い時から生活向上のためコツコツと努力を重ねてきた。その成果の魔法を磨いて、もっと人々の役に立ちたい。
「ねえリリア、ふと思ったんだけど……さっき言ってたジェイドって、まさか、ジェイディーン殿下のことだってことは……」
リリアが’侯爵令嬢だという事実をようやく呑み込んだザビアが、よもやといった感じで聞いてくる。
「そのとおりよ……だって、ジェイドと呼ばないと、機嫌が悪くなるのよあの人……」
ため息をついたリリアがザビアを見ると、「……だからなのか、わざわざ長官が……」と呟くその顔が引きつっている。ーー仮にも、王子を呼び捨て、その上さっきは、はしたなくも堂々と悪態をついてしまった。良識派なザビアに驚かれるのも無理はない。
それはともかく……とにこやかにザビアと腕を組んで、ざわめく人々の渦中へと紛れ込んだ。そんなリリアたちのところへ、やっと解放されたと言った感じのギルがすぐさま加わる。
「まいったよ。さっきの戦いを見ていた方々に捕まっちゃって。まあ、その娘さんとかは可愛かったけど」
「……ギル、目尻がだらしなく下がっているわよ」
「本当ギルって、わかりやすいよね」
数々の邸に招待されたというギルは、どう見ても浮かれている。見た目はスマートな青年のギルは、魔導士として実力もあるので婿候補の標的になっているようだ。
「それより、そっちはどうだい?」
ギルが問いかけると、なぜだかザビアはさり気なく後ろに目をやった。
「まあ、ギルが魔導士マントを羽織っているから。ーー余計に効果あるみたいだね」
なんのことだろうとリリアも後ろを振り向きかけた時、ミルバの声がした。
「リリア。ここにいたのですね、さあ、私と来て下さい」
今日は華麗な正装ドレスを着こなすミルバは、公爵家の次女だ。リリアの後見人でもある彼女はドレス姿でも威厳がある。
「助かった~。一斉に引いたよ」
「こっちもだ」
そっと耳打ちしあう友人二人を、ミルバは労った。
「二人とも、ご苦労様でした」
その時になって、やっと気づいた。リリアはザビアとギルにさり気なくガードされていたのだ。ちらりと振り返った後ろでは、沢山の人々が周りを取り囲んでいた。
だが、二人の青年貴族にガッチリ守られたリリアに、なかなか声がかけられなかったらしい。
「ありがとう、ザビア。それにギルも。また後で会いましょう」
流麗な仕草でドレスの裾を持ち上げ、輝くばかりの笑顔を友人に向けたその姿は、どこから見ても可憐な侯爵令嬢だった。
そんなリリアに息を呑んだザビアとギルはおのずと背を伸ばし、最上の敬礼を大切な友人に返していたのだった。
10
お気に入りに追加
899
あなたにおすすめの小説
彼と私と甘い月 番外編 ーその後の二人の甘い日々ー
藤谷藍
恋愛
白河花蓮は26歳のOL。フィアンセの、橘俊幸、31歳、弁護士とお互い一目惚れし、結婚を前提のお付き合いのラブラブ生活を送っていたが、早く花蓮と結婚式をあげたい俊幸にブレーキをかけるのも大変で・・・
このお話は、前に掲載された「彼と私と甘い月」で、リクエストを頂いた番外編です。「彼と私と甘い月」の話の続き、短編となります。楽しんでいただけると嬉しいです。
この作品はムーンライトノベルズと同時掲載されました。
騎士団長の欲望に今日も犯される
シェルビビ
恋愛
ロレッタは小さい時から前世の記憶がある。元々伯爵令嬢だったが両親が投資話で大失敗し、没落してしまったため今は平民。前世の知識を使ってお金持ちになった結果、一家離散してしまったため前世の知識を使うことをしないと決意した。
就職先は騎士団内の治癒師でいい環境だったが、ルキウスが男に襲われそうになっている時に助けた結果纏わりつかれてうんざりする日々。
ある日、お地蔵様にお願いをした結果ルキウスが全裸に見えてしまった。
しかし、二日目にルキウスが分身して周囲から見えない分身にエッチな事をされる日々が始まった。
無視すればいつかは収まると思っていたが、分身は見えていないと分かると行動が大胆になっていく。
文章を付け足しています。すいません
悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、
快楽漬けの日々を過ごすことになる!
そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
魔力なしと虐げられた令嬢は孤高の騎士団総長に甘やかされる
橋本彩里(Ayari)
恋愛
五歳で魔力なしと判定され魔力があって当たり前の貴族社会では恥ずかしいことだと蔑まれ、使用人のように扱われ物置部屋で生活をしていた伯爵家長女ミザリア。
十六歳になり、魔力なしの役立たずは出て行けと屋敷から追い出された。
途中騎士に助けられ、成り行きで王都騎士団寮、しかも総長のいる黒狼寮での家政婦として雇われることになった。
それぞれ訳ありの二人、総長とミザリアは周囲の助けもあってじわじわ距離が近づいていく。
命を狙われたり互いの事情やそれにまつわる事件が重なり、気づけば総長に過保護なほど甘やかされ溺愛され……。
孤高で寡黙な総長のまっすぐな甘やかしに溺れないようにとミザリアは今日も家政婦業に励みます!
※R15については暴力や血の出る表現が少々含まれますので保険としてつけています。
[R18] 18禁ゲームの世界に御招待! 王子とヤらなきゃゲームが進まない。そんなのお断りします。
ピエール
恋愛
R18 がっつりエロです。ご注意下さい
えーー!!
転生したら、いきなり推しと リアルセッ○スの真っ最中!!!
ここって、もしかしたら???
18禁PCゲーム ラブキャッスル[愛と欲望の宮廷]の世界
私って悪役令嬢のカトリーヌに転生しちゃってるの???
カトリーヌって•••、あの、淫乱の•••
マズイ、非常にマズイ、貞操の危機だ!!!
私、確か、彼氏とドライブ中に事故に遭い••••
異世界転生って事は、絶対彼氏も転生しているはず!
だって[ラノベ]ではそれがお約束!
彼を探して、一緒に こんな世界から逃げ出してやる!
カトリーヌの身体に、男達のイヤラシイ魔の手が伸びる。
果たして、主人公は、数々のエロイベントを乗り切る事が出来るのか?
ゲームはエンディングを迎える事が出来るのか?
そして、彼氏の行方は•••
攻略対象別 オムニバスエロです。
完結しておりますので最後までお楽しみいただけます。
(攻略対象に変態もいます。ご注意下さい)
色々と疲れた乙女は最強の騎士様の甘い攻撃に陥落しました
灰兎
恋愛
「ルイーズ、もう少し脚を開けますか?」優しく聞いてくれるマチアスは、多分、もう待ちきれないのを必死に我慢してくれている。
恋愛経験も無いままに婚約破棄まで経験して、色々と疲れているお年頃の女の子、ルイーズ。優秀で容姿端麗なのに恋愛初心者のルイーズ相手には四苦八苦、でもやっぱり最後には絶対無敵の最強だった騎士、マチアス。二人の両片思いは色んな意味でもう我慢出来なくなった騎士様によってぶち壊されました。めでたしめでたし。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる