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クモの魔獣に、遭遇しました

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「ごちそうさま、テン、すごく美味しかったわ」
「それは良かったです。この山脈は実のなる木々が豊富ですね」
「やはり、味に深みがあるな、美味かった」

朝食の焼栗は、こんもりと盛ってあったお皿から最後の一つまで綺麗に消えていた。
冒険者達が「捜索に誰が残るか?」を話し合っている間、リナ達は朝ご飯のほくほく焼き栗でお腹いっぱいになり大満足だった。
残った冒険者達と共に、ギルドでもらった地図を頼りにさっそく目的地を確かめる。
迷った時の為のルールなどをお互い決めて、一同はヨクシア村を目指して細い細い獣道のような山道を元気に歩きだした。

昨日はまる一日かけて、普通は何週間もかけて登ってくる距離の山道を一気に移動した。
それはもちろん、テンとフェンの活躍のおかげだった。険しい山道をものともしない二頭は、カッポカッポ、タッタッタッとまるで野原を駆けるような速度で、細い獣道を平然と登ってきた。
だが当然、同行者が増えた今日は皆、徒歩移動である。

テンの正体はもちろん秘密出会ったし、朝ごはんを食べて満足したフェンはシンが目配せをすると、ポンと消えていった。

落ち葉の積もる獣道を滑らないよう足元に注意しながら、後ろに続く男達の集団を、ついでに、チラリとチェックしてみる。

結局、リナ達についてきたのはアルゼとカウルを含む5人のメンバーだ。
残りのメンバーは報告を兼ねて、元来た道を戻っていった。早朝に遭遇したタコグモ幼虫クラス以上の魔獣との交戦に、対応できないとのアルゼの判断だった。

「リナさんは、巫女見習いなんだよな? なぜこんな山奥に来てるんだ?」
「依頼のポーションをヨクシア村に届けるためです」
「ああ、そうか。その服は外回り巡回服だったなぁ、じゃあ、後の二人は護衛かい?」
「一緒に行動してくれる仲間です。ついでに、金剛鉱石採集の依頼も受けましたので」

簡潔だが筋の通った即席理由に、納得がいったとアルゼは頷いた。
若い娘二人がこんな辺鄙な山奥くんだりまで出向いている事を、どうやら不思議に思っていたらしい。
リナの巫女服やテンの張ったシールドは、やはり説得力があった。
今の説明で、都合よく教会関係の依頼だと納得してくれたようだ。それ以上は、事情をつっこんで聞いてこない。

(そうか、これからも、もし尋ねられたら、この路線でいけるわね…)

巫女見習いが巡回に回るのはごく普通の事である。
教会は魔法が使える人が少ない地方に、治癒やポーションの生成できる見習いを派遣しているからだ。

太陽と月の女神を頂点とする教会は、信者を増やすのが目的の機関ではない。教会とは呼ばれてはいるが、この国に多い聖属性魔法の使い手の教育や研究機関としての役割が主目的の教育施設だ。

ポーションや魔石職人は、こうした教会からの教育で育まれる。
国の主要産業の養成場、教育施設として教会は、王室からも奨励されてきたのだ。
だが近年は外回り巡回など、こういった奉仕活動には援助が受けられなくなってきた。
祖父によると、今まで無償で教えていた付与などの教室でも授業料を取れなどと、最近叔父は教会経営にもプレッシャーをかけてくるそうだ。才能ある者には誰にでも門を開いていた教会の方針と、相容れない事柄が増えつつある。

教会の教本には、そもそもの始まりは、『この世界を見守る女神達が混沌に紛れて害成す悪から、この世界を守るため聖属性魔法をもたらし、教会が設立された』とある。

教会の守り神は太陽と月の双子の女神である。
太陽の女神は天上界、月の女神は天魔界をそれぞれ治めるとされる女神達は、この世界の生と魂の輪廻を司り、古代の時代から敬われ親しまれてきた。
そして教会の発祥地であるバルドランには、昔から神獣伝説が明確に伝わってきている。

リナが幼い時、王家の森でテンを見つけて以来、二人は時々一緒に遊ぶようになった。
そして両親が突然他界してしまった不幸な事故以来、テンは一緒に居てくれるようになったのだ。
幼いリナの命が狙われるようになると、リナを見守る人々の前にもその姿を表すようになった。
天上界から訪れたテンの存在は、リナが幼い時から教会の教えを擁護することになった起因にもなっている。
母が巫女でもあったリナは王室が伝統ある教会と反発する今の状態は、やはりやり切れないものがある。
教会との関係修復は、リナが女王に即位したい理由の一つでもあった。

国からの援助が得られないと、普通の巫女見習いはこんな遠くへは護衛なしでは巡回できない。
ヨクシア村もそうした政策の変化の犠牲になって、冒険ギルドに依頼をせざる負えなくなったのだとしたら、それを正すのはリナの仕事だ。

「タコグモは比較的大人しい魔獣だがな、臆病な分、敵だとみなせばすぐに痺れ炭毒を放ってくる。糸は強靭で切れないしな、仕留めるのは難しい。瘴気に囚われた今朝の好戦的な様子は、何か異常だったよな…リナさんは、一体どうやって対応したんだ?」
「…えっと、胴体を真っ二つに一撃必殺、かしら?」
「お! あんな硬い殻をか?」
「…殻の付け根に切っ先から差し込んで引き切れば、それ程力はなくてもなんとか」
「そうか、接近戦か…毒と糸を懸念して、なかなか近づけないものだがなぁ」

(まあ、その辺は、ちょこっとミラージュでね…)

いくらたくさん目がついていても、光魔法の効果で相手にはリナの姿は見えていない。
それでも魔獣の本能で応戦されれば、風魔法を使って注意を逸らす。
その上身体の周りにシールド展開もできるし、特別製の防具服も着用している。
ちょっとやそっとでは真似出来ない裏技チート満載、テンやシンがそれ程心配していないのもその辺の事情が分かっているからだ。

感心しながらもリナの対処法を積極的に聞いて、アルゼはしきりにどうやったら?と攻略法を考えている。
先ほどアルゼ達は、ドレス型のアーマーを着込んだテンが留守番で巫女服のリナが一目散に現場に駆けていった為、置いてけぼりにされて呆然としていた。
出遅れた感一杯で、リナが、前衛という事実を確かめたかったらしい。
もちろんリナは前衛ではないが、必要ならば前に出るのになんら躊躇ためらいはない。

「巫女見習いも大変ですね? 剣技は自己防衛の為に覚えたんですか?」
「ええ、親切に教えて下さる方々が周りにいたので、ラッキーだったんですよ」

一方でカウルは、こちらをなぜか眩しいものを見るような目で見つめてきて、丁寧に話しかけてくれる。
そうなると答えるリナの口調も、自然とそれと合わせたものになっていた。
年齢的にはアルゼとカウルは同じぐらいに見えるが、仲間として扱ってくれるアルゼと、丁寧で客扱いとも言えるカウルの態度、この二人の対応は対照的である。面白いほど性格が違う二人は、それでも仲は悪くないようだった。

「リナさんは、いつもこんな遠くにまで巡回に出回るのですか?」
「いえ、実はこれが初めての外回りで…」
「ああ、なるほど。初めての依頼なら、何としてでも成し遂げたいでしょうね…」

リナの言葉に頷きつつも含みのある返事で、カウルはシンを、チラリと見やった。
そう言えばカウルは、『魔獣が出る』と忠告しても、『依頼人との約束を優先する』と言い切った先程のシンの発言にいきどおっていた。だけど、どうやらシンはリナの意向を汲み取ってあの発言をしたのだ、と思ってくれたらしい。

(よかった~、この人、シンをよく思っていないみたいだったから……)

そんなことを思いながらも、男達の歩みにも全然遅れを取らず、リナはせっせと足を動かして元気に歩いている。

病弱のはずのリナは実はとっても健康体で、身体を動かすのは結構好きである。
引きこもり期間中の午前中は教会でみっちり授業を受けさせられたが、午後は護衛の魔法騎士達と城下町外れの裏山で遊んだりして過ごした。裏山は深い森で足元が悪く、叔父の家族とは絶対出くわさないであろう候補地、ナンバーワンだったのだ……
お転婆というほどではなかったが、気になることは放っておくことができず、幼い頃はしょっちゅう迷子になっては騎士達を困らせていた。

そんな訳で、山歩きは苦にならない。「目的地はもうすぐかしら~」などと考えていると、ヨクシア村へ続く谷への入り口が視界の遠く山向こうにボンヤリと見えてきた。

「お、どうやら方向は合ってるようだな」
「そうね、あともう少し…」

で目的地、と言いかけた途端に、背中を、ゾクリ、とイヤ~な悪寒が走り抜けた。

「アルゼさん、ストップ! 止まって!」

即座に先頭を歩いていたアルゼに、その場で思わず声をかけてしまった。

「あ? どうしたんだ?」
「ええっと…」

(何と言えばいいのかしら? この、前に進んではいけない、という危機感は……)

説明に困って、もごもごと口の中でつぶやいていると、一番後ろを歩いていたシンがそのままアルゼの側に歩み寄った。…と、前を一目見ると、軽くかがみこみ、足元の土を一握り手に握りしめている。

「後ろに下がってくれるか? 何が仕掛けてあるか分からないからな」
「っな…!」
「あ? ああ、分かった」

片手を上げて行く手を遮るようにやんわり後ろに下がれ、と押し戻すシンに、カウルは文句を言いかけたが、アルゼが睨んで黙らせる。

皆に距離を取ってかなり下がらせると、シンは手にした土に、フッと軽く息を吹きかけて一同の行く手に舞い上がらせた。
キラキラキラ、幾重もの細い透明な糸が行く手を遮るように前方に現れた。
木から木へと長く張り巡らされたそれらの糸は、森の奥へとずっと続いているようだった。

「うわっ!」
「どうやら、他の者はここで罠に掛かって、餌食になったようだな」
「なんてこった! もうすぐで俺も晩餐メニューに加わるところだったぜっ、あっぶねー」

「リナさん、ありがとな」と真面目な顔でアルゼに礼を言われて、「どういたしまして」、とリナは照れてしまった。

「…じゃあ、ここに罠が仕掛けてあるなら、逆に奴らをここにおびき出せばいいんじゃないか?」

「囮を使ってここに逆に罠を仕掛ければ、奴らを一網打尽できるかも」と言い出したカウルに、アルゼはしばし考えて反対した。

「そうれはそうだが…いや、それならこの糸を辿って奴らのアジトを探し出そう、俺たちの目的は仲間の救出だ。魔獣退治よりそちらが優先だ」
「いや、確かにそうだが…」
「それに、獲物がここにいると分かって向かって来られるより、奇襲をかけた方が勝率が上がる」
「……分かった、そうだな。では行こう」

アルゼの言い分に利があると、皆、キラキラ光る蜘蛛の糸を辿って行くことにした。

「でもこれ、肉眼じゃ全然見えないぜ」
「どうするよ?」

細い細い糸は幾重にも巡らされ、木々の間を縫うように木立の中へ消えて行く。
アルゼは少しかんがえた後、シンに尋ねてきた。

「シン、あんた、これを辿って巣に辿り着けるか?」
「ああ、できる。何だったら俺が巣の位置を探りに行って、安全なルートを確認してから引き返してこよう」
「そうしてくれるか?  あ、リナさんも一緒に行ったほうが成功率が上がるな、一緒に行けるか?」
「もちろんよ」

アルゼの言葉に、カウルは驚いて声を上げた。

「まて! リナさんは…」
「大丈夫よ、心配しないで」
「だが、こんな危ない事…」

心配そうなカウルに対して、任せたぞ、という態度のアルゼだ。
気にしてくれるのは嬉しいが、実際リナは、全然平気だった。
仲間二人の間に微妙な空気が流れ始めたその時、低く心地よい美声が静かに響き渡った。

「カウル、仲間を心配する気持ちは分かるが、だからこそ仲間を信頼することも大切だぞ。リナは自分のできないことは安請け合いなどしない、命が掛かっているからな。アルゼはリナの力量を信じて、それが分かっているからこそ、尋ねたんだ。自分達のリーダーの判断を信じろ」
「っ! …分かった、すまん…リナさん、気をつけてな」
「ええ、心配してくれてありがとう」

納得したらしいカウルは、頷いて声をかけてくれた。

「では、そうだな、皆ここから少し離れて、あの岩陰の辺りに隠れておいたほうがいいだろう。魔獣も一箇所にとどまっているとは限らない。むしろ縄張りであるここには様子を見にくると思っておいたほうがいい。テン、あとは頼む」
「行ってらっしゃーい」
「分かった、宜しく頼むぞ」

こうして二人は皆と別れて、キラキラ糸を辿って森の中へと足音を立てずに入っていった。
飛ぶように歩いていくシンの後に続いて、そうっと静かについていく。
シンはまるで糸がはっきり見えているかのように、しっかりした足取りで森の中をドンドン進んでいった。
その様子を見ていたリナは、皆から離れてだいぶ経ってから小声でシンに、そっと聞いてみた。

「ねえシン、もしかしてあなた、一人でならとっくに対処できていたんじゃない?」
「…まあ、そうだな。だが、それではあの者達が経験を積めないだろう? リナも含めて、こういう事は、己で体験して経験を積んで、力にしていくものだ」

(やっぱり、そうなのね…)

シンはきっと、自分達の事を考えて、ワザとこちらに合わせてくれているのだ……

(シンの実力は多分、こんな物じゃない)

なんとなくだが、そんな気がしていた。

(あの、魔獣なんか物ともしないフェンが喜んで従っている人、だものね)

それにだ、フェンは魔獣を魔石ごと、ペロリと食べてしまう。
つまりは、魔物を退治しても証拠を提示出来ない場合が圧倒的に多いはずだ。
それでも冒険者の中ではトップクラスのA級、という事は、シンの実力はかなり過小評価されていて、なおかつAなのだといえた。
アルゼもカウルも凄くいい男だし、腕っ節もかなりの物だろう。

(だけど、一緒に居るからこそ分かってしまうのよね、周囲の男達とは格段に違う、圧倒的な存在感……)

リナの為に小枝を避けて、歩き易いルートを歩いて行く目の前の頼もしい背中に、何だか無性に抱きつきたくなってしまう。
突然生まれたそんな気持ちに戸惑って、ちょっと、今はそれどころじゃないでしょっ、と自分で自分に喝を入れた。

(油断は禁物、命取り!)

この近くには、瘴気に汚染された魔獣が、ウロウロしているはずなのだ。
気持ちを引き締めて、感覚を研ぎ澄ます。

(あ、なんかこの先に…)

「シン、もうすぐ、何かが」
「ん、気付いたか、だいぶ敏感になってきたな。多分魔獣の巣だ。いいか? 叫ぶなよ」
「え? ええ、もちろん」

と、答えた先から、遠目に小さな丘のような小山が見えてきた。

(あれ? あの丘……)

黒い丘の小山が少しずつ動いているように見えて、目をじっと凝らした。

(き、き、きやあああぁぁーーっ! いっやあぁっ!!!)

黒い丘だと思ったのは、数え切れない沢山のクモが一箇所に集まった塊だった。
下にいるクモが仲間の体を超えて上に上に上がっていく度に、ほんの少しづつだが移動している黒いクモの要塞だ。
キラキラした糸はその中心へと続いている。

「よし、あれだな」

(ぎゃー、気持ち悪いっ! あんなの相手にするの~っ?)

そんな気持ちを無理やり呑み込んで、叫ぶなと言われた手前、意地でもなるだけ落ち着いた声で問いかけてみる。

「シン、あれってば、ちょっとずつだけど動いているわよ? どうする? 引き返してきても、この辺にまだいるとは限らないわ」

(考えるのもイヤだけど、どちらかが残って見張っていないといけないのかも……)

うわあ、居残りかな? と思うとゲンナリだ。心持ち声にも元気がなくなってくる。
そんな萎えた心を勇気付けるように、大きな手がそっと触れてきた。

「いいところに気づいたな、ならばフェンにお使いを頼むか」
「え? でも私たちが残っても、ここから移動しちゃったら」
「大丈夫だ、フェンは俺の居場所は絶対に分かる。俺もフェンの居場所がわかるんだが、あいつを残して行ったら帰ってくる頃には何も残っていないか、食い散らかされてちりぢりに逃げた獲物を追うハメになる。そうなると後始末が面倒だ」

(…という事は、やっぱりシン達だけでアレは全て殲滅出来るんだ……)

リナがシンの言葉を分析していると、いきなり足元で魔法が実行された感覚がした。
辺りが急に明るくなった気がして、顔を上げると……

(は??)

周りの景色が、いつの間にか全然見覚えのない風景に変わっているっ?!

「あれ? えっっ?」
「フェンは一旦引っ込ませたからな、リナ、おいで」
「はい?」
「いいよな? 魔力を分けて貰うぞ」
「あっ…」

(しまったっっーー! 油断したっ!)

輝くような紺碧の瞳と、目が、バッチリ合ってしまったっ!

(ってか、ここ、一体どこなのーーっっっ!?)

いきなり周りが明るいトロピカルな景色に変わっている…?

肌に感じる温かい空気、仄かに香る甘い花の香りに鮮やかな緑の葉がそよ風で揺れている。
先ほどの鬱蒼とした森では感じられなかった、眩しい太陽の陽射しが木漏れ日からはもれてくるではないか……
耳に聞こえてくる、パシャンという穏やかな波打際の水音に、自分の耳が信じられず思わず後ろを振り向いた。

(えええっ?? ウッソーーーっっっ?!)

目の前に広がるのは、鮮やかな色のターコイズグリーンの海だ!
どこまでも広がる青い空に白い雲が浮いている。
思わず一歩踏み出すと、ブーツの下の真っ白な砂浜が、キュ、とカワイイ音をたてた。

「何これ、一体何が起こったの?」
「あの森は気が静まらないからな。せっかくだから、二人共、リラックス出来るところがいいだろう?」

(せっかくって…何がーーっっ? てか、どうやってーーっ?)

湧き上がる疑問があまりに多すぎて、頭は大パニックだ!
現在進行形のこの状況について行けず、呆然として、身じろぎ一つできない。
そんなリナの頬に、シンの温かい指先がやんわり触れてきた。
…と、綺麗な顔がアップになり、今度は熱い唇が優しく頬を辿っている。

(あっ…この雰囲気は……)

気がつけば長い腕に抱きしめられていた。
シンの思惑を察して、頬がだんだん熱くなってくる。柔らかな黒髪がくすぐったい。
そして、あの何とも言えないない芳しい香りを含んだ空気が、そよ風と共に流れてくると、耳朶みみたぶに熱い息を、フッと感じた。
ぺろ、と濡れた舌に耳をしゃぶられて、やん、こそばゆい、と肩をすくめた途端、熱い息と共に低い美声が鼓膜に直接響いた。

「リナ…カトリアーナ」

(あ……)

初めて正式な名前を呼ばれた。ただそれだけなのに、その声を聞いた途端にパニックが収まり、心がシンの存在で一杯になった。
肩の力が、ふうと抜け安心感に包まれてしまう。自然と身体は甘えるようにシンにしなだれかかっていた。
髪を束ねていた紐が、パサと解かれると、空色の髪がふわり背中に広がる。

「綺麗な色だ…まるで天界の空のようだな」

称賛と高揚を抑えたような低い声で囁かれ、濡れた舌に、くちゅん、と耳をしゃぶられると、身体に力が入らない……
そのまま柔らかい砂浜にやんわり勢いで押し倒された。

(っあ、こんな……)

口まで出かかった言葉は、紺碧の瞳に見つめられると、ムニャムニャと意味の為さないものになった。
頭の後ろに大きな手が添えられ、しっとり柔らかく唇が重ねられる。

「ん…」

ちゅっ、と軽く唇を合わせると、あぁもう……
リナの腕は自然に、受け入れるように逞しい肩を辿ってシンの首に巻きついていた。
ドキドキと興奮した身体で足を絡ませて二人の距離を縮める。
なんども重ね合ってすっかり馴染んできたシンの唇を、軽く吸い上げたり、甘噛みし合ったり……

(私ったら何を? …だけど、だけど、やっぱりやめられないのよ~っ!)

魔力は吸い取られてはいない。はずなのに、なぜかたわむれるようなキスを重ねるだけで、ドキンドキン、と胸はますます高鳴ってゆく。
二人を取り巻く甘美な熱気に、血液が循環して身体がすぐに火照ってきた。
舌先で誘うように唇を舐められて、ふふふ、と幸せな気持ちで笑った拍子に、待っていたように、スルッと舌が差し込まれた。
甘い侵略に、応えるように舌を熱く絡まらせる。

「んん…ふ…ん~」

甘く冷たい唾液をからめとるように、お互いをむさぼりあう度、身体の熱は上昇してゆく……
シンとのこの淫らなやり取りは、やっぱりとても気持ちいい。

(…ぁん、なんか、身体が熱い…)

着込んだ分厚い巫女服から、火照ってくる肌の熱を逃がすように涼しい夏の薄いドレスに、フッと服装を取り替えた。

シンはリナの服装の変化にすぐに気が付いたらしい。
着込んだ戦闘服がリナの柔らかい肌に食い込まないように少し自分の身体を持ち上げたかと思うと、瞬間シンも薄い上着姿になっていた。

(あ…やっぱりシンも魔道具の服なのね…)

柔らかい生地が身体にこすれる新鮮な感覚に、妙に納得している自分がいる。

邪魔な武装を解いてお互いの手足をも絡ませ、早急に何度も貪りあうような深いキスを繰りかえす。
やがて甘いやりとりで快感が増し、つられて頭がボンヤリしてきた。
いつの間にか互いの熱い舌がリズミカルに絡まりあって、動きが官能的になってきている。
深く差し込まれる舌にシンの貪欲な欲望を感じとった。

今までとは違う、熱に浮かされたような激しいキスだった……

繰り出されるリズムに心も身体もますます疼いてきて、自然と応えるように腕に力が入った。

シンとはもう何度も唇を重ねている。
だがこんな風に、身体に所有権を訴える独占欲丸出しのキスをされた事はなかった……

俺のものだと言わんばかりの強引な深いキスにも、気持ちいい…とふわふわの陶酔感しか感じない。
ふわぁ…ん…と溢れてくる透明な唾液が、ツーとリナの口端から流れ出してきた。
それを追いかけるように、シンの唇が溢れる甘い液体を追ってゆっくり、ゆっくりと下がってゆく……

「は…んっ…」

自然と鼻を鳴らすように、喉から甘えるようなつややかな声が漏れる。

耳に響いてくるそれは普段の自分の声と、余りにも違って聞こえた。 
そしてリナが甘い声をあげ始めると、シンは強請ねだるように喉から顎まで熱い舌でねっとり舐め上げていった。
敏感になった肌に、温かく濡れた感覚を感じる……

(…んんっーー…)

「ふ…ぁ…」
「もっといいよな? リナ?」
「ん……」

リナの沈黙を了解と受け取って、シンは溢れる唾液を追って、敏感な鎖骨まで濡れた舌で辿っていく。

(ああ、気持ちいい…)

熱く濡れた舌が肌の上を滑っている。
肩の布がそうっとズラされ、暖かい空気が肌に感じられると熱い舌で露出していく白い肌を覆うようにぺろり、ぺろりと肌が舐め上げられた。

「甘いな、リナ…もっと」

(えっ? あっ…)

ドレスが、胸下まで一気に引きり下ろされた! 男の人になど見せたことのない身体の素肌があらわになる。

(うそうそーっ! 胸を見られてるっ! )

露出した胸が暖かい空気に触れると、ビクン、と大きく戦慄わなないてしまった。

(…でも、やっぱり恥ずかしいけど、シンが見たいなら…嫌じゃ、ない……)

恥かしくて震える睫毛を、ソッと持ち上げると、紺碧の瞳が愛おしそうに目を細めてこちらを見ていた。
そしていかにも、大いに満足だ、と言わんばかりの溜息をつく。

「綺麗だな、堪らない…」

リナが見つめていることに気づくと、大胆にも優しく笑いかけてきてそのブルーグレイの瞳から目を逸らさない。
じっと見つめたまま、顔を下ろしてゆく。

(あ、そんな……)

シンの意図に気づいて、胸を震わせ真っ赤になったが、両手は柔らかい黒髪を引き寄せ勇気付けるように、やんわりそうっと自分の胸に押し付けていた。

(あっ、うそっっ…私ってばっ…)

そんな甘やかすような仕草に満悦顔が、ニヤリと笑って、目を見つめたまま、緊張と期待で細かく震える淡いピンクの頂きに唇を近づけていった……

ドキン、ドキン、ドキン…

「あ…」

シンが口を開いて、味見をするように、ペロン、とピンクの蕾を舐めあげる。
リナは抗議の言葉を口にせず、甘く戦慄おののいて睫毛を伏せた。
熱い唇に蕾を含まれると即座に、我慢できないとばかりに大きく、カプリ、と柔らかくかぶりつかれた。

(ひゃ…ん、あぁっ…)

ちゅく、じゅく。

「…や、やん…ぁ…ァ…」

強く吸い上げられると、バラの蕾のようなピンク色の先端が疼きだす。
お腹の奥から魔力が湧き上がってくるのを、今は強く感じている。
その温かい流れは、だんだんウズウズする胸の先端に向かってきていた……

「ああぁぁっ……!」

ビクン、ビクんと背中が痙攣するほどの快感が身体を駆け巡る……
未知の感覚に心の中で、「あん、いやっ」と叫んで顔を反らせるが、声には出さなかった。
どころか、リナの両手はがっちりシンの頭を抱え込んで、もっと…と胸に押し付けていた……

ジュ、じゅる、ジュウウウッーー
何も出ない筈の胸から、濡れて啜られる音が響き渡る。

(あん、ダメっ、こんなっ、あぁーー!)

快感に流され極まって、感じるのはいきなり高みから放り出されたフリーフォールのような浮遊感だ。
甘いわななきが、ビクビクと止まらなかった。
最後にひときわ、ジュルルと強く吸われるとようやく満足したのか、濡れた口の周りを手の甲で吹きながらシンは胸から顔を離した。
ゼエゼエ、と荒い息をしているリナの乱れた服を優しく直すと、ブルーグレイの瞳を覗き込んでやっと焦点があってきた目を合わせる。

「時間もないし、これくらいでやめておく」
「はっ…ハァハァっ」

唇に軽いキスが、チュッと落とされた。
鼓動がまだ激しくドキドキと鳴っている。
その時、ボンヤリした目がシンの背中の後ろに、大きな真っ黒い影を捉えた。

(えっ…何?)

だが瞬きした瞬間、それは消えていた。

「大丈夫か、ほら、おいで」

長く逞しい腕が身体に巻きつき、ボーとしたままゆっくり身体を起こされる。

「あ……」
「しぃ、黙って」

気がつけば二人は、肌寒く薄暗い元の灌木の茂みに座り込んでいる。
鳥のさえずる声や虫のなく声さえ聞こえない、枯れた葉が舞い上がる寂しい森の中だ。
遠くには、間違いなく先程より少し横に移動したタコグモの塊が……


(うっわあ、一体どうなってるのーーっっ!)

一気に頭が冷める。条件反射で、ハッと背を屈めて油断なく飛び出せる体勢に構える。
タコグモが移動している距離がほんの少しである事から、それ程、時間は立っていないものと思われた。
カサ、とブーツの下で枯葉が小さな音を立て、ドクン、とさっきとは全然違う意味で胸が鳴り、冷や汗が出てしまいそうだ。

(何だったの? 今の? 魔法…なの? だけど、聞いた事ない、あんな……)

幻を見せられたのか、知らないところに連れて行かれたのか、それさえもはっきり分からなかった。

「リナ、動くな、一匹こちらに近づいて来る」
「ひっ…」

先ほどと打って変わって冷静な声が注意を促す。

(落ち着いて、万が一見つかっても、大丈夫よ。深呼吸、深呼吸…)

スーハー、と小さく息を吸ったり吐いたりしている横で、頼もしい腕は身体に回されたままだ。
シンは落ち着き払っている。
フラリと群れから離れた一匹は、途中で進路を変え、今度は巣の後ろ側にヨロヨロ移動していった。

「フェン、小さくなって出て来い。音を立てるなよ」
「お待たせ、おっ? 飯の時間か?」
「残念ながら、お預けだ。ここで見かけた、普通の狼ぐらいの大きさになってくれ」
「ほいよ」

小さな黒い煙と共に手のひら大で現れたフェンが、シンの命令を受けて大型犬ぐらいの大きさに瞬く間に変化する。

「仕事だ。俺たちが通って来た道を逆戻りして、テン達をここまで案内して来てくれるか? その際に、ほら、あの蜘蛛の糸があるだろ? あれにあいつらがれないよう注意してやってくれ。一応引っ掛からないよう十分距離をおいたルートを取ったつもりだが、新たな糸があるかもしれないしな」
「了解、んじゃ行ってくる」
「魔獣に見つかったら食っていいぞ。あいつらの安全が第一だ」
「やっほう~」

喜び勇んで駆け去っていくフェンを見送りながら、リナの胸中は目の前の魔獣の恐怖より、先程シンと体験した快感の煩悩を追い払うのに精一杯だった。

(む、胸…胸から、魔力吸われたーーっ!)

全身真っ赤になったリナの頭に、テンが言った言葉が頭に蘇ってくる。

(他の方法はお勧めできない、ってこの事だったのね、そりゃあ、こんな事、恥ずかしくって皆の前でなんて、絶対頼まれてもごめんよ、無理だわ……)

まだキスの方がマシよ…と燃えるような頬を抑えるリナは、この時点ですでにうっかり大きな見落としをしていた。
普通は『恥ずかしいっ』と感じる前に、『嫌だっ』と拒否感がくるべき事に、気付いていなかったのだ。

「リナ、大丈夫か? 体調が悪いのか? 顔が真っ赤だぞ?」
「だ、だ、大丈夫…かな? ちょっと水、を飲んでみる」
「服、そのままでは寒いだろ、元に戻した方がいいんじゃないか? 調子が悪いようなら、無理するな、休んでいろ」
「ぁっ! そうね、ウッカリしていたわ」

身体が火照っていたせいで気づかなかったが、自分はまだ夏用ドレスの格好だっ!
パッといつもの巫女服に戻すと、リナの体温上昇に気づいたシンが、そっと手を額に当てて来る。
心配そうな紺碧の瞳に、大丈夫、と頷いて髪を結び直し、ちょっとこんもりした落ち葉が積もる木の根元に座り込んで水を取り出した。

「すまない。もしかして、調子に乗って魔力を吸い取りすぎたのか?」
「ち、違うのっ、ほら、あんなクモがウヨウヨしてるとこ見てたら、気持ち悪くなっちゃって」

感覚では魔力はまだ全然たっぷりと残っている。
咄嗟に慌てて否定したリナを見て、シンは明らかに、ホッと安心したようだった。

「そうか、ほら、俺にもたれて、皆が来るまで休んでおけ」

(え? あ…なんか…)

安心できる腕に抱かれると思考がぼんやりしてきて、シンが額に当てた手が、トン、と離れると、フッと意識が遠退いた。 

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