薮原劇場１ 図書室編

３ 正しいような… 但し、異様な薮原

　薮原さんは司書資格もなく、小島さんや私より年下で実務経験も浅い。布由ちゃんよりは年上だが実務経験は布由ちゃんの方が長い。樋口さんが一番経験が浅いが、年は上。そんな薮原さんだが人のミスした人を執拗に責めた。
　薮原さんもかなりミスが多い。また樋口さんかなと思ったら、薮原さんのミスだったということが何度もあった。だけど自分のことは棚に上げて、人のミスを責める。
　布由ちゃんの返却本の処理が不十分だった。翌日のシフトだった薮原さんがそれに気づいた。休みの布由ちゃんに電話して、３０分説教したという。それだけでは飽き足らず、そのミスを業務日誌に書いて衆目に晒した。連絡事項の欄に目いっぱい、細かい字でびっしりと書いて。そしてスマホにも長文メールを何通も送ってさらに説教したという。
　もはやロジハラ、モラハラレベルだ。
　ミスでもないことでもよく責めた。布由ちゃんが村岡図書室、薮原さんが曽根図書室に勤務していた頃のこと。村岡図書室には布由ちゃんともう一人、芽衣子さんが交代で勤務していた。布由ちゃんが休みの日に、芽衣子さんも休むことになり、代わりに薮原さんが村岡図書室に行ったことがあった。そのことで布由ちゃんはスマホに薮原さんから長文LINEで三通も送られて説教されたという。〈動かせない予定があるならちゃんとそのことを連絡すべき、連絡しないのが悪い〉と、くどくどと送られたという。
　布由ちゃんにしてみれば、自分の休みの日に出かける予定を入れていただけなのに、薮原さんから理不尽な説教されたことになる。説教というより頭ごなしの叱責だ。
　薮原さんが二人の代わりに入ることになったのは、何も急な話ではなかった。１カ月近く前にはわかったことだった。それまでも薮原さんは二人の代わりに入ることがあった。
　その日は薮原さんも休みで予定があったというわけでもない。勤務場所が違うだけだった。しかも、村岡図書室は曽根図書室より仕事が楽だった。それなのに怒る意味が分からない。説教LINEを何度も送るなんて異様としか思えない。