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執事長の復讐

執事長の休暇5日目

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 執事長は今日も表へ顔を晒しに行く。周りから国外追放者が堂々と歩く姿に目を奪われ。衛兵たちは避けて行く。その堂々たる姿に昔を知る人達が彼に声をかける。石を投げられたりしないのは何故なのかを考える。


「おめぇ……バルバロスか?」

「そうです。偽物ではないです」

「お、おう。なんだその……口調」

「あっ……ああ。バロバロスだ」


 背後の幽霊が爆笑する。ぎこちなく言う姿に執事長は頭を掻く。


「………もう昔の自分には戻れませんね」

「ごめん!! カタコトで笑った」

「ひどい方です」

「お、おう……なんだ一人でに話はじめて」

「ああ。幽霊が見えます。あなたの背後にも……」

「ひぃ……こわ!?」


 まるで狂人を見るような目で見たあとにそそくさと逃げて行く。そして皆が距離を取った。


「はぁ……距離を取っくれた方が楽ですね」

「そうか?」

「そうですよ。だって……彼が話しやすいと思います」


 執事長は目の前から歩いてくる冒険者の一人と対峙した。


「……君がSSSクラス。呼び名は悪童だったかな」


 金色の髪を揺らす何処か自信ありげな姿の彼に執事長は頷く。


「もう、ランク外ですが」

「場所を移しましょう。我々全員と戦うとここの人達に被害が出ます。郊外に出ましょう」

「わかりました。願ったり叶ったりです」

「バルバロス……」

「なんですかキサラギさん」

「……何を考えてるの」


 決闘を受理したことを理由を聞いている。


「王家の盾、剣などのお控えですよ」


 執事長は笑みを浮かべた。


「今日は休暇最後の日です。遊ぶくらいはいいでしょう」









 壁の上に冒険者が集まる。冒険者たちは皆、この国を代表し。他の国にはない固有の能力で圧倒してきた。その英雄とも取れる3人だった。執事長はその3人も目の前にいる冒険者の仲間だと知っていた。


 目の前にいる金色の短髪は召喚士エルと言う。すでに3人の一人の能力で召喚士は強化されていた。


「……ふむ。全員でかからないのですか?」

「SSSランカーが束になるのは恥です」

「恥ですか……」


 執事長は真っ直ぐ睨み見続ける。


「では。先に名乗りましょう。SSSクラス冒険者の一人!! 魔神の召喚士エルと申します!! その召喚魔法は魔神と魔神率いる軍団を用意できます。どうでしょう? 降参し……お国を出てっていただいてもいいのですよ?」


 自信満々に杖を執事長に向ける。金色髪の召喚士はニヤリとした。


 執事長は……


「……」

「あなたも言いなさいよ」

「いえ……」


 頭を押さえる。そう……昔のあまりにもダメだった時を思いだし精神的にダメージを受けたのだ。


「……あんな恥ずかしい時期もありました」

「あなた。あれは不戦を勝ち取るための方法って言ってたわよ」

「いえ。いえ……ただの威張り散らしたいだけの屑でした。お恥ずかしい」

「成長したわね」

「はい……名乗りはいいですね」


 執事長は気を取り直し。名前を言う。なお、全部は言わない。


「旧名バルバロス……ランク外ですね」


 名乗ったあと銀時計を見る。


チッチッチッチッ


「3分ですね」

「ふふふ、では!! 行くぞ過去の英雄!! 新しき英雄は我々だ!!」


 大きな魔法陣が展開され。膨大な魔力が注ぎ込まれ…………門が開きそうになる。だが……


パチン!!


 執事長は指を掲げて鳴らす。大きな音が響き誰の耳にも届いた。そして……


ピキッ!! パリーン!!


 魔法陣が割れ、門も砕ける。


「!?」

「知り合いの女神でも召喚して戦ってもよかったのですが……時間がありません。ある女神の真理に基づき空間魔法で魔法を壊させていただきました。瞬唱を学んでください。遅すぎます」

「なっ!?」


 執事長は手を前に出すそして……指を鳴らした。


パチン!!


 地面が斬れていく。召喚士エルはそれを避けようとする。そして……


キン!!


「あっぶね……全く。召喚士は前衛じゃない」

「ブロック!!」

「……」


 目の前に大きい盾を持った体の大きい冒険者が現れた。膨大な大きさの魔法壁が執事長の攻撃を防いだのだ。


「ありがとう。死ぬとこだった」

「はは任せな!! 今度は俺様だ!! SSSランク冒険者のブロック!! 最強の盾を持つ英雄だぁ!!」

「……一騎討ちではなかったのですか?」

「召喚士の長所潰して意気がるな罪人」


 執事長はため息を吐き。銀時計を見た。


 チッチッチッチッチッチッカチッ


「3分経ちました」

「何がだ?」


スパン!!


「えっ……あっ……」


 冒険者ブロックの後ろに隠れていた召喚士の首が飛ぶ。ブロックは驚き後ろを見た瞬間だった。


 立っている。今さっきまで目の前に居た筈だと思うつかぬ間。自分の体が見えだし。大きい盾を構える姿が何故か見えた。


「えっ……」


 首と胴体が離れたのを理解した瞬間……叫ぶ。


「ぎゃあああああああああああ」

「………」


 執事長は冷たい目で倒れ行く亡骸を見つめ。壁の二人を見た。


「逃がしませんよ。死ぬ事に恐怖を抱く愚か者ども……その性根は地獄で恥じよ」


 壁の二人は慌てて逃げようとする。


「あなた……名乗りはしないのですか? 最強の治癒士でしょう」

「ま、まて話せばわかる」


 壁の上、白いローブを着た男の前立つ執事長は逃がさない。


「……命乞いでもするんですか? 命令で倒すように言われているのに?」

「ち、違うんだ」

「はぁ。本当にSSSランクですか? 情けない……」


 執事長は頭を押さえる。


「興が冷めました。何処へでもどうぞ……最強の治癒士ロードさん」

「あ、ありがとう……話がわかるんだな」

「……情けなくて何もしたくないのですよ。時間が惜しい」


 執事長はそのまま。壁を飛び降りたのだっ

た。









 ギルドの酒場で会話があった。


「二人が殺られた?」

「ああ……剣聖グロー……行くか」

「もちろん……俺は奴と決着をつけないといけない」

「……仇討ちか」

「……ああ」

「俺は無理だ。あんな空間移動されちゃどうしようもない。俺のは全体強化自己強化の極みだが……勝てる気がしない」

「ふん。同じ人間だ。強化を頼む」

「……わかった」


 剣聖グローは酒場を出る。








 都市の広場で執事長は待っていた。彼が来るのを。


「……キサラギさん。辛いなら……」

「いいえ。最後まで見届けます」

「わかりました」


 執事長は背後に気配を感じて振り返る。赤い髪の剣聖と呼ばれる元仲間だった彼が立っていた。


「剣聖グロー・ライト。素晴らしい英雄です」

「バルバロス……お前はよくも俺の仲間を」

「……仲間ですか」


 あんなのが仲間なのかと執事長は悲しむ。


「ああ。お前より素晴らしい仲間だ!!」

「……ん、それは」

「決闘の宝球。ここでは……迷惑がかかる」


 グローが球を上へ投げる。すると次元が歪み。まっさらな場所へと移動した。


 何もない訳じゃなく地面と光だけがある世界。宝球の中に吸い込まれたのだろう。平地の中には多くの亡骸と剣が刺さり。多くの戦いがあったことを伺えた。


「ここでは空間移動。大型な魔方陣や膨大な魔力行使の物は使えず禁じられている」

「ほう。真理を知っている球ですね。いいアーティファクトです」

「あるのは剣のみ。お前は昔から能力で戦ってきた。剣はどれ程かをしらない」

「……」


 執事長は銀時計を見る。


 チッチッチッチッチッチッチッチッ


 時間は進んでいた。


「30分会話をしませんか?」

「罪人と語ることはない」

「過去の真実を」

「!?」


 グローが剣を構える。


「せっかちですね。見殺しした同志で語りましょう」

「違う!!」

「……彼女から……キサラギさんから相談されてたそうですね」

「!?」

「兄弟が囚われ……一人目の前で拷問され死んだと。他の兄弟を助けたいと相談されてたでしょう?」


 執事長は背後の女性に聞いた話を聞く。


「……し、しらないな」

「しらない筈はない……聞いて見捨てた。そう、例えば……SSSクラスで英雄として祭り上げて王国での権威を貰うかわりに」

「………」


 剣を構えるのグローは止める。


「誰から聞いた……」

「………キサラギさん」

「あいつは死んだ。裏切り者か……いや……全員死んでるな。逃げた親族か」

「ぐ、グロー……」


 背後のキサラギさんが悲痛な声で名前を呼んだ。執事長は歯を食い縛る。過去の過ちの罪深さに。


「グロー・ライト。死ぬ前に聞いておきたい………動機を。何故加担したか。彼女に伝えたい。愛していただろ……君は」


 執事長は真っ直ぐ見つめる。グローがゆっくりと喋り出す。


「そう……最初は羨望だった」


 グローの目が怒りに染まる。


「その何でも出来るような強さを羨望した。お前はさも簡単げに何事もこなしてきた。最初から努力せずに」


 沸々と沸き出す泡のように言葉が溢れる。


「SSSランクを作り。格付けの幅を広げてもなお……頂点に立つお前に嫉妬した」


 聖剣を握りしめる。強く。


「俺はお前に届かないのかと……お前は誰に対しても雑魚呼ばわりし、悪口陰口を言っていた。女をひっきりなしに変えるほど遊んでいた。こんな畜生以下の強さなのかと」


 執事長は顔を押さえる。昔の自分の愚かさを言われているのに悲しくなる。過去の自分を殴りたいと何度も思っているだろう。


「お前と俺の差に……我慢できなくなった。だがそれは大勢がそう思い手を貸してくれたよ。すまんな……一人だけ庇った奴を犠牲に」


 執事長は顔をあげる。キッと睨み付けた。


「愛していた人がな。お前を庇った瞬間………本当に殺したくなった。拷問して悲しむ彼女を助ける気は……しなかったよ」


 キサラギが執事長の後ろで泣き声をあげる。執事長は方眼鏡をグローに投げつける。


 パシッ


「グロー……それをつけて俺の背後を見ろ。キサラギさんがいる」

「……ふん。妄言を」


 グシャ


 眼鏡を握りつぶす。執事長は予備の眼鏡をつけてため息を吐いた。


「キサラギさん……」

「うっ……うっ……はい」

「いいですね」

「……はい。ありがとうバルバロス」

「いいえ。彼はあなたと一緒に逝かせません……ごめんなさい」


 カチッ


「時間は関係ない。グロー……3分でも何分でも戦ってやる。ああ……ああ!! くそったれ雑魚の癖に威張り散らしやがって」


 バルバロスは過去の自分を思い出す。畜生だった自分を。


「ははは。気取った態度は何処へいった?」

「……ふん。その蛮勇。へし折ってやる」


 バルバロスは剣を抜く。飾りのようにつけていた銀色の剣を抜く。キサラギは気がついた。


 懐かしい自分の剣に。死んで放置され、錆びていた筈の剣に。自分の持っている時より輝いている事を。


「飾りでつけていた剣を抜いたか。お前は魔法使い。剣など使えないだろう。ここにいる亡骸は全て英雄を超えし者たち。俺が倒してきた。故に努力しないお前に負けはしない!!」


 黄金の剣を構えて振り払う。それにバルバロスは合わせて防御した。


 ガッキン!!


 周りに剣圧が飛ぶ。風が捻り、周りに砂ぼこりを舞わした。


「なに……この剣の一撃で折れないだと!? なんだその剣は!!」

「ある日な……出会った女神に錆びた剣を打ち直して貰ったんだ。銀時計もその方が用意した金属だ。銀じゃない……鉄のな」

「……何を?」

「お前は忘れたがっていただろう。だが……俺は失って気がついた。だから……形見を欲した。それにな女神は答えた。錆びた剣をもう一度蘇らせた」


 剣を打ち合い。つばぜり合いになる。しかし……鉄の剣は折れない。刃こぼれをせず黄金の剣の方に刃こぼれを起こす。


 ギチギチギチ!!


「グロー!! 聞け!! この剣の銘は如月!!」


 ギャン!!


 バルバロスがグローの剣を弾き。グローが距離を取る。それに肉薄し剣を振るう。


「な、なに!? お前は!!」

「キサラギさんはな……お前を選んだ。お前を選んだから信じて助けをよんだ。だが……召喚された魔物に殺られてしまったんだ。最後はお前は目線を逸らしただろう……覚えてる。伸ばした手はどっちを向いていたか!!」


 ギャン!!ギャン!!


「くっ!? お前は!! いったい何処でこんな剣技を!?」

「この剣に恥じないように努力した結果だ!!」


 ギャン!! パッリーン!!


 執事長は黄金の剣を鉄の剣で叩き割る。グローは驚く。攻撃の重さに……誰よりも重たい剣の攻撃に。そして……


 シュン!!


 グローの腕が飛び。腹に一文字で切り払われる。


「がはっ!!」

「………お前の剣は軽い」


 ゆっくりとグローは倒れた。そしてバルバロスは近づき。予備の眼鏡を取り出す。少し割れてしまった方眼鏡を彼にかざす。


「!?」


 腹や腕から血を出し沼を作るなかで。彼は見る。キサラギの姿を。そして……キサラギは目線を逸らした。


「妄言じゃないだろ。雑魚め……」

「げふっ……そ、そんな……」

「すまない。本当にすまない……俺が悪いんだ。俺を恨め」


 バルバロスの影がグローに伸びる。


「グロー。彼女の元へは行かせぬぞ」

「ぐふぅ……ま、まってくれ……」


 グローは手を伸ばすしかし……影の中から手が伸び彼の手を掴んだ。さすが英雄か切られても傷が治っていく。


「むぐっ……」


 黒い手が口を押さえる。そして……影に彼は落ちた。


「…………キサラギさん」

「はい」

「……もっといい奴を好きなってください」


 執事長は愚痴ったのだった

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