7 / 14
執事長の復讐
執事長の休暇3日目
しおりを挟む王国内の会議室に重鎮と新参が集まった。深い深い静かな深淵のようなドス黒い空気の中で顔をつき合わす。その中できらびやかな服を着た王が声を出した。
「ある冒険者ギルドの集会所にアヤツが現れたらしい。名をバルバロス・グランドレッドノート。過去にギルドの最高峰SSSランクを持つ。凄腕の冒険者だ。半分ほど新参者も居るだろうかから説明しろ」
王の側近らしい痩せこけた男が説明し出す。
「では、今現在SSSランクの冒険者は多くいます。では何故彼が危険なのかはご存知ですね。そうです、彼は初代にSSSランクを自称しそれがいつのまにか認められるほどの実力者であり創始者でした。何処から生まれたかわからない人物で……あまりにも傍若無人の振る舞いは皆を困らせる邪魔物でした」
側近がボロクソに貶し出す。
「とにかく。王国に仇を成す輩であり。命令されず使い勝手の悪い畜生でした。んっ?」
ボロクソに貶す中で一人の貴族が手をあげる。
「聞いてもよろしいですか?」
「なんでしょう? ローバ卿」
「彼が危険なのはしっています。しかし、何故国外追放を?」
「国民の支持が低く。尚且つ強かった。我々の支持も低く。依頼を文句ひとつ言わない奴でもないほどのくそったれだった。故に全員で団結して追放するために手を打った」
「我々の駒にならないからと言う事でいいですね」
「そう。それと……奴を追放した結果。国民の支持があがった。悪者としていい活躍をしてくれたよ」
「……そうですね。聞けば酷い男だった。しかし、私の情報網でも大概君たちを酷いですね」
場の貴族たちが一斉にローバ卿を見る。深い笑みを溢して発言する。
「地下の拷問室はまーだ現役でしょう? 心臓を捧げると良いことあるのですか? 悪魔でも喰いはしないですよ」
ダンッ!!
一人の老人が机を叩き指を差した。
「何を言っている!! 妄言甚だしいぞ!! この若造を追い出せ衛兵!!」
「狼狽えると。ある・・と言っているようなものです。悪童バルバロスを追い込むのにある家族を犠牲にしたそうですね。キサラギ・ナイツ。家族は離散し……生きているそうですね」
旧き人物で皆が顔を変える。何故それを知っていると言った顔つきだった。
「別に悪童を追放はアイツが悪いです。しかし……その仲間の家族を脅し、自殺に追い込む事はどうなのでしょうね。拷問して殺したのはどうなのでしょうね」
「衛兵そいつをつまみ出せ!! 王の前での狼藉は許せん」
「その通り。我の前でその妄言!! 死に値する。首を跳ねよ!!」
「……王。あなたもですか……あなたも共犯か!!」
ローバ卿が立ち上がり。顔に手を触れた。すっと撫でると顔が変わる。そこに現れたのは若き執事長の姿だった。
「なに!? お前……誰だ!!」
「お忘れか旧き重鎮たち帰ってきたのだ。今日は顔をお見せだけで帰りますが……復讐はくだらんと思いましたが!!」
べちゃくちゃ!!
空間に切れ目が生まれテーブルの上に赤く濡れた肉が落ちてくる。テーブルの上の惨状に一部の貴族が悲鳴をあげる。
今日、死んだ人を転移させたのだ。
「いまだにおぞましい事をしている故に許さないぞ。お前ら」
執事長は叫ぶ。
「私は帰ってきた!! キサラギ・ナイツさんの復讐にな……悪童バルバロスが帰ってきたぞ!!」
衛兵がハルバードを持って背後に立とうとする。執事長は銀時計を持ち時間を見た。
チッチッチッチッカチッ
「ん……時間ですね」
シュン
衛兵のハルバードが空を斬り。執事長が居なくなった事に驚きながら周りを見た。
「何してる!! あやつを探し殺せ!!」
側近が叫ぶ。しかし……一部周りの目線が疑惑の目線となった。
「何してる!! お前ら全員、あやつが王を貶めようという狼藉だ!!」
その瞬間。疑惑の芽は埋め込まれるのだった。
*
城の尖塔の屋根の上に執事長は座る。隣の女性に聞く。白い透明な彼女はこの地に捕らえられていた。あの墓の前で。
復讐のために。
「……何年も前に亡くなっていただろう。牢屋には……誰もいなかった」
「ありがとう……そして……ごめんなさい」
「いいえ。悪いのは全て自分です。王にも逆らい、誰にも従わなかった私の落ち度です。回避できた事でしょう」
「……文句を言うならもっと早く改心して欲しかった」
「すいません……ですが。変われた切っ掛けも皮肉な事に君の死からでした。多くの方が私のための犠牲となったのですね……」
執事長は自分を攻め続ける。
「……ふぅ。昔より。丸くなりましたね」
「お嬢様のお陰です。何がよくなかったかを全て教えてくださり。執事として迎えて下さいました。今、思うなら同じように墓に入れと言いたいですが……恩を返しきってません」
「墓の前で言ってた。オオコさんの事?」
「違います。オオコさんは同………新しい仲間です。それも、キサラギさんのように凄くお強い人です」
「……妬けるなぁ」
「?」
執事長は隣を見た。
「私にもそう言って欲しかった。足で纏いばっかし言ってさー」
「すいません……本当にすいません。すいません……いや……すいません」
「でも。本当の事だった。追放まで足を引っ張った」
「……」
パカッチッチッチッチッ
執事長は銀時計を取りだして時間を見る。空を見ると彼は笑顔になった。
「にしても。今は清々しいです」
「どうして?」
「キサラギさんに出会えた。自己満足かもしれませんがそれだけで良かったです」
「……あっ。それは……」
彼女が気が付いた。銀時計に掘られている文字を。執事長はそれを優しい眼差しで見る。
「一時も忘れた事がないですから。もっと早く……もっと早く……気が付いていれば良かったですね。失った物の大きさを。あなたのその正義感は大好きでしたよ」
執事長の止まった時が動き出すかのように言葉を口にした。
「………うれしいわ。忘れてなかったのね。グローと大違い」
「彼は覚えてますよ? 墓で会いました」
「彼は墓に近付かなかった。懺悔もしない。何もなかったとして忘れようとしている」
「……」
「……」
執事長は眉を潜めた。もしやと思い口にする。
「彼も共犯……」
「……」
沈黙は肯定だった。そして……本当に執事長は悲しい表情をする。
「彼の方が……あなたを愛してたと言うのに」
*
私はヤバイ物を見た……あの執事長が復讐を始めている。尖塔の上で独り言をいい。まるで出逢った最初の頃のような容姿で眼下を見ていた。
しかし……途中から辛そうな表情をする。
声は聞こえないが。
その復讐は辛いものを思い出させている気がしたのだった。
「おじさま……」
私には何が出来るか……わからない。
0
お気に入りに追加
205
あなたにおすすめの小説
アレキサンドライトの憂鬱。
雪月海桜
ファンタジー
桜木愛、二十五歳。王道のトラック事故により転生した先は、剣と魔法のこれまた王道の異世界だった。
アレキサンドライト帝国の公爵令嬢ミア・モルガナイトとして生まれたわたしは、五歳にして自身の属性が限りなく悪役令嬢に近いことを悟ってしまう。
どうせ生まれ変わったなら、悪役令嬢にありがちな処刑や追放バッドエンドは回避したい!
更正生活を送る中、ただひとつ、王道から異なるのが……『悪役令嬢』のライバルポジション『光の聖女』は、わたしの前世のお母さんだった……!?
これは双子の皇子や聖女と共に、皇帝陛下の憂鬱を晴らすべく、各地の異変を解決しに向かうことになったわたしたちの、いろんな形の家族や愛の物語。
★表紙イラスト……rin.rin様より。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
【完】転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい
冬月光輝
ファンタジー
【勇者】のパーティーの一員であったルシアは職業を極めては転職を繰り返していたが、ある日、勇者から追放(クビ)を宣告される。
何もかもに疲れたルシアは適当に隠居先でも見つけようと旅に出たが、【天界】から追放された元(もと)【守護天使】の【堕天使】ラミアを【悪魔】の手から救ったことで新たな物語が始まる。
「わたくし達、追放仲間ですね」、「一生お慕いします」とラミアからの熱烈なアプローチに折れて仕方なくルシアは共に旅をすることにした。
その後、隣国の王女エリスに力を認められ、仕えるようになり、2人は数奇な運命に巻き込まれることに……。
追放コンビは不運な運命を逆転できるのか?
(完結記念に澄石アラン様からラミアのイラストを頂きましたので、表紙に使用させてもらいました)
加護を疑われ婚約破棄された後、帝国皇子の契約妃になって隣国を豊かに立て直しました
黎
ファンタジー
幼い頃、神獣ヴァレンの加護を期待され、ロザリアは王家に買い取られて王子の婚約者となった。しかし、侍女を取り上げられ、将来の王妃だからと都合よく仕事を押し付けられ、一方で、公爵令嬢があたかも王子の婚約者であるかのように振る舞う。そんな風に冷遇されながらも、ロザリアはヴァレンと共にたくましく生き続けてきた。
そんな中、王子がロザリアに「君との婚約では神獣の加護を感じたことがない。公爵令嬢が加護を持つと判明したし、彼女と結婚する」と婚約破棄をつきつける。
家も職も金も失ったロザリアは、偶然出会った帝国皇子ラウレンツに雇われることになる。元皇妃の暴政で荒廃した帝国を立て直そうとする彼の契約妃となったロザリアは、ヴァレンの力と自身の知恵と経験を駆使し、帝国を豊かに復興させていき、帝国とラウレンツの心に希望を灯す存在となっていく。
*短編に続きをとのお声をたくさんいただき、始めることになりました。引き続きよろしくお願いします。
神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>
ラララキヲ
ファンタジー
フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。
それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。
彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。
そしてフライアルド聖国の歴史は動く。
『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……
神「プンスコ(`3´)」
!!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!!
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇ちょっと【恋愛】もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる