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執事長の復讐

キナ臭い世の中

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ガッ!!


カチャ!!


 私の執務室に銀色の鎧を纏った側近のオオコが現れる。もちろん挨拶に来たのでしょう。


「……」

「……」


 オオコは難しい局面での援軍を指揮をすることが決まった。戦況は厳しいらしい。


「……はぁ……」

「冴えないな」

「難しい局面。連合軍2面の同時攻撃。呼ばれているの2方面………兵を分けるのは愚作である」

「……決まってるんでしょ?」

「1方面に向かい。撃滅し……反転し……援軍を行う」


 オオコの表情は暗い。非常に難しい事を言っているのだ。しかし、私にはそれが一番なのだと思う。


 援軍を耐えれるかがどうかが今の局面で重要である。


「あぁ……執事長に会えなくなるな」

「うーん。僥倖」

「………ふぅ帰って来て……やる絶対に」

「死んだら一人勝ちなのにね」


 二人で睨み合い。そして……クスクスと笑いあった。皮肉を言い合う仲である。


「おじさまにはお会いになりましたか?」

「いいえ」

「……じゃぁ……」


カランカラン


 私は鈴を慣らす。もちろん数分後。どこから聞いたのかノック音の後に執事長は入ってきた。


「お嬢様お呼びでしょうか? これは……将軍どの」

「側近です」

「申し訳ありません。役職名が変わられたと聞いておりました」

「……まぁ今は将軍ですが」


 オオコが寂しそうな顔を執事長に向ける。


「厳しい戦いになる。執事長のコーヒーが飲めなくなるな。美味しいのに」

「お褒め下さりありがとうございます……そろそろ出発の時間ですね……」


 カチッチッチッカチッ


「そうです。これを……お持ちください」


 銀時計を見て時間を確認した執事長。そして、スッと無の空間から何かを取り出す。それを執事長はオオコに目に前に掲げた。オオコは両手を重ねてそれを受けとる。


 私も見るとなにか布袋に戦勝祈願と書かれた小さな四角い物だった。


「東方では御守りといい。何処かにつけて安全や内容に祈願するものです。私は勝つことを祈願しております」

「ふっ……ふふ。執事長……なかなか古風な物だな。御守りは知っている」


 長めな紐をほどくオオコ。執事長と私は驚いた。なんと首に紐を回してかけるのだ。鎧と全く似合ってない御守りだが。オオコは満足そうにそれを着ける。


「執事長……行ってくる。勇気が出た。ありがとう」

「それは……光栄でございます」


 執事長は頭を下げ、それに手の裏を見せて答えたオオコが執務室を胸張って出る。その背中は堂々としていた。


「……おじさまは行かれない? 勝てるでしょう?」

「お嬢様。私は執事長でございます。戦いは戦いのプロに任せるのが最善かと思われます」

「なら……執事長が適任だろう」

「……お嬢様」


 執事長は方眼鏡をくいっと直しながら目を閉じて語る。


「私めはオオコ殿を信じて待つ事が大切と思います。いいえ……学びました。何事も首を突っ込むことは余計なお世話と言うものです」

「……そう。おじさま強いのに」

「お嬢様をお守りする力でございます」

「………」


 私は顔を伏せた。ちょっち嬉しい。


「それでは……用件はなんでしょうか?」

「鈍感め……」

「……申し訳ありません。流石に心までは読めません。ご用件をお話していただけるといいのですが?」

「コーヒー淹れてほしいわ」

「かしこまりました」


 私はため息を吐く。そして、早く帰ってこいと思うのだった。張り合いがない気がするのである。


「ミルクはどうされますか?」

「ブラック無糖」

「……珍しいですね」

「今は甘いのはいらないの」


 そう。出し抜くのは勘弁してやる。側近よ。







チッチッチッチッカチッ


「……お時間です」


グワンッ


 執事長は暗闇の中で小さな亀裂を作り、東の最前線に顔を出した。頼まれたお仕事のために陛下に会うために。


 天幕の中でローブ着込んだ陛下とその脇に青いウィンディーネと言う妖精の四天王と顔が会う。


「陛下……援軍は魔王の元へ」

「そう。教えてくれてありがとう」

「……持ちそうでしょうか?」

「空間転移もある。安心してそちらの敵を撃退してくれて構わないと伝えてほしい」

「かしこまりました」

「執事長!! サラマンダーは?」

「無事でございます」

「そっか……」


 執事長は妖精の青い髪女性にウィンディーネ手紙を渡す。


「サラマンダー様からです。返信は次回」

「はい……ああ。早く帰りたいですね」

「ウィンディーネ殿。そうでございますね」


 四天王で戦線の入れ換えがありその中で休暇が被るのである。


「その執事長……今度、服をどんなのを着ていけばいいかな?」

「ウィンディーネさまなら何でもお似合いですよ」

「そ、そうかな……」

「そろそろ軍議に戻ってもいいかな?」

「あっ……陛下申し訳ありません」

「うん。さぁ……耐えて帰ろう。執事長頼んだよ」

「はい」


 執事長は銀時計を見る。


チッチッカチッ


 そして、その場に居なかったように消えた。


「空間魔法の精度は本当にすごいな彼は……」


 陛下は眼鏡をあげながら。天幕を出る。そして、部下たちに奮起を促した。援軍がすぐに来ると嘘をついて。








「来た!!」


チッチッカチッ


 銀時計を持った執事長は砦の上に現れる。緑の髪の魔王と赤い燃えるような髪のサラマンダーが砦の遠くを見ていた。


「遅くなりなした魔王さま」

「大丈夫。援軍は到着してます。大部隊で攻勢に出る予定です。時間はかけられません。私たちがどれだけ頑張るかで……旦那の方の決着が決まります」

「そうですね。お伝えしました。時間は稼ぐでしょう」

「……ふふ。サラマンダー行きましょう」


 燃えるような髪の四天王は執事長を見る。


「ウィンディーネ……元気だった?」

「はい。帰りたいと仰ってました」

「ふっ……約束してるからな。一緒に遊びに行こうと……早く決めよう。待たせては悪い」

「そうですよ。サラマンダー……妖精だからって遠慮はいらない」


 砦の上から魔王とサラマンダーは飛び降りる。そして多くの兵士の前に立ち演説を始めた。執事長はそれを見ながら、銀時計を取り出したのだった。








チッチッカチッ


 執務室に執事長が現れる。私は向き直り話しかけた。


「状況」

「お嬢様。無事……勝てそうです」

「そう。お父様とお母様は元気でしたか?」

「はい。私が出る幕がないほどです」

「それなら……安心ね」


 私は胸を撫で下ろす。


「群雄割拠の総力戦は大変。でも……これに耐えたら変わるのよね?」

「もちろんです、お嬢様」

「……ねぇおじさま。自分の策や予想が当たった感想はありません?」

「感想はございません。お力になれて喜ばしいかぎりです」


 私は執事長の謙遜に笑みを溢しながら彼の掌の上のような気分になるのだっただからこそちょっと思う。


 これも予想通りなのかと。


「母上から。撃滅後に緊急で話があるそうだ」

「かしこまりました」


 顔に何も映らない。格好いい顔だけがある。


「……」きゅん


 見るのは毒だった。 

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