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極悪令嬢に堕ちる

悪魔の契約

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 私は老人会の説明を一通り聞き終えたあとそのまま空間をねじ曲げて家まで繋いでくれたブルーライトの家主に感謝する。お礼を言ったあとに何かあれば相談に乗ると青い魔石を渡してくれた。同じ同僚みたいな軽い雰囲気である。

 老人会とは何とも、フレンドリーな人ばかりと聞く。だからこそ世界を愛している者が入っているのだろう。

 愛国心ならぬ、愛国界と言えよう。

「はぁ……つかれた」

 気が抜けてそう呟くとドタドタとした音が聞こえた。

「お姉ちゃん!?」

「ああ、ルビアちゃん……ただいま」

「魔力を拾ったらお姉ちゃんがいたの、空間歪みがあったし……何かあったんです?」

「老人会参加が決まったわ」

「!?」

 かわいい顔で大きいリボンを頭に乗せる銀髪娘のルビアちゃんが驚いた顔をする。この娘、魔法で身長を少し削ったらしい。よくやるなぁと思う。それが何故か理解できた。

「エルダーですか?」

「ええ、エルダーです。あなたは?」

「二等魔法士です……エルダーは階級ないですよね」

「みたいね」

 エルダーは階級外の特別枠らしい。階級制度の理由はもちろん、戦争の時に便利だからだ。

「す、すごい。し、知り合いが……それもお姉ちゃんが」

「ねぇねぇ……ルビアちゃん」

「あっはい!!」

「今日の衣装可愛いけど!! どうしたのこれ!?」

「かわいいですか!! やった!! あのですね!! 身長を削る薬が出来たので幼女服のアレンジしてみたんです。大きなリボンで可愛さをアップ!!」

「いいなぁ……私は似合わないね」

「身長を削る薬いります? 死ぬほど辛いですよ。血を吐きます」

「劇薬ぅ……大丈夫。私はこの姿が好きだから。あと風呂に入りたい。臭うでしょ?」

「はい!!」

「……」

 満面の笑みで無邪気に毒づく彼女に私はちょっとショックを受けるのだった。すぐに入ろう。







 お風呂で臭い流し終えた後、私は自室へと戻る。するとそこには本を読んでいたバーディスがくつろいでいた。人が居るのに少し驚いたがそんな表情を表に出さずにいると視線に気付いたのかバーディスが顔をあげる。続いて後ろからルビアちゃんが顔を出した。

「エルヴィス。おかえりなさい。あら、お風呂に入ってたの?」

「ええ、この子がゲロ臭くて気持ち悪い言うもんですから……バーディスは学校じゃなかったの?」

 後ろのルビアちゃんが大きく大きく首を振って『お姉さま!?』と言いながら涙目になり、バーディスは大きく声に出して笑う。ルビアちゃんのこの演技力はすごいと私は思う。わざとらしいが愛らしい演技だ。

「帰って来たの。いい報告あるって聞いてるわ。そうでしょ?」

「もちろん、特大のバーゲンセールがありますよ」

「……売り物ですか? お姉さま」

「力を売るのよ。案外、いい売り物になるの」

「ふふ、では期待します。試験合格おめでとう」

「ふふ、そうね。合格」

 私は対面の椅子に座り、腰を据えてお話ししようとバーディスを身構えさす。ルビアちゃんは紅茶を淹れに行かせて口を開ける。

「バーディス、あなたは何処までわかるがわからないけどエルダー。老人会所属になった」

「……それは本当に?」

 その驚いたような反応は知っているようだ。

「バーディスは知っているのね。私は全く知らなかった」

「セシル君の家主がそれなのは有名な話でしょう。政治家貴族以上に権力持ってるわ。王様だって手が出しにくいの……表では威厳がある王様が裏でこっそり挨拶しに行く噂があるほどよ。王様も老人会なのかもしれないわ」

「なるほどバーディスは詳しいと言うことでいいね」

「噂を拾ってるだけよ。ただ、本当に老人会の人と出会った事がない」

「じゃぁ、初めましてね。老人会所属、エルヴィス・ヴェニスです。よろしく」

「はいはい、よろしく。でも、すごいじゃない。親友として鼻が高いわ!!」

 バーディスがメモを一枚取り出し私はそのメモを燃やす。

「……老人会の内情は他言無用であり。許されませんよ」

「ええ、ちょっと。ちょっとだけ教えてよ」

「作品に生かしたかったら老人会に入りなさい」

「……エルヴィスが入れるなら。行けるかも?」

 私は大きく首を振り、鞄から腕輪の破片を取り出す。それを彼女に渡す。

「それを魔力で壊せるなら老人会」

「……エルヴィスこれ壊したのね。無理よ」

「じゃぁ無理ね」

 バーディスは大きくため息を吐き、腕輪の破片をポケットに納めた。盗んだけど私はまぁいいでしょと無視する。彼女の物語を作るための情報収集能力は特筆していた。元々、高飛車だった彼女を静めた結果。わかった事だった。

「でっ、エルヴィスは明日学校に顔出すの?」

「もちろん。午前中だけね。午後はアントニオ商会にお礼を言い。支援をお願いするわ」

「ふふ、わかった」

「そうそう、バーディス。あなたの傘下の令嬢を見たいね。パーティー用意してあげるわ。エルダーとして顔を見ておきたい」

「顔を見るなら今からでも集めるわ。待っててね」

 彼女はそう言い立ち上がる。私は私でルビアちゃんが慌てて淹れた紅茶を待つ。やっとの一歩を私はしっかりと感じとるのだった。







 バーディスに私は私の家の使っていない会議室にお呼ばれする。赤い絨毯がひかれているだろう、父上がこっそりと話をするための場所に息子の私が利用しようとしていた。ルビアちゃんも私の後ろに付き従う。

「エルヴィス、入っていいわ」

「バーディス、期待出来るの?」

「期待出来る子しかいない」

 扉を開けるすると椅子が並べられており、その脇に表情が固い令嬢たちが数人立っておりバーディスが言う子たちを私は見る。そんなに数は多くなく。9~10人程度であった。それに私は思った以上に多いと感じ、両脇に並ぶ令嬢の真ん中を歩く。

 視線を感じながら並びが不揃いなのがわかった。7人と2人でわかれており。何があるのかと考えるが私にはわからなかった。ただわかるのは私の用意した規則が実施されていることだけである。

 バーディスとルビアちゃんが私の横に立ち皆が深々と頭を下げる。異様な空気だが、私は笑みを作り挨拶を始める。

「こんにちは皆さん。初めましてエルヴィス・ヴェニスです。お忙しい中、来ていただきありがとうございます。お座りください」

 私がそう言うと皆さんは座る。背もたれに深く座れる中で偉そうに座れるがそんな事は私はしない。

「では、第一回。会議を初めさせてもらいますわ!! 進行役は若輩ながらこのバーディスが務めさせていただきます。エルヴィス、よろしいでしょう?」

「え、ええ……」

「それでは起立!! 私の家々、レッドライト家の子達です」

 私から見て右側の7人が立ち上がり、頭を下げる。

「エルヴィスお姉さま。顔を覚えてあげてください。私の仲のいい令嬢たちです」

「ふふ、わかった。一人一人名前をお願い」

 エルヴィスが一人一人自己紹介させる。礼儀の正しい令嬢、レッドライトの家々の令嬢たちを覚えていく。覚えるのは得意だ。

「では、着席。ルビアどうぞ」

「はい、姉さまが学園に編入してくださった結果出来たお友達です。呼称はグロウライト家としましょう。起立」

 次に3人が立ち上がり自己紹介を始める。家はまちまちであり、驚くのは同じ魔法使い名も持つのが3人だったのだ。

「へぇ、魔法使いね。三等魔士3人……いいんじゃないかしら?」

「はい、お姉さまに師事していただくと嬉しい限りです」

「そうね。エルヴィスのレッドライトの面々も魔法使いになってもらいましょうか」

 私の言葉に皆がざわつく。魔法使いは才能が大切なのではと皆が話をする。それをバーディスは『静かに』と言い黙らせた。

「では、自己紹介も終わったのでこれからの動きを会議で決めます。エルヴィス、目的は」

「はい、では」

 私は立ち上がり、胸のうちを話す。私が彼女にお願いするのは弟を取り戻すために力を貸して欲しい事。そして……そのために仲良く協力しようと言うことを説明する。そして深々と頭を下げるとともに私に出来る事を彼女たちにお返しする旨を伝えた。

 静かに聞いていた令嬢たちはそのまま頷き。バーディスが続いて私に聞く。

「では、最初に何をしますか?」

「『聖女』に久しぶりに顔を見せてあげましょう。残念ながら仲良く出来ないのでね。私の存在を見せる」

「わかったわ。明日ね」

「ええ、クラス替えしましょう。私のクラスです。でっ魔法使いとして私はあなたたちを鍛えます。いいですね?」

「エルヴィス。私も?」

「バーディス、もちろん。特別にこの面子だけ魔法使いの世界を見せてあげるわ」

 私はそう言いながら。集まってくれた令嬢達に笑みを浮かべたのだった。


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