上 下
1 / 20

好きだから…。

しおりを挟む
どうしても、大宮さんと付き合いたかった。

「おはようございます。」

「おはようございます。」

「大宮さん、それ俺が持ちますよ。」

黒瀬さんとのやり取りを見ていた。

「ねぇー。黒瀬ちゃん。大宮さんが好きなんだって、店長。不倫になっちゃうわよね?」

「湯田(ゆだ)さん、誰に聞いたんですか?」

「やだー。加胡(かこ)くんよ。バイトの、仲いいでしょ?黒瀬君と」

「へー。そうですか。」

「気をつけてあげてね。店長」

「わかってます。」

働いていて、1ヶ月を少しだけ過ぎた頃に聞いた。

絶対に渡さない。

面接の時に、初めて会った時から私は大宮さんに一目惚れだった。

大宮さんを射止めるのは、私だ。

黒瀬さんじゃない。

「店長、ちょっと今日は早く帰りたいんですが…。」

「体調悪いですか?」

「足が、痛くて立ってられなくて」

「事務所で、休みますか?」

「はい、すみません。」

私は、大宮さんを事務所の椅子に座らせた。

「装具、外していいですよ」

足首を固定する装具をつけている。

「ありがとうございます。」

「マッサージしたら、痛くなりますか?」

「足首は、痛くなります。」

「なら、ふくらはぎはどうですか?」

「そんな店長にしてもらうのは、なんか悪いですから」

「大丈夫ですよ。足を置いてください」

私は、大宮さんのふくらはぎをマッサージする。

「お風呂でやってますか?はってますよ」

「忙しくて、帰ってご飯を食べたら寝てしまってます。」

「駄目ですよ。ちゃんとほぐさなくちゃ…。」

「そうですね。」

大宮さんを独占出来て嬉しい。

「旦那さんとは、夜はしていますか?」

「えっ?」

「それだけでも、運動になるのかなって…。」

「そうですね。時々は、ありますが…。そんなに、いいものではないですよ。」

寂しい顔をした、大宮さんをもっと守ってあげたいと思った。

「何か悩んでるんですか?」

「えっ、私、不妊なんです。結婚してから、一度も避妊していないのに…。一度も出来ません。どうやら、私達の遺伝子は合わないようですね。店長。」


そう言って、笑った顔に胸が締め付けれた。

「そんな事ないですよ。タイミングが合わないだけですよ。」

「そんな事あるんですよ。タイミングだけなら、証明できない事がたくさんありますよ。店長」

抱き締めてあげたいと思った。

「少しは、楽になりましたか?」

「ありがとうございます。」

「反対も置いてください」

「いいですよ」

「駄目です」

「すみません」

こんなに綺麗な人でも、人生は生きづらいのかと思った。

友達が子供を産んで、実家に捨てたのを聞いた。

[可愛くないもん]

そう言って笑ったのを思い出した。

今なら、彼女を張り倒してやりたい。

何故、神様は彼女に子供を授け、大宮さんに授けなかったのでしょうか?

「店長は、結婚はされないのですか?」

「興味ないです。」

「店長みたいに可愛らしい人に愛される人は、幸せですね」

大宮さんは、ニコッと笑ってくれた。

「大宮さんみたいな綺麗な方に愛されてる旦那さんも幸せですよ。」

「買いかぶりですよ。私、ヒステリックですから。」

ヒステリックな大宮さんを見てみたいと思ってしまった。

「終わりましたよ」

「少し、楽になりました。ありがとうございます」

「いえ、またやってあげますから」

「とんでもないです」

「大丈夫ですよ。好きでやってますから…。ちょっと休んだら送りますよ。本部に行くとこだったんで」

「店長、今日はスーツですもんね」  

「はい」

10分程してから、大宮さんを車で送った。

この手で大宮さんの足に触(ふ)れられた事が幸せだった。

「ここです。」

戸建てを指差した。

「はい、旦那さんは、出張ですか?」

「今日は、いますから大丈夫です。」

「よかったです。では、失礼します。」

「はい。ありがとうございます」

私は、バックミラーで大宮さんをチラチラと見ていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

百合を食(は)む

転生新語
ライト文芸
 とある南の地方の女子校である、中学校が舞台。ヒロインの家はお金持ち。今年(二〇二二年)、中学三年生。ヒロインが小学生だった頃から、今年の六月までの出来事を語っていきます。  好きなものは食べてみたい。ちょっとだけ倫理から外(はず)れたお話です。なおアルファポリス掲載に際し、感染病に関する記載を一部、変更しています。  この作品はカクヨム、小説家になろうにも投稿しています。二〇二二年六月に完結済みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

Husband's secret (夫の秘密)

設樂理沙
ライト文芸
果たして・・ 秘密などあったのだろうか! 夫のカノジョ / 垣谷 美雨 さま(著) を読んで  Another Storyを考えてみました。 むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ  10秒~30秒?  何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。 ❦ イラストはAI生成画像 自作

キャバ嬢とホスト

廣瀬純一
ライト文芸
キャバ嬢とホストがお互いの仕事を交換する話

処理中です...