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足りないぐらいだ。

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タクシーに乗り込んだ。俺ん家から、行くようだ。

なんで、真ん中座らされたかな?

萩原「店長、内緒だぞ。」

洋「俺も、おろしてくる。」

萩原「なんで、店長から金とるんだよ。金は、あるもんが払えばいいんだよ。ハハハ」

的井「そうだよ。」

萩原「ああ言ったけど、超えるかもしれねーしな。」

洋「えっ?」

萩原「みんなの気持ちだからよ。な、的井」

的井「そうですね。」

萩原「当日のお楽しみだな。」

そう言って笑ってる。

的井「宮守君には、これから手伝ってもらうからね。」

萩原「それによ。10年も働いてた仕事辞めるんだよ。拜島も支えてくれて、そんな額じゃ足りねーぐらいだよ。金で解決するなら、いくらでも払ってやりたいけどよ。そうじゃないから、無理だよな。」

的井「そうだね。これからは、甦ってくる記憶との闘いになってくるよね。洋も、羽田さんは?」

洋「足が治るまでは、会わない事になって。今は、ペインでやりとりしてる。」

的井「そっか、ふられたかと思ったよ。」

洋「それは、大丈夫。」

萩原「店長も記憶戻ったら大変だな。あの子は、自殺未遂繰り返してるからな。」

的井「坊っちゃんと羽田さんの事は、だいたい何があったかは、みんな知ってますから。」

洋「記憶が戻ってそれが一番怖い。」

萩原「なんか、思い出してきたら店につれてこい。誰かしら傍にいてやれるだろう。」

洋「はい。」

萩原「なんか、キツかったな。坊っちゃん支えるのずっと」

的井「そうだね。」

萩原「やっちゃいけない事やってるのわかってて、全力で守るっておかしいだろ?店長。」

洋「確かにそうだけど。仕事だから」

萩原「金に人生乗っ取られて、金の為に死んでくのかって思ったんだよ。その後、すぐ吉峯と拜島の事が起きてよ。俺は、初めてこの人生を捨てるって決めたんだ。」

萩原さんは、泣いてる。

萩原「そしたら、店長が現れてな。店長は、小さな頃の坊っちゃんみたいでよ。俺は、こいつを守って支えてく人生を生きたいって強く思った。」

俺も泣いていた。

的井「あの日、洋に出会わなければ俺達はバラバラだったと思う。洋だから、みんなついてく事決めた。」

萩原「拜島の夢見つけた時、話し合ったんだよ。店長についていきたいやつはいるかって!そしたら、みんな店長と働いて支えていきたいって言うんだよ。拜島の事は、それぞれ店がなくたって支えていくつもりだったけどよ。店長がいなかったらあの店はないよ」

俺の目から、涙が何度も落ちる。

萩原「だから、店長。何でも話せ。俺達、全員が店長を支えて守ってく。それだけは、忘れんなよ。」

的井「俺は、洋に自分の持ってる愛情を全てあげたいと思ってる。重たいかもしれないけど。ダメかな?」

俺は、首を横にふった。

萩原「お前は、俺と付き合ってんのに浮気者だな。」

萩原さんが、的井さんに言った。

的井「きたねーおっさん抱き締めるより、洋のがいいわ。」

萩原「なんだそれ。お前が責任とれっていったんだぞ。」

的井「抱き締めてくれとは言ってないわ」

萩原「なんだ、クソガキ。俺の事、バカにしやがって」

洋「アハハ」笑いが込み上げてきた。

萩原「やっと笑ったな。店長」

的井「笑顔が似合うよ」

そう言って二人に、頭をくしゃくしゃ撫でられた。

萩原「ついたぞ。的井入り口までついていってやれ」

的井「はい。」

洋「ご馳走さまでした。」

萩原「はいよ。」

的井さんと並んで歩く。

部屋の入り口まで、ついてきてくれた。

貼り紙をみた、的井さんがはずしてる。

洋「いつものことなんで。もらいます」って言った俺を抱き締めてくれた。

フワッて花みたいないい香りがする。

的井「ごめん。辛い思いさせてしまって」

優しい声と言葉に涙が流れてくる。

的井「酔った勢いで抱き締めたらダメだよな。なんか、淳一思い出しちゃった。帰るね」そう言って柔らかい笑顔で笑う。

洋「それ」

的井「俺が捨てとくよ。おやすみ」階段を降りていった。

洋「おやすみなさい。」俺は、的井さんが消えた階段に向かって頭をさげて玄関を開けた。

玄関開けたら酔いがいっきに回ってきた。

ヤベ、歯磨きして寝よう。

俺は、鍵閉めて歯磨きしてベッドに横になった。

的井さんの香りが漂ってる。

香水の匂いかな?

なんか、心地よかった。

的井さんがくれる愛情は、俺が探してた人の欠片に似ている。


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