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day3 買い物

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柚は、僕の手を握りしめた。

「せっかく、ここに来たから何かプレゼントしてあげるよ」

複合施設を歩きながら、柚は笑った。

「いつか、大人になった君がこれをつけれたらいいな」

柚は、そう言ってネクタイ売場に連れてくる。

「明日で、消えてまうのに。大人になった未来はいらんやろ」

そう笑った僕に、柚は微笑み返した。

この時は、気づいていなかったけれど、初めから柚は僕を連れて逝く気などなかったのではないかと思う。

「これが、よさそう」

「これ、高いで!10000円もする。そんなんいらんよ」

「いいの、いいの。二十歳を迎えたら、これを締めてよ」

柚は、ネクタイを買ってくれる。

「二十歳なんて、いない未来の話しやろ?」

「さあね。」

そう言って、柚はネクタイを渡してくる。

「君は、将来の夢はある?」

「消防士」

「それは、あの事が原因?」

「ああ」

「へー。君なら、絶対になれるよ。」

柚は、そう言ってガッツポーズをした。

「明日、いなくなるからなれへんよ」

「大丈夫、なれる。君は、生きてる気がするよ。」

「それって、どおゆう意味なん?」

「なんとなく、君は生きてる気がするって事だよ。」

そう言って、柚は僕の手を握りしめた。

「お揃いのネックレスを買わない?君と私が恋人だった証」

「ええよ」

柚と一緒にアクセサリーを見に行く。

「silverなら、高くないよ。これにしよう。」

silverのペアネックレスを頼んだ。

僕は、お金を払った。

「行こう」

「なんで、十字架にしたん?他もあったで」

重ねると一つの十字架になるネックレスに柚は決めた。

「なんでかな?許される気がして」

そう言って、ネックレスを僕に渡した。

「やっぱり、外は暑いね。ソフトクリーム食べない?」

「うん、食べよか」

僕は、ソフトクリームを買った。

屋上で、並んでソフトクリームを食べる。

「私が、いなくなった後の世界で君はどうやって生きてるのかな?」

ポタポタとソフトクリームが、溶け始める。

「一人で死ぬみたいにゆわんとってや、僕かて逝くんやから」

「人間は、産まれる時も死ぬ時も一人だってよく聞くでしょ?君と私だって、同時に死ねるわけじゃない。もしかすると、君は失敗して生き残るかもしれないよ。」

「そんな死に損ないの情けない人生は、もういやや。また、今みたいに情けない日々やんか。次の世界には、柚がおらんのやろ?」

「君は、欲張りだね。」

柚は、笑ってソフトクリームを食べる。

「私の事をたくさん抱いたからって、自分のものになったと思ってるなら…。それは、勘違いだよ」

そう言って柚は、バリバリとコーンを食べる。

「だって、私の中に完全に君が
いない。君に抱かれていても、あいつがこびりついているんだよ」

「それを取り除くんは可能なん?生きてる間にどうにかならんの?なるんやったら、僕と一緒に」

バシン…

頬を叩かれて、ソフトクリームを落とした。

「未来なんて語らないから、君といたのに…。君もそのへんにいる人とかわらない。下らない人間だったんだね。もう、いい」

柚は、スタスタと歩き出してしまった。

生きたいっていう事が、こんなにも柚の苦痛になる事を…

わかってるつもりだったのに…

僕と柚は、似ていると思っていたけれど…

全くの別の生き物だった事を思い知った。

涙を流しながら、ソフトクリームを拾った。

ゴミ箱に放り投げた。

さっき渡されたネックレスを握りしめた。

浅はかな考えが、柚を苦しめたのを感じた。

[生きろ]なんて言葉を僕が発するなんて柚は思わなかったんだ。

10年間、考えて考えて出した答えを僕は、簡単に否定したのだ。

その答えは、無意味だ。

さっきの映画で男が、死ぬことに囚われるやつは馬鹿馬鹿しいといった台詞をなぞりがきするみたいに柚にぶつけたのだ。

柚にとって、生きる事がどれだけ辛い事かってわかっていたはずだろう?

夏の暑さにやられそうな体を引きずりながら歩く。

柚が、どこに行ったかもわからない。

プリペイド携帯を見つめたけれど、柚の番号を聞いていなかったことに、酷く後悔した。



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