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花びらの舞い散る夜に…
最後に…
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「最後に、すみません」
そう言って、先生は僕を引き寄せて抱き締めた。
「ゼリーじゃなくて、ちゃんと食べて寝て下さい。人間は、その二つを削ると正常な判断が出来なくなりますよ。だから、浜井さんが、復讐したい気持ちは間違っていますよ。私もそうだったからわかります。ちゃんと食べて寝なくちゃ駄目です。じゃなかったら、それをずっと考えるんです。すみません。よけいな事を…」
そう言って、離れようとした先生に僕は、手を回そうとしていた。
「無理に、私を好きになる必要なんてありませんよ。私だって、一番は五木結斗のままなんです。ずっと…。それでも、浜井さんといたいなんて。頭おかしいですよね」
「先生」
「もう、ご迷惑をおかけしませんから」
僕は、人間の弱さを痛い程、感じていた。
弾いていた愛をいったん受け取ろうとしてしまうと、どんどん欲しくなってしまうのだ。
先生ともっと話したくなってしまった。
僕の気持ちを先生は、理解してくれるのがわかる。
暗闇をさ迷っていた僕に、一滴の温もりを落とされた。
それは、波紋のように広がる。
涙がとめられなくて…。
「泣かないで、浜井さん。ごめんね。しつこかったよね」
「違います」
「違う?」
「健斗さんが、いるのに。心を動かされそうになってる僕が嫌いなんです。」
「それって、興味持ってくれようとしてるの?」
「わからない。でも、話したい。健斗さんの事件のこと。犯人を殺したいこと。一人で抱えてるこの闇を全部話したい」
「話して下さい」
【ニャー】
イチゴが、先生にすり寄っていった。
「わぁぁぁあぁあああ」
僕は、その場に膝から崩れ落ちた。
「大丈夫ですか?」
「先生、殺してやりたい。犯人を殺してやりたいんです。」
「わかりますよ。浜井さん」
「殺したって、何もならないのなんてわかってるんだ。それでも、それでも、殺してやりたいんだ。この手で殺してやりたいんだよ」
「守るべき命があるのに、そんな事言っちゃ駄目ですよ」
先生は、イチゴを僕の両手に乗せた。
「浜井さんのその手は、この小さな命を守るのに使わなくちゃいけませんよ」
「先生」
「さっきも話したでしょ?あんなのばっかり食べてるからだって。ちゃんと食べて、無理矢理にでも寝るんです。浜井さんが、復讐に飲み込まれていたって、犯人は食べて寝てるだけかも知れませんよ。私もそうだったんです。無理矢理、元気なフリして、食べて寝てたら…。いつの間にか、復讐なんて考えなくなった。犯人は、反省なんかしてなくて、食べて寝てるだけなんじゃないか?そう思ったら、急に馬鹿らしくなったんです。自分は、こんなにもあいつに縛られて身動きがとれないのに、あいつは私の事なんて一つも考えてはいない。怒りを通り越して呆れました。下らない、しょうもないって思ったんです。だったら、自分だって美味しいものを食べて、たくさん笑って、たくさん寝ようって。ある日突然そう思ったんです。だから、浜井さんも寝て食べて笑っていいんですよ」
僕は、イチゴを抱き締めた。
この両手にある小さな命の重み。
それと引き換えに、犯人を殺すのなんて無意味な気がした。
「先生、お墓どこかありますか?」
「いいところを知ってますよ」
そう言って、先生は僕の頭を撫でてくれた。
「先生」
「上條陸です。」
「上條さん、僕の話し相手になってもらえませんか?」
「構いませんよ。」
「よろしくお願いします」
僕は、上條さんに笑いかけた。
上條さんは、僕と握手をしてくれた。
何故だかわからないけれど僕は、
この人を受け入れていたんだ。
そう言って、先生は僕を引き寄せて抱き締めた。
「ゼリーじゃなくて、ちゃんと食べて寝て下さい。人間は、その二つを削ると正常な判断が出来なくなりますよ。だから、浜井さんが、復讐したい気持ちは間違っていますよ。私もそうだったからわかります。ちゃんと食べて寝なくちゃ駄目です。じゃなかったら、それをずっと考えるんです。すみません。よけいな事を…」
そう言って、離れようとした先生に僕は、手を回そうとしていた。
「無理に、私を好きになる必要なんてありませんよ。私だって、一番は五木結斗のままなんです。ずっと…。それでも、浜井さんといたいなんて。頭おかしいですよね」
「先生」
「もう、ご迷惑をおかけしませんから」
僕は、人間の弱さを痛い程、感じていた。
弾いていた愛をいったん受け取ろうとしてしまうと、どんどん欲しくなってしまうのだ。
先生ともっと話したくなってしまった。
僕の気持ちを先生は、理解してくれるのがわかる。
暗闇をさ迷っていた僕に、一滴の温もりを落とされた。
それは、波紋のように広がる。
涙がとめられなくて…。
「泣かないで、浜井さん。ごめんね。しつこかったよね」
「違います」
「違う?」
「健斗さんが、いるのに。心を動かされそうになってる僕が嫌いなんです。」
「それって、興味持ってくれようとしてるの?」
「わからない。でも、話したい。健斗さんの事件のこと。犯人を殺したいこと。一人で抱えてるこの闇を全部話したい」
「話して下さい」
【ニャー】
イチゴが、先生にすり寄っていった。
「わぁぁぁあぁあああ」
僕は、その場に膝から崩れ落ちた。
「大丈夫ですか?」
「先生、殺してやりたい。犯人を殺してやりたいんです。」
「わかりますよ。浜井さん」
「殺したって、何もならないのなんてわかってるんだ。それでも、それでも、殺してやりたいんだ。この手で殺してやりたいんだよ」
「守るべき命があるのに、そんな事言っちゃ駄目ですよ」
先生は、イチゴを僕の両手に乗せた。
「浜井さんのその手は、この小さな命を守るのに使わなくちゃいけませんよ」
「先生」
「さっきも話したでしょ?あんなのばっかり食べてるからだって。ちゃんと食べて、無理矢理にでも寝るんです。浜井さんが、復讐に飲み込まれていたって、犯人は食べて寝てるだけかも知れませんよ。私もそうだったんです。無理矢理、元気なフリして、食べて寝てたら…。いつの間にか、復讐なんて考えなくなった。犯人は、反省なんかしてなくて、食べて寝てるだけなんじゃないか?そう思ったら、急に馬鹿らしくなったんです。自分は、こんなにもあいつに縛られて身動きがとれないのに、あいつは私の事なんて一つも考えてはいない。怒りを通り越して呆れました。下らない、しょうもないって思ったんです。だったら、自分だって美味しいものを食べて、たくさん笑って、たくさん寝ようって。ある日突然そう思ったんです。だから、浜井さんも寝て食べて笑っていいんですよ」
僕は、イチゴを抱き締めた。
この両手にある小さな命の重み。
それと引き換えに、犯人を殺すのなんて無意味な気がした。
「先生、お墓どこかありますか?」
「いいところを知ってますよ」
そう言って、先生は僕の頭を撫でてくれた。
「先生」
「上條陸です。」
「上條さん、僕の話し相手になってもらえませんか?」
「構いませんよ。」
「よろしくお願いします」
僕は、上條さんに笑いかけた。
上條さんは、僕と握手をしてくれた。
何故だかわからないけれど僕は、
この人を受け入れていたんだ。
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