上 下
30 / 65
嘘つきな人

過ぎ行く日々

しおりを挟む
歩君の次のターゲットは優等生の野村さんだった。

「買ったら、ジュースとピーリーセットな」

「くそ、たけーじゃん、まぁ、了解」

ピーリーとは、みんなが大好きなフライドチキンでお馴染みのお店だった。

また、やっていた。

結局、野村さんを落とすのにはかなりの時間がかかっていた。

その間も、私と歩君の秘密の日々は、続いていた。

「なぁ。早乙女、俺無理かな?」

お皿を洗ってる私の背中に、おでこをくっつけてきた。

「知らないよ。落とせない人もいるんでしょ?」

「それは、絶対ありえねー」

「だったら、頑張ればいいじゃん」

私は、お皿を洗い終わった。

「なに?」

「キスしよう」

「無理」

私は、歩君から離れた。

冷凍庫から、アイスを取り出した。

「はい、チョコバー」

「どうも」

「幸せホルモン不足なんじゃないの?」

「なんで?」

「なんか、そんな変な脳ミソしてるから」

私は、笑ってチョコバーを食べる。

「早乙女を好きになったら、キスしてくれんの?」

「好きになったらね」

「じゃあ、これもしてくれんの?」

「アイス食べる時に、しょっちゅうそれするのやめてよ」

「なあ、早乙女」

「好きになるなら、なんだってしてあげるよ」

私は、そう言って歩君に笑った。

結局、中三になってやっと野村さんは恋におちた。

満開の桜の木の下

「私、歩君が好きなの」

「イェーイ、俺の勝ち。」

野村さんをおとしながら別の人もおとしていた。

「なに、それ?」

「悪いな、賭けだったんだよ」

「最低」

バシン

桜の木の下で、歩君は殴られていた。

可哀想、野村さん。

「歩、ひでーよな」

「女なんて、振り回してなんぼだろ?」

刺されて、死ねばいいのに…。

結局、歩君のお遊びは卒業まで続いた。

高校に入っても、同じだと思っていた。

「早乙女、俺。寮つきの高校になった。」

「なんで?」

「お母さんに、捨てられた」

「えっ?どこの高校?」

「ごめん。約束守ってくれよ」

「そっちも、守っててよ」

「ああ。高校二年の夏に会いに来る。そん時に、俺が早乙女を好きだったら、約束な」

「うん、約束」

高校で歩君は、隣からいなくなった。

つまらない高校生活だった。

二年生の夏に、本当に歩君がやってきた。

「早乙女、元気だった」

「両親いないよ、今日」

「なんで?」

「お姉ちゃんとこに行ってる、久々の休みだから」

「早乙女は?」

「私は、バイトしてるから行かなかったよ。ってか、携帯持ってるなら手紙に書いてよ」

「あっ、ごめん。早乙女、俺。早乙女を好きだと思う。まだ、わからない。ごめん。それでも、早乙女を失いたくない。」

「嬉しい」

それだけで、嬉しい。

今までと違って、嬉しい。

その日、歩君は私の家に泊まった。

「キスしていいかな?」

「うん」

「ちゃんと初めてだった?」

「当たり前だよ」

ぎこちないキスをされた。

「初めてだった?歩君も」

「初めてに決まってるだろ。早乙女にとってた」

「加奈枝だから」

「加奈枝に、とってた。」

「嬉しい、嬉しい、嬉しい」

私は、歩君に抱きついた。

「次の、夏休みに…その…」

「キス以上する?」

「嫌か?」

「ううん、嬉しいよ。とっとくから」

「うん、約束」

その日、私は歩君に抱き締められながら眠った。

次の日の朝一番に帰っていった。

また、つまらない日々の繰り返しだった。

キスをしった私は、キスがしたくてしたくて、堪らなかった。

それでも、我慢して、我慢して

勉強にうちこんだ。

部活は、しなかった。

高校に入って、女友達が二人だけ出来たけど…。

その二人も、三年生には彼氏が出来ていた。

三年生の夏休み、歩君はやってきた。

「加奈枝、ちゃんと約束守った?」

「うん」

「大学行くんだろ?」

「音楽の先生になるつもりだよ」

「それ、スゲー素敵な夢だな」

「ありがとう、歩君は?」

「俺は、就職。大学行ったら住もうか?加奈枝」

「うん」

私は、この日初めてを無事に卒業した。

「ごめん。なんか、下手くそで」

「別に、私もだから」

「いや、いいよ。慣れてないのがお互い」

「そうだね」

この日も、両親はお姉ちゃんの所に行っていて、私と歩君は朝まで覚えたての行為を続けていた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪女のなみだ

じじ
恋愛
「カリーナがまたカレンを泣かせてる」 双子の姉妹にも関わらず、私はいつも嫌われる側だった。 カレン、私の妹。 私とよく似た顔立ちなのに、彼女の目尻は優しげに下がり、微笑み一つで天使のようだともてはやされ、涙をこぼせば聖女のようだ崇められた。 一方の私は、切れ長の目でどう見ても性格がきつく見える。にこやかに笑ったつもりでも悪巧みをしていると謗られ、泣くと男を篭絡するつもりか、と非難された。 「ふふ。姉様って本当にかわいそう。気が弱いくせに、顔のせいで悪者になるんだもの。」 私が言い返せないのを知って、馬鹿にしてくる妹をどうすれば良かったのか。 「お前みたいな女が姉だなんてカレンがかわいそうだ」 罵ってくる男達にどう言えば真実が伝わったのか。 本当の自分を誰かに知ってもらおうなんて望みを捨てて、日々淡々と過ごしていた私を救ってくれたのは、あなただった。

ままならないのが恋心

桃井すもも
恋愛
ままならないのが恋心。 自分の意志では変えられない。 こんな機会でもなければ。 ある日ミレーユは高熱に見舞われた。 意識が混濁するミレーユに、記憶の喪失と誤解した周囲。 見舞いに訪れた婚約者の表情にミレーユは決意する。 「偶然なんてそんなもの」 「アダムとイヴ」に連なります。 いつまでこの流れ、繋がるのでしょう。 昭和のネタが入るのはご勘弁。 ❇相変わらずの100%妄想の産物です。 ❇妄想遠泳の果てに波打ち際に打ち上げられた、妄想スイマーによる寝物語です。 疲れたお心とお身体を妄想で癒やして頂けますと泳ぎ甲斐があります。 ❇例の如く、鬼の誤字脱字を修復すべく激しい微修正が入ります。 「間を置いて二度美味しい」とご笑覧下さい。

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

夫は私を愛してくれない

はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」 「…ああ。ご苦労様」 彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。 二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

夫の不貞現場を目撃してしまいました

秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。 何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。 そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。 なろう様でも掲載しております。

【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
フィーは第二王子レイフの婚約者である。 しかし、仲が良かったのも今は昔。 レイフはフィーとのお茶会をすっぽかすようになり、夜会にエスコートしてくれたのはデビューの時だけだった。 いつしか、レイフはフィーに嫌われていると噂がながれるようになった。 それでも、フィーは信じていた。 レイフは魔法の研究に熱心なだけだと。 しかし、ある夜会で研究室の同僚をエスコートしている姿を見てこころが折れてしまう。 そして、フィーは国守樹の乙女になることを決意する。 国守樹の乙女、それは樹に喰らわれる生贄だった。

処理中です...