上 下
13 / 65
救えなかった恋

デート

しおりを挟む
俺は、約束の場所に来ていた。

夏休みの二日後、映画館に10時に待ち合わせだと書かれていた。

俺は、待っていた。

2時間後、彼はやってきた。

「上條君、来てくれたんだね」

真っ白な上下に身を包んだ五木君が現れた。

俺とは、対照的だった。

「真っ黒だね」

「あっ、うん。」

昨日は、ごめんって言えなかった。

「もう、保健室に来なくていいから」

その言葉に胸が押し潰される程痛かった。

「何で?」

「こうやって、外で会おうって意味だよ」

ニコッと、天使は笑った。

五木君は、素直に何でも話してくれていたのに、俺は何も言えなかった。

「あいつ等にも、したの?」

「えっ?」

「あいつ等にも、そうやって誘ってんのって聞いてんだけど」

「そんな事、誰から聞いたの?」

「あいつ等から、聞いたよ。五木君が、誰にでもしてるって」

下らないけれどイライラしていたんだ。

若さだったって言葉しか浮かばなかった。

とにかく、初めてでわからなかったんだ。

「怒ってるの?上條君」

「誰にでもできんなら、俺にだって出来るんだろ?」

一緒に歩いていた天使を壁に押し付けた。

「して欲しいの?いいよ、おいで」

天使は、そう言って俺を自分の家に連れて帰った。

もう、誰にも天使をれさせたくなかった。

でも、ちっぽけな俺は、腐ったヤキモチだけをぶら下げていた。

「上條君」

「陸って呼んで」

「陸、いいよ。しよう」

天使は、ボロボロと泣いていた。

「五木君」

「結斗って呼んで」

「結斗」

「陸、僕を好きになってくれる?」

「もう、好きだよ。結斗」

恥ずかしくても、言わずにいられなかった。

だって、この天使を俺の手の中に納めておきたかったから…。

結斗は、慣れた手つきで、俺を自分の中に導いた。

「陸」

「結斗」

「僕、ちゃんとするから」

「なに、それ?」

「ちゃんとするから、待っててくれる?」

「付き合わないの、俺達」

「付き合うよ、だけど。僕が、ちゃんとしなきゃ、いけないから」

「それ、何だよ。意味わかんないよ」

俺は、曖昧な結斗の言葉にイライラした。

「ごめん、でも、ケジメつけるから」

「ケジメって何だよ」

「大丈夫、心配しないで」

「結斗、よくわかんないけど。危ない事は、しないでくれ」

「わかってるよ、陸」

この日、初めてを知った俺は、暗くなるまで結斗を求めた。

「また、三日後に映画館の前に10時でいい?」

「うん」

いつの間にか、結斗のお母さんが帰ってきた音がして俺達は離れた。

「結斗、写真撮らない?」

「いいよ」

俺は、結斗の部屋にあるカメラを指差した。

「ハイチーズ」

カシャッ

のちに、この写真が遺影になった。

「どんなのか、見せてよ。現像したら」

「いいよ」

俺達は、フィルムがなくなるまで写真を撮り続けた。

「結斗、俺。初めて出会った時から、好きだったみたいだよ。」

「陸、ありがとう」

キスを繰り返した。

「じゃあ、帰るね」

「うん」

名残惜しいけど、結斗に見送られながら俺は、家に帰った。

家に帰って、れられた熱を感じていた。

色が白いから、体温が低いと思っていた。

重なった肌は、熱が凄くて、息も熱くて、結斗の肌はほんのりピンクに色づいて。

心の中に、結斗があふれて止まらなかった。

枕を抱き締める

愛してる、愛してる、愛してる

心の中で、何度も何度も繰り返した。

結斗が、いなくなったら俺、死んじゃうよ。

愛してる、愛してる、愛してる

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

夫は私を愛してくれない

はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」 「…ああ。ご苦労様」 彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。 二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

届かない手紙

白藤結
恋愛
子爵令嬢のレイチェルはある日、ユリウスという少年と出会う。彼は伯爵令息で、その後二人は婚約をして親しくなるものの――。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開中。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

貴妃エレーナ

無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」 後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。 「急に、どうされたのですか?」 「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」 「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」 そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。 どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。 けれど、もう安心してほしい。 私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。 だから… 「陛下…!大変です、内乱が…」 え…? ーーーーーーーーーーーーー ここは、どこ? さっきまで内乱が… 「エレーナ?」 陛下…? でも若いわ。 バッと自分の顔を触る。 するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。 懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

処理中です...