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救えなかった恋

デート

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俺は、約束の場所に来ていた。

夏休みの二日後、映画館に10時に待ち合わせだと書かれていた。

俺は、待っていた。

2時間後、彼はやってきた。

「上條君、来てくれたんだね」

真っ白な上下に身を包んだ五木君が現れた。

俺とは、対照的だった。

「真っ黒だね」

「あっ、うん。」

昨日は、ごめんって言えなかった。

「もう、保健室に来なくていいから」

その言葉に胸が押し潰される程痛かった。

「何で?」

「こうやって、外で会おうって意味だよ」

ニコッと、天使は笑った。

五木君は、素直に何でも話してくれていたのに、俺は何も言えなかった。

「あいつ等にも、したの?」

「えっ?」

「あいつ等にも、そうやって誘ってんのって聞いてんだけど」

「そんな事、誰から聞いたの?」

「あいつ等から、聞いたよ。五木君が、誰にでもしてるって」

下らないけれどイライラしていたんだ。

若さだったって言葉しか浮かばなかった。

とにかく、初めてでわからなかったんだ。

「怒ってるの?上條君」

「誰にでもできんなら、俺にだって出来るんだろ?」

一緒に歩いていた天使を壁に押し付けた。

「して欲しいの?いいよ、おいで」

天使は、そう言って俺を自分の家に連れて帰った。

もう、誰にも天使をれさせたくなかった。

でも、ちっぽけな俺は、腐ったヤキモチだけをぶら下げていた。

「上條君」

「陸って呼んで」

「陸、いいよ。しよう」

天使は、ボロボロと泣いていた。

「五木君」

「結斗って呼んで」

「結斗」

「陸、僕を好きになってくれる?」

「もう、好きだよ。結斗」

恥ずかしくても、言わずにいられなかった。

だって、この天使を俺の手の中に納めておきたかったから…。

結斗は、慣れた手つきで、俺を自分の中に導いた。

「陸」

「結斗」

「僕、ちゃんとするから」

「なに、それ?」

「ちゃんとするから、待っててくれる?」

「付き合わないの、俺達」

「付き合うよ、だけど。僕が、ちゃんとしなきゃ、いけないから」

「それ、何だよ。意味わかんないよ」

俺は、曖昧な結斗の言葉にイライラした。

「ごめん、でも、ケジメつけるから」

「ケジメって何だよ」

「大丈夫、心配しないで」

「結斗、よくわかんないけど。危ない事は、しないでくれ」

「わかってるよ、陸」

この日、初めてを知った俺は、暗くなるまで結斗を求めた。

「また、三日後に映画館の前に10時でいい?」

「うん」

いつの間にか、結斗のお母さんが帰ってきた音がして俺達は離れた。

「結斗、写真撮らない?」

「いいよ」

俺は、結斗の部屋にあるカメラを指差した。

「ハイチーズ」

カシャッ

のちに、この写真が遺影になった。

「どんなのか、見せてよ。現像したら」

「いいよ」

俺達は、フィルムがなくなるまで写真を撮り続けた。

「結斗、俺。初めて出会った時から、好きだったみたいだよ。」

「陸、ありがとう」

キスを繰り返した。

「じゃあ、帰るね」

「うん」

名残惜しいけど、結斗に見送られながら俺は、家に帰った。

家に帰って、れられた熱を感じていた。

色が白いから、体温が低いと思っていた。

重なった肌は、熱が凄くて、息も熱くて、結斗の肌はほんのりピンクに色づいて。

心の中に、結斗があふれて止まらなかった。

枕を抱き締める

愛してる、愛してる、愛してる

心の中で、何度も何度も繰り返した。

結斗が、いなくなったら俺、死んじゃうよ。

愛してる、愛してる、愛してる

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