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宮部希海の視点
再会
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「悲しくなかったんですね。宮部さんも…。」
ゐ空さんは、準備をしている。
「はい」
「彼女も言ってました。旦那さんが、引き取るよって言った瞬間に心から笑ったって!そしたら、旦那さんに最低だと言われたって…。悲しくないのか?って、離れ離れになるんだぞって。彼女は、こう言った。二度と会えないのが嬉しいです。って…。宮部さんは、彼女の気持ち理解できますよね」
「出来ます。凄く、よくわかります。」
「そうですよね。私は、あの時彼女に何も言ってあげれなかった。それから、2年が経って彼女が雑誌の切り抜きを片手に私に会いに来たんです。」
ゐ空さんは、そう言うと懐かしそうに微笑んだ。
「子供が大嫌いな人と再婚してました。それで、今も年賀状のやり取りをしてるのですが…。子供はいないままですよ。何より、今は生きやすいと話していました。宮部さん、誰かの意見に揺らがないでいいんですよ。宮部さんが、望んだ幸せに赤ちゃんはいないでしょ?彼女のように…。」
ゐ空さんの言葉に、私は強く頷いた。
「来たみたいです。大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。」
「それじゃあ、行きましょうか」
本当は、怖い気持ちも少なからず残っていた。
でも、ゐ空さんの話を聞いてわかった。
私の望む幸せは、ゐ空さんが今手の中に抱えてるものではない。
私は、光珠さんにもらったネックレスを触(さわ)っていた。
「こんばんは」
「こんばんは」
私は、彼の顔が見れなかった。
「希海…!!!」
「久しぶり」
「あ、えっと…」
「こちらにどうぞ」
ゐ空さんは、そう言って私と彼を連れていく。
「人形が沢山いますが、良ければこちらでお話下さい。」
人形を作る場所の奥にあるソファーに座らされた。
「お茶おいれしますね。それと、山崎智則(やまざきとものり)様。こちらが、ご依頼されていた子です。」
ゐ空さんは、赤ちゃんの人形を彼に渡す。
「ありがとうございます。」
智君は、ボロボロと泣き出した。
「いいえ。」
「ひかりちゃん。よかった。」
愛しそうに抱き締めている。
ゐ空さんは、私と彼にお茶を出してくれた。
「それでは、あちらにいますので」
「あの、ひかりちゃんは連れて行っててもらえますか?」
「わかりました。」
私も、頷いた。
「それでは、終わりましたら声をかけて下さいね」
「わかりました。」
ゐ空さんは、出ていった。
「希海、あの時はごめんなさい。俺、酷い人間だったよな。今になって、希海の気持ちがわかったんだよ。」
私は、首を横に振った。
「友姫(ゆき)さんとは、時々会ってるの?」
「こないだ、再会した。智君の子じゃなかったんでしょ?乃英流(のえる)」
「DNA検査したから、間違いないよ。でも、責任取って高校卒業までは養育費払うって決まってるから…。そもそも、友姫さんと浮気したの俺だから…。」
「私、あの日。智君と仲直りしたかったんだよ。なのに、帰ったらあんな事になってた。私は、智君がいれば何もいらなかったんだよ。子供は、愛せなかった。産まれたって、あの子を虐待するのが最初から私にはわかっていた。だから、あの日。悲しくなかった。ホッとしてたんだよ。あの子が産まれるのを選ばなかった事を…」
智君は、私の言葉に初めて頷いてくれた。
「わかるよ。俺も、乃英流に産まれないでくれって祈ったから…。」
私は、涙を溜めた目で智君を見つめていた。
「産まれてからも、愛せなかった。気持ち悪くて、吐きそうで、鳥肌がたって、嫌悪感で…。あの日、希海が見せてくれたエコー写真は愛しくて堪らなかったのに…。目の前で、寝息を立ててる乃英流は、蹴飛ばしてやりたいぐらい気持ち悪い存在だった。」
智君は、涙を流す。
「DNA鑑定結果が出て、離婚したんだけど。父親じゃないってわかった瞬間、心底ホッとしたんだよ。あの瞬間、希海が笑ってた意味がわかったんだよ」
智君は、涙を服の裾で拭っている。
ゐ空さんは、準備をしている。
「はい」
「彼女も言ってました。旦那さんが、引き取るよって言った瞬間に心から笑ったって!そしたら、旦那さんに最低だと言われたって…。悲しくないのか?って、離れ離れになるんだぞって。彼女は、こう言った。二度と会えないのが嬉しいです。って…。宮部さんは、彼女の気持ち理解できますよね」
「出来ます。凄く、よくわかります。」
「そうですよね。私は、あの時彼女に何も言ってあげれなかった。それから、2年が経って彼女が雑誌の切り抜きを片手に私に会いに来たんです。」
ゐ空さんは、そう言うと懐かしそうに微笑んだ。
「子供が大嫌いな人と再婚してました。それで、今も年賀状のやり取りをしてるのですが…。子供はいないままですよ。何より、今は生きやすいと話していました。宮部さん、誰かの意見に揺らがないでいいんですよ。宮部さんが、望んだ幸せに赤ちゃんはいないでしょ?彼女のように…。」
ゐ空さんの言葉に、私は強く頷いた。
「来たみたいです。大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。」
「それじゃあ、行きましょうか」
本当は、怖い気持ちも少なからず残っていた。
でも、ゐ空さんの話を聞いてわかった。
私の望む幸せは、ゐ空さんが今手の中に抱えてるものではない。
私は、光珠さんにもらったネックレスを触(さわ)っていた。
「こんばんは」
「こんばんは」
私は、彼の顔が見れなかった。
「希海…!!!」
「久しぶり」
「あ、えっと…」
「こちらにどうぞ」
ゐ空さんは、そう言って私と彼を連れていく。
「人形が沢山いますが、良ければこちらでお話下さい。」
人形を作る場所の奥にあるソファーに座らされた。
「お茶おいれしますね。それと、山崎智則(やまざきとものり)様。こちらが、ご依頼されていた子です。」
ゐ空さんは、赤ちゃんの人形を彼に渡す。
「ありがとうございます。」
智君は、ボロボロと泣き出した。
「いいえ。」
「ひかりちゃん。よかった。」
愛しそうに抱き締めている。
ゐ空さんは、私と彼にお茶を出してくれた。
「それでは、あちらにいますので」
「あの、ひかりちゃんは連れて行っててもらえますか?」
「わかりました。」
私も、頷いた。
「それでは、終わりましたら声をかけて下さいね」
「わかりました。」
ゐ空さんは、出ていった。
「希海、あの時はごめんなさい。俺、酷い人間だったよな。今になって、希海の気持ちがわかったんだよ。」
私は、首を横に振った。
「友姫(ゆき)さんとは、時々会ってるの?」
「こないだ、再会した。智君の子じゃなかったんでしょ?乃英流(のえる)」
「DNA検査したから、間違いないよ。でも、責任取って高校卒業までは養育費払うって決まってるから…。そもそも、友姫さんと浮気したの俺だから…。」
「私、あの日。智君と仲直りしたかったんだよ。なのに、帰ったらあんな事になってた。私は、智君がいれば何もいらなかったんだよ。子供は、愛せなかった。産まれたって、あの子を虐待するのが最初から私にはわかっていた。だから、あの日。悲しくなかった。ホッとしてたんだよ。あの子が産まれるのを選ばなかった事を…」
智君は、私の言葉に初めて頷いてくれた。
「わかるよ。俺も、乃英流に産まれないでくれって祈ったから…。」
私は、涙を溜めた目で智君を見つめていた。
「産まれてからも、愛せなかった。気持ち悪くて、吐きそうで、鳥肌がたって、嫌悪感で…。あの日、希海が見せてくれたエコー写真は愛しくて堪らなかったのに…。目の前で、寝息を立ててる乃英流は、蹴飛ばしてやりたいぐらい気持ち悪い存在だった。」
智君は、涙を流す。
「DNA鑑定結果が出て、離婚したんだけど。父親じゃないってわかった瞬間、心底ホッとしたんだよ。あの瞬間、希海が笑ってた意味がわかったんだよ」
智君は、涙を服の裾で拭っている。
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