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再会 [洋]

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俺は、拜島さんがくれたサンドウィッチを食べていた。

優しくて暖かくて涙がでる。

れんと拜島さんが、小さくなっていく。

俺は、食べ終わった箱を紙袋に戻した。

そして、望月楓さんに手を合わす

コンコン

ノックの音で、顔をあげた。

俺は、れんが置いた鍵を手に取り車の外に出た。

「レイプ犯にされてますよ?」
そう言ってスマホを見せる。

[望月楓、殺しの犯人]

[こいつが、レイプしたって話]

[鬼畜じゃん]

[名前、さらせよ]

俺は、目を反らした。

「削除依頼だしましたから」

洋「ありがとうございます。」

「少し話せませんか?」

俺は、ゆっくり頷いた。

車の鍵を閉めて、並んで歩く。

洋「二度目ですね。助けてくれるの」

「そうですね。」

洋「何かありがとうございます。」

「いえ。」

洋「俺、社会的に殺されますよね?」

「そうですね。もうすぐ、名前や住所もさらされるでしょうから」

洋「川辺美月さんも望月楓さんも、同じだったのかな」

「そうですね。彼女達は、さらされていました。」

洋「詳しいですね?」

「調べていましたから…。」

洋「ところで、あなたは誰なんですか?」

「私は、速水琴羽といいます。拜島と17歳からの3年間お付き合いしていました。」

洋「それで、拜島さんを」

「どうやら、私は思い違いをしていたようです。憎むべきは、拜島ではなく、向島家だったようです。」

洋「その頬の傷は?」

「拜島と別れた日、自暴自棄になっていた私は階段から足を滑らせました。顔から、落ちたせいで頬に大きな傷を残し、拜島の子供を流産しました。」

洋「妊娠してたのですが、拜島さんには伝えなかったんですか?」

「伝えようとした日に言われました。私と琴羽では、釣り合わないと、向島の人間として君は私に相応しくないと言われました。」

洋「そんな酷い。」

「後でわかった事ですが、向島家が何もかも調べていたようです。」

洋「拜島さんを憎んでいたんですね。」

「この顔になった事は、憎みました。でも、ある方が私を救ってくれました。彼もまた向島家の人間でした。誰かわかりますよね。今、一緒にいますから」

洋「灰谷さんですか?」

「はい。」すごく柔らかい表情になった。この人が好きなのは、灰谷さんなんだ。

「灰谷に出会ったのは、退院した日でした。たまたま、病院のロビーでお会いしました。すれ違う瞬間に、私は診察券を落としてしまいました。拾い上げて、私を見ました。灰谷は、私の頬のガーゼを見ても何もいいませんでした。お礼を言って去ろうとするとお茶がしたいと言うのです。のちに、一目惚れだったと言われました。」

そう言って嬉しそうに話す。

「灰谷は、私の気持ちが自分に向くまでずっと愛を注いでくれました。そして、5年後お付き合いする事になったのです。5年も私だけに愛を注ぎ続ける灰谷をいつの間にか好きになっていました。」

そう彼女が話した時。

灰谷「琴羽か?」って声がした。

振り返ると灰谷さんが立ってた。

「何で?」

灰谷「車の鍵を芦野さんからもらおうと探してたら、芦野さんが見えたから…。よかった。生きてたんだね。」そう言って灰谷さんが笑う。

「探していたんですか?」

灰谷「ずっと…」

「もう、12年ですよ。結婚されたのでは?」

灰谷「するわけがないよ。私は、琴羽と付き合うまで5年も待ったんだ。結婚だって何十年でも待っていようと決めてたから」

そう言われて、琴羽さんはポロポロと泣いた。

灰谷さんは、琴羽さんを抱き締める。

洋「俺が、車の鍵持っていきますね」

そう言って俺は、二人を残して歩きだした。

よかったですね。

琴羽さんから、拜島さんに対する怒りが消えた気がした。

灰谷さん、よかったですね。

車に戻ると、れんと拜島さんが立っていた。








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