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待てを言われた僕達は…。
【待てを言われた僕達は…】⑰
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三年後ー
「海斗、ただいま」
「おかえり、凛音」
45歳になれば、ウイルスはいなくなると思っていた。
関口は、血液検査をして海斗にこう言った。
「何故か、海斗君のウイルスはとどまり続けているようだね。それと、これアレルギー止め。」
「それって、もう一生」
「凛音君と、性行為は出来ない」
海斗は、ボロボロ泣いていた。
「最初の数値には、近づいてるから…。二人がしてきた事は、出来るから…。」
「でも、手でも…」
「そうだったね。手が腫れるようになったって話してたね。凛音君も、だったね」
「そうだよ」
「申し訳ないが、それはどうにもならない。キスとハグとお風呂にはいる。それ以外、出来ないんだね。辛いかい?」
「当たり前の事を聞きますね」
「辛いよね。私もわかるよ。」
「関口さんは、触(ふ)れられないんですよね。二度と…。」
「あー。私は、実験の為に性行為を三回した。ウイルスをお互いに宿したせいで、キスも手を繋ぐのも出来ない。触(ふ)れる事さえも出来ない。」
「向こうは、何て?」
「毎日、毎日泣いていた。その涙を拭ってあげようとしたら二人共アナフィラキシーが起こったんだ。」
「それで、解毒剤と…。」
「いや、解毒剤を打ったんだよ。時間がなかったから…」
「どうなったんですか?」
「ウイルスは、変異した。私も彼も、ウイルスが変異したせいで二度と触(ふ)れられなくなった。触(ふ)れたら、死ぬようになったんだ。」
「そんな」
「彼は、死にたいと言ったよ。だけど、私が生きてくれと頼んだ。いまだに、彼からメッセージがくる。」
そう言って、関口は海斗にメッセージを見せる。
会いたい、愛してる、どれだけ関口の傍にいたいか、どれだけ関口に触(ふ)れたいか、そんな事が書いてあった。
「関口さんも、同じなんだね」
「海斗君、私は、彼を心底愛していたんだ。彼がいない世界はいらなかった。なのに、私は、今、女性と過ごし子供もいる。全然幸せじゃないんだ。」
「関口さん」
「画期的だと思ったウイルスは、絶望のウイルスだった。人類を増やす事が幸せなのだろうか?そう思っていた。それでも、私はあの日海斗君に言われるまで同性同士は悪だと思い込み続けた。でもね、海斗君が舌が腫れたって凛音君とすると言った時にね。考え方が、変わったんだ。それで、解毒剤を海斗君に渡したんだよ」
関口は、海斗に笑いかける。
「それなら、俺は幸せものですね。」
「そうだね!海斗君は、幸せ者だよ。大切にして欲しい。その幸せを…。」
「わかりました。」
海斗は、関口と別れて家に帰った。
「どうだった?検査結果?」
凛音は、少しだけ期待していた。
もしかすると、「待て」を言われないのかもしれないと思った。
海斗は、首を横に振った。
「そっか、仕方ないね」
凛音は、海斗を後ろから抱き締めた。
「ごめん、凛音」
「いいんだよ、心配しないで」
凛音は、海斗の頭を撫でる。
「本当に、ごめん」
「海斗は、ずっと謝ってばかりだよ。僕は、三年前も言ったよね!海斗といるだけでいいんだって!海斗がいない世界はいらないんだよ。だから、心配しないでよ。」
「辛くない?」
「辛いのは、海斗といれない事だから」
凛音の言葉に海斗は、耳元で「そうだね」と呟いた。
凛音は、海斗を引き寄せて抱き締めて、キスをする。
これだけが、出来る。それだけで、いいじゃないか…。
二人は、キスをしながら同じ事を思っていた。
【同じ思いをもてた事だけでも素晴らしい事。身体の関係に拘らなくたっていいじゃないか…。心は、繋がっているのだから…。愛してると言えば、愛してると言ってくれる。抱き締めてくれる。頬に触(ふ)れる事が出来る。あの日と違って、涙に触(ふ)れる事が出来る。】
「海斗、大丈夫?」
「大丈夫」
二人は、顔を見合わせて、こう言った。
「「待て」」
笑い声が、響き渡る。
待てを言われた僕達は、永遠にお預けを食らってしまった。目の前に、こんなにも美味しそうなものがあるのに…。食する事は、許されない。
それは、悲しい事なのだろうか?
それは、辛い事なのだろうか?
違うよね。
ハッピーエンドは、結ばれる事だと世の中の人は言うだろう
結ばれるのは、どこまで?
結婚をし、身体を重ね、子供を授かるのが、全ての人生(ものがたり)のハッピーエンドだと言うなら…。
そのどれにも属さない、二人はハッピーエンドではないのだろうか?
それは、世の中が決めたハッピーエンドだ。
二人にとってのハッピーエンドは、これなのだ…。
「海斗、ずっーと一緒にいて」
「凛音、当たり前だよ」
抱き締められる。
おでこをくっつけて笑う。
何十年先も、一緒にいてくれるだけで他には何もいらない。
笑顔の二人の映像が消えていく。
END
「海斗、ただいま」
「おかえり、凛音」
45歳になれば、ウイルスはいなくなると思っていた。
関口は、血液検査をして海斗にこう言った。
「何故か、海斗君のウイルスはとどまり続けているようだね。それと、これアレルギー止め。」
「それって、もう一生」
「凛音君と、性行為は出来ない」
海斗は、ボロボロ泣いていた。
「最初の数値には、近づいてるから…。二人がしてきた事は、出来るから…。」
「でも、手でも…」
「そうだったね。手が腫れるようになったって話してたね。凛音君も、だったね」
「そうだよ」
「申し訳ないが、それはどうにもならない。キスとハグとお風呂にはいる。それ以外、出来ないんだね。辛いかい?」
「当たり前の事を聞きますね」
「辛いよね。私もわかるよ。」
「関口さんは、触(ふ)れられないんですよね。二度と…。」
「あー。私は、実験の為に性行為を三回した。ウイルスをお互いに宿したせいで、キスも手を繋ぐのも出来ない。触(ふ)れる事さえも出来ない。」
「向こうは、何て?」
「毎日、毎日泣いていた。その涙を拭ってあげようとしたら二人共アナフィラキシーが起こったんだ。」
「それで、解毒剤と…。」
「いや、解毒剤を打ったんだよ。時間がなかったから…」
「どうなったんですか?」
「ウイルスは、変異した。私も彼も、ウイルスが変異したせいで二度と触(ふ)れられなくなった。触(ふ)れたら、死ぬようになったんだ。」
「そんな」
「彼は、死にたいと言ったよ。だけど、私が生きてくれと頼んだ。いまだに、彼からメッセージがくる。」
そう言って、関口は海斗にメッセージを見せる。
会いたい、愛してる、どれだけ関口の傍にいたいか、どれだけ関口に触(ふ)れたいか、そんな事が書いてあった。
「関口さんも、同じなんだね」
「海斗君、私は、彼を心底愛していたんだ。彼がいない世界はいらなかった。なのに、私は、今、女性と過ごし子供もいる。全然幸せじゃないんだ。」
「関口さん」
「画期的だと思ったウイルスは、絶望のウイルスだった。人類を増やす事が幸せなのだろうか?そう思っていた。それでも、私はあの日海斗君に言われるまで同性同士は悪だと思い込み続けた。でもね、海斗君が舌が腫れたって凛音君とすると言った時にね。考え方が、変わったんだ。それで、解毒剤を海斗君に渡したんだよ」
関口は、海斗に笑いかける。
「それなら、俺は幸せものですね。」
「そうだね!海斗君は、幸せ者だよ。大切にして欲しい。その幸せを…。」
「わかりました。」
海斗は、関口と別れて家に帰った。
「どうだった?検査結果?」
凛音は、少しだけ期待していた。
もしかすると、「待て」を言われないのかもしれないと思った。
海斗は、首を横に振った。
「そっか、仕方ないね」
凛音は、海斗を後ろから抱き締めた。
「ごめん、凛音」
「いいんだよ、心配しないで」
凛音は、海斗の頭を撫でる。
「本当に、ごめん」
「海斗は、ずっと謝ってばかりだよ。僕は、三年前も言ったよね!海斗といるだけでいいんだって!海斗がいない世界はいらないんだよ。だから、心配しないでよ。」
「辛くない?」
「辛いのは、海斗といれない事だから」
凛音の言葉に海斗は、耳元で「そうだね」と呟いた。
凛音は、海斗を引き寄せて抱き締めて、キスをする。
これだけが、出来る。それだけで、いいじゃないか…。
二人は、キスをしながら同じ事を思っていた。
【同じ思いをもてた事だけでも素晴らしい事。身体の関係に拘らなくたっていいじゃないか…。心は、繋がっているのだから…。愛してると言えば、愛してると言ってくれる。抱き締めてくれる。頬に触(ふ)れる事が出来る。あの日と違って、涙に触(ふ)れる事が出来る。】
「海斗、大丈夫?」
「大丈夫」
二人は、顔を見合わせて、こう言った。
「「待て」」
笑い声が、響き渡る。
待てを言われた僕達は、永遠にお預けを食らってしまった。目の前に、こんなにも美味しそうなものがあるのに…。食する事は、許されない。
それは、悲しい事なのだろうか?
それは、辛い事なのだろうか?
違うよね。
ハッピーエンドは、結ばれる事だと世の中の人は言うだろう
結ばれるのは、どこまで?
結婚をし、身体を重ね、子供を授かるのが、全ての人生(ものがたり)のハッピーエンドだと言うなら…。
そのどれにも属さない、二人はハッピーエンドではないのだろうか?
それは、世の中が決めたハッピーエンドだ。
二人にとってのハッピーエンドは、これなのだ…。
「海斗、ずっーと一緒にいて」
「凛音、当たり前だよ」
抱き締められる。
おでこをくっつけて笑う。
何十年先も、一緒にいてくれるだけで他には何もいらない。
笑顔の二人の映像が消えていく。
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