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待てを言われた僕達は…。

【待てを言われた僕達は…】⑫

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海斗に連絡するが出なくて、凛音は、安藤の家を出れないでいた。

どうすればいいのかわからない。

海斗が、何を望んでいるのかがわからなかった。

泣きながら、海斗とのスマホにある写真を見つめる。

.
.
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.
.

17歳ー

「ねー、ねー。市川君。僕、好きなんだよ」

「しつこいなー。何回目だよ」

「数えてない。でも、二年は告白してるよ」

「だから、無理だって」

「お願いだよ!お試しでいいから」

「嫌、無理だから…」

「何でだよ!じゃあ、身体から始める?僕は、準備出来てるよ」

「待て、待て、待て」

「僕は、犬じゃない」

「わかってるよ!」

「わかってないよ。市川君は、ずっと僕に待てってしか言わないじゃないか!僕は、二年も待ってるよ。少しぐらい、好きになってくれたっていいじゃないか!」

「好きに決まってんだろーが!」

その言葉が、胸を貫いた。

ドクンってした。

「ハイチーズ」

カシャッ…。

17歳の夏休みに入る三日前に、僕は入学式で一目惚れした海斗をやっと手に入れた。

「キスしていい?」

「待て、待て」

「ハグは?」

「待て、待て」

犬扱いは、変わらなかった。

暫くして、海斗から手を繋いでくれた。

嬉しくて、心臓が飛び出そうになった。

「いいの?待てじゃなくて」

「いいの、いいの」

満面の笑みで、僕を抱き締めてくれた。

また、待てだよ。

いつまで、待ったらいいの?

海斗………。教えてよ。

海斗の家に住んだのは、父親から逃げるためだった。

「凛音、卒業おめでとう。そろそろ、いいよな?」

「やめろーー」

暴れた足が、父親の腹に入った。

「凛音」

「やめろーー」

走って、走って、走って、走って

プルルルー

『凛音、明日はチキン食べて、映画見に行くんだっけ?』

「海斗ぉぉー。助けて」

『どうした?』

「助けてよ、海斗」

『おいで!家(うち)で待ってるから』

「うん」

僕は、海斗の家に言った。

「凛音、大丈夫?」

「うん」

海斗の腕の中で眠った。

それから、海斗の家に住んだ。

父親がいない時間に、荷物を取りに行った。

「お前さあー。何で、父さんの相手してやんねーんだよ。減るもんじゃないだろ?」

「だったら、兄ちゃんが」

「嫌に、決まってんだろ?俺は、結婚してるの。お前も嫌なら、結婚したら」

「僕が、それは無理だって」

「わかって、言ってんだよ。お前のせいで、あいつ等の仲悪くなったら殺すから!!」

その目は、怖かった。

ゾッとした、寒気がした。

だから、僕は二度と帰らなかった。

リリーンー

海斗!!!

僕は、画面を見ずに電話に出た。

「はい」

キラキラした声を出した。

『凛音、彼女出来たの?』

「母さん、何だよ」

『何よ、冷たいわね』

「何でもいいや。もう、切るよ」

『いいじゃないのたまにわ!』

「よくない」

『凛音、母さんね。毎日父さんにね。』

「なに」

『もう、嫌なのよ。母さんも、もう58じゃない。そういうのはさ』

「そういうのって何?」

『わかるでしょ?子供じゃないんだから!!凛音だってしてるでしょ?』

「母さん、僕ね、父さんにね。」

『もっと、凛音が父さんの相手してくれたらよかったのよ』

「えっ?」

『だから、もっと凛音が父さんの相手してくれてたら、母さん。嫌々父さんの相手しなくてよかったのよ』

「それって、どういう意味だよ」

『母さんのビデオ見てたでしょ?あれね、正宗君が撮ってくれたのよ、母さんもさ、38歳だったからね。飢えてたのよ。あれから、10年は楽しんだわね。そしたら、父さんの相手しなくちゃいけなくなったのよ。凛音がいなくなったからよ』

「母さん、知ってたの…。」

『当たり前じゃない!母さんが、凛音にしてもらってって言ったのよ』

「何で、そんな酷い事…」

『酷い?酷いのは凛音じゃない。母さんは、あんなに女の子が産まれてきてねって頼んだのに!男で、産まれてきたじゃない』

「何、それ………。」

『また、父さん帰ってきたわ!凛音、早く結婚しなさいよ』

ブチッ……プー、プー

心が壊れるような音がした。

スマホを床に落としてしまった。

涙が止まらなくなった。

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