80 / 136
待てを言われた僕達は…。
【待てを言われた僕達は…】⑦
しおりを挟む
洗面所でうずくまって泣いていた海斗。
凛音が、何かをしている気がしていた。
玄関の音がした。
凛音が、出て行ったのを感じた。
「凛音、凛音」
触(ふ)れられない事
いなくなった事
絶望しかなかった。
凛音が、いない世界は考えられなかった。
最悪で、最低だ。
「幸せって、何で壊れるの」
凛音に触(ふ)れた指先が腫れて熱をもつ。
「もう、待つのは嫌だよ」
凛音の血に触(ふ)れた指先が腫れてる。
「犬じゃないんだ。俺は、人だ。お預けばっかり、食らうのはたくさんだ。」
凛音に触(ふ)れたい。
涙が、ボタボタ流れてくる。
「海斗、してあげるよ」
初めて、凛音が自分のに触(ふ)れてくれた日を思い出した海斗。
目を閉じて、自分のに触(ふ)れる。
.
.
.
.
「海斗、してあげるよ」
「凛音、そんなのいらないから」
本当は、したかった。
でも、怖かった。
自分が死ぬ事よりも、凛音が死ぬ事が何より怖かった。
「大丈夫だよ。手だけだから…」
「凛音、駄目だよ」
「大丈夫だから」
ソファーに座った俺の足の間に、正座をして座る。
凛音は、ゆっくりとベルトをはずした。
「恥ずかしいから、やめて」
「じゃあ、僕の顔見てて」
そう言って、凛音の顔が近づいてきた。
息づかいに、キス、手の動かしかた。
愛してる人が、してくれる行為はとても幸せだった。
汚(きたな)いって思っていた性行為を、初めて汚(きたな)くないと思えた。
凛音と、身体を重ねてしまいたい。
凛音の口に…。
あの日、母がしてたように…。
「やめて、凛音。はっ」
「よかった。イケなかったらって思ったら悲しかった。」
凛音は、ポロポロと泣いていた。
「凛音、ありがとう」
涙を拭ってあげた。
「ううん。」
「駄目、汚(きたな)いから拭かなきゃ」
その言葉も聞かずに、凛音は俺のを…。
なんだろう。
嬉しくて、涙が出た。
俺から出たそれを愛しそうに大切に扱った。
「気持ち悪くない?」
「大丈夫」
凛音は、そう言ってくれた。
凛音といたい。
「凛音、させて」
「海斗、いいよ。しなくて」
「やりたいんだ。」
「いいって」
「やらせてよ。でも、その」
「これは、しなくていいから」
「ごめんね。その」
「お母さんのせいでしょ?」
「うん。でも、手でしてあげたいんだ。」
本当は、怖かった。
ウイルスのせいで、どうなるかわからない身体が…。
「海斗、もう無理だよ」
「いいよ」
「はっ、あっ」
「よかった。イケて」
「海斗、手拭いて」
凛音は、ティッシュで俺の手を綺麗に拭いてくれた。
「いいのに…」
「駄目だよ」
「凛音、愛してるよ」
「僕も、愛してる。海斗」
抱き合った温もりが、身体中に広がって…。
凛音に触(ふ)れる喜びが、身体中に広がって…。
目を開けた海斗。
凛音はいない。
代わりに、ベタベタな右手を感じた。
身体中が、凛音のものだ。
凛音を想像するだけで、そうなれるのだ。
「凛音、凛音。」
涙が流れてくる。
血を広げた床にズボンに手を突っ込んで、丸まって泣いてる自分。
ダサくて、惨めな自分。
凛音が、いない世界はいらない。
凛音に…。
「凛音、どこ行ったの?」
海斗は、起き上がって洗面所で手を洗った。
自分への嫌悪と苛立ちが沸いてくる。
ペタペタと音をたてながら、リビングにやってきた。
凛音がいれてくれたカレーが、ダイニングテーブルにちょこんと置かれている。
スプーンをつかんで、口に運んだ。
「ニガッ、焦がしたな。なぁ?凛音」
いつも、ソファーにいる凛音に声をかけた。
いるわけないの、わかってるくせに、わざと大きな声を出した。
「ニガッ」
一口食べる度に、そう言った。
飲み込むように食べ終わった皿をシンクに下げにいく。
ガタンっ………。
凛音が、二度と帰ってこないと思った瞬間、眩暈がした。
それと、同時にお皿がシンクに落ちたのだ。
「凛音、凛音」
キッチンの床に泣きながら崩れ落ちる。
胸が潰れる程、痛くて堪らない。
凛音がいない世界は、いらない。
「なー、凛音。俺の隣でスマホ触(さわ)るの怒らないから、出てこいよ。隠れてるなよ」
そう言いながら、涙が止まらなかった。
凛音が、何かをしている気がしていた。
玄関の音がした。
凛音が、出て行ったのを感じた。
「凛音、凛音」
触(ふ)れられない事
いなくなった事
絶望しかなかった。
凛音が、いない世界は考えられなかった。
最悪で、最低だ。
「幸せって、何で壊れるの」
凛音に触(ふ)れた指先が腫れて熱をもつ。
「もう、待つのは嫌だよ」
凛音の血に触(ふ)れた指先が腫れてる。
「犬じゃないんだ。俺は、人だ。お預けばっかり、食らうのはたくさんだ。」
凛音に触(ふ)れたい。
涙が、ボタボタ流れてくる。
「海斗、してあげるよ」
初めて、凛音が自分のに触(ふ)れてくれた日を思い出した海斗。
目を閉じて、自分のに触(ふ)れる。
.
.
.
.
「海斗、してあげるよ」
「凛音、そんなのいらないから」
本当は、したかった。
でも、怖かった。
自分が死ぬ事よりも、凛音が死ぬ事が何より怖かった。
「大丈夫だよ。手だけだから…」
「凛音、駄目だよ」
「大丈夫だから」
ソファーに座った俺の足の間に、正座をして座る。
凛音は、ゆっくりとベルトをはずした。
「恥ずかしいから、やめて」
「じゃあ、僕の顔見てて」
そう言って、凛音の顔が近づいてきた。
息づかいに、キス、手の動かしかた。
愛してる人が、してくれる行為はとても幸せだった。
汚(きたな)いって思っていた性行為を、初めて汚(きたな)くないと思えた。
凛音と、身体を重ねてしまいたい。
凛音の口に…。
あの日、母がしてたように…。
「やめて、凛音。はっ」
「よかった。イケなかったらって思ったら悲しかった。」
凛音は、ポロポロと泣いていた。
「凛音、ありがとう」
涙を拭ってあげた。
「ううん。」
「駄目、汚(きたな)いから拭かなきゃ」
その言葉も聞かずに、凛音は俺のを…。
なんだろう。
嬉しくて、涙が出た。
俺から出たそれを愛しそうに大切に扱った。
「気持ち悪くない?」
「大丈夫」
凛音は、そう言ってくれた。
凛音といたい。
「凛音、させて」
「海斗、いいよ。しなくて」
「やりたいんだ。」
「いいって」
「やらせてよ。でも、その」
「これは、しなくていいから」
「ごめんね。その」
「お母さんのせいでしょ?」
「うん。でも、手でしてあげたいんだ。」
本当は、怖かった。
ウイルスのせいで、どうなるかわからない身体が…。
「海斗、もう無理だよ」
「いいよ」
「はっ、あっ」
「よかった。イケて」
「海斗、手拭いて」
凛音は、ティッシュで俺の手を綺麗に拭いてくれた。
「いいのに…」
「駄目だよ」
「凛音、愛してるよ」
「僕も、愛してる。海斗」
抱き合った温もりが、身体中に広がって…。
凛音に触(ふ)れる喜びが、身体中に広がって…。
目を開けた海斗。
凛音はいない。
代わりに、ベタベタな右手を感じた。
身体中が、凛音のものだ。
凛音を想像するだけで、そうなれるのだ。
「凛音、凛音。」
涙が流れてくる。
血を広げた床にズボンに手を突っ込んで、丸まって泣いてる自分。
ダサくて、惨めな自分。
凛音が、いない世界はいらない。
凛音に…。
「凛音、どこ行ったの?」
海斗は、起き上がって洗面所で手を洗った。
自分への嫌悪と苛立ちが沸いてくる。
ペタペタと音をたてながら、リビングにやってきた。
凛音がいれてくれたカレーが、ダイニングテーブルにちょこんと置かれている。
スプーンをつかんで、口に運んだ。
「ニガッ、焦がしたな。なぁ?凛音」
いつも、ソファーにいる凛音に声をかけた。
いるわけないの、わかってるくせに、わざと大きな声を出した。
「ニガッ」
一口食べる度に、そう言った。
飲み込むように食べ終わった皿をシンクに下げにいく。
ガタンっ………。
凛音が、二度と帰ってこないと思った瞬間、眩暈がした。
それと、同時にお皿がシンクに落ちたのだ。
「凛音、凛音」
キッチンの床に泣きながら崩れ落ちる。
胸が潰れる程、痛くて堪らない。
凛音がいない世界は、いらない。
「なー、凛音。俺の隣でスマホ触(さわ)るの怒らないから、出てこいよ。隠れてるなよ」
そう言いながら、涙が止まらなかった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
【短編】愛人の家から帰ってこない婚約者と婚約破棄したいのですが、、、。婚約者の家族に苛められ、家事を全て押し付けられています。
五月ふう
恋愛
愛人の家からほとんど帰ってこない婚約者は婚約破棄を望む私に言った。
「お前など、好きになるわけないだろう?お前には死ぬまでこの家のために働いてもらう。」
幼馴染であり婚約者のアストラ・ノックスは私にそう言った。
「嫌よ。」
「だがお前に帰る場所などないだろう?」
アストラは薄笑いを浮かべた。確かに私は、もう二度と帰ってくるなと、何度も念押しされて実家を出てきた。
「俺はお前の親から、お前を安値で買ったのさ。」
アストラの言葉は真実であった。私が何度、帰りたいと手紙を書いても、両親から連絡が返ってくることはなかった。
私の名前はリュカ。フラノ国没落貴族の娘。お金が無いことで、昔から苛められてきた。アストラは学生時代、私を虐めていた男達のリーダーだった。
「リュカ!!まだ晩御飯ができないの?!」
今日も義理の母は私を怒鳴りつける。
長靴をはいた婿~三女は農民に嫁いで幸せを満喫します、負け惜しみじゃなくて~
羊蹄
恋愛
ジェンセン子爵には三人の娘がおりました。
長女は、王族に嫁に行き。
次女は、豪商に嫁に行き。
最後は私の番。
三女のシャロンに告げられた嫁ぎ先は、極東の農民。6人兄弟の5男だった!?
寡黙な夫、だだっ広い土地に犬に牛。
これって、何だかとっても……自由かも!
ドレスを脱ぎ捨て、スローライフを満喫します!
……夫に受け入れてもらえますように……。
王子様になれなくたって君を幸せにはできるだろ?
三愛 紫月 (さんあい しづき)
恋愛
俺は、高身長、イケメン、イケボイスらしいです。
そんな俺には、誰にも言えない秘密がひとつ
それを知ってるのは、俺の職場で掃除の仕事をしてる人だった。
その人と一緒に過ごしてあげた。
その人は、なぜか嫌われて
友達や親戚に色々言われていて
なぜか、俺は、一緒にいてあげたくなった。
だけど、その人が望んだ幸せは与えられない。
なのに、傍にいたい。
矛盾する気持ちの結末は…。
掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
※一部、葉月梨華のお話は、私自身のお話を交ぜて書いています。交通事故の後遺症、ドクターストップ、何をしても痩せれなくて、苛立ちを抱えながら生きていました。周りからも、簡単に痩せれるとばかりに言われていました。痩せれないと悩んでいる誰かに届けばいいと思いました。なのでこのお話を書くにあたり私自身の実話をいれました。※
寝かせて、寝かせて、こちらもやっと書けました。
短編小説になります。
小説家になろう、カクヨムに投稿してます。
今でも、あなたが…。
三愛 紫月 (さんあい しづき)
恋愛
子なし主婦の私は、ある日小さな子供に告白された。
突然の事に、?マークが止まらなかった。
そして、何故か彼のママになる事になった。
現れた夫に、宣戦布告するその姿も可愛かった。
子なし主婦に訪れた、不思議なお話。
【あのね、俺は、今だって貴女をこんなにも愛してるんだよ】
これは、一生秘密なんだよ。
死ぬまで、貴女を愛してるから
初めては、全部貴女だった。
これを、恋じゃないって言わないで。
初めては、全部貴方だった。
この想いを否定しないで。
抱えきれない秘密を墓場まで…
短編になります。
あるお話を見てから、これ書きたい。だけど、話が進まずに…。
悩んで、寝かせて、寝かせて、やっと最後までかけました。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
君が死ぬまで愛してる
宇田川竜胆
恋愛
永遠という女がいた。
彼女は高校三年間、たった一人の男を好きで居続けた。しかし、アプローチすることが出来ず、高校生活が終わろうとしていた。
これは、彼女の気持ちの変化のお話。
もし良かったら、彼女の気持ちをちょっとだけ覗き見していきませんか?
地味子と結婚なんて可哀想なので、婚約者の浮気相手に尽くします!
羊蹄
恋愛
ホイットモー侯爵の次女、ベルタは17歳。
“侯爵家の生きた亡霊”
“壁の花というより花柄の壁”
そんなわたくしが婚約??
地味に地味に生きてきたのに無理無理無理!
お相手のかたが可哀想でしょ!
他に愛する方がいらっしゃるのね、そりゃそうよ。
だったらできることはただ一つ。
平穏な生活を送るため、その方に精一杯尽くします!
波風立てず、争わず。
慎ましくも穏やかな生活のために!!
(2021.6.22-9.10 完結)
元公爵夫人の、死ぬまで続けたいお仕事について。
羊蹄
恋愛
ポーリーン、28歳。元公爵夫人です。
旦那の浮気で離婚したのに、なぜついてくるんですか。
信じません!
戻りません!
では、こうしましょう。
公爵様にぴったりの奥様を、わたくしがコーディネートしてさしあげます!
2021.11.21 完結
………
『地味子と結婚なんて可哀想なので、婚約者の浮気相手に尽くします!』サブストーリーです。
血を奪いし者の宿命
仁来
恋愛
生命を維持するために人間の血が必要な吸血鬼。
しかし、初めて人間の死を目にした吸血鬼の王イヴェリスは、血を摂ることにためらいを感じるようになった。
魔界の者によって狙われた人間は、泣き叫び、苦しみながらも、愛する人を思いながら命を絶っていく。
そして周囲の人々はその死者のことを覚えず、記憶を消されてしまう。
血を奪いし者の宿命として、イヴェリスが選んだ道とは……。
「おひとりさま女子だった私が吸血鬼と死ぬまで一緒に暮らすはめに」の番外編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる