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【それが、運命(さだめ)ならば…。】

【それが、運命ならば…】⑧

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やってしまった。

僕は、ミスをした。

口にだしては、いけなかったんだ。

殺されるんだ。

僕は、殺されるんだ。

「離しなさい」

ドサッ………。

「ゴホッ、ゲホッ、ゲホッ」

「僕の弟を殺すつもりですか?」

「ゲホッ、ゲホッ」

「十季、大丈夫か…」

現れたのは、正美だった。

「何を言ってるのですか、そんな事しませんよ。」

椎名先生は、僕を睨み付けた。

「もし、またこのような事をされるのでしたら警察に言いますよ。」

「遠藤君が、遅刻しそうだから声をかけただけですよ」

「二度と、近づかないでいただきたい」

「わかってますよ。」

椎名先生は、フラフラといなくなってしまった。

『十季、大丈夫?』

「君が、愛斗さんですか?」

『見えるの?』

「はい、見えますよ」

『しーちゃんは、なぜ十季を?』

正美は、僕のビジョンを読み取った。

「えっと」

僕は、正美の腕を掴んだ。

「十季」

ブンブンと首を横に振った。

「言っては、駄目なの」

十季は、首を縦にふる。

「わかった。これ、忘れていた。けど、今日はもう帰ろうか、十季。心配だから」

正美は、体操服を持ってきてくれたようだった。

「わかった」

僕は、やっと話せて立ち上がった。

『十季』

「さよなら、愛斗」

『待って』

十季の手を愛斗は、握りしめた。

ドクン………。

『そんな……。』

愛斗は、その場に崩れ落ちる。

「十季、offにしなかったのか?」

「あっ!」

正美に言われて、十季は能力をoffにしていない事に気づいてしまった。

『十季、今のは本当なの?』

「ごめんね」

『そんな、しーちゃんが…。』

「ごめんね」

『だから、さっき十季まで』

僕は、何も言えなかった。

「十季、外にいるよ」

「わかった、正美」

正美は、そう言って行ってしまった。

『十季、僕を愛してくれる?』

「もう、愛してるよ」

『十季、僕をここから解放してくれる?』

「わかった。やるよ!」

『十季』

愛斗は、僕を抱き締めた。

「今日の夜。会いに来るよ」

『わかった』

僕は、愛斗の涙を拭った。

十季は、愛斗に手を振って走り出した。

「正美、お待たせ」

「帰ろうか?」

「うん」

正美と並んで歩く。

「正美、ありがとう。正美がいなかったら、死んでた。」

「体操服を忘れていたのに、気づいたから持ってきただけですよ。忘れ物をすると、十季は、よけいに皆に嫌われてしまうから…」

「正美、知ってたの?」

「十季の能力は、今不安定です。だから、読めてしまう。でも、ちゃんと鍵をかけないと師匠にも読まれますよ。」

「どうやって、かけるの?」

「こうするんですよ」

正美は、そう言って十季の手を握りしめる。

ドクンと音がした瞬間、頭の中の引き出しに記憶が収納されていく。

愛斗の事が、集められた引き出しに金色の鍵がカチャリとかかったのが見えた。

「正美」

「これで、師匠には見られないからね」

正美は、僕の頭をポンポンと叩く。

「取り出したい時は、同じように引き出しの鍵をあけるんだよ!わかった?」

「わかった」

正美は、その言葉にニッコリ微笑んでくれた。

「正美、僕は、もう少し修行をつむべきだね。」

「そうかもしれないね。でも、今は子供らしくいるべきだよ」

正美の言葉に、僕は首を横に振った。

「正美、僕は愛する人を守れるような人間になりたいんだ。愛斗を守るより、傷つけてしまった。それは、駄目なんだよ。さっき、椎名先生に首を絞められて思ったんだ。身体も心も強くならなくちゃいけないって!今みたいなひ弱な僕じゃ誰も守れやしない」

「十季……。子供をやめるのですか?」

「やめるよ、正美。師匠を越える程、強い能力者になるつもりだよ!僕は、愛する幽霊達を守る人間になる。」

「わかりました。僕も僕に出来る事をして、十季を支えていきます。」

「正美、ありがとう」

「はい」

十季と正美は、強く互いの手を握りしめた。

何故、こんな能力をそう思っていた十季の迷いは、さっきの出来事で消えていた。
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