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【身体だけが繋がらない】

【身体だけが繋がらない】⑧

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かわって、恵美子と友里亜ー

「ちょっと、すみません」

ランチを済ませて、甘いものを食べて、帰り道に乗り込んだ助手席でキスをされてしまった恵美子。

「抑えきれなかった。ごめんなさい。」

抑えきれないとは、どういう事だろうか?

浜田さんと私は、昨日初めて知り合った仲だ。

そして、キスをされるような仲になどなっていない。

どこで、恋をする要素があったのだろうか?

恋愛ドラマや漫画が好きな私としては、何の共感も得られていない。


「あの公園で、泣いている。恵美子さんを見た時から惹かれていました。」

そう言われて、驚く恵美子。

慎太郎を裏切っている気持ちもあるけれど、彼女が向けてきた気持ちが嫌だとは思わなかったのが不思議だった。

不思議と楽に感じた。

苦しんでいるくせに、何故か楽に感じた。

「恵美子さん、お願い。私と付き合って欲しい」

そもそも、付き合うとどの段階で思われたのか?

異性の恋愛なら、もう少しゆっくりと進むのではないのか…?

そうか、彼女は私と同じなんだ。

後がないんだ。

最後に、排卵誘発剤を飲んだ時の私と同じなんだ。

次がないから、私は焦っていた。

何度も慎太郎に頼んだ。

結果なんて変わらないのに、それでも泣いてお願いした。

すがりついた。

惨めだった、自分がとてつもなく惨めだった。

「考えさせて下さい。きちんと、考えますから」

「本当に?本当に?」

「はい、勿論です。」

私は、浜田さんに抱き締められる。

「ありがとう」

「はい」

また、キスをされてしまった。

「あの、まだそれは…。」

「あっ、ごめんなさい。キスしたくなってしまって」

「いえ、大丈夫です。」

「家に送ります」

「ありがとうございます。」

「はい」

浜田さんは、車を出してくれた。

.
.
.
.

かわって、慎太郎と慶太ー

「送りますよ。」

「すみません」

「敬語やめて下さい。」

「はい」

笹森さんを見てると、あの日の恵美子を思い出してしまった。

切羽詰まった恵美子を思い出した。

恵美子に悪いけれど、無下には出来なかった。

「ちゃんと、答えをだすから。本当に…。」

「はい、待ってます」

家から出て、彼の車に乗った。

恵美子ときちんと話し合わなければならない。

どんな形になっても、きちんと向き合いたい。

恵美子が、望む答えを見つけ出そう。

.
.
.
.
.

帰宅が重なった、慎太郎と恵美子

「またね、慎太郎さん」

「ありがとう」

「またね、恵美子さん」

「はい」

手を振って、車から降りてきた二人。

無言で、鍵を開ける恵美子

何も言わずに、後ろに立ってる慎太郎。

玄関に入る

「離婚したいのか?」

恵美子にそう言った慎太郎

込み上げてくる涙を止められない。

無言で、リビングに行く恵美子

ポムを撫でる。

慎太郎も入ってくる。

ダイニングに向かい合わせに座る。

「するなら、明日取りに行こうか?」

涙が流れてきて、手が震える。

恵美子に、離婚って言葉を言いたくなかった。

声が出そうになる口を必死で抑える。

「本当は、別れたくないよ。でも、私。慎太郎とは、出来ない。したら、子供を望むの。でも、私、閉経したんだって!だから、そうなれないんだよ。なのに、慎太郎としたら期待する。最後の方なんて、タイミングとったら絶対次の日生理きてたじゃん。何も、嬉しくなかった。私、赤ちゃん欲しかったんだよ。二人の赤ちゃん。死ぬほど、欲しかった。アナフィラキシーになってもいいから、治療すればよかったかな?私なんか、死んだって赤ちゃんがいたらさ!」

「そんな、そんなわけないだろ!恵美子がいない人生なんかいらないよ。赤ちゃんより、恵美子と生きていきたいんだよ。でも、俺も恵美子とすると期待しちゃうんだ。だけど、まだそういうのしたいんだよ。だから…。どうすれば、いいかわかんなくて」

「私だって、同じだよ」

慎太郎と恵美子は、お互いの気持ちが手に取るようにわかっていた。

なのに、手を握る以上が出来そうになかった。

抱き締めると期待して

キスをすると期待して

肌を重ねると期待して

そんな日々を13年間、重ね合わせた二人には…。

それ以上が、出来そうになかった。

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