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二人の思考

命と朝陽の考え①

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「命、おはよう」 

「朝陽、おはよう」

俺と命は、あれから時々二人きりで焼き肉を食べに行くようになっていた。

「また、復活したのか?」

「でも、妊婦だから…。何もしてないって」

「神さんは?」

「ああ、不倫旅行に行きやがったよ」

「最低だな」

「そうだろ?」

俺達は、みんなの本心なんか何も知らなかった。

「夕陽さんは?」

「嫁が、浮気を疑ってて、今はこれないらしい」

「朝陽に言ってきたの?」

「まさか、三輪にだよ」

「そっか、そっか!じゃあ、暫くは平和だね」

「暫くはな!」

俺は、牛タンを焼いていた。

「乾杯」

命と乾杯して、ビールを飲む。

「沙羅が、私じゃないといけないらしいんだ。だけど、私は京じゃなきゃいけなくて」

「俺もだよ!桜賀さんは、俺じゃないといけないらしくて。でも、俺は三輪じゃなきゃいけなくて」

「厄介だね」

「お互いな」

俺は、命の皿に牛タンを焼いたのをいれた。

「体と心が、別物なのかな?」

「さあ?どうかな?」

牛タンを食べて、また俺は焼く。

「それでも、沙羅も京もいなくちゃ駄目なんだ」
  
「わかるよ、俺も同じだから…」

「一人だけを思えたらよかったかな?」

「それは、南条が命を愛してくれたなら一人だけを思えたんじゃないのかな?」

「そうかもしれないね。京を頑張っても愛せなくて。必要で大切で楽しくて幸せなんだよ。でもね、心(ここ)の奥底から広がってくんだ。空しさや空っぽや寂しさが…。朝陽なら、わかるだろ?」

「わかるよ」

命は、そう言った俺を見つめて笑った。

「愛する事だけじゃなくて、少しでも相手を愛せないと人って幸せじゃないんじゃないかって、俺思ったんだ」

「わかるよ!凄くわかる」

「そうだろ?俺、桜賀さんがいなくなって三輪だけになって、めちゃくちゃ幸せなのに満たされなかったんだよ。多分、他人に話したら贅沢ね、わがままねって言われる事だと思うんだ」

「わかる、わかる。めちゃくちゃわかるよ。朝陽」

命は、凄く頷いている。

「愛してるばっかりも辛くて苦しくて悲しかった。でも、愛されてるばっかりも満たされなくて寂しくて空しくて。そんな感じじゃなかったか?」

「わかるよ!まさに、それだよ。その程よいバランスが見つけられたのが今って感じ。わかる?」

「わかるよ、凄く」

俺は、命にハラミを焼いて渡した。

「だから、沙羅と京が必要なんだよ」

「俺も同じ、桜賀さんと三輪が必要だ」

「って事は…」

命は、何かを考えている。

「どうした?」

「いや、沙羅は兄さんに愛されてなくて愛してるだけなのかな?って思ったんだ」

「神さん、浮気しちゃうからな!依存症だって言ってたんだろ?」

「そうなんだよ。でも、依存症なら沙羅を愛してると思うんだよね。だって、そうだろ?例えば、買い物依存症の人が結婚や恋人がいないわけじゃないし」

「確かにそうだよな」

「基本的には、寂しさや孤独を埋めるために、何かに人は依存するわけだけど…。それなら、兄さんは当てはまらないよね」

「確かに、南条に愛されてるし、子供達もいる。むしろ、満たされてると思うけど?」

命は、顎に手をおいて考えてる。

「だとしたら、兄さんは誰か別の人を愛してるって事?」

「誰だよ」

「さあ?」

「もしかして、命が好きなのか?ほら、変な事ばっか言ってたし」

「ないよ、ないない」

命は、恐ろしいものを見る目で固まっていた。

「だったら、誰だろうか?」

「多分、知らない人だよ」

「そうだよな」

俺と命は、神さんの本当の気持ちなんて見つけられそうになかった。

「でも、沙羅は兄さんから愛を貰えていないのは確かだと思う」

「そうだな!桜賀さんが夕陽に愛されてないのと同じだな」

「だから、私を放さないんだと思うんだ。ううん、放したくないんだろうね。放せば、きっと…」

「神さん(兄さん)を愛せなくなるから…」

俺は、命と一緒に口に出していた。


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