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愛されないのに愛してる人々

沙羅の真実

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命ちゃんが、出て行ってしまった。

「神ッッ」

「沙羅、可愛いね」

「ありがとう」

最初は、気持ち良かった。

でも、何だろう?

何かが足りない気がしていた。

ずっと、何かが…。

そんな時だった。

「ママ、お腹に赤ちゃんいる?」

突然、夢羅(ゆら)がそう言って抱きついてきた。

「何、それ?何かのドラマ見たの?」

「違うよ!ママのお腹に赤ちゃんいるもん」

「ほんとに?赤ちゃんいるの?」

美羅(みら)が、キラキラした顔を向けてきた。

「まさか、早く保育園。お婆ちゃん迎えに来たよ」

「はーい」

「バイバイ、ママ」

「いってらっしゃい」

夢羅の言葉を真に受けた訳じゃないけど…。

私は、スーパーの帰りにドラッグストアで妊娠検査薬を買った。

「まさかね」

家について、検査をした。

陽性だった。

嬉しかったけど、何だか不思議だった。

そっか、命ちゃんがいないんだ。

夢羅が、お腹に宿ったのを私は、命ちゃんにすぐに打ち明けた。

「良かったね、沙羅!おめでとう」

本当は、辛かったかもしれないけど…。

命ちゃんは、命が宿った事を心から喜んでくれた。

だからかな…。

何か不思議な感じだ。

私は、晩御飯を作っていた。

「ただいまー」

「おかえり」

「ただいま、沙羅」

子供達と神さんは、帰宅した。

やっと、夫婦らしくなったよね。

命ちゃんのお陰じゃない。

ご飯を食べ終わって、神さんは子供達を寝かしつけてくれた。

「沙羅、一杯付き合って」

「うん」

私は、缶ビールを神さんに注いで渡した。

「半分、飲む?」

「いらない」

「何で?」

「赤ちゃん、出来たの」

「本当か!」

「うん」

「やったじゃないか!嬉しいよ、沙羅」

ホッとして泣いていた。

「何で泣いてるの?」

「喜んでくれないと思ってた」

「喜ぶに決まってるよ!どうなるかは、わからないけど…。母さんと父さんには、伝えておこう。二人の面倒見てくれてるから」

「命ちゃんにも…」

「そうだな」

その日の週末に、みんなに妊娠が発表された。

それから、何日か過ぎたある日だった。

嫌な予感がして、動画を録音にした。

神さんの部屋をそっと開いた。

「そうなんだよ!うまくいったんだ。ああ、わかってるよ!これからは、そっちに通えるから…。うん、わかってる。泊まりも出きるよ!そうそう!いけるから…。沙羅?沙羅は、疑ってないよ。この3ヶ月いい夫になってたんだから…」

その言葉に、固まった。

神さんは、浮気してる。

ガチャ…

「沙羅、どうしたの?」

「お昼ご飯、出来たから」

「そっか、食べようか」

ずっと、気づかないフリをしていたの。

初めから、神さんには誰か思ってる人がいたのを知ってた。

「神さん、離婚は嫌だよ」

「妊娠して、ナーバスになってる?」

「そうかも」

「沙羅を誰かに渡したりなんかしないよ。沙羅は、一生俺の傍にいてくれなきゃ…。愛してるよ、沙羅」

「うん、愛してる。神さん」

神さんは、知ってる?

私に言う神さんの愛してるは、どうもって隣人の楠木さんに挨拶するみたいに軽い言い方なの気づいてる?

「沙羅さん、無理よねー」

「どうしましたか?」

「明日、命におかず届けてくれないかしら。お父さんの病院についていく日なのよ。命、料理できなくて心配なのよ」

「産婦人科に行くので、寄っていきますよ」

「本当に?助かるわ!ありがとう、沙羅さん」

私は、幸せな気持ちだった。

あのお別れした日のメニューを作ってタッパーにいれた。

命ちゃんに会いに来た。

「沙羅、愛してる」

これだよ!

私が、欲しい愛してるわ。

命ちゃんが愛してるって言うだけで、体の中からゾクゾクするの。

だからだ…。

私は、神さんではいけなかったんだ。

神さんに抱かれながら、この愛してるを思い出していた。

「命ちゃんは、愛さない。でもね、誰にも命ちゃんの愛を渡さないから」

眠ってる命ちゃんの髪を撫でる。

「命ちゃん、赤ちゃんが無事に産まれたらいっぱいしようね」

今日は、お義母さんに美羅と夢羅を頼んだの…。

命ちゃんが、足を痛めたって嘘までついて…。

「命ちゃん」

布団に入った私に気づいて、命ちゃんは目を開けた。

「沙羅、大丈夫?」

愛しいもののように、引き寄せて抱き締めた。

「おやすみ」

寝ぼけてる命ちゃんの髪を撫でてあげた。

「おやすみ」

私は、神さんには、愛されない。だけど、ずっと、愛し続ける。

その為に、私には命ちゃんが必要なの。

だから、誰にも命ちゃんの愛を渡したりなんかしない。



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