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命と朝陽

死なないで

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俺は、立ち上がった。

帰ろう

「朝陽」

いきなり、体を引き寄せられた。

「死なないで」

「帰るとこだから…。って、何で煌人がいるんだよ」

「電話かけてきたじゃん」

「えっ?」

スマホの履歴を見て、ビックリした。

桜賀さんにかけているはずだった。

「間違い電話だった?」

「ごめん」

「別に…」

「五十嵐パイセン」

「日下部」

俺は、日下部に向き合った。

「ごめん、日下部」

「五十嵐パイセン、僕、怒ってませんよ」

「三輪を利用してる。俺、最低だ」

「いいんじゃないですか?少なくとも、煌人は利用されたがってる。だから、煌人がしたいようにすればいいと思ってる。五十嵐パイセンが、煌人に愛されたら苦しくないんでしょ?だったら、仕方ないですよ」

「日下部、ごめん」

「そのかわり、僕だって煌人を抱きますから」

「瞬、何だよ!それ…」

「当たり前です!僕だって、煌人を抱けなかったら苦しいんだから…。後さ、五十嵐パイセン。かけたなら、居場所言ってくれなきゃ困るから」

日下部は、そう言ってデカイ傘を差し出してきた。

「日下部が、見つけてくれたのか?」

「はい!あれです」

ピンコン、ピンコンと鳴っている音がする。

「あれは、せせらぎ病院の近くでしか鳴ってませんから!じゃあ、お邪魔はしませんから…」

日下部は、頭を下げて消えて行った。

「びしょ濡れだから、朝陽」

「ごめん、煌人」

「熱い告白しちゃったのに、来たのが俺でショックだった?」

俺は、首を横に振った。

「煌人」

「いらないって言われたのか?」

「違うよ」

「愛せないって言われたのか?」

俺は、三輪から目を反らした。

「俺が、愛してやるから」

三輪は、ギュッーと俺を抱き締めてくる。

「煌人」

「しっ~。今、俺は、朝陽の心臓の音聞いてるんだよ」

「何だよ、それ」

「規則正しいね。桜賀さんだと不規則になる?」

「わからない」

「体冷たいから、早く帰ろう」

三輪は、傘を持って腕を引っ張って歩いて行く。

俺は、三輪にかけていたんだ。

気づかなかった、口に出せなくて、電話なら言えるかもって思っていたから…。

ガチャ…

俺の家についた。

「夕陽に会ったんだ」

三輪は、ギョッとした顔をして俺を見た。

夕陽にやられた事を話すと、三輪は泣いていた。

「シャワーはいろっか?」

「うん」

ぼとぼとの服のまま、シャワーの栓をひねる。

三輪は、何故か俺の服を脱がしていく。

「しないよ」

「わかってる」

三輪も脱いでいく。

俺は、シャワーに入る。

「煌人まで、入らなくてもいいんだよ」

「朝陽」

「何?」

「俺は、朝陽を愛してるよ!桜賀さんとは違う。俺には、朝陽が必要だから…」

三輪は、後ろ向きの俺に抱きついてくる。

「暖かいな」

「うん」

「俺、煌人を愛せていたらよかった。って、桜賀さんみたいな台詞言ってるわ。ごめん」

「ううん」

「愛されないって、辛いんだな!ごめんな、俺。何も知らないくせに煌人に酷い事言って」

「ううん」

「煌人がいるから、俺、今、生きてるよ」

「その言葉だけで嬉しい」

「煌人、利用してごめんな」

「謝らないでよ、朝陽」

「煌人、俺を愛して欲しい」

俺は、腰に回る三輪の手を握りしめていた。

「当たり前だよ!俺は、ずっと朝陽を愛してるよ」

シャワーを二人で浴びて、洗面所に出た。

タオルで、拭きあいをした。

三輪を愛していれば、幸せだって俺にだってわかる。

俺に向ける笑顔、俺を思って弾む声、涙を流さないように上を向く仕草、暖かい体温。

だけど、俺の心がプクッと膨らまないんだ。

だから、俺は三輪を愛せないんだ。

「拭けたよ」

「ありがとう、はい、パンツとパジャマ」

「朝陽の匂いだ」

「何だよ、それ」

幸せそうにパジャマの匂いを嗅いでる。

「風邪引くぞ」

「はいはい」

三輪は、そう言って服を来た。

ドライヤーをすると、三輪はツンツンと俺の脇腹を刺す。

「やめろよ、弱いから」

コツンと足元に当たる膨らみ

「愛してるよ、朝陽」

「しないよ」

「わかってるよ」

ギュッって、腰に手を回される。

俺にだけ感じてる肉体(からだ)

どんな言葉よりも信じられて嬉しいんだ。
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