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命と朝陽

また、こうして

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時刻は、五時を回っていた。

暫く、俺と三輪はベッドに横になっていた。

「シャワーはいるか?」

「うん」

三輪を連れてシャワーを浴びた。

「お腹壊すよな」

「いいの、いい」

三輪は、真っ赤な顔をして大事そうにお尻を締めていた。

「馬鹿だな」

「馬鹿だよ」

三輪は、ニコニコ笑っていた。

「煌人、愛してくれてありがとう」

後ろから、三輪を抱きしめる。

「ううん、こっちこそありがとう」

「お礼を言われるような事はしていないよ」

「してるよ。朝陽が、また俺を抱いてくれた。それだけで、充分だから…」

三輪のキラキラ光る眼差しが、俺を【愛してる】と伝えていた。

シャワーを浴びて、上がると俺は、三輪の髪の毛をタオルで拭いた。

「どこか行くの?」

「命とご飯食いに」

「瀬野とか!俺も瞬と晩御飯食べよう」

「うん」

「朝陽、週一回、ううん、月に一回でいいから、こうしてよ」

「煌人」

「夕陽さんにつけられるものを全部朝陽が消して」

そう言って、三輪は俺に抱きついてきた。

「わかった。煌人」

「朝陽、愛してる」

愛してると言われる度に、お腹の奥がズキンとした。

女性なら、子宮だよってさっき三輪が言っていた。

恋は、そこでするものなのか?

「煌人。辛い思いばっかりさせて、ごめんな。受け入れてやれなくてごめんな」

「いいの、いいんだよ。俺は、幸せだよ。飯だけ食べるだけの関係なんかより、こっちの方が幸せなんだ。わかるだろ、朝陽だって」

あの頃は、わからなかったけど…。

桜賀さんと肌を重ねた今の俺ならわかる。

「わかるよ。抱き合えるだけで幸せだって…。愛されなくたって、感じてくれるだけで幸せだって」

三輪は、ニコッて微笑んで頬にキスをしてきた。

三輪のように、俺で感じてくれたらって話だけどな…。

あの日々の、三輪の空しさや悲しさが、今になって痛い程わかるんだ。

「朝陽、ダサいモーニング友達も続けてくれよ」

そう言って、三輪はおでこをぶつけてきた。

「いるのか?それ」

「いるよ。朝陽とモーニング食べるの好きだよ!なんだかんだ言って」

「ハハハ、ならよかった」

「うん」

三輪は、キスをする時に俺に耳たぶを触ってくれと指を持っていくんだ。

「朝陽」

「うん」

何も言わなくたって、もうどうして欲しいかなんかわかってる。

ここまで、抱き合っていたなんて凄いよな。

飽きもせずに、互いを欲しがったんだな。

「夕陽にもさせるのか?」

耳たぶを触りながら言った。

「これは、朝陽にだけ。瞬も知らない。俺と朝陽だけの秘密。俺は、これが一番好きなんだよ。朝陽」

「気持ちいいのか?」

「うん、気持ちいい」

三輪は、そう言ってまたキスをしてきた。

足にそれが当たる。

「ほら、わかる?朝陽」

「わかるよ」

俺と三輪の秘密が、くすぐったくて嬉しかった。

夕陽に、三輪の全てを知られてるのは嫌だった。

三輪は、俺にとって特別な相手だった。

恋や愛の、それと違っていたかもしれないけれど…。

それでも、三輪と重ねた日々も重ねた肌も、特別な時間だった。

それを、夕陽には奪われたくなかった。

日下部なら、許せても…。

夕陽だけは、許せなかった。

桜賀さんを取られた夕陽だけには、三輪の全てまでを取られたくなかった。

「夕陽に、煌人の全部を取られたくない。そんな風に思う俺は駄目だよな」

「駄目じゃないよ。夕陽さんに、桜賀さんをとられたからだろ?俺まで、とられたくないんだろ?わかるよ。俺だって、桜賀さんに朝陽の全てを知られたくないよ。こことか…」

「ヤッ」

「ハハ、女みたいな声だしたよ」

「煌人、俺が首の後ろ弱いの知っててわざとしただろ」

「桜賀さんは、知ってる?」

「知らないよ。桜賀さんは、俺に何か興味がないから」

「よかった」

三輪は、嬉しそうに抱きしめてきた。

愛とは違って、独占欲かもしれない。

「瀬野に会いに行くの遅刻するよ」

三輪は、そう言って俺から離れた。

「煌人、俺。嫌いじゃないから、煌人の事。愛してるって言えなくて」

「ごめんはなしだよ!それだけで、充分だから…。ねぇー。朝陽のパンツ借りていい?」

「ああ、待ってな」

俺は、三輪にパンツを渡した。

好きって言うのは、違う気がした。

愛してるは、もっと違った。

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