上 下
6 / 18

竹の秘密

しおりを挟む
俺は、九(きゅう)と別れた。

まだ、時間あるしカフェでもよろかな…。

「竹、いらっしゃい」

「コーヒーお願い」

「はいよ、もうええんか?」

「充分楽しんだから。」

「あいつにとめられんかったら、やってたやろ?竹。また、いつでも、誘ったるから」

「いや、大丈夫。」

「そうか」

カフェのオーナー工藤春士(くどうはるし)と出会ったのは、二十歳の時に勤めていたバイト先だった。

「はい、コーヒー。ゆっくりしてきや」

「ああ」

俺は、あの日の記憶を思い出しながらコーヒーを飲む。


10年前ー

「九(きゅう)、向こうで寝ろや。ごめんな、竹。先、風呂入ってくるわな」

「うん、わかった。」

15歳の九(きゅう)は、無防備に若のベッドで寝ていた。

「なぁー。キスってどんなん?」

「なんやねん、急に…」

さっきまで、そんな事を聞いてはしゃいでいたのにもう寝落ちか…

可愛いなぁ。

やっぱり、九(きゅう)は…。

明日で、成人式を迎える。

俺は、やっとおとんのお荷物を卒業できる。

九(きゅう)の寝顔を見てると、胸がドキドキした。

そういや、時々、九(きゅう)に感じてた気がする。

唇、若さで荒れてるな。

カサカサやったら、女の子に嫌われるで

ちょっとぐらい、触(さわ)ったってバレへんよな?

俺は、九(きゅう)の唇を触(さわ)った。

触(さわ)ったら、もっとしたくなって…。

「九(きゅう)の初めて、もろていい?」

うんって、頷いた気がしてキスをしてしまった。

「竹ー。あがったで。」

若が、ドアを開けて唇を離した。

「竹、何してんねん」

「ごめん、俺、やっぱり帰るわ」

バレてないと思ったのに、バレていた。

「待って」

若に腕を掴まれた。

「離して」

「竹、それは恋やないで。恋やない。ただ、弟みたいに思ってるだけなんやで。大人になっても、好きやったらそうかも知れんで。でも、それは、ちゃう」

「大人って、若。明日には、大人やで」

「だから、違うねん。それは、恋と…」

「離せ」

俺は、若の手を振り払った。

大人って、明日からやろ…

何が、違うねん

気づいたら、バイト先まで歩いていた。

「竹ー。えらい薄着やん。寒いやろ?」

「はるさん」

「なに?泣いてるんか?うち、来る?」

「はい」

5つ年上のはるさんのアパートに連れてきてもらった。

ダウンもスマホも若の家に忘れてた。

「はい、ココア。あったまるで」

「いただきます。」

「何があったん?」

俺は、さっきの出来事をはるさんに話した。

「ハハハ、幼なじみの弟にキスしたんかぁー。なんか、わかるけどな。俺も一人っ子やし」

はるさんは、煙草に火をつけた。

「謝るべきですよね」

「どやろな?ちゃんと、竹は自分を理解した方がいいんちゃう?」

「理解ですか?」

「俺も、ダンチュー好きやで。男子中学生。明日も、休みやろ?俺が遊んどるやつと遊んでみ。そいつ、男好きやから。自分の癖に気づいてみたら?その弟が好きなんか…。ダンチューなだけが好きなんか。そいつの連絡先、教えとくわ。」

「はい」

手際よくはるさんは、紙に書いて渡してくれた。

「はいよ。成人式終わったらあってみたらいいねん」

「はい」

「じゃあ、風呂はいってこい。新しいタオルとパジャマと下着はあるから。」

「はい」

何も疑わずに、シャワーに入って、何も疑わずに朝を迎えた。

「あー。ごめんな。」

目覚めた時の異様な光景に、俺は本当にこの人と同じ癖なのかと思った。

「誰?はるさん。」

「バイト先の子。ほら、竹。成人式間に合わんなるで」

パンツ一丁の先輩と制服の男の子。

ミスマッチで、気持ち悪さを覚えた。

「ありがとうございました。」

俺は、昨日着ていた服に着替えて家を出た。

さむっ…。

スーツにスマホ…。

若の家に行くしかないよな。

俺は、仕方なく若の家にきた。

「竹ー。遅いやろ?」

「竹君、成人式楽しんでな」

「ありがとう」

この胸の痛みは、消す事にしよう。

「行くで」

何事もなかったように、若の両親の車に乗って、美容院に寄って、スーツに着替えて、何事もなかったように、成人式は、終わった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる

天災
BL
 高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる。

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

堕ちた父は最愛の息子を欲に任せ犯し抜く

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

3人の弟に逆らえない

ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。 主人公:高校2年生の瑠璃 長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。 次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。 三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい? 3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。 しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか? そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。 調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m

生徒会長親衛隊長を辞めたい!

佳奈
BL
私立黎明学園という全寮制男子校に通っている鮎川頼は幼なじみの生徒会長の親衛隊長をしている。 その役職により頼は全校生徒から嫌われていたがなんだかんだ平和に過ごしていた。 しかし季節外れの転校生の出現により大混乱発生 面倒事には関わりたくないけどいろんなことに巻き込まれてしまう嫌われ親衛隊長の総愛され物語! 嫌われ要素は少なめです。タイトル回収まで気持ち長いかもしれません。 一旦考えているところまで不定期更新です。ちょくちょく手直ししながら更新したいと思います。 *王道学園の設定を使用してるため設定や名称などが被りますが他作品などとは関係ありません。全てフィクションです。 素人の文のため暖かい目で見ていただけると幸いです。よろしくお願いします。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男

湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。 何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。

処理中です...