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通過地点の恋。

恋と幼馴染み

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私は、佐伯勇二さえきゆうじが大好きだった。

私の名前は、原口芽唯沙はらぐちめいさ

私は、仲良しの夢野琴子ゆめのことことよくつるんでいた。

私達は、いわゆる傍観者だ。

白か黒しか選択肢がない家族に、育てられた私は、本当はいじめが許せなかった。

それは、中学三年の夏休みの出来事だった。

「何で、また、あんたと過ごさなきゃなんないのよ」

「だってさー。家族旅行、俺の分だけなかったんだよ。」

彼の名前は、笹部国厚ささべくにあつ、私は彼をあつと呼んでる。

あつは、親に愛されていない。

見た目も頭もいいお兄ちゃんのせいで、毎年夏休みの家族旅行に置いていかれていた。

でも、誰もあつが愛されていない事に気づかない。

この人懐っこさを作り上げたのは、私だ。

「あつ、こないだ佐伯君に羨ましがられてたよね?」

「あー。そうそう。笹部は、愛されてていーよなって!俺、愛された事なんてあったっけ?」

「なかったよね」

「ハハハ、そうだよな」

楽観的なのは、昔からだ。

私が、お笑い芸人さんみたいに笑い話にしなきゃつまんないって言ったせいで、あつはこうなった。

「好きな人いるんだよね?」

「えっ?あっ、うん。いる。芽唯は、佐伯だろ?気づいてたよ」

自販機で止まって、あつはジュースを買ってる。

プシュって、コーラを開ける。

「あんまり、コーラ飲みすぎちゃ駄目だよ」

「はいはい、カフェインだろ?」

「そう」

私は、あつのお母さんみたいなものだ。

佐伯君が好きなのに、あつをとられたくもないなんて、私は、とんでもない女だ。

あつは、ゴミ箱に捨てる。

「って事で、また一週間よろしくな?」

「はいはい」

私は、家にあつを連れてきた。

「あらー。国厚君。また、みんな旅行?」

「はい、お邪魔します。」

「ゆっくりしてってね」

「はい」 

嬉しそうに、私の部屋にやってきた。

普通なら、男の子を部屋にってなるのかもしれないが…。

この家にとって、あつは、無害なのだ。

コンコン

「はい」

「これ、クッキーとジュース。芽唯。パパが、ちゃんとしろって言ってたわよ。美沙に悪影響与えてるって、そのスカートが特に」

「下に、体操服のズボン履いてるし」

「関係ないの」

「はいはい、わかった」

「返事は、一回でしょ?」

「もう、わかったから」

母親が、出て行って、私はスカートの縫い目をほどく。

「佐伯の話聞いたからしたんだろ?」

「えっ?」

「膝が見えてるのがいいって」

「そうだけど、何か文句ある?」

「ないよ。俺は、全然」

そう言って、あつは、クッキーを食べてる。

「美沙に悪影響があるかないかだけで、物事が回ってるんだよ」

「そうだよな。美沙ちゃん、産まれてからずっとだよな。」

「息がつまるよ。」

「なんか、わかる気がするような。わかんないような。俺は、親に何も言われないから」

「私には、あつが羨ましいよ。」

「俺は、芽唯が羨ましいよ。ヤイヤイ言ったって、相手してくれてるじゃん」

「ねぇー。あつは、キスした事ある?」

「何?話かえないでよ」

あつは、ジュースを飲んでる。

「私、変なの」

「何が?」

「佐伯君が好きなのに、あつを誰かにとられたくない。」

あつは、熊みたいな見た目だ。

ようするに、太っている。

小さい頃は、可愛かったんだよ。

私だけが、それを知っている。

「何だよ。それ」

あつは、私と目を合わせずに下を向いた。

「ちゃんと見て」

「なにを?」

「私を、見て」

「芽唯は、佐伯が好きだから大事にするべきだよ。」

「私、佐伯君が、誰を好きか知っちゃったの」

「えっ?」

「知ってたんでしょ?」

あつは、私から目を反らした。

「やっぱりね。知ってたんじゃん」

「うん」

佐伯君が、昨日紺野愛梨こんのあいりに告白をして振られたのを見た。

「あつも、紺野さんが好きなんでしょ?」

「えっ、ううん」

あつは、俯いている。

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