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エピローグ【拓夢の話4】

ついたよ

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俺のマンションの前で、車が停まった。

「ついたよ」

「ありがとうございます」

俺は、涙を拭って、笑った。

「星村君」

「はい」

「色々と言ったけど、俺はSNOWROSEを応援してるから」

「はい」

「後の事は気にしないで!こっちでどうにかやるから」

「お願いします」

プー、プー

相沢さんの車は、クラクションを鳴らされる。俺は、急いで車を降りて扉を閉める。

「じゃあ、また明日」

相沢さんは、そう言って急いで車を走らせた。俺は、それを見つめていた。相沢さんの車が見えなくなってから俺は、歩き出した。歩きながら考える。

PV撮影とジャケット写真の撮影が終わり、後は、レコーディングをするだけで…。それから後は、発売日まで、ゆっくり過ごせる。俺は、トボトボと家に向かう。
エレベーターを上がって、部屋の前についた時、美沙がいた。

「何か用?」

「大変な事になってるね」

「そうみたいだな」

ニコニコと嬉しそうに美沙は笑っていた。

「売れるかな?SNOWROSE」

「さあな」

俺は、美沙を無視するように鍵を開ける。

「拓夢、無視しないでよ」

ドアを開けて、家に入ろうとした腕を掴まれる。

「掲示板、美紗なんだろ?」

俺の言葉に美沙は黙り込んだ。俺は、そんな美沙を無視して家に入る。

「入ってくんなよ」

扉を閉めようとした瞬間、美沙が入ってきた。

「どうして、あの人なの?」

「何がだよ」

「どうして、あの人なのよ」

美沙は、泣きながら俺を見つめてくる。多分、凛の事を言ってるんだと思う。

「別に、美沙に関係ないだろ?」

俺は、そう言いながら靴を脱ぐ。

「私、拓夢を諦めないから」

「はあ?」

俺が振り返ると美沙は、いなくなっていた。

「何だよ!めんどくさ」

俺は、玄関の鍵を閉めてあがる。

「結局、渡せなかった」

リビングにやってくると、俺は、手に持っていたビニール袋をダイニングの椅子に置いた。

美沙の諦めないって何だったのだろうか?
訳がわからなかった。

掲示板を作ったのは、美沙だ!でも、あの写真を美沙が?

いや、それは無理だ。あの日、俺は辺りをちゃんと見た。

美沙がいれば、すぐに気づいたに決まってる。じゃあ、何であの写真は撮られた?

わからなくて、モヤモヤしていた。

俺は、頭を掻いてスマホを取り出した。

凛からの着信はなかった。もう一度かける気持ちもなかった。

「シャワー浴びて寝よ」

俺は、立ち上がって洗面所に行く。シャワーを捻って、服を脱ぎ捨てる。

相沢さんに言われた言葉が胸に刺さっていた。俺は、裸足の足元を見つめる。
デビューして、空の青さに押し潰されないだろうか?

お湯が出たのを確認して、シャワーを浴びる。
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