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エピローグ【凛の話1】

流れる景色

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プシュー

電車が閉まって発車する。

「凛ちゃん、大丈夫?」

「ごめんね」

「いいの、いいの」

理沙ちゃんは、そう言って私の手を引いて席に座る。人が全く乗っていない車内。

「貸し切りみたいだね」

「そうだね」

流れてく景色だけが、見える。

「何かあった?」

「うん」

「何があったの?」

「夫が不倫してるかも知れないの」

「えっ?それは、ないでしょ?あっ、こないだの出張が嘘だったとか?」

「そうかも知れない」

理沙ちゃんは、私の顔を見つめて驚いた顔をする。

「そんなわけないでしょ!何か言われたの?」

「近所の人が、昨日夫が若い子と一緒にいるの見たって」

「嘘だよ!そんなの」

「嘘じゃない。噂話は好きだけど、嘘はつかない人だから…」

「じゃあ、浮気してるって事?」

「わからない。でも、夫は私に言えない秘密があるって前に話してきたから…」

「そんな…じゃあ」

理沙ちゃんは、眉を寄せている。

「私が言えないよね」

「そんな事ないよ」

そう言って、理沙ちゃんは私を抱き締めてくれる。

「もしかしたら、あの番号の相手かも知れない」

「駅ついたら、かけよう」

「うん、でも怖い」

「大丈夫!理沙が、かけてあげるから」

そう言って、理沙ちゃんは私の背中を擦ってくれる。

「凛ちゃんは、旦那さんが好きなんだね」

「酷いよね」

「ううん、酷いなんて思ってないよ」

理沙ちゃんは、そう言うと私から離れる。駅について、扉が開いた。数人が乗ってくる。

「また、後で!話そ」

周りを見て、理沙ちゃんはそう言った。私は、軽く頷いてから切符に目を向ける。

「都会に行くんだね」

「凄く美味しいパスタ屋さんがあるらしいの!」

「どんなお店か興味あるなー」

「ねぇ、凛ちゃん」

「何?」

「凛ちゃんは、もっと都会に行くべきだよ!都会はね、人も街も自由だし気にしないでしょ?」

「そう聞くよね」

「でしょ?だから、いいんだよ!」

そう言って、理沙ちゃんはニコニコ笑ってくれる。私の心に刺さっていた棘みたいなものが抜けてくのを感じる。

都会にいれば、知らないでよかったって事だよね。龍ちゃんの話。

「ついたよー。行こう」

「うん」

理沙ちゃんに引っ張られて歩く。一時間ちょっとで行けるきらびやかなこの街に私はそんなに行った事がなかった。改札を抜けて、駅から出ると理沙ちゃんは、「洗練(せんれん)された街って感じだよねー」と言った。

「確かにねー」

私達の住む街とは、違う。

「凛ちゃん、この街で不倫してる人ってどのくらいいるのかな?」

「どうかなー」

「私は、結構いると思うんだよね!だって、あっちと比べ物にならないぐらい人口だって多いんだよ」

「確かに、そうだよね」

理沙ちゃんは、スマホを取りだしてパスタ屋さんを探してるようだった。

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