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拓夢の話9

ホテル…

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一件のホテルの前で停まった。

「駐車場に停めないとね」

そう言って、平田さんの母親は近くのコインパーキングをスマホで探してから車を出した。コインパーキングに車を停めると俺にスマホを見せてきた。

「ほらこれ、今日の日付が入ってる」

「誰が、こんなのを?」

「それをあんたに教えるつもりはない」

そう言って、平田さんの母親は、俺からスマホを取り上げた。

「何故?直接、ここに来なかったんですか?いるのわかってたなら…」

「今日、お昼からバイトだと思ってたから…」

その言葉に俺は、時計を見る。そうか、一時前だから平田さんの母親は待っていたのだとわかった。

「乗り込んで、止めようと?」

「そんなの出来ないわよ!何号室にいるのかわからないんだから」

そう言って、平田さんの母親は頭を抱える。

「どうするんですか?」

「あんたが、どうにかしなさいよ」

「俺がですか?」

「決まってんでしょ!あの女を止めなさいよ」

「凛は、平田さんとどうにかなったりしませんよ」

「信じてんのね…」

平田さんの母親は、そう言うと車の窓を開ける。

「煙草、吸っていい?」

「どうぞ」

カチッと煙草に火をつける。

「フー、でもわからないでしょ?今は、あんたといない。だから、何が起こるかわからないでしょ」

その言葉に、急に不安が襲ってきた。あの日、平田さんにキスをされて凛は…。

「兎に角、ホテル行きましょう」

俺は、平田さんの母親にそう言った。

「いいけど!部屋番号は、知らないわよ」

「ですよね」

俺は、スマホを取り出してさっきのホテルを調べる。どうやら、晩御飯は部屋食ではないらしい。一ヶ所で、食べるスタイルだ。それなら…。

「もしかしたら、泊まれば会えるかもしれないです」

俺は、スマホを平田さんの母親に見せる。平田さんの母親は、煙草を消した。

「いいよ!あんたと泊まるよ」

そう言って、笑ってくれた。

「じゃあ、行きましょう」

俺と平田さんの母親は車から降りる。平田さんの母親に教えてる人物はいったい誰なんだろうか?

ホテルについて、俺と平田さんの母親はフロントで受付をして、鍵を渡される。エレベーターに乗って、部屋に入る。

「なかなか、いいホテルね」

そう言って、窓の外を見つめている。

「あんた、お昼食べた?」

「朝から、何も食べてません」

「何か、食べに行こうか!晩御飯まで、時間あるし」

「はい」

俺は、平田さんの母親と部屋を出る。鍵をフロントに預けて歩く。

「ここ真っ直ぐ行ったら飲食店があるって!何食べたい?」

「何でもいいです」

「私、これ気になるんだけど!駄目かな?」

「いいですよ」

思っていたより、平田さんの母親は話しやすい人で凄く驚いていた。
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