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拓夢の話9

おやすみ…

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気づいたら、明日花ちゃんは疲れて眠ったようだった。俺は、ソファーに寝転がった。

「凛……」

美紗にも明日花ちゃんにも使い物にならなかった。俺は、そいつに触れる。何で?駄目なんだよ!意味がわからない程に繊細だな…。気持ちでは、もう、美紗や明日花ちゃんを抱いていたのに…。

【拓夢……】

その声がして、目が覚めた。あー、寝てたか…。
えっ?俺は、使い物にならなかったそいつが使えるようになってるのを感じていた。さっきの夢でか?凛じゃなきゃ、もう駄目なのか?

俺は、立ち上がってトイレに行ってから、玄関にある虹色の傘を手に取る。

「人質だな!」

凛に会う為に、これは預かっておこう。凛は、絶対にこれを取りに来る。この傘は、凛にとって特別だから…。
俺は、リビングに戻ってキッチンで水を飲んだ。凛に会いたくて堪らない。

ピンポーン

インターホンが鳴った。こんな朝早くから、誰だろうか?もう一度インターホンが鳴った。俺は、ドアスコープを覗いた。しゅんか!

ガチャ…。

「おはよう、傘返して」

扉を開けた瞬間にそう言われた。俺は、無視するように「しゅん、おはよう」とだけ言った。

「うん、傘返して」しゅんは、もう一度言ってくる。返すわけない。俺は、「嫌だ」と言った。
俺の言葉にしゅんは驚いて「えぇ!」って声をあげる。俺は、知らないフリをして、「つうか、何の傘?」と言った。

「凛さんの傘だよ」そう言われてイライラしてくる。「はあ?何で、しゅんに渡すんだよ」俺は、怒りに任せてそう言った。「まっつんに言われて、取りに来たんだよ」って言われた時、まっつんは全部知ってるから、俺に凛を会わせないつもりなのがわかった。「チッ!余計な事」俺は、さらに苛立っていた。

「美紗ちゃんといるんだろ?返せよ」しゅんも、俺のイライラがうつったように怒りだした。俺は、さらに苛立ちをぶつける「何でだよ!凛が直接取りにくればいいだろ?」俺の言葉にしゅんは、俺を睨み付ける「拓夢、傷つけてよくそんな事が言えるよな!」その言葉にドキリと心臓が痛んだ。「そんなつもりなくて」冷静に答えていた。「つもりないって何だよ!嫌だってあんだけ言ってたのに、美紗ちゃんと会って!かねやん、拓夢の為に智に連絡したんだぞ!なのに…。抱けたら、誰でもいいのかよ」その言葉に俺は、ついイライラして「そうだよ!」って言ってしまったんだ。「マジで、行ってんのか?」呆れた声でしゅんは言った。「しょうがないだろ?」俺は、言い訳するようにそう話した。そしたら、しゅんが突然「待って、凛さん」って言うから驚いた。「凛がいんのか?」尋ねた俺に、「最低だな!」としゅんが言ってきた。走り出すしゅん。俺も明日花ちゃんがいるの何か忘れて、家から飛び出していた。

凛に会いたい、凛に会いたい。その気持ちで走る。
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