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拓夢の話5

どうしろって?

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「美沙、俺にどうしろって言うんだよ」

「責任とって、結婚して」

「それは…」

「そんなに、あの女が大事なの?」

俺は、答えられなくて俯いた。

「美沙の方が、拓夢を愛してるよ」

「あんな怖い思いさせたくせにか?愛してる人間がする事か?」

「拓夢」

「ごめん。でも、考えさせて欲しい」

美沙は、俺の言葉にポロポロ泣き出した。

「ごめん」

美沙と話しながら、手が震え始める。

「いつ?」

「何が?」

「いつ、答えでる?」

「わからない」

「三日以内に出さないなら、あの女の旦那に言うから!」

「彼女は、関係ない」

「関係あるよ」

「どうしてだよ」

「あの女がいるから、拓夢が私を選べないんでしょ?」

美沙の不適な笑みに、手の震えが止まられなくて俺はギュッと握りしめた。

「彼女がいなくても、俺は美沙を選ばない」

「どうして?」

俺は、下唇を噛んで黙り込んだ。

「どうしてよー」

美沙は、ヒステリックに俺を怒鳴り付けて睨んだ。

「俺……」

最初に話すのは、凛にしようと決めてた。

「何?」

「俺……」

だから、話したくない気持ちが勝ってる。

「だから、何って言ってるの」

俺は、ゆっくりと鼻から息を吸い込んだ。そして、吐き出すタイミングで美沙に告げる。

「メジャーの話を受けようと思ってるんだ」

美沙は、俺の言葉に目をパチパチさせながら驚いた顔をする。

「解散するつもりだった。でも、挑戦しようって話し合って決めたんだ。だから、俺は美沙を選ばない」

「勝手な事言わないでよ」

「ごめんなさい」

俺は、美沙に深々と頭を下げる。

「ふざけんな!ふざけんな」

美沙は、俺の胸ぐらを引っ張ってくる。

「ごめんなさい」

「絶対に許さないから!」

「うん」

「拓夢の人生、台無しにしてやるから」

「わかった」

美沙が俺を傷つけたいって言うなら、受け入れるよ。

「何で?バンドがメジャーにいっても意味ないんだよ!美沙、週刊誌に言うよ!拓夢に赤ちゃんおろすように言われたって」

「いいよ、そうしたいなら」

「拓夢、何でそんなに余裕あるのよ」

「余裕なんてないよ!ただ、一度は諦めた夢だから…。向き合うなら、ちゃんとしたいだけだよ」

美沙は、俺から手を離して睨み付ける。

「許さないから、絶対に」

「わかってる」

「それなら、覚悟してて」

「わかった」

俺の揺るぎない気持ちに気づいて美沙は、立ち上がった。

「やっぱり、拓夢ってつまらない人間だね」

美沙は、鼻で笑った。

「美沙、ごめんな」

「どうでもいいわ」

美沙は、そう言って俺を睨み付けて去っていった。美沙が小さくなった瞬間だった、体が、小刻みに震えだした。

「ダセェ、俺」

震えがどんどん強くなってく。

「弱い人間だな」

俺は、その場にしゃがみこんだ。

「助けてよ、凛」

無理な願いを口に出して、震えながら泣いていた。
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