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拓夢の話2

帰るね

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お風呂から上がると凛は、もういなかった。
俺は、体を拭いて下着をはいていた。

「帰るね」

「うん、待って」

俺は、凛に水を渡した。俺も水を飲む。

「ありがとう、今日」

「それは、いいんだけどさ。あの子どうすんの?」

「どうしたらいいのかな?」

凛は、そう言いながら眉を潜めている。

「どこに行ったら会えるの?」

「あっ!スーパー」

「凛の住んでる場所の?」

「そう、駅前の」

「俺が、話してきてやるよ」

「悪いよ」

「大丈夫だから!」

「ごめんね。拓夢」

「いいんだよ!心配しないで。それまで、そのスーパー行かない方がいいかもな」

凛は、凄く困った顔をしている。

「駄目なのか?」

「そこのスーパーの卵が大好きなの!だから…」

「いつまで、もつの?卵」

「えっと、後一週間はいけるかな」

「わかった!それまでに、何とかするから」

俺は、凛の頭を撫でる。

「ありがとう、拓夢」

「あの子が、凛に興味を持った理由!俺には、わかるよ」

「そうなの?」

「凛は、気付いてないよね!自分の優しさも…。その危うさも…」

「そんな事ないよ」

「そんな事あるよ!でもね、優しくしてばかりじゃ相手は付け上がるだけだよ!だって、凛みたいな綺麗な人をものに出来たら自慢出来るだろ」

「おばさん、相手に何言ってるの?」

「だから、凛はおばさんじゃないよ!凄く綺麗な女性だよ」

俺は、凛を引き寄せて抱き締める。

「俺が、あの子と同じ立場なら凛を好きになってたし。凛を欲しがったと思うよ!それにさ、凛は結婚してるけど、子供がいないだろ?」

「うん」

「馬鹿だからさ!こっちを選んでくれる気がするんだよ!だから、あの子は俺に宣戦布告したんだと思うよ!実際には、凛は選ばないのにな」

「ごめんね」

「謝ってって言ってるわけじゃないよ!」

俺は、凛から離れて凛の顔を覗き込む。

「凛と旦那さんには、俺には計り知れない程の時間や経験を積み重ねてきただろ?」

「うん」

「それは、俺とは出来ないのを俺ちゃんとわかってるから!凛は、旦那さんが嫌いなわけじゃない事もわかってる。ただ、肌を重ねたくないだけだって!それぐらい俺には、わかってるよ。だけど、あの子はわかっていないよ!凛を自分のものに出来るって信じてる」

凛は、俺から目を反らす。

「大丈夫!俺が、ちゃんと話してきてあげるから」

「拓夢、ありがとう」

「ほら、帰らなきゃ!旦那さん、帰ってくるだろ?」

「うん」

「今日は、駅まで送れないけど…。大丈夫?」

「大丈夫だよ」

「時間出来たら、連絡してよ」

「わかった」

「気を付けてね」

「うん、バイバイ」

俺は、凛を玄関まで送った。凛は、手を振って家を出て行った。俺は、暫くの間玄関で座っていた。
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