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十夢の話

少しいい?

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「もしも、いつか愛が十夢に会いに来ることがあったら…」

「会ったら?」

「俺の代わりに幸せにしてやって欲しい」

そう言って、純さんは煙草を消した。

コンコン

「はい」

「十夢君、ちょっといい?」

「はい」

「パパ、亜寿(あじゅ)見ててくれない?」

「うん、わかった!隣の部屋に行くよ」

「ごめんね」

純さんは、フラフラと立ち上がって部屋を出て行った。

keikoさんは、パタンと扉を閉めた。

「何ですか?」

「愛さんの事、純には絶対言わないでね」

「でも、あんなにやつれてますよ」

「いいのよ!11年の罰なんだから…」

keikoさんが、クスクス笑ってるのを見て、女の人は怖いと思った。

「純さんに…」

「二度とあの女を会わせないで」

「そこまで、愛を憎んでたんですね」

睨み付けられた目に怒りが宿っていた。

「これから先、愛さんが、純の試写会に行こうが舞台を見に行こうが、自由よ!だけど、それはその他大勢としてよ!個人的に会うのは許さない」

「わかりました」

「これからは、愛さんをキッチリ見張っていてね!十夢君」

「わかりました」

「それじゃあ、これ高速代!気を付けて、あの街に帰って」

「失礼します。あの、keikoさんは幸せですか?」

「幸せに決まってるじゃない」

そう言って、不気味な顔で笑っていた。

俺は、その家から出た。

でかくて広いけど、ゾッとする。

車に乗り込んで、帰ってきた。

「おかえり、十夢」

玄関で、愛が出迎えてくれた。

「ただいま、愛」

「純に会ったの?」

「えっ?」

「その煙草の匂い…」

「あー、keikoさんに呼ばれたんだ」

「純は?」

「元気そうだったよ!一番下の子供あやしてた」

嘘をつくのは、誰の為?

「そう!やっぱり、あの動画は演技だったんだね。演技派俳優だもんね」

そう言って、愛は涙を流していた。

「愛されていたかった?」

「少しは、愛されてると思いたかった」

「そうだよね」

「せめて、泣いて泣いて、もう一度会いたいって望んで欲しかった」

愛は、そう言って泣いていた。

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