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十夢の話

愛が必要なんだ

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純さんは、俺に頭を下げた。

「お願いだ!一緒にいるなら、愛に会わせて欲しい」

「だから、知らないって言ってるだろ」

「十夢に、見張っておいてくれって頼んだよな?」

「俺だって、一ヶ月前に行ったら家に人いなくて困ったんだけど…」

「愛は、そんな女じゃないんだよ!だから、絶対十夢といるだろ?」

「いないよ、純さん」

「そんな筈ないんだよー、あーあー」

純さんが、壊れてるのが、わかる。

いつから、そんなに愛を愛してたの?

自分でも、気づかなかったんだろうね…。

「お願いだ!俺には、愛が…愛が必要なんだ」

会わせてあげたいけど、出来ないのをわかってよ!

これは、純さんと愛の為なんだよ。

「十夢、愛を返してくれ」

俺の腕にしがみついてくる。

「無理だよ、知らないから」

「そんな筈ないだろ?あの旅行で、愛は十夢の手を握りしめてたじゃないか…」

知ってたの?

「俺に抱かれながら、十夢の手を握ってただろ?」

俺の目から涙が、ポロポロ流れてきた。

純さんが、愛を愛してるのに気づいたのは、その時だったのがわかった。

「眠ってる間も手を繋いでただろ?」

眠ってる間は、よくわからない。

何の話をしてるんだ?

「愛と二人、キスしそうなぐらい向き合って寝てただろ?」

「何を言ってるの?」

その話を俺は、知らない。

目覚めたら、愛は純さんと抱き合っていた。

「気づいてなかったなんて言わせないぞ!あんなに、幸せそうに愛が眠ってた。十夢も、一緒に手繋いでたじゃないかよ」

「知らないよ!何の話だよ」

純さんは、ボロボロ泣き出してる。

もしも、それが本当なら愛が手を繋いできたんだと思う。

それで、いつもみたいに寝たんだ。

俺は、愛が抱かれてるのを聞いて耐えきれなくて、必死で目を瞑って、気づいたら寝てたんだ。

それで、目覚めたら愛は純さんに抱かれてたんだ。

「十夢、本当に知らないのか?」

「知らないよ!本当に…」

「わかった!もういいよ」

そう言って、純さんは頭を抱えて泣き出した。

どうにも、出来なくて見てるしか出来なかった。
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