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思い出せなかった代償

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「月、お前は覚えてるんだ。」

「たーたー」

目が覚めた。

俺は、星(ひかる)を傷つけた。

ハッキリとわかる。

隣に眠った星の頬は涙で濡れていた。

やっぱり、ちゃんと思い出せなかった。

ごめんよ、ごめん。

俺は、星の頬を撫でる。

俺は、酷いと思った。

星を利用した。

自分を犠牲にしてくれたんだよな。

お陰で、感情は生まれたけれど

愛してるは、わからない。

星を愛してる感情(きもち)はない。

だから、嫌なら別れよう。

終わりにしよう

「付き合ってたなら別れようか?俺は、君を愛していない。」

目を開けた星に、俺があげた最初の言葉(プレゼント)。

星は、泣いた。

痛みが、貫いたのをきちんと感じた。

肉体(からだ)を捧げた相手に、何て酷い台詞を話すのだ。

「嫌だよ」

「ごめん。出てくから」

「嫌だよ」

「愛してくれる人を見つけなよ」

「それは、月がいい」

「俺は、いつ見つかるかわからないよ」

星は、泣き出した。

震えながら、言うんだ。

「お願いします。僕と一緒に居てください。お願いします。僕を捨てないで下さい。」

星、ダメだ。

「それ、言わないで」

「お願いを聞いてくれるの?」

「聞けない」

「なんで?僕と一緒にいてよ」

星を傷つけたら、ダメだよ。

月、ダメだ。

誰かの声が、頭を響く。

そんな事をしたら、ダメだ。

それでも俺は、言うことを聞かなかった。

だって、彼に流れる痛みを感じてあげたかった。

「別れよう。出てくから」

俺は、頬に手をあてて涙を拭った。

「嫌だよ。お願いします。だから、僕といて」

「星を愛せるかわからない」

「それでもいいから、傍にいて。僕と一緒にいて」

ズキンと貫いた痛み

星が、俺の手を握りしめた。

「お願いだよ、月」

「無理だよ、星」

星は、大粒の涙を流す。

「捨てないで。僕をお願いします。」

「ごめん。優しく出来ても愛せない。」

「月、愛さなくていいから」

星の手が、震えてる。

痛みが、広がるのがわかる。

「出てくよ」

「どこに?」

「どこかに」

「いつ?」

「今日中に」

星の目から涙が幾重にも重なり落ちる。

「どうして?」

「愛してない奴に、抱かれるの辛いだろ?」

「月が、いない方が辛いよ。」

「それは、嘘だ。俺は、感じてる星の胸(ここ)の痛みを…。」

「月、感情(きもち)をもったの?それなら」

「自分をまた愛してくれるって思った?」

星は、胸を押さえてる。

「悪いけど、それはないよ。感情(きもち)が生まれて、星の痛みや悲しみはわかる。だけど、愛せるか自信はないし。愛してる感情(きもち)がない。ただ、優しくしてあげたいって思うだけ」

俺の言葉は、星の身体中に刃物をたてていってるのを感じる。

星の身体中が、血に染まっていってるのを感じる。

「優しくしてくれるだけで、大丈夫」

無理やり笑おうとしてる口元が、震えてる。

「ごめん。俺が、無理なんだよ」

傍にいたら、痛みが走って無理なんだ。

「お願い、月。傍にいて」

星は、泣いてまた俺にお願いをする。

なぜ、思い出せないのだ?

こんなに俺を、求め泣いてくれているのをわかっているのに…。

なぜ、愛せないのだろうか?

「また、抱かれたら嫌だろ?一緒にいたら俺は、星(ひかる)を抱くよ。キスもする。でも、その度に星の心はすり減って壊れてくよ。ちゃんとそれは、感じる。だけど俺は、星の欲しいものをあげれない。」

「それでも、いたいです。月がいない世界はいらない。傍にいれない僕はいらない。」

星の目の奥の光が、消えかかってる。

(るい、星を傷つけちゃダメ)

(星の愛をもらえなくなったら)

(ためー。ひーか)

何かが、話してるのを感じた。

バリン…。

俺か、星か?

何か割れたような音がした。


「お願いします。僕を捨てないで下さい。愛がなくてもいい。抱いてくれて構わない。月に触(ふ)れられて傍にいれるなら、それだけでいい。だから、僕の傍にいてよ」

涙が流れる。

「お願いします」

星…その言葉はダメ


「月、僕に何をしてもいいから傍にいて。優しくしてくれるなら、キスも抱いてくれてもいい。」

俺の唇に唇を重ねてきた。

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.

「だーかーら。テメーふざけてんのか?」


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