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悲しい話

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俺は、星(ひかる)の隣にいる晴海君の話を聞いていた。

全員が、涙を流してる。

「そう言って、俺をゆっくり抱きしめて、しばらくしたら飛んだ。ああ、俺このままいなくなるんだ。悪くなかったよって思った。こんなに愛せる人に出会う事は二度とないのわかってたから」

そう言って泣いてる。

「一か八かだろ?あいつ、命綱俺だけにつけてた。」

「気づかなかったの?」

「うん。抱きしめた時につけてくれたんだろうけど、足が震えてたし、頭の中は、真っ白だったから…。何も気づかなかった。俺、離さないように必死で抱きしめた。」

「うん」

「切れるから離してって言われた。俺は、嫌だって言った。そしたら、また出会った頃みたいな笑顔で笑うんだよ。俺がいなくなったら、ボイスレコーダー聞いてくれって…。こんな愛(きもち)をもたなかったら傍にいれたのにって…。」

晴海君は、ポケットから何かを取り出して握りしめてる。

「晴海、俺は幸福感に包まれて幸せだよって、こんなに幸せを感じるなんて事はなかったよ。でもね、我儘だけど晴海には生きていて欲しくなったんだ。ごめんね、愛してるよって言って笑った。」

晴海君の気持ちに俺の心も共鳴する。

俺と流星の、星と氷雨君の行きつく先の愛を、晴海君はずっとわかっていたんだ。

「するするとこの手から滑り落ちていった。大丈夫ですか?今あげますからって、あいつがいなくなってすぐに上から声がして引き上げられた。もう少し早く来てくれたらあいつも生きてた。嫌、生きてなかったかも…聞く?」

晴海君に言われて、星は頷いた。

みんな知らなかったから、泣いてる。

晴海君は、ずっと持ち歩いてるんだ、ボイスレコーダー。

再生を押した。

「晴海、晴海がこれ聞いてるって事は、俺は賭けに負けたな。でも、これでやっと解放される。ずっと、痛くて苦しかった。晴海を殺(や)るか、俺を殺(や)る以外の方法しか浮かばなかった。でも、俺は、晴海を殺(や)れない。だって、こんなに愛してるのに殺(や)りたくないよ。でも、わかるんだ。これ以上居たら俺は確実に晴海の人生を全て奪う。だから、嘘でもいいから、最後は俺と逝くって言ってくれない?それだけで、俺は、幸せに包まれながら逝けるんだよ。」

晴海君は、ボイスレコーダーを止めた。

「他にもたくさん、はいってる。華も月君も星君も、似たような愛を抱えてるなって思って見てたから…。止められないんだなって思って見てた。あいつが言ってた言葉と同じだったから星君に話した。」

そう言うと晴海君は、ボイスレコーダーを操作して再生する。

「晴海が逝くって言ってくれた。日にちがあるから、今、晴海を助ける為の準備をしてる。何でそうしてるかと言うと、俺、許せないよ。晴海がいいよって言ってくれた時に心の中を満たした暖かくて優しい温もりが許せない。普通なら、生きてくれって思うだろ?なのに、俺は一緒にいなくなってくれる事を幸せに思うなんて満たされるなんて…。あの日から自分が怖いんだ。だから、晴海を生かす為に頑張る。支配される前に逝くから見届けてよ。人間(ひと)として死にたい。俺、化け物になりたくないよ。晴海。でも、生きてると晴海から離れられない。離れるのは、嫌なんだよ。狂いそうなんだよ。息ができないんだよ。押し潰されて苦しいんだよ。それでも、晴海の隣に居たいんだよ。だから、お別れだ。」

晴海君は、ボイスレコーダーを止めた。

「俺とあいつも、二人みたいな人がいたら違ったのかもな。」

そう言って、晴海君は涙を拭った。

「知らなくて、ごめん」

華君が、晴海君に謝った。

「華のせいじゃないよ。」

「晴海、ごめんな。」

「兄貴のせいでもないから」

晴海君は、そう言ってビールを飲んでる。

「あいつ笑ってたから、亡くなった時の顔。幸せだったんだと思うよ。」

晴海君の話しは、悲しかった。

でも、星の胸の中に響いたのがわかった。

「ごめんね、クリスマスなのに、こんな話しちゃって。でも、そろそろ誰かに話したくなっちゃって」

そう言って、笑った。

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