真昼の月は燃え上がる

 幸せって案外もろいんだ。
 城田あさきは幸福な少女だった。
 小学六年の夏、母親が、同級生の父親と不倫をしていたことが発覚するまでは。
 それから、学校では周囲の好奇と軽蔑の目線に苛まれる。
 家では精神を病んだ母と、その母を溺愛する父との板挟みにあう――。
 心についた大きな傷は、ふれたくもない。
 きっと人生は変わらないし、変えない。
 噂から少し離れた高校に入っても、そうあきらめていたが……
「どうしていつも怒ってるの?」
 同じクラスでサッカー部の友森大翔(とももり ひろと)と出会いを機に、あさきは過去にふたたび、引きずり込まれていく。
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