3 / 26
3、まだ堪能している2日目
しおりを挟む
「お客様自立支援室の室長をしております、イナバと申します。室長と言っても私しかいないんですけどね」
少しだけ恥ずかしそうに言った白ウサギさん。
……なんでだろう。
どこからどう見ても、100%ウサギさんだというのに、おそろしく表情豊かなんですけど。
そのまま初日はスーツ姿のイナバさんに軽い街案内をしていただいた。
ええ、ええホイホイついて行きましたとも。
石畳に板壁や石造りの住宅が並んでいて、どれも2階建てまでで日本の住宅街の雰囲気が無きにしも非ず。
ただ、どこも商店を営んでいるみたいで観光地を歩いてるみたい。
母は「西部開拓時代みたいねぇ」なんて興味津々で店先を覗いているけど普段からテキトーな事を言う人なので、本当に西部開拓時代に似ているのかどうかは分からない。
ていうか西部開拓時代って、例えが分かりづらすぎる。
テーマパークの昔の街並みを再現したお土産ストリートって例えじゃダメなの?
もしくは西洋版「時代劇村」。
ただし住人はアニマルな方々、みたいな。
馬人間、カエル人間、ゴリラ人間etc……。
パーティーグッズにあるようなマスクを被ったような方々や、映画の「動物に変身する途中」みたいな状態の御仁。
街行く人が実にレパートリーに富んでいる。
ウサギワールドなのかと思いきや、アニマルワールドだったか。
つまり、多種多様の動物人間さんが闊歩しているファンタジーな世界で、純粋な人間はいなかった。
これが俗に言う半獣さんとか、獣人さんってやつかな。
それだけなら「やっぱりハロウィンの仮装なのか」と思うんだけど、逆にミノタウロスというのか、ケンタウロスというのか腰から下が動物バージョンという、仮装ではちょっと不可能なレベルもいる。
頭だけが馬な人と、上半身は人間で下半身が馬の二人連れとか、失礼ながら二度見した。
そうかと思えば動物園で見かけるような純然たる動物がフリーダムにその辺りを歩いて、肉食獣も草食動物も関係なくみんな和気あいあいと会話しているという、ぐっちゃぐちゃの、節操のない世界。
立派過ぎる街路樹の上にコアラさん、その下ではベンチに掛けたパンダ頭の獣人さんがだらっとした様子でお話している。
生息地域も完全に無視って事らしい。
……うん。
私らしい、実に雑な世界設定だ。
あ、普通に犬もいる。
お美しい毛並みにつぶらな瞳のポメラニアン。
「お、この街にも久々のお客さんかい」
ちょっと安心したら、ニヒルな口調でイナバさんに話しかけやがった。
「こちらは警察署長さんです」
イナバさんが紹介してくれて、「なるほど、犬のおまわりさんか」と納得する。
その後「お客様自立支援室」の職員さんだというイナバさんに手配していただいた宿はまるで「冒険者が泊まるような宿!」で、家族大いに盛り上がった。
翌2日目は宿まで迎えに来てくれたイナバさんに「役所」に案内してもらってこのアニマルワールドの説明の講義を家族で受けた。
「たいてい『しっぽのないお客さん』は皆さんご家族で来られますねぇ」
……なんだろう、この観光地のお土産屋さんや宿の主人的な発言。
「『しっぽのないお客さん』のサポートはその街の住人の義務ですので、生活が出来るよう責任を持ってこちらで協力させていただきます。すぐにとは言いませんが、今後の生活基盤を考えるとやはりお仕事をしていただく事になるのですが……希望の職業や何かやってみたい事はありますか?」
イナバさんがことりと首を傾げると、それに合わせて耳も倒れてふよふよと揺れる。
かっわいいなー
「どうせなら手に職をつけたいな。年をとっても続けられるのがいいし」
父は生粋のサラリーマンで、勤務先では経理課長をしているからかそんな事を言い出し。
「私、パン屋さんやってみたいのよねぇ」
母は思い付きを口にする。
「おお、パン屋かいいなぁ! 母さんの好きにしたらいいぞう!」
ああ、夢の中だからお父さんも気が大きいなぁ。
お母さんも家でパンなんか焼いてくれた事ないのに、さすが夢だと好き勝手言えるよねぇ。
「パン製造はこちらとしてもありがたいです。需要に対して供給が圧倒的に少ないんですよ。肉球の間の毛に生地がくっついてしまって、私達には難しい仕事なんです」
悲しげにそう言って、見せてくれた手の平にはきれいなラビットファー。
「まあ私は肉球ないんですけどね」
てへぺろ的な感じで言うイナバさん。
そう、ウサギさんには肉球がない。
それでも!
ふわぁぁぁ……!
触りたい、触りたい、フニフニ揉みしだきたいぃ!
少しだけ恥ずかしそうに言った白ウサギさん。
……なんでだろう。
どこからどう見ても、100%ウサギさんだというのに、おそろしく表情豊かなんですけど。
そのまま初日はスーツ姿のイナバさんに軽い街案内をしていただいた。
ええ、ええホイホイついて行きましたとも。
石畳に板壁や石造りの住宅が並んでいて、どれも2階建てまでで日本の住宅街の雰囲気が無きにしも非ず。
ただ、どこも商店を営んでいるみたいで観光地を歩いてるみたい。
母は「西部開拓時代みたいねぇ」なんて興味津々で店先を覗いているけど普段からテキトーな事を言う人なので、本当に西部開拓時代に似ているのかどうかは分からない。
ていうか西部開拓時代って、例えが分かりづらすぎる。
テーマパークの昔の街並みを再現したお土産ストリートって例えじゃダメなの?
もしくは西洋版「時代劇村」。
ただし住人はアニマルな方々、みたいな。
馬人間、カエル人間、ゴリラ人間etc……。
パーティーグッズにあるようなマスクを被ったような方々や、映画の「動物に変身する途中」みたいな状態の御仁。
街行く人が実にレパートリーに富んでいる。
ウサギワールドなのかと思いきや、アニマルワールドだったか。
つまり、多種多様の動物人間さんが闊歩しているファンタジーな世界で、純粋な人間はいなかった。
これが俗に言う半獣さんとか、獣人さんってやつかな。
それだけなら「やっぱりハロウィンの仮装なのか」と思うんだけど、逆にミノタウロスというのか、ケンタウロスというのか腰から下が動物バージョンという、仮装ではちょっと不可能なレベルもいる。
頭だけが馬な人と、上半身は人間で下半身が馬の二人連れとか、失礼ながら二度見した。
そうかと思えば動物園で見かけるような純然たる動物がフリーダムにその辺りを歩いて、肉食獣も草食動物も関係なくみんな和気あいあいと会話しているという、ぐっちゃぐちゃの、節操のない世界。
立派過ぎる街路樹の上にコアラさん、その下ではベンチに掛けたパンダ頭の獣人さんがだらっとした様子でお話している。
生息地域も完全に無視って事らしい。
……うん。
私らしい、実に雑な世界設定だ。
あ、普通に犬もいる。
お美しい毛並みにつぶらな瞳のポメラニアン。
「お、この街にも久々のお客さんかい」
ちょっと安心したら、ニヒルな口調でイナバさんに話しかけやがった。
「こちらは警察署長さんです」
イナバさんが紹介してくれて、「なるほど、犬のおまわりさんか」と納得する。
その後「お客様自立支援室」の職員さんだというイナバさんに手配していただいた宿はまるで「冒険者が泊まるような宿!」で、家族大いに盛り上がった。
翌2日目は宿まで迎えに来てくれたイナバさんに「役所」に案内してもらってこのアニマルワールドの説明の講義を家族で受けた。
「たいてい『しっぽのないお客さん』は皆さんご家族で来られますねぇ」
……なんだろう、この観光地のお土産屋さんや宿の主人的な発言。
「『しっぽのないお客さん』のサポートはその街の住人の義務ですので、生活が出来るよう責任を持ってこちらで協力させていただきます。すぐにとは言いませんが、今後の生活基盤を考えるとやはりお仕事をしていただく事になるのですが……希望の職業や何かやってみたい事はありますか?」
イナバさんがことりと首を傾げると、それに合わせて耳も倒れてふよふよと揺れる。
かっわいいなー
「どうせなら手に職をつけたいな。年をとっても続けられるのがいいし」
父は生粋のサラリーマンで、勤務先では経理課長をしているからかそんな事を言い出し。
「私、パン屋さんやってみたいのよねぇ」
母は思い付きを口にする。
「おお、パン屋かいいなぁ! 母さんの好きにしたらいいぞう!」
ああ、夢の中だからお父さんも気が大きいなぁ。
お母さんも家でパンなんか焼いてくれた事ないのに、さすが夢だと好き勝手言えるよねぇ。
「パン製造はこちらとしてもありがたいです。需要に対して供給が圧倒的に少ないんですよ。肉球の間の毛に生地がくっついてしまって、私達には難しい仕事なんです」
悲しげにそう言って、見せてくれた手の平にはきれいなラビットファー。
「まあ私は肉球ないんですけどね」
てへぺろ的な感じで言うイナバさん。
そう、ウサギさんには肉球がない。
それでも!
ふわぁぁぁ……!
触りたい、触りたい、フニフニ揉みしだきたいぃ!
0
お気に入りに追加
114
あなたにおすすめの小説
【R18】××××で魔力供給をする世界に聖女として転移して、イケメン魔法使いに甘やかされ抱かれる話
もなか
恋愛
目を覚ますと、金髪碧眼のイケメン──アースに抱かれていた。
詳しく話を聞くに、どうやら、私は魔法がある異世界に聖女として転移をしてきたようだ。
え? この世界、魔法を使うためには、魔力供給をしなきゃいけないんですか?
え? 魔力供給って、××××しなきゃいけないんですか?
え? 私、アースさん専用の聖女なんですか?
魔力供給(性行為)をしなきゃいけない聖女が、イケメン魔法使いに甘やかされ、快楽の日々に溺れる物語──。
※n番煎じの魔力供給もの。18禁シーンばかりの変態度高めな物語です。
※ムーンライトノベルズにも載せております。ムーンライトノベルズさんの方は、題名が少し変わっております。
※ヒーローが変態です。ヒロインはちょろいです。
R18作品です。18歳未満の方(高校生も含む)の閲覧は、御遠慮ください。
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
男女比が偏っている異世界に転移して逆ハーレムを築いた、その後の話
やなぎ怜
恋愛
花嫁探しのために異世界から集団で拉致されてきた少女たちのひとりであるユーリ。それがハルの妻である。色々あって学生結婚し、ハルより年上のユーリはすでに学園を卒業している。この世界は著しく男女比が偏っているから、ユーリには他にも夫がいる。ならば負けないようにストレートに好意を示すべきだが、スラム育ちで口が悪いハルは素直な感情表現を苦手としており、そのことをもどかしく思っていた。そんな中でも、妊娠適正年齢の始まりとして定められている二〇歳の誕生日――有り体に言ってしまえば「子作り解禁日」をユーリが迎える日は近づく。それとは別に、ユーリたち拉致被害者が元の世界に帰れるかもしれないという噂も立ち……。
順風満帆に見えた一家に、ささやかな波風が立つ二日間のお話。
※作品の性質上、露骨に性的な話題が出てきます。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
落ちこぼれ魔法少女が敵対する悪魔の溺愛エッチで処女喪失する話
あらら
恋愛
魔法使いと悪魔が対立する世界で、
落ちこぼれの魔法少女が敵側の王子様に絆されて甘々えっちする話。
露出表現、人前でのプレイあり
異世界転移したら、推しのガチムチ騎士団長様の性癖が止まりません
冬見 六花
恋愛
旧題:ロングヘア=美人の世界にショートカットの私が転移したら推しのガチムチ騎士団長様の性癖が開花した件
異世界転移したアユミが行き着いた世界は、ロングヘアが美人とされている世界だった。
ショートカットのために醜女&珍獣扱いされたアユミを助けてくれたのはガチムチの騎士団長のウィルフレッド。
「…え、ちょっと待って。騎士団長めちゃくちゃドタイプなんですけど!」
でもこの世界ではとんでもないほどのブスの私を好きになってくれるわけない…。
それならイケメン騎士団長様の推し活に専念しますか!
―――――【筋肉フェチの推し活充女アユミ × アユミが現れて突如として自分の性癖が目覚めてしまったガチムチ騎士団長様】
そんな2人の山なし谷なしイチャイチャエッチラブコメ。
●ムーンライトノベルズで掲載していたものをより糖度高めに改稿してます。
●11/6本編完結しました。番外編はゆっくり投稿します。
●11/12番外編もすべて完結しました!
●ノーチェブックス様より書籍化します!
男女比がおかしい世界にオタクが放り込まれました
かたつむり
恋愛
主人公の本条 まつりはある日目覚めたら男女比が40:1の世界に転生してしまっていた。
「日本」とは似てるようで違う世界。なんてったって私の推しキャラが存在してない。生きていけるのか????私。無理じゃね?
周りの溺愛具合にちょっぴり引きつつ、なんだかんだで楽しく過ごしたが、高校に入学するとそこには前世の推しキャラそっくりの男の子。まじかよやったぜ。
※この作品の人物および設定は完全フィクションです
※特に内容に影響が無ければサイレント編集しています。
※一応短編にはしていますがノープランなのでどうなるかわかりません。(2021/8/16 長編に変更しました。)
※処女作ですのでご指摘等頂けると幸いです。
※作者の好みで出来ておりますのでご都合展開しかないと思われます。ご了承下さい。
気付いたら異世界の娼館に売られていたけど、なんだかんだ美男子に救われる話。
sorato
恋愛
20歳女、東京出身。親も彼氏もおらずブラック企業で働く日和は、ある日突然異世界へと転移していた。それも、気を失っている内に。
気付いたときには既に娼館に売られた後。娼館の店主にお薦め客候補の姿絵を見せられるが、どの客も生理的に受け付けない男ばかり。そんな中、日和が目をつけたのは絶世の美男子であるヨルクという男で――……。
※男は太っていて脂ぎっている方がより素晴らしいとされ、女は細く印象の薄い方がより美しいとされる美醜逆転的な概念の異世界でのお話です。
!直接的な行為の描写はありませんが、そういうことを匂わす言葉はたくさん出てきますのでR15指定しています。苦手な方はバックしてください。
※小説家になろうさんでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる