春の神と迷い人

志野まつこ

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前編

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 そこは桃源郷というに相応しい。

 春の神コピコは花の咲き乱れる川べりに座り、ぼんやりと小川を眺めていた。
 嬉そうに飛んできた蝶の番にたおやかな手を伸ばし指先で休ませ、見て見てと咲き誇る花々に微笑む。

 山へ川へ、海へ。
 丘へ崖へ。
 気の向くまま各地を訪れ、そこでぼんやりと座っているのが彼の仕事である。
 変わり映えのない、穏やかな日々。

 そんなある日。
 服の上から見ただけで逞しい体の持ち主と見て取れる男が川下に立っていた。
「おや」
 春の神の穏やかな声に花々が楽しそうに揺れる。

「迷い人かな?」
 たまにこうして神の過ごす場所に人が紛れこむ事があった。

「君はどこから来たのかな?」
 コピコは腰を下ろしたまま、目を細め笑いかける。

 真っ直ぐに近付いてきた人間は綺麗な顔をしていた。
 コピコをじっと見詰めた後そっとコピコの肩に大きな手を乗せると、羽衣のような着物の合わせ目が浮き、長身の人間の目線からは中が良く見えた。
 そして人間は流れるような自然な動きでその美乳にむしゃぶりついたのだった。

「おやおや、お乳は出ないよ」
 ふふふとコピコは慈愛に満ちた声で笑う。
 ちゅうちゅうと大きく音を立てながらコピコの桜色の小さな乳首を吸い立てる人間に穏やかな笑みを浮かべる。

「お腹が空いていたんだね」
 帯を肩からタスキのように引っ掛けたようにしか見えない衣装を纏うコピコの乳首は、少し手を差し入れずらすだけで春のうららかな空気に晒された。
 乳にじゅるじゅるとむしゃぶりついてくる人間の頭を撫でる。適当に刈ったらしい髪形は野性的だが触ってみるととても艶やかで指どおりも滑らかだった。
 コピコの左の乳首に吸い付いた人間は空いた乳首を親指の腹で擦るように撫で、時折つまんでこねた。

「んッ、そんなに、つまんで引っ張っても出ないものは出ないんだよ」
 なだめるように人間の大きな背をぽんぽんと優しく叩く。
 その声に宿る詫びるような響きに、人間はやっと顔を上げた。
 胸元からじっとコピコを見上げる人間の目は熱を持ち、鋭かった。
 肌蹴た胸にずりずりと体を擦り付けよじ登るようにして視線が合う位置まで体勢を整えた人間は、間近でコピコの目を見詰めた後、唇を合わせてきた。
 両者そのまま目を逸らすこと無く、至近距離で見つめ合う。

 こんなに人間を間近に見た事はないかもしれないな。
 コピコは目を逸らすという発想を抱くこともなく、人間の黒い瞳をじっと見詰めた。
 口内に分厚く熱い舌が侵入し、うねうねと動く。

 生きている。人間なんだから当たり前なんだけど。
 体がたまに震えるのはどうしてだろう。
 そういえば股間がおかしいな。
 ふと人間がコピコのそこに触れ、コピコはどうしてか小さく体を震わせた。
 撫でられるとそれに合わせて体が震える。

「それはおもちゃじゃないよ」
 コピコが優しく教えてやると、人間は今度は自身のズボンを寛げ始めた。
 なにかな?
 コピコがじっとそこを見つめているとボロンと何か生き物のような物がこぼれ出た。先ほどまで口の中をうごめいていた物と似ているような気もする。

「ああ、次はこれで遊ぶの?」
 コピコはまたふわりと笑い、人間はぐっと体を強張らせてから「ふー」と大きなため息をついた。
 コピコにとって、神や大樹、大地に比べれば人間は短命の生き物だ。
 老いも若きも人間は総じてコピコにとっては可愛い子供だった。
 よって人間が隠し持っていた「おもちゃ」を取り出したのだと思った。自分の物とあまりにも違い過ぎてコピコはそれを己が知っている器官だとは思わなかった。

 人間は怒ったような顔でコピコの腹に手を伸ばした。
 一枚布のようなずるずるとした長い腰巻をたくし上げ、コピコのくったりと愛らしい桃色の肉棒を引き出す。
 ああ、陰茎だったのかと思いながらコピコは二本のそれを見比べた。
 長さも太さも倍はあろうか。

「君のは大きいね。色もなんだか強そうだ」
 興味深そうに、そして純粋に褒めてくるコピコに人間は喉の奥で唸った。

「おや、並べてみるのかい? そんな事しなくても君の勝ちだよ」
 コピコの可憐な肉棒に黒くたくましい雄芯を寄せてくる人間にコピコは優しく教えてやる。しかし人間はその優しさをありがたく受け入れたりはしなかった。

「待って、そんなにしなくても君の勝ちだって」
 そこで初めてコピコは少しだけ慌てるが遅かった。
 長さ比べでもするように薄紅色と黒紫の棒をぴったりと合わせ、人間は二本を一まとめにして擦り上げたのだ。
 ぞくぞくととてつもない感覚がコピコを襲う。その時にはコピコの可愛い雄も芯を持たずにはいられなかった。
 人間の大きな瘤の先端からは液体が溢れ、二本にからみぬちぬちと音がし始める。

「はッ……」
 人間が熱い吐息を漏らした。
 陰部をしごき上げられながらもコピコは人間の硬い肩に手を当て逃れようとしたが、人間の左腕に胴を抱きかかえられ身を離そうにも動けなかった。それどころかそのまま持ち上げられて人間の太ももに座らされてしまう。

「ちょ、君、離し……」
 手で肩を押して突っぱねれば唇を舐め倒され、それから逃れようと頭を後ろに引けば突き出した胸を淡く色づく尖りにまたちゅうちゅうと吸い付かれた。

「だめだめだめ、ぁぅん、そんなにしたら、くぅぅんっ!」
 初めての刺激にコピコは細い背を反らすようにして果てた。
 しかし未だ人間のその硬度は保たれたままで、柔らかくなったコピコの可愛い物と一まとめに握られたままだ。
 人間はコピコの吐き出した白い液を二本に改めて塗し、自分も吐精せんと腰を激しく突き動かした。達したばかりの柔らかい自身を硬い物でえぐられ、大きな手に締められコピコは悲鳴を上げた。

「ひ、やめ……まっ! あああぁっ!」
 人間のしつこい責め苦にコピコは涙を浮かべ、ぐいぐいと両手を突き出して抵抗したが逞しい人間にとってそれは何の抵抗にもならなかった。

「ひぁぁ、やぁぁぁぁぁん、たすけっ! ふぁ、ふあぁぁあっっ!」
 大きな口を開けた瞬間、人間の口にふさがれる。

「━━ッッっっ!」
 その瞬間コピコの股の可愛らしい竿の先端から再度、新たな生命の水が噴き出した。

 長いまつげを涙でぬらし、乱れに乱れた服。
 人間は扇情的なコピコの華奢な体をゆっくりと花畑に倒す。
 豊かに生えそろう新芽と、健気ながら精一杯咲き誇る春の野花はコピコの身体を優しく受け止めた。
 薄紅色に染まったコピコの顔は美しく、生命を感じさせるものだった。
 弱々しい抵抗も抗議も受け流し、可憐な唇を再度貪りながら人間はコピコの後孔に二人分のぬめりを纏わせた指を伸ばす。
 つつましやかなそこをくるくると優しく撫で、体の力が抜けた瞬間を狙っては少しずつ指を侵入させた。

「何をしているんだい? そこは触るようなところじゃないよ」
 やっと息が落ち着いたコピコはその違和感に実に不思議そうに首をかしげる。その無邪気な様に人間はまた堪えるように眉をひそめた。

「あっ、ねぇ、そんなところには何も、ひぁ、入っていない、んぅんっ、よ!?」
 右手の二本の指が挿入され、中を探られているのを感じる。
 人間の空いた左手に立ちあがった胸の小さな尖りをこねられ、男の厚く大きな舌で口腔を犯される。コピコの身体は春の水面を跳ねる魚のように大きく痙攣するのを止められなかった。
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